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#RAPSTREAM CO-SIGN VOL.5 feat. KID FRESINO (Fla$hBackS)

文:伊藤雄介(Amebreak)
写真:cherry chill will

 
 当コーナー『RAPSTREAM CO-SIGN』の第一回目でFla$hBackSに登場して頂いたのは昨年秋のこと。彼らの1stアルバム「FL$8KS」はフィジカル盤が2月にリリースされ、店頭では品薄状態が続いていると訊く。DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH!は、Febbのことを「松坂級」と、先日Amebreakで掲載したインタビューで評していたが、Fla$hBackS自体がやはり怪物の集合体ということが、「FL$8KS」以外にコンスタントに発表される彼ら関連の楽曲からも伝わってくる。Febb、jjj、どちらとも優れたアーティストで、次はどちらの音源が出て来るのか……と思っていた矢先に編集部に届いたのが……そのどちらでもなく、同グループでライヴDJを務めるKID FRESINOのアルバム「HORSEMAN'S SCHEME」だった!
 
 
KID FRESINO「(HIP HOPを聴き始めたのは)中2からです。Febbが同じ学校の同級生で、ヤツに教えてもらいましたね。アイツがEMINEMの“LOSE YOURSELF”を聴いて、教えてくれたんですよね。当時流行ってた洋楽の並びで聴かされて、その中でEMINEMが特に好きになった感じです」
 
 と、語るKID FRESINOはFebbとタメの19歳。HIP HOPゲームの入り口は、トラック・メイキングからだったようだ。
 
KID FRESINO「Febbがサンプラー買って、俺はKORGの安物のシンセ買って。ヤツと一緒にトラック作ったことはいまだにないですけど、トラック出来たらお互い聴かせ合うみたいな感じで。向こうのラップとかでも、そのトラックに上手くハマってラップがトラックの一部になってる、だから上手いラップが好き、みたいな感じなんですよね。だから、好きなラッパーはいるけど、それもトラックの一部、みたいな。DJを始めたのも同じくらいで、サンプリングするのにターンテーブル必要だし。あと、俺、ソウルが当時から好きでレコード買ってたんですよね」
 
 
 つまり、HIP HOPの“音”的側面に惹かれてハマっていったようなのだが、「FL$8KS」のレコーディングが完了した後の昨年10月頃に、唐突にラップをし始め、最初にレコーディングした曲(“Come In”)をSoundcloud上で公開する。
 

 
KID FRESINO「(ラップを始めたのは)ホントに去年の10月からです。それまでラップはまったくしてなかったです。言葉さえ発してない(笑)。だから、ラップ歴は5〜6ヶ月ぐらいです」
Febb「(ラップ歴5ヶ月というのは)本当だと思いますよ(笑)。それまで書いたとこ見たことないし」
KID FRESINO「去年の秋にSoundcloudにアップした“Come In”が最初にレックした曲です。jjjが『ラップやれ』って言うから。jjjは昔から『ラップしてないヤツのラップ』が好きらしくて、jの遊びに付き合わされた感じですね。だから、自分の中ではギャグ的な感じでした」
jjj「『ラップやれ』というか、トラックをあげまくるっていう(笑)。『あ、これ佐々木(KID FRESINO)用ね』みたいな。“Come In”は、トラックが上がってきたときにヤツが『俺、これからアガることするわ』ってラップし始めて。録ってるとき、Febbは寝てたんですけど、上がったものを聴いて『おー!』ってなるっていうか。で、コレ(ネットに)上げようか?ってなって」
 
 
 そして、Soundcloudにアップした曲を軽い気持ちで、『REFUGEE MARKET』などを通して知り合いだったDOWN NORTH CAMPのMr.PUG(MONJU)とSORAに聴かせたことで、話は急展開する。
 
Mr.PUG「KID FRESINOから『ラップ録ったんですよ』って言われて、そのときはヨレながら話半分で訊いてたんだけど、その数日後にSoundcloudにアップされてたから聴いてみたら……カッコ良いんですよ。『え?コレ、初めてなの?』って。で、SORA君にも聴かせたらブチ上がっちゃって『DOGEARから出そう』っ て言い出して。俺はそこまでは考えてなかったけど、『出したいね』って話してたらいきなりSORA君が電話し始めて(笑)。『聴いたよ……あのさぁ、 DOGEARからアルバム出そうよ』って。その話振られるまではあいつ敬語で喋ってたけど、その瞬間『マジで!?』って(笑)」(MONJUインタビューから引用)
 
 
 ……と、ラップを初めた瞬間から今や日本を代表するインディペンデント・レーベルにして、国内屈指のマイク巧者たちが所属するDOGEAR RECORDSからアルバム制作のオファーが来るという……HIP HOPドリームというか個人的にはまったく信じられない話なのだが(笑)、よくよく考えるとS.L.A.C.K.が記念すべき1stアルバム「MY SPACE」をリリースしたのもDOGEARからだし、元々フレッシュなものに対する嗅覚が鋭いDNCではの話と言えるかもしれない。とは言え、S.L.A.C.K.はアルバム・リリース前から楽曲制作をしていて、既に知り合いレヴェルでは話題だったと訊くので、KID FRESINOのケースはやはり異例中の異例だろう。
 
KID FRESINO「『話早いな!』みたいな。これ一曲でアルバム出すなんてよく決められるな、って。俺だったら決めない(笑)。だって、アルバム出すって、そのレーベルの看板背負うってことじゃないですか。でも、そういうのってなんか面白いな、って。俺、話の早い人が好きなんで、じゃあやろうかな、って。Febbとか俺より前からラップやってたから、ヤツより先に俺がソロ・アルバムとか、意味不明なんですけどね。でも、ヤツも面白がってると思います」
 
 
 そして、そんな経緯を経て昨年の10月頃から「HORSEMAN'S SCHEME」の制作が始まる。ジャケでも後ろの方に写っているjjjが大部分のトラックを手がけた本作(その他にBudamunk、16FLIPも楽曲提供している)は、jjjの多作家振りも上手く作用し、3ヶ月程度で大部分が完成したという。
 
KID FRESINO「SORA君から電話もらってから、2〜3日後には録り始めましたね。ラップ始めてから作った曲はほぼこのアルバムに入ってます。多分、DOGEARからのオファーがなかったらラップ自体やってなかったと思いますね。次のアルバムを出すかどうかも分からないし、コレが盛り上がっても俺は別にそれに乗っかるつもりもないし。(アルバム・タイトルは)『馬乗りの企み』って感じです。オリンピックの馬術競技ってあるじゃないですか。日本代表で最年長で出てる人をTVで見て、それで『ホースマン、カッケェ』って思って(笑)」
 
 
 筆者は「HORSEMAN'S SCHEME」を、最初に店舗受注用サンプルのラフ・ミックスの段階で聴かせてもらったのだが、良いHIP HOPアルバムに求められる“ツボ”--ラップ/トラックはもちろんのこと、スキットの入れ方や、トラックの“抜き”のような細部まで--の押さえ方が完璧で、「ラップ歴5ヶ月」と事前に聞かされていなくても相当衝撃を受けたのは間違いない。筆者はこれまでもラップ歴1年以内のMCの音源を(現場で渡されるデモ含め)数多く聴いてきたが、ラップ歴数ヶ月のラッパーの曲を聴いてこんなに無意識に首を振らされることなんて、今まであっただろうか?……そんなことをふと考えると本当に末恐ろしくなってきた。それぐらい、「HORSEMAN'S SCHEME」は衝撃的なアルバムだ。
 
 「HORSEMAN'S SCHEME」でのKID FRESINOのラップは、S.L.A.C.K.やDNC好きであれば否応なしに反応するであろう、ラップの絶妙な間と、前述した「そのトラックに上手くハマってラップがトラックの一部になってる」という彼の言葉通りの、各トラックに上手く順応しているフロウが実に心地良いが、一方でFebbやjjjより挑戦的なパンチラインが多く、B・ボーイ性も非常に強いので、サラッと聴き流そうとすると急に引き戻される瞬間が多々。また、「FL$8KS」でも素晴らしい仕事をしていたjjjのトラックの進化振りも著しく、例えばBACHLOGICやDJ WATARAIといった、国内屈指のトラック・メイカーのトラックが持つ、USメインストリームに匹敵しながらも日本人的な侘び寂びや繊細を持つトラックともまた違う、乱暴な言い方をすると「最早外人」なビートも素晴らしくドープだ。“THE COOLEST”のような大ネタ使いのメロウ・チューンから、“ANNOUNCING THE RESURGE feat. ISSUGI”の、JAY-Z“D.O.A.”的なギター使いが映えるトリッキーなループまで、様々なトラックを楽しめるが、ここでjjjのトラック自体のクオリティと同じくらい注目されるべきなのは、KID FRESINOのトラック選びのセンスの良さだろう。
 
KID FRESINO「アルバム用のストック曲っていうのは一曲もなくて、jjjが上げてきたトラックを聴いて『コレは違う』『コレはやる』みたいな感じでリリック書いてレックして、終了、みたいな。そんな感じで一曲ずつ作っていきました」
jjj「佐々木も(渡すトラックに関して)ハードル上げていったんですよね」
KID FRESINO「レコーディングは楽しいですね。最強のヒマ潰しみたいになってます。トラックに合うラップのキーを見つける瞬間が楽しいんですよね。jと試行錯誤していくのが楽しかったです。でも、別に誰かからディレクションを受けたとかはないです」
Febb「曲が一曲出来ていく度に、そのハードルを上げていくみたいな感じでしたね。でも、最初から『わりと上手いぞ……!』みたいな感じでした。ラップのやり方は変わらないんだけど、言い方が曲を作る毎に的を射る感じになってきた」
 
 
 このアルバムやFla$hBackSの諸作を聴いてると、つくづくキャリア初期に身を置く環境というのが大事だということを思わされる。彼らはやはりDNCやSEXORCISTといった池袋bed周辺に集う、才能/センスがあるが決して偉ぶらない良き先輩たちに恵まれている。直接的に何かを教わったということはないかもしれないが、その環境が彼らを育み、のびのびと自分たちのセンスを着々と磨くことが出来たのではないだろうか、と、筆者は推測する。そうでなければ、感覚的にここまで良いアルバムは自分たちだけではなかなか作れないだろう。
 
 KID FRESINOの「HORSEMAN'S SCHEME」は、5月8日にリリース予定。筆者はいまだミックス前の音源しか聴けていないが、完成盤はillicit tsuboiがミックス(!!)、そしてNYでマスタリングされるという。ヴェテランでも羨むような充実した体制でアルバムがリリースされるわけだが、本人はいたってクール、というかフワフワした感じで、「ラップは……いまだに興味ないと言っても過言ではない(笑)」なんて言い出す始末だ。そんな彼に、将来のことについて最後に訊いてみた。
 
 
KID FRESINO「(将来は)特に決まってないですけど、NYに行きたいと思ってて。音楽学校に一応行こうと思ってるんです。エンジニアの勉強しに。可能性の話をしたら何でもアリですからね」
Febb「言ったらこのアルバムもその可能性の中で出来てしまったものですからね。ただ、俺は2ndアルバムを聴きたい」
KID FRESINO「それは……どうなるか分からないっす。このアルバムは『HORSEMAN'S SCHEME』のラップ部門って感じですね」
 


 

 
KID FRESINOは3月24日(日)放送の『RAPSTREAM』内コーナー『RAPSTREAM CO-SIGN』に出演予定!22:00頃登場の予定です。お観逃しなく!
 
 

Pickup Disc

TITLE : HORSEMAN'S SCHEME
ARTIST : KID FRESINO
LABEL : DOGEAR RECORDS/DERCD-035
PRICE : 2,200円
RELEASE DATE : 5月8日