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BEAT SCIENTISTS 〜HIP HOPのおとづくり〜 VOL.3 feat. tofubeats(後編)

インタビュー:高木“JET”晋一郎
写真:オノツトム


 3月末にアップされたtofubeatsへのプロデューサー・インタビュー、今回はその後編をお届けする。今回は作曲論に加え、彼が数々手がけてきたリミックス・ワーク、“J・ポップ”への考え方、lyrical schoolをはじめとするプロデュース論、作詞論、そして、彼の住む神戸への意識など、広範的な意味での彼を取り巻く音楽観や意識などを話してもらった。インタビューの敢行が2月の上旬ということもあり、4月24日にリリースされるオリジナル・ソロ・アルバム「lost decade」や、リミックス・ワーク集「university of remix」といった、彼のこれからの名刺となる作品の具体的な内容には触れられてはいないが、そういった作品が生まれるベースとはなんだったのかが、このインタビューからその一端でも伝わると嬉しい。
 
 
■前半ではTEI TOWAさんのお名前が出ましたが、制作をする上で影響を受けた人は?
「HIP HOPだとBUDDHA BRANDが好きだったんでD.Lさんもそうですし、ILLICIT TSUBOIさんの名前も外せないです。TSUBOIさんは最近バケモノみたいですよね(笑)。置きにいってないというか、“音”でちゃんと新しいことをやってる人なんで、常にスゴいっていうか。音楽ってテクノロジーの歴史でもあると思うんで、出音も含めて、その歴史を踏まえてスゴいことをやってるのは、やっぱりTSUBOIさんだなって思います。気負って今の出音をやらなきゃって考えると思うんで、それがスゴいカッコ良いなって。ECDさんもめちゃくちゃ好きです。でも、一番大きいのはテイさんかな。この人こそ、ハウスもやるしHIP HOPもやるし、みたいなトコで。あと、前回も言いましたけど、“時間”の使い方がめちゃくちゃ上手いですよね。パートで曲作りを考えてなくて、曲を一本の線みたいにして考えてる人やと思うんで、多分ですけど。そこがやっぱスゴい気持ちいいですね、聴いてて。器用になんでも作られますし」
 
■テイさんもその時々の流れを取り入れた、流行作家的な部分もありますよね。
「そうですね。手癖を大事にする部分もスゴい好きなんですよ」
 
■インタビュー前編でも“手癖”という言葉が出ましたが、手癖はひとつの武器として考えてる?
「本当に器用に生まれたら、別になくしてもいいモノなんですけど、僕みたいに、ある程度の偏った手法から入った人は、やっぱりなくならないモノだと思うし、なくしちゃうともったいないとは思いますね。手癖と付き合ってどういう風に変化するかというか。例えば『tofubeatsが2ステップやってる』『tofubeatsがハウスやってる』みたいな感じが大事かなって思いますね」
 
■まず本人のオリジナリティありきというか。
「ECDさんが『160OR80』に入れたJUKEの曲なんてめちゃくちゃECDさんそのものだったじゃないですか。それにスゴく感動して、『こういうことだよ!』って思ったの覚えてます。そういうことやってくれる人が好きですね。海外でいうとKANYE WESTとかそうじゃないですか。あの程よいチャラさがいいなって」
 
■話は変わりますが、“朝が来るまで終わる事の無いダンスを”や“水星”、lyrical schoolに提供した“プチャヘンザ!”もそうですが、いわゆる“クラブ”や“ダンス・フロア”にスゴく信頼を置くリリックが印象に強いんですが、その志向性は?
「“ダンス”ってクラブでダンスすることではなくて、もっと大きい意味での“非日常”みたいなことですよね」
 
■「ハレとケ」のハレというか。
「そうですね。だから80年代のディスコみたいな感覚がスゴい好きなんですよ。今はないじゃないですか、ああいう場所って」
 
■でも、tofu君にしたら実体験をしたわけではないから、幻想としてのディスコって感じですよね。
「幻想というか、妄想……ですね(笑)。『そっちに行きたい』みたいな感覚もあるし、その妄想で、100%自分を騙しきれたらいいわけじゃないですか」
 
■騙すというか、その世界に身を置いて歌詞を書いたり表現すると。
「そうですね」
 
■これはおっさん世代からの偏見も込みなんですが、ネットを活動の中心にしている人にとって、クラブってそんなに興味がないのかなとも思うんですね。
「そうですね、僕も最初はなかったですから。でも、僕はやっぱクラブの楽しさもそれなりに分かってるつもりなんで」
 
■その上で、ネットもクラブも両方自分の中に取り込みつつ、パーティってモノに、スゴく信頼をおいた歌詞を書いたり、それをメッセージとして提示してるのが面白いなと思って。
「なんか……幸せなパーティぐらいしか楽しいことがないじゃないですか(笑)。普段、田舎に住んでて、ずっと自分の部屋で曲作ってる感じだから、それはもうDJやってるときぐらいしか楽しいときないですよ、そりゃあっていう話ですよ」
 
■ハハハ。自分がヒーローになれる瞬間というか。
「客で行ってても、クラブにいるときだけは『特別ななにか』を感じるんですよね。それを形にしてるってことなのかな」
 
■DJ自体はいつぐらいから?
「そもそも僕はトラック・メイクをする側なんで、ライヴはできないから、自分の曲をクラブでどうするかっていう選択肢としてDJを始めたんですね。そもそもとしては、人の曲をかけたいとか、レコードを擦りたいとかで始めたわけじゃなくて」
 
■止むに止まれずというと言い方は強いけど、でも現場レヴェルで自分をどうアピールするかの選択肢のひとつだったというか。
「そうですね。でも始めたら普通にDJに興味出てきて、四つ打ちが中心ではあるんですけど、DJは自分の表現のひとつにはなってますね。スタイル的にあんまりHIP HOPはかけないんですけど、ハウスから入って、テクノ、J・ポップって流れて、今はTRAPとか……って、『クラブ・ミュージックのDJ』って感じですね」
 
■その意味では、自分の音楽の作る音楽も“クラブ・ミュージック”って規定してます?
「最近は“J・ポップ”って言ってますね。“夢の中まで”も、自分のタグではJ・ポップって書いてますね」
 
■では「クラブ・ミュージック」と「J・ポップ」の違いってどんな部分ですか?
「なんか……繋ぎにくいとか(笑)」
 
■ハハハ。そういうところだ。
「J・ポップとして作るものは、そもそもDJでかけること考えてないですからね。YUKIさんのリミックス(“わたしの願い事 -tofubeats remix-”)とかも、クラブ・ミュージック的な手法は使ってるんですけど、DJ的な部分は考えてない。だって、いきなり始まるじゃないですか」
 
■いわゆる、ビートで始まったりっていうような、DJに向けての機能性はないですよね。
「それこそ、展開の多さだったりっていう“多展開思想”って、もうJ・ポップの発想だし。やっぱり、J・ポップが一番好きなんですよね、J・ポップが一番聴いてるし……っていう。やっぱり曲、作ることが一番楽しいし、いま作ってて楽しいのは、そういうJ・ポップ的なモノなんですよね」
 
■ポップスを2ステップでリミックスするということでは、キリンジの“”牡牛座ラプソディ(DJ ajapai’s Flag Mix)”が先行してありましたが--これはtofu君の曲ではないけど--あれは非常にDJに向けた曲構成で。だけど、tofu君の手がけた9nineの“夏 wanna say love u (tofubeats remix)”はギリギリ繋げるような構成だけど、それでも導入部は繋ぎやすいようなDJユース的な構成にはなってないですね。そういったDJ的な機能性というところはあまり考えてない、と。
「そうですね、踊る機能はあっても、DJ向けって機能は考えてないですね」
 
■J・ポップの話が出たので、そのままお伺いしたいんですが、tofu君はアイドルとの仕事も多いですね。それはどういったキッカケで?
「高校に入ってからスゴいアイドルにハマっちゃいまして。もう、『アイドルが一番面白い!』って感じになってたんで、『アイドルと仕事がしたい』ってずっと周りに言ってたんですね。Perfumeのあ〜ちゃん(西脇綾香)が『言霊ってあるけんね』って言ってた影響もあり(笑)。で、当時、仕事をくれてた人たちに『アイドルと仕事がしたいんです』って言いふらしまくったら、今はもう解散しちゃったんですが、CHIX CHICKSっていうアイドル・グループのリミックス(“ELECTRO CHIX"MEGA MIX / Tofubeats Remix”)の仕事が最初に来て」
 
■そのときは現役高校生でしたよね。
「そうです。それでちょっと間を置いて、ももいろクローバーのリミックス(“ももいろパンチ ”)のお話を頂いてっていう感じですね。そのふたつがポートフォリオ(参照資料)になって、そこから色々お話を頂いて、アイドル好きなことも含めて、今に至ってますね」
 
■9nineの「CUE」の初回限定盤Aでは9nine関連のリミックス・ワークが纏められましたが、他にも「university of remix」に収録された東京女子流のリミックス(“Rock You! <tofubeats 1988 dub version>”)など、リミックス・ワークが多かったですね。そこで伺いたいんですが、リミックスについてはどういう意識ですか?
「アイドルの曲に限らずなんですけど、リミックスは絶対原曲ありきだと思ってるし、原曲をぶっ潰していいモノではないと個人的には思ってて。だから原曲のヴォーカルは活かすし、展開も極力そのまま使いたいって。で、基本的に、『こうなったらいいのにな』とか、『こうだったら面白いのに』っていうこちらのイメージを込めるのがリミックスの根本ですね。原曲を自分のテリトリーにもってくるっていうか。原曲の方が好きって人がいる前提で、こういうアプローチもありますよって提示する意識ですね。だから、原曲を好きな人がイヤな気持ちにならないようにっていうのは考えますね。独りよがりにならないように。且つ、原曲の分かりやすく良いところじゃなくて、意外な良いところを増幅させてって言うのは考えますね。その曲の持ってる意外な良いところを、そのリミックス/アレンジによって分かりやすく提示するためっていうか」
 
■ラップ・アイドル:lyrical schoolに提供する曲では、作詞/作曲/ディレクションと、全面的にプロデュースをされてますね。
「全部やってますね。リリスクの総合プロデューサーのキムヤスヒロ君がもともと僕の曲スゴい聴いてくれてて、それで、彼女たちのターニング・ポイントで、tofubeatsにお願いしたいって思ってたらしいんですよ。それで作ったのが“プチャヘンザ!”だったんです」
 
■あの曲では作詞もされていますが、作詞の経験は?
「いや、人に書いたのはあれが初めて」
 
■作詞のオーダーもキム君から?
「そうですね、普通に僕も『ハイ』って言いましたね。なんでか知らないけど、出来るやろって感じがあって。結局、大変で1ヶ月くらいかかりましたけど(笑)。でも、人に歌詞を書く方が楽ですね。自分が書いて自分が歌うと、全部が自分の責任になっちゃうっていう感じがあって。でも、アイドルに書く場合は、ある意味“劇”に沿って話を進めればいいって思うんですよね」
 
■プロデュースや作詞をする際は、どれぐらい、相手側のキャラクターを意識しますか?
「僕は100%意識しますね。でも、“プチャヘンザ!”は書いた時点ではメンバーの誰とも会ったことがなくて、メンバーに自己紹介をメールで送ってもらったんです。あと、メンバーのブログを片っ端から読んで、多分こんな人なんやろうなっていうのを、一覧表にして」
 
■表!(笑)
「それを作って、そこにメンバー毎に思いついた歌詞を全部メモして、最終的に韻を踏んだ形に落としこんで“プチャヘンザ!”の歌詞が出来たんですよね。以後も、ライヴだったりレコーディングでメンバーに会ったりして、そこで受けた印象を加えてその表を修正していって、リリスクの歌詞は書いてます。今でもアイドルがラップをやるってことで、セル・アウトとかワックとか言われてますけど、それでもある程度の文脈は持たせたいって、スゴい“プチャヘンザ!”を作るときは思いましたね。だからシンセ・メロにはディスコのネタを、ドラムはヒップ・ハウスを参考にしたり。レコーディング・エンジニアはDOSMOCCOSのDJ MO-RIKIで、マスタリングもMATSUMOTO HISATAAKAAでMACKIEの卓をちゃんとアナログで通して!」
 
■ハハハ。そういう文脈や人選の筋は通したと。
「マスタリングなんて3回ぐらいやり直してますからね。そういう意味で、HIP HOP界隈にツッコまれたときに絶対説明できるようにしたんですよ。1stなんで特に。『お前らHIP HOPのこともよく知らんくせに』とか絶対言われるし、言われたらめっちゃムカつくから、そういう部分は抜かりなくしたんですよね。全然拘ってやってるよって。だから、リリスクのプロデュースは相当真面目にやってますよ」
 
■この前もDJ MO-RIKIさんと話してて、tofu君のプロデュースするリリスクは、スゴくオーソドックスなことと、普通だったらあり得ないことを両方やってるよねって結論に至って。
「やらなきゃいけないことを敢えてしてなかったりしてますからね。それが出来るのもリリスクだからって部分もあるんですけどね」
 
■ラップ・アイドルだと、ライムベリーというグループがいますが、彼女たちのラップはスゴくオールド・スクール・マナーに基づいたモノですよね。でも、リリスクは実は情報量の多い、異常な譜割りやフロウをさせてますね。
「それは、僕がそもそも、そういう(オールド・スクールな)ラップを書けないことに加えて、メンバーにこれを言わせなきゃいけないって思いがあるから、詰め込んだモノになってああいう形になって。だから、サビでなんとか強引に纏めるというか(笑)」
 
■でも、それでキャッチーさが生まれてる部分はありますよね。
「だからそこは頑張らないとみたいなのはスゴいありますね」
 
■“リボンをきゅっと”も、一番最初に聴いたときに変な曲だな〜って。
「色んなオーダーがあってああなった曲ではあるんですが、個人的には、J-HIP HOPみたいなモノに寄せたいみたいな気持ちがあったんですよ。でも、サビが逆に歌じゃないので、平歌は歌っぽいラップに寄せるっていう構成で」
 
■あの曲の歌詞って、彼女たちが恋愛するってところにベースがあるじゃないですか。アイドル・ソングとしては御法度なところを基本にしてるのが面白いなって。
「それはちょっと僕の中でも葛藤がありました。なんすかねえ……『過激じゃないですか?』みたいな(笑)。だから、運営側には何回も確認とって。でもリリスクってみんなハタチ超えてるじゃないですか(注:取材時のメンバー構成)。だから、『あんまりフワフワしたの渡すのもなんか違うけど、恋愛については書きたい……。んー……。あ、<ごっこ>か!』みたいな感じになったんですよね(笑)」
 
■その落としどころは見事だなって。
「実は“リボンをきゅっと”に関しては、もう匙を投げる寸前まで行ったんですよ。全然出来なくて。その時に、安達哲の『キラキラ』って漫画をリリスクの制作サイドから教わって、それを読んで出来たのがあの曲だったんですよね。あのラブコメ感というか」
 
■『キラキラ』は89年に連載が開始された、三十路半ばの俺でさえ小中学生の頃の漫画だから、tofu君は生まれる前の漫画ですよね、あれ。
「そうですね、ただ、今でもなんか暗くなったら読んだり」
 
■クラシックとして(笑)。その話とも関わりますが、イラストレーターのMEMOさんの書かれた“水星”のジャケットは、スゴく80年代感がありましたよね。あのイメージはtofu君の方から?
「そうですね。細かいディレクションはしてないんですけど、神戸の絵は描かなくていいけど、とりあえず神戸をテーマにはしてください、と。そうしたら一応、神戸のハーバー・ランド、ポート・タワーをモチーフに書いて下さったんですが。さっきも話しましたけど、普通に趣味としてディスコとかやっぱり好きだったり、『ああいう雰囲気』が好きなんですよね。それは今となってはあれが全部ファンタジーだからだと思うんですけど」
 
■それこそ自分が体験も、生まれてもいないからこそ、そこに幻想を仮託できるというか。
「そうですね。だってあの時代のディスコとか、楽しそうじゃないですか。それに尽きるというか。『こんな服、絶対ディスコ行くときしか着んやろ』って服をみんな着てたり。今のクラブみたいに呑んで騒いでっていうより、もっと踊ってるようなイメージがあるし、基本が『良い曲とダンス』ってイメージがあるんですよね。そこにもうグッとくる。曲もラヴ・ソングばっかりだし、付き合って踊ろうって曲か、別れた曲しかないみたいな(笑)。それは今のJ・ポップとも繋がると思うんですけど、そういう部分もスゴい好きで。純粋に見えるんですよね、今より色んなモノが。だから、スゴいディスコが好きだし、モチーフ的にも『あったはずのモノ』に惹かれるんですよね」
 
■見たこともないし、想像や幻想かもしれないけど、『そこにあったはず』の光景や場所というか。
「でも、そこにスゴく惹かれるのは、神戸という土地が影響してるかもしれないですね。神戸っていう、震災があった街で、元々あった色んなものが、それによって急になくなって、街の中心がごっそり東に移動したぐらい、街が変わった場所で育ったことが。そういうところに住んでると、あったはずの神戸と、今の神戸が並行して思えるんですよね。本当に街が全部“リセット”されると、やっぱり『あったはずの街』を想像するし、『もしもあれがなかったら』っていう想像をなしに生きていくのは、ちょっと難しいんですよね。ニュータウンに住んで、dj newtownって名前で活動したのも、それが起因してると思うし」
 
■95年でリセットせざるを得なかった街と、そのリセットがなかったらどうなっていたかという想像と。全部ではないにしろ、だからこそ、そこでリセットされた80年代的なモノ--もちろんそれ以前からのモノもそうだけど--に想像力が働くと。
「多分それが、そういう発想に繋がってるのかなって思いきや、でも世界的に80年代的なモノが流行ってるし、やっぱり違うかなあとか思ったりも……」
 
■スゴく印象深い話だったのに、一気にひっくり返された(笑)。話は戻りますが、歌詞はこれからも書いていきますか?
「そうですね。全然抵抗ないんですよ。みんなに『歌詞も書くんですか?』とか言われんですけど、逆に書かなかったらプロデュースできないじゃんと思いますね」
 
■関わる全部をやって「プロデュース」という感じ?
「自分自身、全部をひとりでやるのが普通だったからじゃないですかね。友達とか地元にいないから、人となにかを共同でやることが当たり前ではないんで。バンドもやったことないし、オノマトペ大臣と制作するのだって月1とかですし。全然誰かと一緒に制作するって方法論がなくて、だから仕方なく映像とか全部自分でやってるんですよ」
 
■仕方なくなんですね。
「僕、仕方なくやってるんですよ!(笑)。ウェブサイトとかも全部そうなんですよ。信頼できる人がいればいいんですけど、神戸で一緒にそういう作業が出来る人とまだ出会えてないんで。だから自然と自分でやるしかないというか。YouTubeにアップした『HARD OFF BEATS』も、『1000YEN BEATS VINYL ATTACK!』みたいなことをやりたいなと思ったんだけど、でも動画を撮ってる友達がいない、じゃあ自分で撮るか、編集する友達もいない、じゃあ自分で編集もするか、って(笑)」
 
■完璧主義とも違う?
「あ、全然。だから普通に、トラックと歌詞は別のものではないっていう意識ですね」
 
■なるほど。プロデューサー的な視点で、このラッパーと一緒に作りたいっていう人は、どんなタイプですか?
「それはアルバム『lost decade』で呼んだ、PUNPEEさん、ERAさん、SKY-HIさんですね。SKY-HIさんは、なんかのMCバトルで、『Mステで会おうぜ』みたいなことを言ってたのを……」
 
■ああ、Amebreakの『口説きMCバトル』ですね。
「それを見たときに、『これだよ!』って思ったんですよ。バトルの中で、本当に彼しか出られてない『Mステ』ってワードを出してきたときに、僕めっちゃ感動したんですよね。そういうことを言えるラッパー、今それを言えるラッパーっていうのは、もうめっちゃ大事やなって思って。HIP HOPがベースにあるけどJ・ポップをやってるSKY-HIさんと、HIP HOPがベースにあるけどJ・ポップを作ってる僕って、行動は似てると思うんですね。で、みんな“J・ポップ”って馬鹿にするけど、それをやるのは、普通じゃ無理ってぐらい難しいよって気持ちがあるんですよね。僕がJ・ポップが好きなのは、やっぱり普通の人じゃ行けない、辿り着けないところで動いてるし、そこにスゴい夢があるというか」
 
■それこそ、万人規模でライヴ出来るのはJ・ポップの人間だし。
「だから、それが出来る日高さんカッコ良いなって思って、オファーしました。日高さんはSKY-HIとして、スゴくラッパーとしてちゃんと揉まれてる部分もあるじゃないですか。そこも含めて、ストーリーもめっちゃあるし、何から何までカッコ良い。そういう、“人となり”がある人が好きかもしんないですね」
 
■キャラが立ってる人というか。
「ECDさんもそうじゃないですか。共感できるかはさておき、その人の考えてることがスゴいちゃんと伝わってくる。そして、あの人はそれに対してスゴい責任持ってるって思えるのが、カッコ良いなって。そしてPUNPEEさんですね。PUNPEEさんはやっぱり、あの人こそがMステとか出りゃいいのにってスゴい思います。Pさんは才能の塊だと思うし、自分のいるべき場所を毎回死ぬほど考えてる人だなって、そこがやっぱり素晴らしいなって思いますね。一回目のプロデューサー・インタビュー読んで、更に尊敬が高まりました。それこそテイさんのリミックス(“THE BURNING PLANE PUNPEE REMIX”)がサンプリングじゃないっていうのを読んで、頭おかしくなりそうでしたね(笑)。あれがサンプリングじゃないとすると、一体どうやって作ったのかずっと気になってて。でも本人にも訊けず、今に至ってるんですけど(tofubeats註:今回のアルバムの制作中にやりとりさせていただいてて、そのとき電話で聞けました)」
 
■ハハハ。訊けなかったんだ。
「どっかのタイミングで絶対訊きたいんですけどね。ラッパーに対しては、自分の立場がしっかりしてるのが一番なんじゃないかって思いますね。僕はその立場を決めるのが嫌なんで、自分でラップしたりすることは止めようと思ったけど」
 
■スキル的な部分はそんなに重視しない?
「でも“スキル”っていうのが何を指すのかって感覚もあって。バトルの巧さと、音源で曲を作るスキルって違いますよね。PUNPEEさんみたいに、どっちもめちゃ上手いみたい人もいますけど、でも、バトルのスキルって、ギターが上手いとかそういう感じがあるんですよね」
 
■速弾き的な。
「速弾きが出来るのと、良いフレーズを生み出せるかは違うって感じですかね。田中仮雄 & D.K.X.O の“LOCAL DISTANCE”とか、ラップ自体は下手かもしれないけど、最高じゃないですか。だから『何を良しとするか』って部分かもしれないですね。あと、アイドル好きなのもあるのかもしれないです。下手でいいっていう」
 
■確かに、アイドルのラップって、達者になればなるほど、アイドル的な面白みは消えてしまうという側面もありますね。巧くないが故に生まれるエモさっていうのも確実にあるから。
「でも、それをやっぱり『違う』って人もいるんですよね。下手で聴いてらんないって人もいますし。それはやっぱ人によるっていうか」
 
■箸にも棒にも引っかからないようなものでも、トラックの力であったりとか、プロデュースの力であったりとか、「どう手を加えるか」で変えられるのかも、と思うんですが、そういった部分は如何ですか?
「でも、やっぱ箸にも棒にもかからないモノは、どういじっても箸にも棒にもかからないですよ。だから、素材の魅力は大事ですね。『そのモノ』にある良い部分を引き出したい。やっぱり上手い下手とはまた違う次元の、良い悪いっていうのがあって。よく思うんですけど、なんでも続けてると上手くなっちゃうじゃないですか、ギターでもラップでも。でも、やっぱり5年前の曲は5年前じゃないと作れなかったし、やっぱり、その時々の魅力がもちろんあると思うんですね。それをどう判断するかって所だと思います」
 
■リリースとしてはソロ・アルバム「lost decade」、リミックス・ワーク集「university of remix」、iTunesでリリースされる「college of remix」と、3つのアルバムがリリースされますが、その後の動きはどうイメージしてますか?
「もうそりゃ……(マネージャーに)どうします?」
 
■いきなり委ねた(笑)。
「後のことはあんまり決まってないってのもあるんですが、本当に“今”ですけど(取材は2月初頭)、TORO Y MOIの新譜(『Anything In Return』)がスゲェ良かったんで、ああいうのやりたいなって思ってます。それが出来たら、また次のイメージが出ると思うし、いつもそういう感じですね」
 
■tofu君は自分の中から湧き出るっていうより、色んな外部因子がインプットになって、それを自分を通ってまたアウトプットするってタイプですか?
「そうですそうです。僕は結構、音楽を聴かないと作れないタイプですね。小西康陽さんがよく言われる、曲作るって決めたらまずレコード聴く、と。結構そういうタイプかもしれないです」
 
■サンプリングではないけど、取り入れて消化してっていうタイプの作曲術というか。そこで今一番ホットなのが……。
「TORO Y MOIの新譜ですね。あれはもう完璧。今年の前半に聴くものとしては完璧の二文字を与えていい名盤ですね。先行販売でTシャツとポスターをセットにしてネットで売ってたんですけど、それもスゴく今っぽい。最近で言うとTORO Y MOIと坂本慎太郎(『まともがわからない』)ですかね、新しいので聴いてるのは。あと、そこに『160OR80』を挟んで」
 
■チル・ウェイヴとロックとJUKEと。かなりの振り幅な気も。
「でも全部今年出た盤ですからね。今はネットで買うから(CDショップのようなジャンル間の)棚とかも遠くないし」
 
■あー、なるほど。
「もう、そういうのないですよ、本当に。若い人でジャンルとか分けたり、纏めて聴いてる人、もう多分いないですよ。僕らはまだDJとかで便宜上、ジャンル分けして聴きますけど、そうじゃない人は本当に『良いか悪いか』の次元になってるんで」
 
■それがオッサンたちにとっては本当に羨ましいところでもあるんだよなーって感じでもあるんですよね。選択が簡単に出来るようになってるのは。
「逆に『これ知っててこれ知らないの?』ってやつが多すぎて恥ずかしいですけどね、僕らからしたら。すいません!みたいの多い(笑)。YouTubeで『関係するビデオ』に出てくるかどうかで知る部分も少なくないんで」
 
■映像の終わりに出るかどうかで(笑)。2011年に発表された“keep on”で、「音楽を長く続けよう/誰も知らないような世界で踊りたい/だから」って歌われてますが、それがスゴく記憶に残ってて。エモーションであると同時に、「音楽を『長く』続けよう」って、「長く」っていう形容詞が入るのが面白かったんですよね。且つ、tofu君は音楽をずっと続けていくんだろうなって決意めいたこともそこからは感じたんですが。
「“朝が来るまで終わる事の無いダンスを”とかもそうなんですけど、『続けろ』って僕はよく言うフシがあるんですね。こと音楽に関して、『やめる』って表現が罷り通ってるのに、僕はしっくりきてなくて。別に『やる』とか『やめる』とかいうモノでもないと思うんですね。プロの人が、プロを辞めるとかだったら分かるんですけど、アマチュアが就職するから辞めるとか聞くと、『そんなもんじゃなくね?』って思っちゃって。だから“朝が来るまで終わる事の無いダンスを”とか、そういう象徴的な意味で『長くモノを続けろ』って意味なんですよ。音楽って『好きか/嫌いか』のもんで、『合ってる/間違ってる』とか『正解/不正解』とか、『やる/やらない』はないと思うんですよね。僕もこういう風に人前に出させてもらう機会が増えましたけど、元々は好きで作って、タダで配ってて、それが今に至ってるので、『100万枚売ってやろう』みたいな意識で始めたワケじゃないから、そういう風に思うっていうだけなのかもしれないけど。でも、打ち出し方は考えていきたいですね。打ち出し方で勝てなかったら、もう(先達に)勝てるところがないって思うんですよね、特に若い層は。やっぱりもう『音楽だけを売ってる』わけじゃないんで、そういう切り口だったり表現全体で興味持ってもらわないとって思うんですよね。ジャケットや打ち出しやっていう、全部が一緒になって、それ聴いてもらって、それが嬉しいって気持ちがありますね」
 
■最後に、これは今後恒例にしたいんですが、無人島に1枚レコード/CD/音源を持ってくとしたら何を持っていきます?
「難しいなあ……。じゃあ、松原みきの“真夜中のドア〜Stay With Me 〜”を持って行きますかね。なんか、無人島で『ステイ・ウィズ・ミー!』ってひとりで言いたい。っていう」
 
■シチュエーション込みで。
「で、曲のラストの泣きのギターでひとり泣くっていう」
 
■自分の置かれてる環境にも併せて。そこも総合プロデュースだ(笑)。
「ま、本音を言ったらB. B. & Q. Band とか持って行きますけど。“On The Beat”とか持って行きます(笑)」
 
■いずれにしろディスコ・ティックなモノなんですね。最後に言い残したことがあれば。
「本当に、DTMって簡単なんでみんな始めたらいいと思いますね。誰でも出来ますからね、続けていれば。何度も楽器をやろうとして挫折してる僕が言うのもなんですが(笑)」
 
 
tofubeats' influences
“人間発電所”/BUDDHA BRAND
「言わずもがなのクラシックですが、これを中1のときに聴かなかったら今はなかったです。イントロのインパクトありますよね……」
 
「BIG YOUTH」/ECD
「二枚使いでアルバム全体がミックスされている構成もそうですが、挟まるスキットまでカッコ良くて買った当初からすごい好きです。“身体感”みたいなのがすごい出てる日本語ラップっていいなあと思います。ECD氏は先日発売の新譜(「THE BRIDGE :明日に架ける橋」)もクラシックですよね。あちらも愛聴盤です。「今日昨日と違う」とか「戻れやしない」とか執拗に現在にフォーカスされているリリックも興味深かったです」
 
“ガキさんへの手紙 '08(ハロプロ禅)”/A.K.I. PRODUCTIONS
「ガキさん(元モーニング娘。新垣里沙)への真摯な想いもそうなのですが、これを聴くことによって『HIP HOPって何なんだ』『リアルって何なんだ』と改めて考えました。あと、好きなアイドルに対してこういう曲で態度を今のところ示せないタイプなので、そういうのもなんか凄いなあと思います」
 
「MESS/AGE」/いとうせいこう
「日本で最初期のラップが既にこういう挑戦をしていて、こういう視点を持ってたみたいなことは、いつも意識してやらないと……と思います。特に、某誌でDUB MASTER X氏が当時のことを話していて、ヤン冨田氏と話し合って、既にこれまで海外でローが出ているラップが多かったことを受けて、逆にあまりブーミーにローを出さない音像にした、というエピソードはとても好きです」

「Quex」/イルリメ
「“今日を問う”の圧倒的な完成度、今聴いても当時と同じくらい衝撃的!ザクザク時間が進んでいくラップが本当に気持ち良いです。イルリメさんの現在に至るまでの強固なスタンスみたいなのは本当にカッコ良いと思います」

「アメリカ大リミックス!」/KOJI1200
「オリジナル・アルバムより先にこっちを買ったので“水星”の元ネタは気持ち的にはこっちです。TEI TOWA氏のメロウなプロダクションに乗っかる今田/東野両氏のラップが妙に良いグルーヴ発してます。本当にこういうのいいですよねー」
 
 
tofubeatsプロフィール
 1990年生まれ。兵庫県出身。プロデューサー/トラックメイカー/DJなど、その音楽活動は多岐に渡る。ネットを活動のベースにするレーベル:Maltine Recordsを中心に、これまで100曲以上の楽曲をネット上にリリース。また、YUKIや佐々木希、ももいろクローバー、9nine、Flo Rida など、幅広いアーティストのリミックス・ワークも手がけ、その手腕は大きく注目されている。また、プロデューサーとしては、清純派ヒップホップ・アイドル:lyrical schoolの作品や9nineなど、アイドルの楽曲プロデュースも行っている。2011年にアナログを、そして2012年にデジタル・リリースされた“水星 feat. オノマトペ大臣”はアナログは即完売、配信もiTunesチャート1位を獲得、「iTunes Best of2012」にインディペンデント・アーティストながら選出されるなど、確かな実績を残している。2013年4月23日には“水星”“夢の中まで feat. ERA”などを収録した1stアルバム「lost decade」、これまでのリミックスを集めたアルバム「university of remix」を同時リリース。
 
tofubeatsオフィシャル・サイト
www.tofubeats.com

 
 

Pickup Disc

TITLE : lost decade
ARTIST : tofubeats
LABEL : WARNER MUSIC JAPAN/QYTB-00001
PRICE : 2,100円
RELEASE DATE : 4月24日

TITLE : university of remix
ARTIST : tofubeats
LABEL : SME Records/SECL-1310
PRICE : 2,500円
RELEASE DATE : 4月24日

TITLE : college of remix
ARTIST : tofubeats
LABEL : tofubeats, onepeace/デジタル配信
PRICE : 1,050円
RELEASE DATE : 4月24日