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15周年記念インタビュー。Kダブシャインがラップを続ける理由

今年の1月にメッセージ・ソング・ベストなる括りで過去曲をまとめたアルバム「自主規制」をリリースしたKダブシャイン。キングギドラ「空からの力」から数えると彼のレコーディング・アーティストとしてのキャリアも15周年を迎えたことになるが、彼自身はこれまでのキャリアをどのように総括しているのだろうか?また、今後の彼のキャリアはどのようなものになるのだろうか?そんな点に焦点を当てて話を訊いた。

文:伊藤雄介(Amebreak)

「俺はアメリカに住んでいた頃に、日本語の歌詞に対する 観点を変えたいなって思って、韻を踏んだ歌詞作りを自分なりに紡いできたんだ。それがこれだけ音楽業界で浸透して、それこそお笑いやCMにも使われるようになってるわけじゃん?自分が日本語の表現の仕方に枝を増やしたひとりになってる、って思うとそれだけでもう何もいらないぐらい嬉しいよ」

 考えてみると、キングギドラの「空からの力」がリリースされたのが95年なので、レコーディング・アーティストとしてのKダブシャインのキャリアも15周年ということになる。どうやら今年の1月にリリースされたメッセージ・ソング集「自主規制」にも、少なからず区切り/総括的な意味が本人の中にはあるようで、実はこの取材のテーマ設定も本人から提案されたものである。15周年を迎えるキャリア、そして年齢も40歳を超えた今、Kダブシャインが今もリリックを書き続ける理由は?そして今後彼はどんなリリックを書いていくのだろうか?手前味噌で恐縮だが、筆者が取材/執筆させて頂いた単行本『ラップのことば』内のKダブシャインのインタビューと併せて読んで頂けると、彼の“これまで”と“これから”が分かりやすくなるのではないかと思う。


■「自主規制」は所謂“ベスト盤”とは趣の違うアルバムですよね。
「元々DEF STARにいてキングギドラを担当していたスタッフがWARNER MUSICに移って、その繋がりでリリースすることになったんだけど、俺は最初はシングルを出すことになるかな?って思ってたら、その人から『メッセージ・ソングのベスト盤的なものを出してみないか』って言われて。俺の中にはそういう発想はなかったけどそれも面白いかもな、って思ったんだよね。だけど、表向きには巷に“ラヴソング・ベスト”みたいのが出回ってるから、それに対抗してメッセージ・ソング・ベストを出してみた、っていつも言ってる」

■早速(笑)。
「あとさ、最初のベスト盤(『世界遺産』)がもう手に入りにくくなってて、俺の中では“セイブザチルドレン”とかは結構重要曲だと思ってるから、それらが音源として手に入らない状況に対して忸怩たる思いでいたんだよね。それと、みんなが意外と手に入れ損ねてそうな曲で俺が自信のある曲も入れてるね。あんまりストリートっぽい曲はそんなに入れてないかも、今回は。俺のリスナーにも中年層が増えてきてると思うしね。(全体的に)自分のリスナーは低年齢化してきてるとは思うけど、俺はやっぱり自分と同世代の同志たちに向けた曲もいっぱい作りたいんだよね」

■子供に関する曲を歌うことが多いけど、それは子供に向けてるのと同時に子供を持つ親にも向けてるわけですもんね。
「そうそう。だって、今俺の歳で若いヤツらに向けた曲作っても説教っぽいっていうか、同じ目線では書けないじゃん?」

■以前、コッタさんは「HIP HOPは若いヤツらの音楽であるべきだ」的なことを話してたような気がするんですけど。
「うん、だけどその世代もどんどん上がってきてるし、アメリカだったら今45歳ぐらいの人までがストライク・ゾーンでしょ?『誰が勝つか/誰がイケてるか』っていうのはヤング・マンズ・ゲームだと思うし、そこを経てきた人たちは下の世代に向けた曲を作るのもいいけど、同世代の人生の戦いをくぐり抜けてきた同志に向けた曲を作るのも必要でしょ。ラッパーとして40〜50代とかまでやっていくんなら、その世代に向けた曲も作っていかないと存在意義がなくなってくるような気がするんだよね」

■ジャケ/ブックレットが相変わらず面白いですけど、この写真の中のコッタさんは誰からどんな理由で拷問を受けてるんですか?
「体制側の人間が、俺が『本当のことを喋りすぎる』から拉致して口を封じて『これから余計なことを言うな』って拷問を与えてるんだけど、俺は屈しない態度を貫いてるぜっていう様子。で、俺はその姿を自分で撮ってるみたいなパラドックスにしてる」

■要するに、自主規制するように規制しようとしている人たちに対して、コッタさんが「お前らが自主規制しろ」って言ってるってことですよね。ややこしいな(笑)。
「そう。あと、自主規制することを当たり前だと思ってしまってるクリエイターたちに対して『お前ら気付けよ』と。音楽は本来もっと反抗的な使われ方をされて然るべきと思ってるんだけど、今はその逆になっていて、事なかれ主義で済ませているものばっかりだよね」

■コッタさんと自主規制ということで一番分かりやすく繋がるのは、やっぱりキングギドラの一連の回収騒動ですよね。あれはメーカーの自主回収でしたよね。
「レコード会社側が自主的に回収して、自主的に改訂版を出させたっていう」

■ある意味一番エグいパターンでしたよね。
「うん、事なかれ的なやり方だからね。で、アルバムにも入らないで曲自体なかったことになっちゃうっていう結末。なかったことになるって凄いよね(笑)。せめてなかったことになったっていう事実が歴史として残ってはほしいよね」

■そんな目に遭ってるのに、なんでコッタさんはいまだにメジャー・レーベルと契約しているんですか?
「別にインディでも出せるっていうアウトプットは常に用意してるし。ただ、『音楽はそもそも自主規制すべきじゃない』ってスタンスをメジャーで表明できるんだったらしてもいいと思うんだよね」

■「空からの力」でデビューしてから今年で15周年になるわけですけど、それに対する感慨は……あまりなさそうですけど(笑)。
「感慨深いもの……あるよ。ある程度コンスタントに出せてるしね……同じものの繰り返しになっちゃう人も多いもんね、ヴェテランになると」

■コッタさんが歌ってきたことは基本的に一貫してると思うんだけど、ギドラを復活させたりradio aktive projeqtをやったり、適度に気分転換できてるのが長年やってこれた理由だったりするんですかね。
「俺のラップには二種類あるからね。“ビッグコッタ”的なラップと“Kダブシャイン”的なラップ」

■“ビッグコッタ”的なラップっていうのは、HIP HOPシーンに向けた、ストリート性の強いラップってことですか?
「そうだね。“F.F.B.”とか“渋谷のドン”とか」

■そう考えると今回は“Kダブシャイン”的なラップのベスト、ってことですよね。
「うん、そうだね。“ビッグコッタさ”は今回はあんまり出てないかも」

■ラップ・アーティストとしてのコッタさんが歩んできた15年間はどんなものでしたか?
「2000年ぐらいまでは試行錯誤の時期だったかな。やっぱり日本語でラップをするっていうことが根付くまでは、『この形だと残るかな?』とか考えながら模索してたね。『生きる』(00年)の頃に、自然に言いたいことがそのまま表現できるようになった気がする。それまではアートの基盤を築いていくために色々試してたって感じ。新しいものが出来る過程ってそんな感じなんだろうね。なんかひとつ試行錯誤したものがあって、『このスタイルが面白い』って他のヤツがそれを受け入れていくと、最終的には色々まとまって集まっていくっていう。で、俺はそこの一端を担ったっていう自負は、15年経つとさすがにある。『お、みんな韻踏むようになってきたな』とか『ストーリー物やるヤツ出て来たじゃん』とかね」

■具体的にそういうのを実感したタイミングは?
「一番最初はRHYMESTERだね。RHYMESTERがキングギドラのデモを手に入れてイヴェントに俺たちを呼んでくれて、その後出した『EGOTOPIA』は、『俺に言わせりゃ』と比べると明らかにギドラからの影響を受けてたよね。自分が提示した雛形が、他のラッパーたちにも普遍的なものとして受け入れてもらえたっていうところに感動した記憶があるよ。で、その後ラッパ我リヤとかが出て来て、直接関わってないところにも“感染”したっていうのに余計喜んだけどね。自分の子供じゃないけどさ」

■最近の人では誰かいますか?
「実は、HILLCRHYMEとか聴いてもそういうのを微妙に感じちゃうんだよねー(笑)。多分向こうは俺がそのスタイルのルーツだって意識はないだろうけど、韻を踏むってことに関しては結構しっかり出来てるし、そこに意味を持たせるのも詩的でまあまあなんだよね。ポップかHIP HOPかってところはさておき、『韻を踏むアート』ということで言えば普通に通じるものがあるよ。それはKREVAでもKICK THE CAN CREWでも感じてたことだしさ。だからこそ余計『もっとまともなことを言え』って思うんだけどね。それこそジャニーズとかそういうところでラップしてるヤツでもライミングは当たり前のものになってきてるしさ、CMで『“ぱなし”はなしって話です』 みたいの観るとなんか嬉しいよね(笑)。なんとなく俺としてはその影響の一端を担ったような気がするんだよね。俺はアメリカに住んでいた頃に、日本語の歌詞に対する 観点を変えたいなって思って、韻を踏んだ歌詞作りを自分なりに紡いできたんだ。それがこれだけ音楽業界で浸透して、それこそお笑いやCMにも使われるようになってるわけじゃん?自分が日本語の表現の仕方に枝を増やしたひとりになってる、って思うとそれだけでもう何もいらないぐらい嬉しいよ」

■構造面ではコッタさんの子供/孫は生まれてるかもしれないけど、コンテンツ面ではコッタさんイズムを継承したラッパーって、少なくともコッタさん級に成功したラッパーではあまりいないような気がするんですが。
「ありがとう、下の世代のヤツらの若いころには、過去に俺が憧れていたコンシャスなラッパーが多くはいなかったからじゃないの?いろんなアーティストがいる中で“メッセージ枠”に俺がいるから、みんななろうとしないのかもね」

■じゃあコッタさんがいなくなればそういうラッパーも生まれると思います?
「そうかもね」

■独占企業ですね(笑)。
「メッセージ性とか社会性とか、俺はジャーナリスト志望だったからジャーナリスティックな切り口でいくけど、別に自分が置かれてる状況/現実を淡々とラップするだけでもコンシャス・ラップになると思う。俺はテーマを決めて曲を作ると、原点にさかのぼって解決策を考えたいと思うような曲になる。ただ、例えば自分たちの地元の交差点の角に立った視点で『どういう人がいる/どういう店がある/どういう車が走ってる/誰がカネを持って誰がカネを持ってない』みたいなことを曲にするラッパーがもっと増えてほしいとは思うね。そんなこと誰でも出来ることだからな。そういうことをむこうのやつらはやってるわけでしょ?」

■必ずしもグローバルな視点に立たなくてもコンシャス・ラップは出来るということですね。
「若いヤツだったら『カネがない→儲かんない→なんでCD出したのにカネが入らない?→どこに取られてるんだろう?→レコード会社ふざけんな』で終わってもいいだろうけど、俺はもう40だから、そうなるとレコード会社と芸能界、広告代理店やテレビ局の関係みたいな、より大きな図式の中で誰がどういう立場にいてどこで搾取してるのかを突き詰めて考えていくから、俺の曲はこういう曲が多いんだよね、どうしても」

■向こう15年はどんなヴィジョンで考えてます?
「ラップ以外のこともやりたいし、裏方として若いヤツを支えてHIP HOPマーケットを充実させたいとも思ってるけど、その間に自分しか表現できないことを自分のペースで出せていけたらいいかな。その辺のアーティストのように常にリリースするっていう状態からは抜けてもいいんじゃないか、って思ってる。そういうのってある意味流通の奴隷みたいなモンだからさ」

■現時点でのラッパー:Kダブシャインの“使命”ってなんだと思いますか?今日話を訊いた感じだとある程度役割は果たしたって思いがあるようじゃないですか。
「自分がラップで達成したいと思ったものは、規模の大小はあるにせよ達成できたと思ってるんだよね。そういう意味ではわりと満たされてるよ」

■じゃあ、これからもラッパーとして続けていく上で、どんなことに使命を感じてやっていきたいのか、その“マニフェスト”を訊きたいです。
「それはやっぱり、このカルチャーがより社会の中で影響力や信用を増していくこと。これから先日本は今まで見たことがないような不況になって世の中が80年代のアメリカみたいにすさんでいくんじゃないかな、って悲観してるんだけど、そのときにHIPHOPがそういった状況の受け皿として存在すべきだから、そういう立場の予備軍を更正させるものとして機能するように監視していきたいと思ってる。そういう意味でHIP HOPを冒涜するような内部の動きや、HIP HOPを蹂躙するような外部の動きには目を光らせていたいし、そういったヤツらに対しては厳しく対応するっていうのが俺の使命じゃないかな?迷惑に思うヤツもいるかもしれないけどね(笑)関係ねえ。カッコつけた言い方をすると“PROPHET(預言者)”として、自分なりに社会/地球の流れを感じながら自分なりに発言をしていくぜ」
 

TITLE:自主規制
ARTIST:Kダブシャイン
LABEL:WARNER MUSIC/WPCL-10758
PRICE:3,150円
RELEASE DATE:1月27日

TRACK LIST
01.“新しい時代へ”
02.“マニフェスト(オレなら)”
03.“自主規制”
04.“ソンはしないから聞いときな”
05.“セイブザチルドレン”
06.“マキシマムリスペクト”
07.“大人の責任”/Mr.BEATS a.k.a. DJ CELORY feat. CRAZY KEN, 宇多丸, Kダブシャイン
08.“ブレインストーム”
09.“頭脳旅行”
10.“天下の回りモン”
11.“その時”
12.“目撃者”
13.“凶気の桜”
14.“今の世の中 feat. ケンタS”