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D.Lとダースレイダーが語る日本語ラップ・コンピ「HARD TO THE CORE」(前編)

D.Lが選曲/監修した日本語ラップ・コンピ「HARD TO THE CORE」は、その筋の通りまくった選曲で、かなり熱烈な支持を受けている模様。今回はAmebreak独占企画として、D.Lとダースレイダーによる特別対談をお送りする。日本語ラップ史の生き証人の貴重な意見/提言の数々はしっかり聞いておくべし!

対談:D.L/ダースレイダー
文:伊藤雄介(Amebreak)

「BUDDHA BRANDのアルバムが出て大体10年経ってるんだ。で、今は今なりのやり方でみんなやってるんだろうけど、俺が『こうなったらいいな』と思ってた音楽の作り方とか業界の形とかがまったく違うものになって、『昔はこういった曲、つまりサンプリング中心で曲が作られていて素晴らしかった』っていうのを少しでもコンパイルして一枚で聴かせたいなと思ったんだ」——D.L

D.L

 これまでも数多くの日本語ラップ・コンピがリリースされてきたが、やはり重要なのは選者の感性なんだな、という当たり前の事実を、恥ずかしながらこの度リリースされたD.L監修のコンピ「HARD TO THE CORE」で思い知らされた次第だ。一般的にクラシックと認知されている定番曲からマニアックな曲まで、様々な曲が選ばれているが、D.Lという日本のHIP HOPシーンが誇る個性が確実にフィルターとなってD.L自身の存在さえも主張していることが、聴いたリスナーには分かってもらえるだろう。

 今回は、このコンピのリリースを記念して、D.L本人と、D.Lに指名されたダースレイダーによる対談形式で、彼がこの時代にこのようなコンピを手掛けた理由を明かしてもらった。

■このタイミングでD.Lさんがこういったコンピを作ろうと思ったのは何故ですか?
D.L(以下DL)「BUDDHA BRANDのアルバムが出て大体10年経ってるんだ。で、今は今なりのやり方でみんなやってるんだろうけど、俺が『こうなったらいいな』と思ってた音楽の作り方とか業界の形とかがまったく違うものになって、『昔はこういった曲、つまりサンプリング中心で曲が作られていて素晴らしかった』っていうのを少しでもコンパイルして一枚で聴かせたいなと思ったんだ。あと、星の数ほど今日本語ラップが出てるから、その中で俺みたいな音楽の作り方が好きな人が、『俺だったらどんな日本語ラップを選ぶかな?』って思ったときに『俺だったらコレだよ』っていう枠を作って、そこからいろんな曲を聴くきっかけを作りたかったんだ。今回入れた曲ってほとんど廃盤になってたり忘れ去られたりしてて、1曲1曲がクラシックなんだけどなかなか入手困難だったりして聴けないものが多いんで、聴く機会をリスナーに渡したって感じかな」
ダースレイダー(以下DA)「俺のアルバム用のコメントをもらったときも『2000年以降のつまらなくなった日本のシーン』って言ってましたけど、D.Lさんにとってはそういう印象が強いということですよね」
DL「全部を聴いたわけじゃないけど、そうだね」

■今欠如していると思われる要素って何だと思いますか?
DL「(今回のコンピは)音にこだわって選んでるところがあるから音的な話をすると、俺はサンプリングの良さを感じて音を作り始めた方なんだけど、今はメジャーだとビビって自主規制ってやつで、売れても1,000枚〜5,000枚程度で、まず間違いなく訴えられないのに、クリアランス、クリアランスって感じでどんどんサンプリングが出来なくなってきている。アートフォームとして今まで確立してた確信犯的に面白かった要素が欠如してると思うんだ。まあ、ダースみたいにいまだにやってる人もいるけど、やってない人の方が増えてるじゃん、そっちの方が楽だし。なんか聴いてて面白くないんだよね。『サンプリング素材をこういう風に料理したんだ』みたいな醍醐味が感じられない」
DA「今回のコンピでは敢えて『日本語ラップ黄金期セレクション』って言い方をしてるから、やっぱりD.Lさん的にはこのコンピに入ってる楽曲が日本語ラップの黄金期に当たると思っているわけですよね」
DL「まあ、もっといっぱいあるけどね。最近のどんな日本語ラップにも勝てる曲ばっかりだよ。すごすぎるって感じで。それぐらい光/個性/主張……目に見えない力を放ってるんだ。巷に溢れるお手軽、コンビニSHITな曲とは違うんだ。基本的に、『金になるか分かんないけど頑張っちゃおう』みたいな時代だったからさ。『金にしよう』『金になるだろう』って憧れてる人が今は多いからさ、その夢をぶち壊してしまうようだけど、『モノホン志向でやってる人には日本語ラップはなかなか金になりません』って言い切った方がいいな。ちょっと手法変えたり色付けたら金になるのかもしんないけど……」
DA「究極的に日本語ラップをちゃんと作ろうとすると金になんないよ、と」
DL「ホンモノはGROUP HOMEとかSMIF N' WESSUNとかULTRA MAGNETIC MC'Sとかみたいなやつらだから、チャラかったり、ヤワだったりじゃないから」
DA「まあ、確かに彼らは金持ってそうなイメージもないですもんね」
DL「持っちゃうとまたつまんなくなると思うんだよ。RUN DMCが良い例でさ。売れちゃって太っちゃって、なんかつまんない曲連発してワケ分かんないバランスで終わってっちゃったじゃん?まあ、そんな話はいいんだけど、せめて金にならないんだったらみんなカッコ良い曲を作ってくれよ、って気持ちがあって。ひと世代前の人たちがこういうカッコ良い曲を残していたというのを次作る人たちに聴かせたかったんだ。今回選んだ曲は、ラップも聴いてはいるけど、まず音ありきで選んでるんだ。ラップをラップとして捉えてなくて、楽器的なひとつの音として捉えていて、だから、今回は日本語ラップのコンピだけど実はラップで選んでないんだ。そういう意味では特殊なコンピなのかもしれない。トラック・メイカー的に、『この人たちはすごいコンポーザーだな』って思った曲だけを選んでる。日本語ラップ好きのうるさい人が選んだら全然違うものになると思う」
DA「確かに超名曲も入ってるけど渋い曲も入ってて、不思議なバランスですよね……。日本語ラップの永遠のテーマのひとつと言われているのが、ラップの『聴こえのカッコ良さ」を重視するのか、『リリックの内容』なのか、『ライムの良さ』なのかっていう……永遠に出ない答えなのかもしれないけど、D.Lさん的には『演奏としてのラップの聴こえ方』という基準が大事というわけですね」
DL「それは絶対だね」

■日本のラッパーで言うとどんな人が理想になるんですか?
DL「そうだな……多分一番カッコ良いのはTWIGYかRINOだと思うよ。BUDDHAで95年に帰国したとき、NIPPSは『まったく眼中ないね日本のMCは』って感じだったんだけど、俺は日本でちゃんとやんなきゃなーと思ってて、ライバルはこの二人だ!!飛び抜けてるなって思ってた。それは今でも変わらないかもね。やっぱりあの二人はすごかった。宇宙人タイプだね」
DA「最近はHIP HOPの聴き方も変わってきてますよね。昔だったら当たり前だったような、プロデューサーやフィーチャリングのクレジットを辿っていろんな作品に辿り着くという行為も、最近の若い子はしなくなってるみたいだし」
DL「マジで!?そんなの基本だと思うんだけど」
DA「基本が基本でなくなってきてるんですよね。HIP HOP的な曲の聴き方として、それこそスタジオ名とかエンジニア名から辿るって聴き方があるけど、そういうディグ精神……サンプリングという行為がまさにそれだけど、そこら辺の感覚が今の若い子は完全にリセットされてしまっているような気がする。今はリリース量も与えられる情報量も多いから、自分からディグしにいかなくても投げ込まれる量が多すぎてそれだけでお腹いっぱいになっちゃうというか」
DL「でもさ、今の方がディグは楽じゃない?昔は何もないところから掘ってたわけだから。今はネットで検索すればヒントがそこら中に落ちてるから」
DA「でも、その検索するワードを知らなかったら検索すら出来ないじゃないですか。ネットは欲しい情報には直でいけるけど、その間の過程がなくなっちゃう。だから、レコ屋でネタ掘りに行くとき、欲しいネタ以外のネタに触れる機会があるけど、そういう行為が排除されてしまう。HIP HOPの遊び方に対する考え方がリセットされている感じが、20歳ぐらいの子とかと接していると実際に感じるんですよ。あと、すぐ教えてもらいたがるとかね。『自分で調べろよ』と思うんだけど、そうしたら『教えてもらえないなら別にいいです』みたいな軽いノリで(笑)」
DL「よく訊かれるよ、『レコードどこで買ってるんですか?』って。教えるわけねぇじゃん。企業秘密。でもみんな行ってる店だよ(笑)。そうか、そういうヤツらはマナーが悪いんだと思ってたけど、単純に知らないのか」
DA「ナイフとフォークの使い方が悪いんじゃなくて、そもそも使い方が分からないっていう。だから、D.Lさんが今回のような形を通して主張していくっていうのは重要だと思うんですよ。単純に知らないってだけで純粋な子はいっぱいいるから、ポテンシャル層はまだあると思うんですよ」

■先ほどから話に出てる「音楽的なラップ」ということで言うと、確かに「HARD TO THE CORE」で聴ける時代のラップの方が、今の若い子たちのラップより音楽的なアプローチを試みているものが多いような気がしますよね。
DA「KURTIS BLOWじゃないけど『ファンキーなお喋り』というか、あくまでファンキーであることが大事であって、それがなければただのお喋りだから。日本語の言語的特性を言い訳にしているのかしていないのかは分からないけど、『熱いことを言えばいいんだ!』って言う人もいて、でもそれだったら何でドラムの上にラップ乗っけてるの?って。RINOさんとかTWIGYさんは感覚的にラップで演奏している人たちだろうけど、今はこういう観点がなおざりにされている感はありますよね。最新のNYのラップを模倣している人はいるけど、耳コピしてるだけで音楽的には解釈できてないというか」
DL「俺的には肺を思いっきり開いてブワーって喋るようなのがどっちかというとラップってイメージがあるんだけど、最近はボソボソって喋るようなラップが多いよね。俺はあんまそういうの好きじゃないんだけど、みんなそういうのが好きなのかな?昔はそういうスタイルほとんどなかったじゃん。(そういうスタイルが好きな人は)GO FORCEMENの“COMBO”みたいな曲は選ばないだろうな」
DA「GO FORCEMENは確かに今話したようなこと(古き良きスタイル)の集大成みたいなところがありますよね(笑)」

■D.Lさんの中で、このコンピをシリーズ化しようという計画があると伺いましたが。
DL「うん。シリーズと言っていいのかは分からないけど、第2弾、第3弾と出そうとは思ってて。第2弾は『MELLOW MADNESS』ってタイトルで、今回のとは対極に位置するようなもので、内容的にも音的にもメロウだしMELLOW YELLOWも入ってるって感じ(笑)。RIP SLYMEもスチャダラパーも入ってるからすごく範囲が広くなってる」
DA「それも今回と同じで音ありきで選んでるんですよね?」
DL「そうそう。選曲の感じだと会社的には次の方が喜ばれそうかもな(笑)。第3弾はまだ内容決めてないんだけど、古い曲と新しい曲を混ぜようと思っている。ドープな曲」

■こうして話を訊くと、コンピという形でもD.Lさんなりの視点で今まですくい取れてなかった部分がすくい取れそうな気がしますね。日本語ラップを扱うミックスCDやコンピは少なくないけど、今回のコンピの選曲はそういったものとは一線を画した掘り下げ方ですしね。
DL「そう思ってもらえたら嬉しいね」
DA「シーンに人が増えたり幅が広がったって言われ方をする反面、最近は表現の幅が狭くなった気がして。アヴェレージは上がってるけど言ってることや歌い方が同じ人が多いし、でも、このコンピでD.Lさんなりの一本線が入りつつ、色々なアプローチの曲が入ってると思いますよ」
DL「ダースはわかっている男だな。やっぱり(笑)」

 対談後半は「HARD TO THE CORE」収録曲の全曲解説をUP予定。乞うご期待!
 

TITLE:DJ BOBO JAMES a.k.a. D.L. PRESENTS 「HARD TO THE CORE」
ARTIST:V.A.
LABEL:バッドニュース/BACA-023
PRICE:2,300円
RELEASE DATE:NOW ON SALE

TRACK LIST
01.“OVER THE BORDER”/YOU THE ROCK & DJ BEN
02.“SOUL BROTHER”/KAMINARI-KAZOKU. feat. D.L & DEN
03.“DON'T TEST DA MASTER”/BUDDHA BRAND feat. NIPPS, LUNCH TIME SPEAX
04.“ナゼナラ”/キエるマキュウ
05.“GROUND ZERO”/LUNCH TIME SPEAX
06.“RAPPERZ ARE DANGER”/MICROPHONE PAGER
07.“FREE WAY”/DJ BEAT feat. SOUL SCREAM
08.“末期症状”/MAKI & TAIKI feat. ZEEBRA, MUMMY-D
09.“暴言”/KAN, PRIMAL, 02, 太華, SHINGO☆西成, MEGA-G, メシアTHEフライ, SATUSSY, ERONE, HIDADDY, 志人
10.“CHECKMATES”/MURO feat. D.L.
11.“GOD BIRD”/NIPPS feat. KB, XBS, GORE-TEX, DEV MOB X
12.“FIVE DEADLY MICS”/UZI feat. KENTA5RAS, DEV LARGE, 秋田犬どぶ六, MACCHO
13.“COMBO”/GO FORCEMEN
14.“サタDEFナイツ”/餓鬼レンジャー
15.“口から出まかせ”/RHYMESTER feat. KING GIDDRA & SOUL SCREAM
16.“夕陽のタンガンマン”/RINO

 

TITLE:DJ BOBO JAMES a.k.a. D.L. PRESENTS 「MELLOW MADNESS」
ARTIST:V.A.
LABEL:バッドニュース/BACA-24
PRICE:2,300円
RELEASE DATE:7月22日

TRACK LIST
1.“ブッダの休日”/BUDDHA BRAND
2.“FREE”/YOU THE ROCK feat. TWIGY
3.“白日 (ALBUM VERSION)”/RIP SLYME
4.“サマージャム'95”/スチャダラパー
5.“SUPA M.C’S PT.2 (L.W. PT3)〜SKY HIGH MIX”/HELL RAISER CARTEL feat. TWINKLE, IQ∞, JOHNNY DIABLO
6.“SUMMER MADNESS”/ECD
7.“自己嫌悪”/キミドリ
8.“君だけの天使”/SOUL SCREAM
9.“真ッ黒ニナル迄”/MURO
10.“哀愁97”/KAMINARI-KAZOKU. feat. HI-D 
11.“ORANGE”/PRIMER
12.“V.S.O.P PART II”/MELLOW YELLOW
13.“DO THE HANDSOME”/キエるマキュウfeat.KASHI DA HANDSOME
14.“FUKURO (YAKANHIKOU)”/YOU THE ROCK
15.“STONE STEALERS”/SUIKEN×S-WORD feat. D.L.
16.“夜行列車”/TWIGY feat. P.H.FRON