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#RAPSTREAM CO-SIGN VOL.4 feat. KOHH

文:伊藤雄介(Amebreak)
写真:cherry chill will

 優れたHIP HOPプロデューサーは国内に多数いると思うが、GUNSMITH PRODUCTION主宰の318は、音作りだけでなく、その時代時代のストリートの微妙な匂いの変化を掴む嗅覚/センスに秀でた男で、個人的に最も信頼している業界の人間のひとりだ。そんな彼が、かつてプロデュースを担当したSIMON/SQUASH SQUADに続き、新たに送り出してきたのがKOHHというMCだ。
 
 
 東京都北区・王子の団地育ちのKOHHは現在22歳。「ラップを始めたのは18歳ぐらいから」とのことで、早熟なニューカマーが増えてきたこのご時世を考えると、ラップ歴は長くない。
 
KOHH「ラップを始める前はただのリスナーでした。小4〜5ぐらいにキングギドラの『最終兵器』を聴いたんです。児童館で自分らが卓球してたら友達の兄貴がMD持って来て、“UNSTOPPABLE”を聴いて『うわー、何コレ!』って感じで。それまでRIP SLYMEとかケツメイシとかも聴いてたんですけど、ハードコアなHIP HOPは知らなかった。(ギドラの)不良っぽさに憧れましたね。その友達の兄貴がギャングで、小学生の頃からその格好をマネしてて、Gパンは下げるのがカッコ良い、みたいな、そんな小学生でした(笑)。中学生入ったぐらいからリリックは書き始めてて、ネット・ライムというか、ネットの掲示板にリリックを友達と投稿し合ってました。それをやりながら『どうすればラッパーになれますか?』ってネット上で質問したり(笑)」
 
 
 そんなKOHHが本格的にラップにのめるこむきっかけは、やはり318の存在が大きかったようだ。
 
KOHH「mixiやってたら、318から足あとが来てて(笑)。『うわー、318から足あときてる!』っていうのが最初で、そのあと自分が足あとつけ返したらまた足あとがついてて、これも何かの縁だと勝手に思って『自信あるんでレコーディングさせて下さい』ってメッセージを送ったのがきっかけです」
318「mixi自体ほとんどやってなかったんで、ほんとたまたまだと思うんですよね。当時、自分のスタジオを貸し出したりしてたから、どんなモンかな、と思ってmixiのプロフィールを見てみたら『18歳かぁ……』って。単純に、若いな、と。当時はスタジオを完全に仕事として運営してたから、ラップ教室みたいなことをやる気はなかったんですよね。だから、断ろうと思ってたらmixiのプロフィールで自分の地元に近いってことが分かって、そしたら話は別だな、と思って連絡して。そしたら、KOHHの家が俺の実家から徒歩5分とかだった。それもあって『じゃあやろう』って」
KOHH「(318が)地元の人だっていうのは知らなかったです。SIMONとかを手がけたプロデューサーっていうぐらいしか知らなくて」
318「で、KOHHをスタジオに呼んで録らせてみたら……結構良かった。だけど、日本語ラップしか聴いてきてなかった感じが出ちゃってて、とりあえずレコーディングやりつつUSのラップもいろいろ聴かせたりして」
 
 
 18歳で318と出会ってからは、2000年代中盤以降、数多くのHIP HOPアルバムが制作されてきた318 STUDIO(昨年末閉鎖)に足繁く通うようになり、当初は「地元の若手に手を貸す」程度の感覚だった318のKOHHに対する見方も徐々に変わってきたという。
 
318「一回レコーディングしてから、毎週のようにスタジオに来るようになって。安くはしてたけど普通にお金取って貸してたから、『作品にもしないのにお金使って録って、もったいなくない?』って言ったら『いや、でも、毎回覚えていくのが楽しくて』って言ってきて。だけど、何回かやっていく内に、流石に金もらい続けるのは悪いな、って思ってGUNSMITHのメンバーに頼んでPC組んでもらって、コイツの家でプリプロできるようにしたんです。そしたら、次の週ぐらいからどんどん曲が送られてきた。で、去年ぐらいから送られてくる曲がどんどん良くなってきて、『これは何か作品にまとめた方がいいだろう』ってなって」
KOHH「(制作が)ただ楽しい、っていうか。作る度に一曲前では出来なかったことが出来るようになってきて、新しいことをやるのが楽しいっていう気持ちで今もやってるんですよね」
 

L to R:KOHH/LIL KOHH/318

 
 そして、昨年の春に、KOHHと同じく北区・王子出身で、弱冠18歳のMONY HORSEとの共作ビート・ジャック“WE GOOD”“FADED”のヴィデオをYouTube上で発表。良い意味で歳相応なフレッシュさ全開で、無名のふたりがいきなりGUMSMITH PRODUCTIONサポートの下でPVを発表するという意表をついた展開も功を奏し、大きな話題を呼んだ。
 
 
 そして、318と出会ってからの4年間で作り溜めた楽曲を軸にまとめられたのが、ストリート流通で昨年11月にリリースされたミックステープ・アルバム「YELLOW T△PE」だ。
 
KOHH「『YELLOW T△PE』っていうタイトルは、自分のMCネームがKOHH=黄で、自分の死んじゃったお父さんの苗字から取りました(ちなみに、a.k.a.のT20は父親の名前:タツオから取っているという)。お父さんの記憶、全然ないんですけど、なんかお父さん、好きだな、みたいな(笑)」
 
 
 YELLOW T△PEは、先日Amebreak上で掲載された年末座談会でも触れさせて頂いたが、昨年最もインパクトのあるミックステープ・アルバムだったと筆者は思う。このミックステープの良さは、KOHHが自然と身に着けている“華”と、HIP HOP的下世話さに満ちた下ネタ/ギャルネタの良い意味でのナンセンスさ、そして、確かなストリート・ナレッジに根ざした318の、感覚的だが一方で戦略性も感じさせる仕掛けのバランスの良さにあると筆者は思う。KOHH自身、リリースしてからの好反応について、「『頑張るぞ!』って感じで作ってたわけじゃないから、こんぐらいの感じでも話題になるのか」と、意外に感じているぐらいなようだが、今作における318のプロデュース手腕の確かさは、以下の発言からも伝わってくる。
 
318「結構好きなことを書いてもらうようにしてて、ラップ始めたての頃は“HIP HOP辞書”みたいな、誰かが使ったことあるような言葉を引っぱってきて繋げてるような感じだったから、そういうのじゃなくて、自分の思ったことを自分の言葉でラップしろ、って言ったんです。ファンタジーじゃなくて、そのときのインスピレーションだけをリリックにしてみて、っていうのはずっと言ってました。そいつ自身のライフスタイルがカッコ良ければ発言もカッコ良いっていうのが理想だと自分は思ってて、コイツだとそれが出来るんじゃないか?って思ったんです」
 
 
 ところで「YELLOW T△PE」と言えば、収録されているKOHHの楽曲の魅力もさることながら、彼の実弟であるLIL KOHHによる“YOUNG FOREVER”が昨年末大きな話題を呼んだことも記憶に新しい。
 
KOHH「俺がビートを作り出して、1曲目のビートを誰に歌わせようかと思って、弟かな、って(笑)」
318「俺は最初、あのビートは不協和音が強いからダメ出ししたんですけど、あの不協和音と小学生の謎のコラボみたいになって面白くなった。『YELLOW T△PE』でミックスを外注して作った曲はアレだけっていう(笑)」
LIL KOHH「(ラップへの興味は)そんなない」
318「ウソつけ。まあ、でも、やらせた感とやらされた感って感じですね。弟にラップやらせるとかも、ひとつの地元ノリなんですよね」
LIL KOHH「(注目されて)嬉しい。(今後ラップするかは)どっちでもいい」
 
 LIL KOHHは、今はラップより野球に夢中なようなので、ラッパーとしての将来に関しては不透明だが(笑)、フッドの(悪)ノリがキャッチーなモノとして広く受け入れられるというのは、ある意味でHIP HOPの理想的な形と言えるだろう。
 
 
 「YELLOW T△PE」は、前述の“YOUNG FOREVER”や、自身の文字通りドープな生い立ちについて歌った“FAMILY”を除くと、ほぼ下ネタ/ギャルネタ/服ネタで構成されているが、その全てがどうやらKOHHの“地”の部分らしく、少し呆れてしまう一方、ある意味で感心させられる。
 
KOHH「(“FAMILY”について)あの曲は、9:1ぐらいの割合でたまにマジメな曲も作るんで。全部実話ですけど、あの曲だけじゃまだまだ語り尽くせてないですね。でも、普段はネガティヴな部分よりも楽しい部分でいこうよ、みたいな感じです。(ギャルネタ/下ネタが多いのは)ただなんか、私生活を歌ってるだけっすね(笑)」
318「ホントに、ファンタジーじゃないっていうのも分かった上で聴いてもらえるともっと楽しめると思います。ラッパーっていうと、大体の人がカネを稼いで、女にモテて、ファッションもイケてて、みたいのを歌おうとするけど、別にそういうバックグラウンドがない人はそういう歌を無理に歌わなくていいと思うんですよね。ただ、俺とかKOHHとかは学生の頃からそういう風に生きてきた人間だから、そういうヤツはそういう曲をやればいい。自分らしくいたまま生活がスケールアップしていけば、どんどんラップも面白くなっていくんじゃないかな、って」
 
 
 私生活では程よくハメを外しつつ、毎週のように新曲を上げてくるラップへの熱意が印象的なKOHHは、現在オフィシャル・アルバムを制作中だという。そんな彼と318に、次作の構想/将来のヴィジョンを最後に訊いてみた。
 
KOHH「(アルバムは)やることは『YELLOW T△PE』とそんなに変わらないと思います。その後に『YELLOW T△PE 2』を出そうかな、って。あと……芸能人になりたいっす(笑)。有名になりたいんです。いろいろやりたいことがあって、そのためには有名になったりカネとか必要だと思うんで」
318「制作に対するモティヴェーションが今まで出会ったことないぐらいあるヤツなんです。(将来は)ラッパーとかそういう括りじゃなくて、世の中に出て行けるだけ出て行けばいいなぁ、って。本当の英語の意味での“idol”になってほしいですね」
 
KOHHは1月27日(日)放送の『RAPSTREAM』内コーナー『RAPSTREAM CO-SIGN』に出演予定!21:00頃登場の予定です。お観逃しなく!


 

 
 

Pickup Disc

TITLE : YELLOW T△PE
ARTIST : KOHH (HOSTED by 318 for GUNSMITH PRODUCTION)
LABEL : GUNSMITH PRODUCTION
PRICE : 1,470円
RELEASE DATE : 2012年11月28日