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BEAT SCIENTISTS 〜HIP HOPのおとづくり〜 VOL.3 feat. tofubeats(前編)

インタビュー:高木“JET”晋一郎
写真:Julie Watai

 「BEAT SCIENTISTS 〜HIP HOPのおとづくり〜」の第三弾に登場して頂くクリエイターは、tofubeats。昨年、日本語ラップのデジタル・シングルという単位で、大きな注目を集めた作品のひとつに、“水星 feat. オノマトペ大臣”を挙げることに異論を挟む人は少ないだろう。先行してネットへのデモ音源のアップ、そしてリミックスにPUNPEEが参加したアナログ・シングルのリリースがあったにも関わらず、iTunes(総合)チャートでも1位を獲得するなど、その波及力の大きさは驚くべきモノであった。また、今年に入ってもERAを迎えた“夢の中まで”をリリースし、こちらもiTunesチャート1位を獲得するなど、その注目度はHIP HOP界隈からも当然のことながら高まっている。
 
 同時に、ネット・レーベル:Maltine Recordsからのリリースを始め、数多くネットにフリー・ダウンロード・リリースされてきたジャンルレスな作品群、そして、ももいろクローバーや9nineといったアイドル作品のリミックス・ワークなど、活動の旺盛さは、同世代のCherry Brownと並ぶような活発なモノであり、現在22歳という年齢的な「若さ」を含めて、“新世代”を象徴するような存在であるは間違いない。
 
 今回は、彼の制作手法からプロデュース論、音楽観までを幅広く語ってもらった。本稿はその前編である。 
 
 
■まず、音楽的な素養はあったんですか?
「一応、父がエレクトーンをやってたらしく、僕もそれでピアノをちょっとやったんですけど、馴染めなくてすぐやめちゃったんですよね。それが小学校低学年のときで。だから楽譜も読めません。で、中学に入ってやっぱり音楽やりたいなと思って、ベースを買ってもらったんだけど、バンドを組むメンバーがいないことに気付いて、ベースも一週間ぐらいで友達にあげちゃって(笑)。その後にHIP HOPを聴きだして、『これはひとりでも出来るらしい』ってことが分かったんで、そのフォーマットで始めたのと、あとの大体のことはGoogleに教わった感じです(笑)」

■じゃあ、楽器は弾けないんですか?
「弾けないですね。打ち込むためにMIDIキーボードは叩きますけど、綺麗に『弾け』はしない。楽譜も頑張れば読めるけど、書くことは出来ないし、コードも壁にコードの運指表が貼ってあって、それ見ながらやってますから」

■tofu君の楽曲ってメロディアスな曲も多いけど、それは……。
「もう雰囲気で(笑)。ただ、単音だけでは弾けるから」

■いわゆる「人差し指で」ってことですね。
「そうやって弾いていって、あとはDTMソフト内でトランスポーズ(移調)して、合わせる感じですね」

■じゃあ、感覚で弾いていって後で合わせるってことですね。
「完全にそうですね。弾いていって、気持ち悪かったら消して、気持ち良い流れになるまでやるって感じで。それがDTMだと出来るから。ただ、理論がない分、手癖が出やすくなってるとも思いますね。今年に入ってギターとベースを頂いたんで、もう一回やってみようかなとは思ってるんですが」

■じゃあ、DTMがなかったら……。
「全然ダメですね。曲作りなんて出来てないと思います」

■話は前後しますが、HIP HOPには中学のときに出会ったんですね。
「普通にKICK THE CAN CREWとかがもうテレビに出たりしてたんで。それで友達の家で聴いたBUDDHA BRANDにすごくハマったんですよ。それが2003年ぐらい。そこから色んなアーティストを『ネットで探し』たんですよね」

■世代的に当然なんだろうけど、ネットはもう中学の頃から使ってたんですね。
「親の仕事の関係でパソコンがウチにあって、それが自分の部屋にあったんですよ。そこで色々調べてって感じでしたね」

■情報は誰かに訊くっていうより……。
「もう検索エンジンですね。あとはTSUTAYAで借りてくるっいう。だから、ネットとTSUTAYAがなければ今の自分はないですね」

■ちなみに、音楽に対してピンと来るポイントは?
「難しいですけど、基本的に悲しげだったり哀愁のあるモノかなって思います。あと、歌詞としては『何となくエモい』みたいなモノを探している感じがありますね。でも、特にドラムとかビートに拘ったり、すごく好きってことはなくて、『全体の音がカッコ良いモノが好き』って感じはありますね。自分でも作るときはそこに近づけたいって思ってて」

■今の「ドラムやビートにそこまで拘ってない」っていうのは驚きました。
「もちろん考えてはいますけど、そこまで頑張ってる意識はないですね」

■僕自身がtofu君の曲をちゃんと聴いたのが、ももいろクローバーの“ももいろパンチ (tofubeats remix)”で、あの曲はダブ・ステップ・アレンジだったので、ビート性が強いイメージがあるのかもしれないけど、でも、今までの作品を攫って聴いてみても、やっぱりビート感が大事な曲が多い気もして。
「もちろん人並みには拘ってはいるんですけど、個人的にむちゃくちゃ大事かって言われたら、いや、まあ、みたいな(笑)。だから『ビートが絶対』って感覚はないですね、僕は。だからビート・レスなモノもやりたいとも思うし」

■その意味では、一番大事にしてるのは?
「“キメ”ですね。キメがあるかないか。曲の中で2〜3カ所はキメを作るってことを意識してて」

■“キメ”っていうのは言葉にすると?
「同じサビだけど、特定のパートだけ違う音や展開が入ってたり、フィルインのポイントの突き方だったり。“水星”でいったら、シンセ・メロが入るタイミングとか」

■歌舞伎でいうと「見得を切る」ような、強いポイントというか。
「グッとくる部分であったり、『あの曲ってああいう曲だよね』っていうときの『ああいう』の部分ですね」

■その意味ではサビという意味でない“フック”の部分を意識しながら作ってるんですね。
「そうですね。だから、作り方としてはJ・ポップに近いと思いますね。ループのみで作ってる曲もここ2〜3年ないし、頭からケツまでって構成と流れで作ってます。僕はTEI TOWAさんがすごく好きなんですけど、あの人の曲も、さっと聴くとループのように聴こえるけど、フレーズ回しが実は変わってたり、ドラムの音が変わってたり、ループ性があっても『時間が進んでく』感じがあるんですよね。そうやって、Aメロ/Bメロ/サビがそのまま進んでいくんじゃなくて、『Aメロがこうだから、Bメロはこういう展開で』っていうような駆け引きがあるのが、個人的に曲作りだと思ってます」

■ちなみに、その音楽作りの原点は?
「一番最初はDTMじゃなくてハードで曲作ってました。当時のパソコンがDTMソフトを走らせるにはスペックが足りなくて、『SoundEngine』しか使えなくて」

■あー!そんなソフトあったなー(笑)。
「それで、親に買ってもらったKORGのELECTRIBE・Sを使って曲を作ったんですよね。それが中学校2年生のとき。そのときのデモ音源は『2』からデータは残ってますね。一番最初に作った『1』は流石に消しました。『これは末代までの恥だ』と(笑)。だけど、中3のときにそれが壊れちゃったんで、高校の入学祝いでMPC1000を買ってもらったんです。そのキッカケになったのがこれだったんです(と、『BLAST Presents DJ GEARS SPRING 2005』など、BLAST誌制作の機材本を取り出す)」

■ああ、お世話になります(笑)。Amebreak伊藤がこの本の編集担当で、僕も執筆してました。
「だから、高木さんからこの企画の話もらったときにすごい驚いて(笑)。『MPC1000を買ったらMISTU THE BEATSと同じことが出来るんだな』って思って、MPC1000を買ったんですね」

■最初がELECTRIBE・S、そしてMPC1000とサンプラーを機材としてはメインに購入されたようですが、当時はサンプリングが制作の中心概念としてあった?
「そうですね。HIP HOPしか聴いてなかったんで。で、MPCを買って、でもサンプリングだけじゃ物足りないなと感じて、microKORGを買って、高校の頃はMPCとmicroKORGっていう構成で作ってましたね。加えて、DTMソフトのAcidもちょっと使いつつ」

■Acidは基本的にループ・ベースで構成するDTMソフトだから、弾きも取り込みつつ、サンプリングとループっていうのが、基本ベースに当時はあったと。では弾きを導入したのは?
「サンプリングだけだと、歌モノのアカペラに(メロディやコードが)合わせられないっていうのがまずひとつ。それから、周りがバンドをやってる人が多かったから、楽器が出来ないで、ネタをサンプリングしているってことがちょっとしたコンプレックスでもあって。あと、打ち込みだったり歌モノのリミックスも出来たらって考えたら、展開をつけたくなるし、そのためには弾きが出来るようになればそれが出来るなって。それで、高校生の頃に作ったデモ・トラックの時点で、もうループではあんまりなくなってたんですよね。サイプレス上野とロベルト吉野の“BAY DREAM-FROM課外授業(TOFUBEATS REMIX)”を収録した、『HIGH-SCHOOL OF REMIX』も、ほとんどの曲はハウス的な感覚だったり、ループであってもそこに展開をつける努力はしてて。あと、DTMに対するコンプレックスもあったんですよね」

■というと?
「TIMBALANDみたいな、DTMを基本にした固いパキッとした音が主流だったから。それを目指してMPCなのにすごくスクエアな音や構造にして、MPCでDTMっぽい曲を作るっていう挑戦をしてましたね」

■ハウスだったりっていう方向に興味を持ったのは?
「その当時、神戸はアブストラクト的なモノが流行ってたんだけど、自分はそういうのよりも、もっと明るいものをやりたかったんですよ。それで、J・ポップとかをサンプリングしたデモを渡しても、全然反応悪かったり、下手したら『若い』とか謎の説教とかされて(笑)。それで、発表の場としてはインターネットもあるし、自分のやりたいことを優先させた方がエエわ、って思ったんですよね。インターネットは普通に音楽に対してキッチリ厳しいことも言ってくれるじゃないですか。そっちの方が自分の性にあってたし、そこを活動のベースにし出したらタガが外れて、ハウスとかも作るようになって」

■dj newtown名義では四つ打ちのトラックも作ってましたが。
「色々あって『WIRE』に出ることになって、そのときに『ヤバい、WIREに出るんなら四つ打ち作んなきゃ』って始めたのがdj newtownだったんです。で、当時僕が好きだったTTCのPARA ONEがハウス的なアプローチを強くして、浜崎あゆみのリミックスとかもやってたんですけど、方法論としてはHIP HOPと一緒だなと思ったんですよね。で、ランカ・リー(アニメ『マクロスF』の登場人物)の曲をMPCに取り込んで、PARA ONEと同じ方法論で作ったのが、DJ NEWTOWNの曲だったんです」

■tofu君はリリース量が多かったからそう見えるって部分もあると思いますが、ホントにその時々で音楽性が変わっていくイメージがあったりもして、流行はどれぐらい意識してますか?
「チャラ目に流行を取り入れたいって気持ちはありますね。だから、今だったらTRAP的な曲も作ってるし。作品に対して、『このときの気持ちを作品に』っていうより、とにかく作ってみて、後から『そのときはこうだったんだな』って思えるようなのがいいんですよね。でも、言うほど“流行”ってモノはそこまで意識してないんですよ。新譜をチェックしてれば自然と流行は入って来るし、YouTubeも新譜をサブスクライブ(チャンネル登録)しておけば勝手に流れてくるし、Bandcampも興味があるクリエイターをフォローしておけば自然に連続で再生してくれる。だから、流行を追うっていうより、自然に流れてくるモノを、自然に取り込んでる感じですね。且つ、今の流行は再帰的なモノが多いから、最早、今の流行が新しいかどうかも分からない。だから、『いま興味のあるモノをとる』って感じなんですよね」

■ちなみに、制作はどこから取り掛かりますか?
「全然決まってなくて、場合によりけりですね。ビートから始まるときも、フレーズから始まるときも、以前だったらサンプリングからもって全部ですね。東京女子流をリミックスした“Rock You!(tofubeats 1988 dub version)”は、当時、DJ MO-RIKI(DOSMOCCOS/VOLCANO POSSE)さんからもらったベースの音があって、『この音ならユーロビートが出来るな』ってトコからスタートしたり。だからインスピレーション源は決まってないです」

■ちなみに、制作する時間帯は?
「僕もPUNPEEさんと同じで、昼間ですね。朝飯食べながらスタートして、昼過ぎまでやって、少し休んでまた夜にって感じで」

■意外とみんな昼型なんだなー。
「なんか、夜作るとダサいのが出来るんですよ(笑)。テンションが上がり切っちゃうと、細かい部分に気が回ってなかったり、ダサくてもOKにしちゃったり。だから仕事のジャッジは夜やっちゃダメだなって思ってますね」

■tofu君の中で転機になった曲は?
「多んですけど、強いて挙げるとフリー・ダウンロードでデジタル・リリースした『touch』ですかね」

■このデジタル・アルバムはひとつのモチーフを変化させていくというイメージのある、収録曲に連作性のある作品でしたが。
「この作品は自分のイメージを具現化出来た感じがあるんですよね。頭の3秒ぐらい、サイン波だけが鳴るんですけど、それでこの曲ってことが分かるじゃないですか。そういうコンセプトだったり、ビートの感じも自分しか出せない音になってると思うし、自分にしか出来ない事が出来たって思える作品ですね。自分なりのバランスとかイメージが打ち出せたなって」

■実験的な感じを受ける作品ですね。
「そうなんだけど、同時に『歌モノである』って部分でも転機になったかもしれないですね。自分でも『これは良いモノが出来た!』って手応えが凄くあって。これが出来たときにOKADADAから『やったな!』って電話があったんですけど、僕も謙遜するんじゃなくて『ですよね!』って感じで。そうやってクリエイター側がグッと来てくれたのも嬉しかったし、仕事的にはリミックスが多かったんで、そうじゃなくて、自分の中から出てきたモノで100%作れたっていうのも嬉しかったですね」

■なるほど。ちなみに今の使用機材は?
「iMacでabletonのlive9を使って、プラグインもそこで走らせてって感じですね。実機だとKORGのMS20とか、ドラムだとRoland TR-606やTR-707、ベースだとmoog minitaurを使ってますね。本音を言うともっとハードの部分を増やしたいと思ってます。あと、仕事になるとサンプリングが使えないんで、サンプラーはそんなに使わなくなってますね。ERAさんと作った“夢の中まで feat. ERA”もサンプリングは使ってなくて。まあ、サンプリングしてなくても“水星 feat. オノマトペ大臣”みたいにちょっとご指摘を頂く場合もあるんですけど……(笑)」

■指摘(笑)。
「マネジメントさん側からご連絡を頂きましたね(汗)。ただ、規模を広げたいと思ったらリスクは自ら取り除くべきだと思うんで、サンプリングは今はしてないですね」

■周知の事実だから、敢えて書きますが、“水星”のキー・フレーズは、今田耕司がTEI TOWAとタッグを組んだKOJI1200の“ブロウ・ヤ・マインド~アメリカ大好き”からの引用ですね。それでマネジメント側から連絡があったと(笑)。やはり、 tofu君の名前をもう一段高めたのは、やはり“水星”だと思うんですが、あの曲の制作はどのように?
「オノマトペ大臣とは彼が大学生の時に神戸で知り合ったんですけど、彼は就職で千葉に行ったんですね。だけど、毎月神戸には戻ってきてて、その時にカラオケ・ボックスでふたりでラジオを録ってたんです。で、そこで余った時間で適当に曲を作るってことをやってて。“BIG SHOUT IT OUT”も、適当なインストに大臣がラップを乗っけて、そのラップに対して、僕が家でオケを作って差し替えて完成させるって方法で作ったんですね。そして “水星”も同じような作り方だったんだけど、そのときは手ごろなビートがなかったんですよね。それで、そのとき聴いてたKOJI1200を流したんですけど、僕がトイレに行って、戻って来たときにはもうあのサビを歌って、“めくるめく”ことになってて(笑)。それで後でビートを差 し替えようと思ったんだけど、やっぱり原曲とあのサビのハマりが良すぎて、差し替えるんじゃなくて、原曲を活かしてビートを打ち込み組み直したって感じですね」

■最初に聴いたとき、聴いたことのあるフレーズなんだけどネタが思い出せなくてモヤモヤしてたんだけど、「KOJI1200だ!」って思い出したときは、個人的にはかなりアハ体験でしたね(笑)。
「あの曲は単純にカッコ良いっていうのと、関西人だからなのか、GEISHA GIRLS とかビッグ・ポルノとか、芸人が音楽やるの好きなんですよ。だから、僕もいずれ機会があればちょっとやってみたいですね、芸人と一緒に曲作ったり、そういうノベルティっぽいモノは。それに、坂本龍一さんもTEI TOWAさんも、芸人と曲やることでちょっと肩の力抜いてるのか、普段とは違うアプローチなんだけど、それでも凄い曲を作るじゃないですか。そこにホントに憧れてて」

■“水星”で注目を集めたことについてはどう感じてましたか?
「ホントビックリして。でも、クラブでかかってたって言われた時期に、体調崩してて現場で全然聴けてないから、いまだにしっくり来てない(笑)。でも、今の状況があるのは水星のお陰だと思うし、周りの見方はあの曲で変わったなって」

■あの曲をまずアナログでリリースしたのは?
「JET SET(レコード店)から話を頂いて。VINYL7(レコード店)のMATSUMOTO HISATAAKAAさんの協力もあって話を頂いたんですよね。それでリリースするにあたって、そのときはまだPUNPEEさんとは 面識がなかったんですけど、リミックスをPさんにお願いしたいって話になって。それでアナログでリリースしたんだけど、色々不手際があって サード・プレスぐらいでアナログのプレスが止まっちゃったんですよ。だけど、あまりにも需要に供給が追いついてないなってことで、配信もする ことになったんですよね。ただ、アナログと配信は音色は少し変えてて。それはどっちのリスナーに対しても楽しんでもらえればという意図があるんですけど」

■今年のリリース的にはERAを迎えた“夢の中まで feat. ERA”がまずありましたが。
「ERAさんのラップって重くないし、何かを人に強要しないんだけど、起きてることをラップするだけで物語になったり、何を考えてるかが分かるっていうのが凄いなって。サビに関しては、最初に思いついたサビをメールで送って、その上でERAさんからディレクションとサビの提案があって、その上でまたお互いにイメージを投げ合って、っていうメールのやり取りを何度もして出来上がった感じですね。逆にラップに関しては、何も言わなくても4〜5回ぐらい録り直ししてくれて、それがどんどん良くなってくるんで、『あー、こりゃ待ってりゃ良いの出来るわ』って感じで、ERAさんに結構お任せした部分はありますね。内容に関しては『ラヴ・ソングっぽいのにしたいよね』っていうのはこちら側の提案としてあったんですが、トラックに関しては、テーマももちろんあるんだけど、それよりもERAさんに乗ってもらうなら、こういうトラックかなって部分を強くして作った感じですね」

■フックのメロウで甘やかな感じと、ERAの情景的なリリックの組み合わせで、HIP HOPでラヴ・ソングを作るってことの、もう一段階次のレヴェルのことをやってるなっていうのはすごく感じて。同時に、普通にポップスとしても強度の高い歌詞とトラックだなって思ったんだけど、ERAのパートに関しては、ERAの主導した部分が強いんですね。
「そうですね、やんわりと『ラヴ・ソングで』ってオーダーはしたけど、もうERAさんに関しては僕自身、ERAさんの今までの曲が好きだし、信用もしてるから、変なのは戻ってこないだろうって確信はあって。しかも、僕が望む方向性に120%ぐらいで戻してくれたので、本当に特に何も言うことはなかったですね。ディレクションとしては、一カ所ぐらい『譜割りをちょっと変えたほうがいいんじゃないですか?』って言ったぐらいで。僕のトラックも、ERAさんの言葉に合わせた抜きが入ってたりとか、2番だけちょっとメロが増えてたりとか。そういう、ラップに合わせた構成の組み立てはもちろんやってますね。例えばSLik d & PUNPEEの“Motion”のリミックス(“Motion <tofubeats Remix>”)も、1ヴァース目と2ヴァース目は、まったく別のトラックにしてあるんですよね。しかも、いわゆるマイク・リレー的な違いじゃなくて、ちゃんとひと繋がりのモノとして、別のループとビートを組み立てていて。そういうことをやったほうが『面白いじゃん?』とは思います」

■それは単純に「面白い」から?
「そうですね。それにラッパーが変わって、ラップが違うこと言ってるんなら、トラックも変わってもいいんじゃないの?って」

■ただ、それを否定してるわけではないのは分かるんだけど、一方で考え方としては、単純なワン・ループの快楽というか、いわゆるトランスやミニマル的な楽しみ方もあると思うんです。
「例えば本当にワン・ループだけで作った曲もBandcampにアップしたりしてるし、決してワン・ループなモノが嫌いなわけじゃ無いんですけど、ヴォーカルが乗るモノでワン・ループっていうのは難しいんですよね。それこそヴォーカルがJUSTIN TIMBERLAKEみたいな人だったら、ワン・ループだけ投げて、後は『もう良いメロディ書いてくださいよ!』みたいなことも出来るんですけど、現状そういう風になることは少ない。そういう人にこれから出会えば、また作り方も変わってくると思うんですが」

■では、後編ではプロデュース論やリミックス論を中心に伺いたいと思います。
 
 
tofubeatsプロフィール
 1990年生まれ。兵庫県出身。プロデューサー/トラックメイカー/DJなど、その音楽活動は多岐に渡る。ネットを活動のベースにするレーベル:Maltine Recordsを中心に、これまで100曲以上の楽曲をネット上にリリース。また、YUKIや佐々木希、ももいろクローバー、9nine、Flo Rida など、幅広いアーティストのリミックス・ワークも手がけ、その手腕は大きく注目されている。また、プロデューサーとしては、清純派ヒップホップ・アイドル:lyrical schoolの作品や9nineなど、アイドルの楽曲プロデュースも行っている。2011年にアナログを、そして2012年にデジタル・リリースされた“水星 feat. オノマトペ大臣”はアナログは即完売、配信もiTunesチャート1位を獲得、「iTunes Best of2012」にインディペンデント・アーティストながら選出されるなど、確かな実績を残している。2013年4月23日には“水星”“夢の中まで feat. ERA”などを収録した1stアルバム「lost decade」、これまでのリミックスを集めたアルバム「university of remix」を同時リリース。
 
tofubeatsオフィシャル・サイト
www.tofubeats.com

 
 

Pickup Disc

TITLE : lost decade
ARTIST : tofubeats
LABEL : WARNER MUSIC JAPAN/QYTB-00001
PRICE : 2,100円
RELEASE DATE : 4月24日

TITLE : university of remix
ARTIST : tofubeats
LABEL : SME Records/SECL-1310
PRICE : 2,500円
RELEASE DATE : 4月24日