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祝!ニュー・アルバム・リリース記念!TOJIN BATTLE ROYAL特集

文:高木“JET”晋一郎
談:宇多丸(RHYMESTER)/KATSUYA(TOJIN BATTLE ROYAL)/サイプレス上野/DARTHREIDER/D.L a.k.a. BOBO JAMES/MEGA-G
※座談会部分は2008年発売の『月刊RAP presents / RAP!! vol.1』に掲載されたものを再構成して掲載しています。

 
 本稿のメイン記事となるTOJIN BATTLE ROYAL座談会は、『月刊RAP presents / RAP!! vol.1』(08年)という、ダースレイダーが陣頭指揮をとっていたCDマガジンに収録されたモノである。
 
 筆者もその編集と執筆に関わっていたわけだが、その号ではD.L特集をすることとなった。そこでILLMATIC BUDDHA MC'SやGOCCI(LUNCH TIME SPEAX)と、D.Lに縁の深いアーティストのインタビューをすることになり、それに関してはまったく異論なく計画が進んだのだが、ダースレイダーがもうひとつ提示した案として「博多の秘宝:TOJIN BATTLE ROYALが『1997~1998 COLLECTION』を出したから対談をやろう」というのがあった。
 
 正直「?????」となった。
 
 勿論、90年代後期に福岡で活動し、FRONT/BLAST誌で宇多丸氏やD.L氏が取り上げていたグループであることは知っていた。しかし、その当時、筆者がTOJINで聴いていたのは、ポチョムキンが手がけたコンピレーション「RAP WARZ DONPACHI!」に収録された“ポセイ首領”のみであり、他に収録された餓鬼レンジャー“サタDEFナイツ”、TOKONA-X feat EQUAL, AKIRA“FABULOUS”に比べると、かなり見劣りのする曲だったということが記憶に残っており、取り上げる必要があるのかがはなはだ疑問だった。
 
 しかし、その企画のための資料として聴いた「1997~1998 COLLECTION」……。衝撃だった。
 
 ざらついたサンプリング・ビートに、中学生の部室の会話のような内容、そしてそこから派生する聴いたことのない韻……。これは『月刊RAP』が取り上げるべき内容だと一発で感じさせるパンチ力のある作品だった。
 
 そして、この対談にはKATSUYA(TOJIN BATTLE ROYAL)/宇多丸/D.L/サイプレス上野/MEGA-G/ダースレイダーが参加。なかなか顔を揃えることが難しいメンツが、TOJINのためならと万障繰り合わせ中野の喫茶店に集結し、2時間にわたる爆笑に次ぐ爆笑の対談、そしてその結末は店員に「うるさすぎるから出てってくれ」という、レフェリー・ストップという形で幕を閉じた。
 
 A5サイズに写真込みで4ページという分量だったので、文字数的には決して多くなく、泣く泣く削らざるを得ない部分も多かった原稿なので、そのときの空気感を完全にはパック出来てはいないが、その一端が分かってもらえると嬉しい。
 
 
 
以下、『月刊RAP presents / RAP!! vol.1』(08年)掲載のTOJIN BATTLE ROYAL特集『Fresh Is The Word vol.2 「TOJIN BATTLE ROYAL」』座談会記事。(前作「1997〜1998 COLLECTION」リリース時のもの)
 
 
○ここはTojin王国渦巻く野望
ダースレイダー「トージンってメンバーが凄い多いですよね。元々はどんな繋がりなんですか?」
 
カツヤ(TOJIN BATTLE ROYAL)「当時はみんな遊び友達みたいな感じでしたね」
 
宇多丸「トージンってライブって結構やってたの?」
 
カツヤ「福岡ではちょこちょこやってたんですけど、基本的にみんなクラブが好きじゃないから。だから『ライブの練習しよう』って集まったらそのまま古本屋巡りしちゃったり」
 
宇多丸「ライムスターで初めて福岡に行った時はまだトージンは出来てなかったんだっけ?」
 
カツヤ「もう繋がってはいましたね」
 
宇多丸「でもトージンとしてライブやったわけじゃないよね?」
 
カツヤ「そうですね。みんなバラバラで」
 
ダース「そういういろんな集合体がトージンというか」
 
カツヤ「『TOJIN BATTLE ROYAL』って本当は名前じゃなくて、その時出したカセット・テープのタイトルなんですよ。元々ハタナイさんとトラックメーカーのハタジロウさんがやってたグループと、自分とイワシがやってたグループ、あとイワシの弟とタマルっていうのがやってたグループ、その3つ位のグループが一緒にカセットを作ったんですね。で、そのカセットを聴いてくれた人が、トージン・バトル・ロイヤルがグループ名の、この面子で活動してるグループだと思っちゃって。それでライブのオファーもくるから『もう(グループで)いいや』って」
 
ダース「でも、正式な音源のリリースは当時されなかったんですよね」
 
カツヤ「8年ぐらい前からD.Lから随分お誘いを受けたんだけどね。会う度に『出そうよ出そうよ』って。でも、適当にお茶濁して断ってたんですよ」
 
ダース「出したくなかったんですか?(笑)」
 
カツヤ「もう99~00年ぐらいには空中分解してたから、『何で今更出す必要あんの?』って気持ちも少しあったし。ハタナイさんとハタジロウさんがケンカ別れしてたから『もういいでしょ』みたいな」
 
D.L a.k.a. BOBO JAMES「全く商売っ気がないんだよね。売る気なくてホントに好きな事しか言ってないのがピュアな気がする」
 
宇多丸「普通CD出そうかって話になったら『もっと色気出すんじゃないの?』と思うんだけど、トージンのメンバーにリリースの話をしても、誰しも『いやーハタナイさんがなぁー』って(笑)。ハタナイさんはハタナイさんで『俺のカレンダー出す』って言い張ってて(笑)」
 
カツヤ「ハタナイさんだけ舞い上がってて、CDじゃなくて自分のオリジナル・カレンダー作るとか言い出して(笑)。そういう困った方向に行くから、みんなどんどんテンション下がってきて、活動もしなくなって。だって、カレンダーの話の時も『ハタナイアツシ・カレンダーを作るけど、1人3万(円)でいいから』って」
 
○(一同爆笑)
 
ダース「あ、みんなで金出し合うんだ(笑)でもアイデアとかはプリンスとかがやってる事と一緒じゃないですか。自分好きな人が自分のカレンダー作って」
 
D.L「それ美化し過ぎてるよ(笑)。比べるものが」
 
宇多丸「ハタナイさんが変過ぎてみんな引いてっちゃうっていう」
 
カツヤ「いかりや長介とJBが持つ『俺が俺が』的な部分と山崎邦正みたいなダメな部分が同居した(笑)、愛すべきキャラクターなんですよ」
 
宇多丸「カリスマ的ダメ人間(笑)。そういう事やってるハタナイさんを面白がりつつっていうのも含めてトージン・バトル・ロイヤルなんだよね」

 

「1997〜1998 COLLECTION」(08年)

○ムッソリーニよりも独裁的なハタナイアツシ
ダース「あ、会計記録帳(CDの中ジャケ参照)」
 
カツヤ「ハタナイさんは税理士なんでこういうのは得意で。2万くらいの取引しかないのに貸し借り対照表とか全部作っちゃうんですよね。なんか勉強は出来るけど頭は悪いっていう(笑)」
 
宇多丸「このニュアンス紙面で伝わるかな? 字面にすると馬鹿にしてるだけみたいな(笑)」
 
カツヤ「ほんとリスペクトと見下しの気持ちが一緒になって(笑)。でもやっぱハタナイさんの話は盛り上がりますからね」
 
ダース「そういう語られるキャラが必要ですよね。例えば王:長嶋にしても、みんなそのエピソードを知り合いかのごとく喋るじゃないですか。そういう語られるキャラが日本のヒップホップにいっぱい出てきたらいいなって思うんですけど。東京でもトージンはライヴはしましたよね。たしか、97年の『IMPACT』だと思うんですが」
 
カツヤ「あのイベントの時は、なんか色々あって楽屋が騒然としてたじゃないですか。こっちはこっちでハタナイさんが一人で弁当4つも食べちゃって(笑)」
 
MEGA-G「しかもシャワー・ルーム使ったらしいっすね」
 
D.L「そういう事する人だからね」
 
ダース「本当に周りの事考えてないっすね」
 
カツヤ「考えてないっすね。もうD.Lもすげー気使ってくれて『これ弁当だから』とか言ってくれて」
 
D.L「いち早くKYを地で行くってた人だからね(笑)。メガGは最近総裁に会ったらしいね?」
 
MEGA-G「はい、先週。10年前のハタナイさんをそんな知らないんで何とも言えませんが、本人はもう相変わらずだと思うんですよね」
 
カツヤ「ちょっと照れてたでしょ?! 照れ屋さんなんだよね」
 
D.L「でもすぐ打ち解けてたよね」
 
宇多丸「今回のリリースは喜んでるの?」
 
カツヤ「喜んではいるんすけど『俺のソロいつ出すの?』って(笑)。『俺もう3曲くらい作ってあるよ』って」
 
宇多丸「ラップ辞めてるはずなんだけどね」
 
カツヤ「いや、なんか40(歳)で復活するとか……もう訳がわかんない(笑)」
 
宇多丸「すごい待たれてる感を感じてるんじゃないの? 勝手に(笑)」
 
D.L「『宇多丸が新曲やるなら書くよ』って言ってたよ」
 
宇多丸「え? あ、俺のなんだ?(笑)。でもハタナイさんが新曲やるなら、僕はフックでもなんでも書きますよ」
 
D.L「でも最近会ったら普通のおじさんになっててビックリしたな」
 
カツヤ「金八とか言って馬鹿にしてたのが自分が金八みたいになっちゃって」
 
ダース「アルバム全体で相当金八への思い入れが強いっすよね」
 
宇多丸「イワシ君とハタナイさんは、リリックの内容が中学の時見てたものしか書かないよね。イワシ君なんて昔のテレビの中に生きてるからね」
 
ダース「このリリースは97年だけど、その当時でも既に昔話ですもんね。だってメキシコのGKがカンポスっていうのが最新情報(笑)」
 
サイプレス上野「とにかく一つ一つのリリックの取り上げ方がヤバすぎる!」
 
カツヤ「友達がi-Podで聴くのが恥ずかしいって、歌詞が凄すぎて」
 
MEGA-G「俺も電車待ってる時何回も笑っちゃって、かなり気まずくなりますよ。でも逆に新鮮過ぎちゃって。フックが全部耳に残る」
ダース「ホント『今何て言った?』ってリリックの一時停止率が多くて」
 
カツヤ「自分達でも聴き取れないのとかあって、今回のCDにはリリックが載ってますけど、何カ所か断念してますね(笑)」
 
宇多丸「もう10年前だもんな~。ただ、ラップは聴き流してる分にはカッコイイんだよ」
 
サ上「みんなに聴かせてるんですけど、ほぼカッコイイって言いますよ」
 
カツヤ「ただ、ちゃんと聴くと赤面するっていう(笑)。ホント人が恥ずかしい顔するのが申し訳ないリリックだよね。マスタリング・スタジオの人とかも恥ずかしそうな顔して」
 
ダース「歌詞に集中しないとカッコイイ(笑)」
 
宇多丸「だってさ、リリックが中学生の時に見たテレビの話とかばっかだもん」
 
ダース「でも、凄い狭い範囲の話ばっかなのに、よくこんなに語る事があるなっていうのがありますね」
 
カツヤ「昔のテレビの話とプロレスの話しかしてなかったですからね」
 
サ上「だからショックでしたよ、これ聴いた時。凄すぎて(笑)。プロレスとかも凄いっすよね」
 
ダース「プロレスのオールドスクール感は、結構受け継がれてくっていうか、伝説のレスラーは常に語り継がれてくっていうのの一旦を担ってるなっていうのはありますね」
 
カツヤ「伝説と言えば、ハタナイさんはトージンをやる前に、スペイン語でラップしたり、沖縄弁でラップしてた事もあったな」

ダース「沖縄の人なんですか?」

カツヤ「いや、全然」

○(一同大爆笑)

MEGA-G「沖縄行った事ないのに沖縄の歌作ったんですか(笑)」
 
カツヤ「あと、ハタナイさんにずっと彼女いなかった時期があったんですね。その時期にハタナイさんが、働いてたジーパン屋の同僚の女の子とデートすることになったんだけど、『久しぶりにデートだからどうしたらすればいいんだ?』って相談に来た事があったんですよ」
 
ダース「それっていくつ位ですか?」
 
カツヤ「20代後半とか。で、イワシも俺も面倒だから、『いや~その場で押し倒しちゃえばいいんですよ』とか言ったら、その日の夜に『ありがとう、成功したよ』って(笑)」
 
○(一同爆笑)
 
サ上「成功したんすか!」
 
カツヤ「『で、次はどうすればいい?』って聞くから『次は道具しかないっしょ』って。そしたら次の日来て『いや~ちょっと道具は早かったなぁ』って(笑)」
 
宇多丸「ヒドイなぁ~(笑)」
 
カツヤ「でも今のカミさんですからね」
 
一同「お~」
 
ダース「こんだけ語られる人物っていうのは珍しいですよね。ラップ界広しといえども」

 

L to R:HATAJI-LO/ハタナイ総裁/KATSUYA/IWASHI

○合い言葉はNo Pain No Gain
ダース「曲作る時の過程ってどんな感じだったんですか?」
 
カツヤ「基本一発録りですね。それで、録る前にハタナイさんが言うわけですよ、『じゃあ<五重塔>っていうコンセプトだから、みんな五重の塔に関する、寺とか、和もの系のネタで、来週録るから』っていきなりお題が発表されて。で、ハタジロウさん真面目だからハタジロウさんだけがコンセプトにあった話で、それ以外のみんなは勝手な事を(笑)」
 
宇多丸「その勝手さが良いんだよなぁ。だって『五重塔』の『指戯早く覚えすぎた過ぎた香るのヴァギナに襲いかかるTAMOTSUの精子』! このラインは日本語ラップシーンに残る名バースですよ。『過ぎた香る』は女優の名前なのに『TAMOTSU』は役名だもん(笑)」
 
カツヤ「ハタナイさんいつも一番で録って自分だけ録って帰っちゃうんですよ。それでみんな大爆笑して、ハタジロウさんだけが『お前言ってた事と違うじゃねーかよ。金八の事しか言ってねえじゃねーかよ。』ってマジで怒って(笑)」
 
サ上「『Yo! Check It Out! オキシキナ!』とか普通出てきます(笑)?」
 
D.L「俺が見て感じるトージン像は、みんなぐちゃぐちゃな事やってる中でハタジロウ君はMC兼トラックメーカーで結構まともにさせようってアプローチしてくけど、いつもぐちゃぐちゃにされちゃう感じじゃん? でも、そうなるけど彼もリリック書くわけで。その場合、ハタジロウ君は諦めて合わせて書いちゃうの? どういう感情がそこに生まれてたのかは知りたいよね。あんなちゃんとしてようとしてる人なのにさ」
 
カツヤ「でも俺10年見てわかったんですけど、ハタジロウさんもハタナイさんと俺達より長く付き合ってて、そのせいか、やっぱハタジロウさんも狂ってるんですよ(笑)。だからみんな飲みながらハタナイさんの事を愛情込めてだけど悪口とか言うとハタジロウさんが『そんな事ないよ』ってフォローしたり」
 
D.L「トージンっていうグループはリリックばっかり目がいっちゃってトラックの話にならないじゃん。でも俺は何より最初に耳にきたのはトラックなんだよね。田舎っていったら悪いけど、凄い東京から離れてる情報のない土地で、俺たちが作るレベル、もしくはそれ以上の音を作ってる気がしたのね。音はカセットで荒かったけどね。ハタジロウ君が作る音についても話してほしいな」
 
カツヤ「ハタジロウさんは元々ネタを掘って、だからライムスターが九州に来たときには、D君(マミーD)と一緒にレコード買いに行ったり。俺とシロウ君とイワシは漫画屋さん(笑)。殆どのトラックはハタジロウさんは仕事を辞めてた時代に作ってたんですよね。それで俺たちはハタジロウさん家にお菓子持っていったりして、バレーボーイズ読んでゲラゲラ笑っては帰るっていう。その間にハタジロウさんはSP-1200を使って一生懸命作っては『どう思う?』って訊くんだけど、俺らは『いや、いいんじゃないですか』とか週刊プロレスとか読んみながら言って(笑)」
 
ダース「D.Lさんが『凄いレベルのトラックだ』って言ってたのを、週プロとかバレーボーイズ読みながら聴き流してたっていう(笑)」
 
カツヤ「でも、みんな音楽が好きだったんで、やっぱりトラックに関しては『カッコイイもの作らなきゃ出しちゃダメでしょ』って気持ちはありましたね。やっぱ最初は安いサンプラーを買ってきて1ループでしか作れなかったモノが、AKAIを手に入れて使いこなせるようになって、ようやく人に出しても恥ずかしくないレベルまでになったのが96年とか。ハタナイさんはブッダすごい好きだったし、ライムスターもライブも来てたりしたじゃないですか。なんかそのレベルにまでいかないと音源って出しちゃいけないもんだと思ってたんで」
 
D.L「聴いた時にブッダっぽい内容のものだなって思った」
 
カツヤ「D.Lが聴いてカッコイイって言ってくれたんだよね」
 
宇多丸「『FRONT』に書いてたもんね」
 
D.L「そうそう、良かったんだよ」
 
カツヤ「ハタナイさん舞い上がっちゃって。D.Lから褒められたって」
 
ダース「それが10年経ってようやく日の目を見たわけじゃないですか」
 
宇多丸「だって“マッスル志願兵”は俺の日本語ラップの好きな曲3本の指に入るもん」
 
ダース「No Pain No Gain」
 
サ上「すげー良いラインですよね」

 
 
○知らぬうちが華その名はMAKI-TOYOHIKO
MEGA-G「作品全編に出てくる『マキトヨヒコ』さんはもうラップやってないんですか?」
 
カツヤ「ラップとかもともと関係ない一般人なんだよね。というか、この当時はまだ会った事もない人で」
 
MEGA-G「え! めちゃめちゃ曲参加してないですか?」
 
カツヤ「名前を呼ばれてるだけ」
 
MEGA-G「え~!(笑)」
 
ダース「だって各バースに出てきますもんね」
 
サ上「“Biggaman”でメチャクチャな事言われてるのに会った事なかったんすか(笑)」
 
MEGA-G「『マキトヨヒコ』は『ハタナイ』と同じ位名前が出てきてて、完全に頭にこびり付いちゃって、メンバーなんじゃねーかって。『ヒーローはマキトヨヒーコー♪』って言われてるのに、中ジャケの写真見たら載ってなくて(笑)。ハンパじゃないな~」

 
 
○TOJIN BATTLE ROYAL TEKKEN SEISAI
宇多丸「D.Lとライムスターはトージンを凄い聴きこんでて、会う度にその話題になる位。そうやって俺ら普通にトージンを楽しんでるわけじゃん。でも、多くのリスナーはこの10年間トージンを聴けなかったっていうのは超可哀想! もう失われた10年ですよ」

ダース「俺は“マッスル志願兵”だけ聴かせてもらった事があって、他のは今回初めてだったから、凄い喰らいましたよ。メガGと上野もそうだけど。だからここは10年失ってた世代ですよ」
 
宇多丸「でも10年飛ばしてこんだけ伝わるんだから凄いよね」
 
サ上「ホント楽しめ過ぎましたよ」
 
宇多丸「普通にHIPHOPとしてめちゃくちゃカッコイイっていうのもまたね」
 
ダース「トラックが異様に格好良くて。しかもこんなくらだねー事言った後にめちゃくちゃタイトなスクラッチが入ってて(笑)。なんでココでこんなにカッコイイんだって」
 
D.L「凄いハードコアなエッセンスとお笑いのエッセンスが入ってるんだよね」
 
カツヤ「当時は真面目にやってたんですけどね。ハタナイさんは全く笑わないですからね、人のリリックにも自分のリリックにも。ハタナイさんのリリックにはみんな笑ってるんですけど(笑)」
 
D.L「まあ、これが10年前に出てたら、シーンのあり方がまた違ってきてたんじゃないかって、大きく言うとそれ位感じてるわけ」
 
カツヤ「リリースをD.Lから誘ってもらったのも嬉しかったし、一番何が良かったって、ハタナイさんが窓口じゃなかったっていうのがこのCDに繋がったんじゃないかな(笑)。ハタナイさんと窓口だとモメてるんじゃねーかなって」
 
宇多丸「俺だってハタナイさんそんな親しいわけじゃないけど、定期的にハタナイさんはどうしてるかって話するからね」
 
ダース「うちらも今日聞いただけでも相当ロックされたもんね」
 
サ上「気になりますよね」
 
カツヤ「まだまだエピソードはありますよ」
 
宇多丸「ハタナイさんが強烈過ぎてそこしか出てこないんだけど、他にも強烈な人いるからね(笑)」

 
 

「D.O.H.C.」(2012年)

 ……そして、この座談会から4年。遂にTOJIN BATTLE ROYALのアルバム「D.O.H.C」がリリースされた。この原稿を書いているのが既にリリース日なので、掲載される頃には多くの「YOUNG BOY」にその作品は届いているはずだが、改めて筆者からみた今作「D.O.H.C.」の凄さを書かせて頂きたい。
 
 まずは、一聴して飛び込んでくるのは、その揺るぎない芯の太いビート感だろう。HATAJI-LOのサンプリングを基調とした、90年代前半のNYサウンドの系譜を感じさせるビートは、一度オープンリールを通して音を太くするなど、かなりの拘りを感じさせるし、黒さと足の裏に響く重いビートは、弾きでは決して出せない、サンプリングでしか起こりえない凄味を感じさせる。
 
 そして、そのメンバーのリリックは「1997~1998 COLLECTION」の頃と変わらず、いや、よりディープに進化したと言っても良いだろう。HATAJI-LOの「2011俺らまだ中1 目指してるアイドルは新田純一」に代表される異様な韻の固さ。KATSUYAの「OK2」的なネタに対する言及の深さ、IWASHIのリリックに散見される世の中の人権意識に対抗するようなワードのチョイス、そしてハタナイ総裁の「総裁の総裁による総裁の為のリリック」と表現したくなるような「俺ジナル」具合、そして10年以上を経てもメンバー全員がネタに繰り込む「マキトヨヒコ」……どこを切ってもYBにとっては捨てリリックがない……が、世の中の9割の人にとっては捨てリリックしかないと思われるような内容には、ただただ戦慄させられる。
 
 そして、楽曲で言えば“GOLDEN8”はそのタイトル通り「3年B組金八先生」、“CYPRESS EFX 我々の時代 feat. サイプレス上野”で延々と語られる昭和プロレス&「プロレススーパースター列伝」ネタ、“SCAN★DALLAS COWBOYZ”で昭和テレビネタ、そして“哀愁SPORTS冒険家”での一曲全部を通しての横綱双羽黒がプロレスラー北尾に至るまでの一代記などなどと、そのテーマ設定も他に類を見ない、というか、これぞTOJINと言うべき構成だ。
 
 はっきり言って、この中で語られるキーワードに関しては全く理解に苦しむ人も、もしくはなんの事やらさっぱり分からないリスナーも多いだろうと思う。特に20代前半のリスナーにとっては、生まれる以前の話題も多かろう。福岡に縁のない筆者にとっても、福岡に実在する食堂「あしずり定食センター」( http://www.just.st/?in=7215701 )をテーマにした“裏切りのTEI-SHOCK CENTER Part1”は、「なぜこんなローカルネタをテーマにするんだ……」と理解に苦しまされた。
 
 しかし、TOJINの素晴らしさは、そういった自分たちの範囲を一切踏み出さない、「普通のリリック」とあまりにかけ離れた世界観を形にしながら、そこに普遍性を持たせてしまう力量の確かさだろう。前述のビートももちろんだが、各人の韻の固さによって聴感上はかなり言葉のノリは良く構成されているし、なによりもラップが巧い。コミックな部分の多いリリックだが、そこを腑分けせずにサッと聴けば、非常に「カッコ良さ」が耳に残るグルーヴが確実に存在する。その聴感上のカッコ良さと、よくよくリリックを聴いたときの衝撃、それがTOJINを唯一無二の存在にしている要素だろう。
 
 TOJIN BATTLE ROYAL。はっきり言って100人が聴いて、100人がカッコ良いというグループではないし、万人に勧めるタイプのアーティストではない。しかし、TOJINを聴いて「これが聴きたかった!」、そして「こんなラップがあるのか!」と、瞬時にしてYB化するリスナーも決して少なくはないはずだ。自分がTOJINという世界に踏み込めるるのかどうか、ぜひその耳で確かめて頂きたい
 
 
TOJIN BATTLE ROYALの魅力にヤラれた、または困惑してしまった方は是非オフィシャル・サイトもチェック!!TOJIN用語辞典もあるよ!!
http://www.tojinbattleroyal.com/index.html

 

Pickup Disc

TITLE : D.O.H.C
ARTIST : TOJIN BATTLE ROYAL
LABEL : TOJIN RECORDS/TJRCD-002
PRICE : 2,300円
RELEASE DATE : 6月13日

TITLE : 1997~1998 COLLECTION
ARTIST : TOJIN BATTLE ROYAL
LABEL : TOJIN RECORDS/TJRCD-001
PRICE : 1,600円