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Amebreak AWARDS 2011(2/8) BEST ALBUMS


「EXIT」「OUTLET BLUES」と、毎作歴史に残るエポックなソロ・アルバムを作ることに成功してきたNORIKIYOは、やはり3rdアルバムも凄かった。憂鬱なことだらけの世の中/自身の属する日本HIP HOPシーンにおいて自分は如何なる表現をしていけばいいのか……そんな自身の抱える“自問自答”を、更に磨き上げた作詞能力によって巧みに描写。結果、2011年という非常に特殊な一年のムードに合った一枚となり、多くのリスナーの共感を呼んだ。(伊藤)
 
 

生き馬の目を抜く現在のシーンでも第一線を駆けるラッパーのアルバムを、日本が世界に誇るKING OF DIGGIN'ことMUROがトータル・プロデュース。温かみのあるオーセンティックなHIP HOPビーツに、多面性を強調して臨んだANARCHY。過去2作と明らかに毛色の違う本作はANARCHYのターニング・ポイントとなるハズだが、本作を経たことで彼自身もさらに引き出しを増やしていることだろう。(吉橋)
 
 

これまでもコアなアンダーグラウンド・ヘッズからの人気が高かった神戸薔薇尻/現:小林勝行が満を持して発表した初のアルバムは、そのズル向けた人間性全開で、制御不能な展開多数の実にいびつな一枚となったが、そのいびつさと所々見せるキャッチーさが加わり、聴き通すと何とも言えない感動をリスナーに与えてくれる。今後同じようなアルバムは絶対に作れないだろうし、そういう意味でも奇跡的なバランスの一枚と言える。(伊藤)
 
 

「LIVIN'」という大きなテーマを、シリアスになりすぎず軽やかに分かりやすく、しかし彼ならではの「見方」で貫いた一枚。“FAsionably LAte”のように、入り口はコミカルにし、話に引き込みやすくしながらも、曲中ではしっかりとしたメッセージをリスナーに与えるといった、楽曲構成の妙も作品の魅力の一つ。ある意味では日本語ラップ・アルバムのお手本ともなるべき作品。(高木)
 
 

ROMANCREWの2回目のデビュー・アルバムとも言うべき、彼らの立ち位置と自己認識が明確になった作品。そういった意識的な部分と、単純に個々人のスキル・アップによってROMANCREWの持つ独特のファンクネスがより分かりやすく作品に落とし込まれ、“日本的黒さ”とHIP HOPイズムとの塩梅が素晴らしくバランス良くパックされ、「ROMANCREWらしさ」の溢れる一枚。(高木)
 
 

コンセプト・アルバムとしては日本語ラップ史上屈指の内容となった前作「心臓」を経て、再びこれまでのKREVA的フォーマットで形成されたと言える一枚だが、端々に聴き取れる表現者/ラッパーとしての意地やプライドだったり、震災を経てのミュージシャンとしてのスタンスの再確認など、これまで以上にKREVAのパーソナリティを強く感じることの出来る内容となっている。そういった様々な感情を一枚のアルバムにまとめ上げる構成力の高さもこのアルバムの優れた点として挙げられるだろう。(伊藤)
 
 

エグゼクティヴ・プロデュースにBACHLOGICとJIGGを迎え、サウンド面で万全すぎる体制を敷いて制作。実際“ZOO ROCK”や“BEST KEPT SECRET”のようなフロアでの速効性大な楽曲が多数収められた一枚だが、ハイグレードなトラックに負けることなく、SIMONも作詞家としてこれまで以上に幅広いレンジの表現に挑戦し、結果一皮むけることに成功したアルバムだ。(伊藤)
 
 

あの震災を跨ぐ形で制作されたこの6枚目。それに自然と影響された部分はもちろんあったというが、実は事前に完成していた曲にも“生きるということ”に対する般若の強烈なメッセージはしっかりと刻まれている。彼が“伝える”ことに重点を置いて制作した本作は、だからこそ結果として人間の真理を問われるようなあの震災を経た人々の心にも響くものだったのだろう。(吉橋)
 
 

QNやDyyPRIDEなどによるソロ・ワークでその存在感を高めてきたSIMI LABが、遂にクルーとしての作品を完成させた本作。彼らの持つ自分たちの価値観や創作意欲に対して忠実に作られた自由な作品作りと、ラップやトラック・メイクのみならず、PVの制作やセルフ・イメージの打ち出しなど、作品にまつわる多くの部分を自分たちでコントロールし、「現在のSIMI LAB」を提示した好作。(高木)
 
 

個人的には、今年聴いた中で一番中毒的に聴き、一番興味を持たされたアルバム。不勉強ながらこの作品を聴くまでERAのことは存じ上げなかったし、TONOSAPIENSやBUSHMINDがトラック・メイカーに名を連ねる事からCIA ZOOと繋がりがあることは伺えるのだが、それ以上は今もって分からない。しかしそれでいい。彼の脳内から溶け漏れたような他者の介在の少ないラップとリリック、そして頼りなさげな声質からは、聴いていると直接彼の脳に繋がるような不安を覚えるし、それには余分な情報がない方が良かっただろう。構築性の高い作品がベストに名を連ねた今回、最も“無意識”が支配する作品だ。(高木)
 
 

2011年ベスト・アルバム

伊藤「1位と2位は本当に悩んだし、延々と葛藤したね、何をもってして『優れている』とするかっていう価値観の部分で迷わされた」

高木「『DIGGIN' ANARCHY』に関しては、ANARCHYの次の段階が感じられた部分がまずひとつ。彼のラップ力やリリカル・センス、バックグラウンドも含めた全身表現者としてのスゴさは前から感じてたんだけど、このアルバムではそういった彼の表現の落としどころであったり、目的地点に計算して着地させることがスゴく上手いなって感じたんだ。このアルバムで漠然とした表現者じゃなくて、どうすれば自分のしたい表現が出来るのか、どうすればリスナーに響く表現が出来るのかっていうのを掴んだんじゃないかなって思う。だからか、表現の幅も広くなったし、聴きやすい作品だと思った。もうひとつは、アルバムとしての必然性がANARCHYの方が高かったって部分。MUROをトータル・プロデューサーに迎えたことで、アルバムとして何を表現するかっていうことにスゴく自覚的な作品になったし、配信やiTunesっていう楽曲を切り取って聴くことが多い状況の中で、“アルバム”っていう単位で作品を作ることの意味がこのアルバムの方が強かったなって。一曲一曲をとってももちろん強い曲ばかりなんだけど、それぞれが作用しあって輝くっていう、アルバムならではの聴かせ方を感じたんだよね」

伊藤「『こういうアルバムにしたい』ってイニシアティヴは確実にANARCHYが握ってたしね。だから、アーティストとしての成長はホントに感じた。NORIKIYOは、やっぱり作詞能力の高さが突出してるね。『メランコリック現代』は複数のプロデューサーを使ってるからトラックも幅広いし、内容もヴァラエティに富んでるから、アルバムとしては『DIGGIN' ANARCHY』と比べると歪といえば歪だと思うんだよね。だけど、2011年っていうこの非常に特殊な社会状況において、ラッパーは何を語るのか、どう情況を切り取るのかっていう、“時代性”が高かったと思うんだよね。だから、『2011年のアワード』という意味ではNORIKIYOが相応しいと感じたんだよね」

高木「そうなんだよね。『DIGGIN' ANARCHY』って極端なことを言えば、去年でも来年でも成立する作品なんだよね」

伊藤「あと、NORIKIYOは自分の抱える葛藤だったり意識みたいなものを、正直かつ巧みに書くことで、リスナーが感情移入できる部分を作ってるのが本当に上手いなって。だから、夢を感じるのが『DIGGIN' ANARCHY』で、現実を感じるのが『メランコリック現代』……もうホントにどっちが1位が分からなくなってきた(笑)」

高木「ホントに差がないんだよね」

伊藤「でも、本当にこの二つに順位をつけるのは難しいね。3位は小林勝行。誤解を承知で言えば、個人的には今年一番『好きな』アルバムはダントツで『神戸薔薇尻』だったね。もう愛しささえ感じるぐらい。一番聴いた回数が多いし、何度も聴こうと思わされた作品だったね。コアなヘッズにとっては小林勝行っていうのは知られた存在だったけど、このタイミングでこんなに理屈抜きに感情に刺さる作品を出したのはホントに驚いた」

高木「このランキングに入ったアルバムって、多くは理詰めでの構成力の高さだったり、意識的な作品だったけど……」

伊藤「『神戸薔薇尻』の直情ぶりっていうのはやっぱり突出してた。洗練され成熟していく日本語ラップの中ではスゴく稀な作品だね」

高木「説明不足だったり、構成がよく聴くと破綻してるような部分もあるんだけど、だからこそ何度も聴いてしまうって部分があるよね。且つ、あれに何かを足しても引いても、アルバムとして崩壊しちゃうようなスゴく危ういバランスの上に成り立ってて、それ故のミラクルを感じた作品だった」

伊藤「だって、一曲目から9分近くあったり、二曲目では母親の語りが入ったりって、ホントに変なアルバムだよ。だから、奇跡的な内容だよね」

高木「その意味では、小林勝行とL-VOKALのアルバムは本当に真逆だと思うんだよね。『LIVIN'』は彼の持つ軽やかさだったり粋な部分、そして構成力の高さが十二分に発揮された作品だなって」

伊藤「『LIVIN'』っていう普遍的で広いテーマを、いかに自分らしく、ありきたりじゃなく表現しながら、それでもリスナーに届くモノを作るかっていう意味ではスゴく高い次元でそれを成立させてたよね。それはこのアルバムのちょうど良い温度感含め」

高木「5位のROMANCREWは、原稿でも書いたけど、2枚目のデビュー・アルバムってぐらい、ROMANCREW像をしっかりと確立した作品だったね」

伊藤「そうだね。“2.5”っていうセルフ・イメージもそうだし、素に近くなってるよね。個々のパーソナリティの押し出しの塩梅も面白いし、グループとしての成熟をスゴく感じる」

高木「この並びの中でラップ嫌いの人間にも聴かせたいのは『ロマンのテーマ』かな。ラップの掛け合いって部分も含めて、ポップで聴きやすいんだけど、HIP HOPイズムがしっかりパックされてるから」

伊藤「6位以下は個々の解説を読んで頂くとして、選に漏れたけど気になるアルバムとしては、D.Lのアルバムが素晴らしかったな。『OOPARTS(LOST 10 YEARS ブッダの遺産)』はインストだし、時系列的にも広いからこういうランキングには入れづらいんだけど、この人のトラックの圧倒的なクオリティの高さは本当に驚かされるよね。スゴすぎるが故にアルバムが出にくいって部分もあるんだろうけど、やっぱりこのトラックの強度は感動させられる。あとDJ SEIJI『HIP HOP LIBRARY』やHIMUKI『FERTILE VILLAGE 2』といったプロデューサー主導のアルバムでクオリティ高かった作品も多かったね」

高木「僕は環ROY『あっちとこっち』、HAIIRO DE ROSSI『forte』、かな。2011年は歌詞の年だと思ってるから、その中でもこの2作品は光るモノがあった。それからBASI『RAP AMAZING』と韻シスト『BIG FARM』、それからは、七夕野郎『七夕野郎』は決して先鋭的ではないけども『ないと困る』って思った作品だったな。12月の半ばリリースだったから、このランキングには間に合わなかったけど、HIGH5の『FINAL FIVE』にもぶっ飛びました。それからアイドルだとももいろクローバーZの『バトル アンド ロマンス』と東京女子流の『鼓動の秘密』が……」

伊藤「時間ないから次いくよ」