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『鎖グループ & BLACK SWAN』共同記者会見を振り返る(追記あり)

伊藤雄介(Amebreak)

 既報の通り、昨晩、MC漢主宰:鎖グループと、DARTHREIDERが代表を引き継ぎ鎖グループと合流したレーベル:BLACK SWANとの合同記者会見が、DOMMUNEで生放送された。
 
 この日の放送は、まずBLACK SWANを立ち上げ、先日事故により亡くなったA&R:佐藤将氏を追悼するプログラムから始まる。佐藤氏は、2000年代初頭からP-VINEのA&Rとして、MSCや韻踏合組合、SCARSらの制作/リリースに尽力した方で、近年はBLACK SWANを立ち上げてGOKU GREENのアルバム・デビューを実現させた男だ。MSC/韻踏合組合/BES for SWANKY SWIPEといった、2000年代初頭〜中盤の、佐藤氏が関わったクラシック曲や、近年BLACK SWANから発表された楽曲がOAされ、2000年代のアンダーグラウンド日本語ラップ・シーンに佐藤氏が果たした功績を称えるトークと共に、コーナー自体は穏やかに進行していく。
 


 
 DARTHREIDERのライヴDJを務めるDJ KOPEROによるBLACK SWAN/佐藤将氏関連音源のDJミックスが終わると、鎖グループ主宰:MC漢が現われる。本格的な記者会見の前に、同レーベルの本格始動報告と、鎖/BLACK SWANから今後リリースすることとなる新契約アーティストたち(DARTHREIDER/GOKU GREEN/D.O/HI-BULLET a.k.a. CORN HEAD/PONY/DOGMA/LORD 8ERZ a.k.a. DJ GATTEM/LIBRO)による公開契約書署名というセレモニーが行なわれた。
 
 そして、新たにアナウンスされた新契約MCたちによるショット・ライヴと最新音源OAに続き、MC漢の指示の後プレイされたMC漢の最新音源では、聴き慣れたサンプリング・ループが鳴り響く。BRICKの“DAZZ”だ。
 
 もしかしたら20代以下のHIP HOPヘッズにはあまり馴染みがないかもしれないが、このネタは、ICE CUBEが1991年に発表した楽曲“NO VASELINE”でサンプリングされている。ギャングスタ・ラップのパイオニアであり、「世界で最も危険なグループ」と評されたN.W.Aに在籍していたICE CUBEは、自身がN.W.Aの多くの楽曲を作詞していたにも関わらず、正当な報酬を所属レーベル:RUTHLESS RECORDSから受け取っていなかったことに不満を募らせ、同グループを脱退しソロ活動を開始するのだが、後にN.W.A.がCUBEへの攻撃を開始。腹を立てたCUBEがN.W.A./RUTHLESS RECORDSを痛烈にディスした、HIP HOP史に残る名ディス曲“NO VASELINE”を発表した。
 

 つまり、漢のヴァースを聴くまでもなく、イントロがかかった瞬間に、この記者会見は鎖グループの本格始動発表と共に、漢と彼が率いるMSCが、かつて所属していたレーベル:Libra Recordsへの宣戦布告だということが示唆されていたわけだ。
 
 その後、MC漢と、かつてLibra Recordsに所属していたMSCメンバー、そしてLibra Recordsが主催する『ULTIMATE MC BATTLE』(UMB)に関わっていた太華/MASTERたちが何を語ったかの詳細は、書き記すには膨大すぎるため、AmebreakがDOMMUNE/鎖グループに許可を頂いて撮影した上記の動画を観て頂く方が早いだろう。簡潔に書くと、同レーベルと所属アーティストたちが抱えている金銭/運営上のトラブルと、UMBの現状に対する告発、というのが主な内容だった。
 
 ビジネスにはトラブルは付き物だし、それは音楽業界でも例外ではない。特に音楽業界は、純粋な売買から発生する利益/損失に加え、その利益から発生する印税というパーセンテージが細々と絡んでくるため、アーティストがレコード会社と結んでいる契約が正当/不正なモノに関わらず、揉め事は起こりやすいものだ。例えばUSシーンでは、前述のICE CUBEの件を筆頭に、契約トラブルがきっかけでビーフが起こったことなど多数あるし、日本のHIP HOPだけ取っても、実際に筆者が話したアーティストたちが、所属レーベルの待遇に対する不満を漏らしているのを何度も訊いたことがある(実際に彼らの待遇が不当なものだったのか、それとも彼らの一方的な勘繰りだったのかは置いといて)。
 
 だが、こうしたトラブル/ビーフがここまで公な形でその動機/目的が明らかにされたケースは、これまでの日本のHIP HOPでは筆者は記憶にない。それは、往々にして「ストリートな事情」や「オトナの事情」が絡んでいたからだと推測されるが、今回の記者会見は、敢えて自らがここまで内情を公表してしまうということで、そういった“事情”によってうやむやにされることをアーティスト自らが拒絶したということである。今回の記者会見は、攻撃対象に大ダメージを与えると共に、本人たちにも多大なリスクを負わせる諸刃の剣的な行為だとも思うが、MC漢たちはそのリスクを負う覚悟があるということなのだろう(そして、あわよくばそれさえもエンターテインメントにしてしまおうというしたたかさも垣間見れる)。そして、その行為をもってでしか、彼らと彼らが考えるHIP HOPシーンの前進がないと、鎖グループ/BLACK SWANが考えていることも間違いないだろう。
 
 今回の記者会見は、あくまで鎖グループ・サイドのみによる告発であるため、更なる真相はMC漢が語っているように、法廷の場で明らかにされていくのかもしれないが(裁判沙汰にまでなりかねない状況というのも、これまでの日本のHIP HOPシーンでは殆ど記憶にない事態だ)、今回の記者会見がシーン内外に大きな衝撃を与えることは必至だ。
 
 最後に、Libra Records代表:西原慶祐氏による、本件に関するコメントで本稿を締め括りたいと思う。
 
 
■昨晩のDOMMUNEにて、MC漢たちが話した内容について、御社の公式見解を教えて下さい。
 まず、この度はファンの皆様、お取引先様や関係者様、UMB出場MCなど沢山の方々にご迷惑をおかしてしまい大変申し訳ございません。
 少人数のスタッフで地道にやってきておりました。このような形で彼らと決別となりましたことは大変残念に思っております。
 今後も地に足つけてLibra Recordsを続けていく所存でございます。
 
■LIBRA RECORDSとして、今回の件に関して具体的な反論/リアクションを公式に行なう予定でしょうか?
 反論はありますが、具体的にこの場で申し上げることはございません。
 公式的にリアクションすることも現在は考えておりません。 
 
■今回の件はUMB出場者/UMB地方予選オーガナイザーにも少なからず影響を与えるものと予想されます。今年のUMBに関してはどのようなプランで動かれていきますでしょうか?
 UMBは今後も変わらずに動く予定ですが、オーガナイザーや出場者の皆様、スポンサーの方々には今回の騒動で大変ご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ない気持ちでおります。これ以上ご迷惑をおかけしないように対策を考えております。
 また、司会の晋平太がツイートしたようにMCバトルはMCのものですので、これからも変わらずMCの方々にはエントリーをしていただきたいと思っております。
 
■上記回答以外で付け加えたいことなどございましたらお願いします。
 ご質問等がございましたら、info@libra-records.comへご連絡ください。
 
 
上記記者会見動画に関して、鎖グループから追記依頼があったため、以下に追記させて頂きます。
1:13:08
MC漢の発言に対するMEZA氏からの訂正事項:
「MEZAはLibra社長:西原の幼馴染みではない」
 
1:14:31
MC漢の発言に対するMEZA氏からの訂正事項:
「MEZA個人は直接的な暴力は受けていない」
 
1:14:36
MC漢の発言に対するMEZA氏からの訂正事項:
「降りた理由はスタッフや同級生、アーティストに対する執拗な暴力や恫喝、その他、
目に余る行為に嫌気がさし、個人としては謂われのない難癖をつけられたので自ら降板。
自身の行為でみんなに覚醒(時限爆弾)を促したつもりだが、
皆はその後もUMBの盛り上がりに釣られしばらく見て見ぬふりをしていた、が事実。
予想通り、どんどん消えたりやめていく〜時限爆弾がついに爆発し現在に至る」
 
1:28:42
MC漢の発言に対するMEZA氏からの訂正事項:
「MEZAは元々Libra所属のデザイナーではない」
 
 
追記(6月15日):
UMBに関する一連の騒動を受けて、晋平太が新曲“HOPE”を発表(TWISTA feat. FAITH EVANS“HOPE”のビート・ジャック)。
 

 
また、UMBによるポッドキャストでも「緊急特別番組」と題された放送がアップされた。
https://itunes.apple.com/jp/podcast/umb-podcast/id656590342?mt=2