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2014年国産HIP HOP振り返り座談会(前編)

談:DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH!/Mr. BEATS a.k.a. DJ CELORY/SEX山口/MC正社員(戦極MC BATTLE)/高木“JET”晋一郎/伊藤雄介(Amebreak)
文:高木“JET”晋一郎


【2014年の日本語ラップ雑感】
伊藤「毎年末恒例の座談会ですが、今回はそれぞれのスタンス/ファン・ベースがありながら、同時に日本のHIP HOPシーンを網羅的に見ることの出来る方たちということで、Mr. BEATS a.k.a. DJ CELORY/DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH!/SEX山口の御三方にご参加頂くことになりました。そして、“現場”の日本語ラップ・シーンのひとつの象徴でもあるMCバトル・シーンを、主催者/観客という立場から見続けている『戦極MC BATTLE』主催者:MC正社員君にも参加して頂きます。で、早速今年の座談会を始めたいのですが、ここ数年の傾向として、年々、一年間の総括がしづらくなってきてるんですよね」
 
DJ CELORY「それは何故だと思う?」
 


 
伊藤「まず、2000年代後半から顕著になってきたシーンの多様化の結果、各シーンが細かく分かれてそれぞれがそれぞれで動いているという流れがあるので、各シーンが活発だったとしても、それが大きな動きだったりムーヴメントに直結しづらくなっていると思うんです。そういった大きな流れやトレンドがないから、例えば今年で言うとAKLOの『The Arrival』とFebb『THE SEASON』を単純に比べるというのが難しい」
 
DJ NOBU「それぞれベクトルも違うしね」
 
高木「どちらかに追従するような大きな流れが出来たりすると、見え方としては分かりやすくなるんだけど」
 
伊藤「今挙げた二枚は今年の代表作だろうし、それぞれのフィールドで強い影響力を持っているのは間違いないけど、その影響が大きな波としては見えづらいんですよね」
 
DJ NOBU「サイトやメディアが多ければ、メディア毎に推すモノや趣向で順位付けが出来るけど、日本はそうじゃないからね」
 
伊藤「なので、この座談会ではフラットな状況論を皆さんと語っていければと思っております。で、毎年イントロとして、今年の印象/雑感を語ってもらってるんですが、今年の自分の印象としては、先ほども話した通り、個々に優れた作品は多かったと思うし、『誰が』盛り上がったというのはあるんだけど、一方で『何が』盛り上がったかっていう、ブーム的なものに乏しかったな、と」
 
DJ CELORY「作品のクオリティはどれも高かったし、それぞれのベクトルで突き詰めてる感じだったよね。MACKA-CHIN『静かな月と夜』とか、grooveman Spot『Supernatural』みたいなインスト・アルバムにもそういう部分を感じて。だから、トレンドもあるけど、それぞれのアーティスト/スタイルがジャンル化されて、それが確立された年なのかなって」
 
DJ NOBU「ここ何年かは、プロモーションやバズの作り方を、個々が試行錯誤してた時期だと思うんだよね。で、今年はそれぞれのやり方で結果が出てきたのかな、って」
 
高木「同時に、『個々での』バズの作り方が強かった故に、その個々のフォロワー以外には拡散性があまり強くなかったり」
 
SEX山口「それは思いますね」
 
DJ NOBU「ツアーで回ってても、各地の現場の状況によってウケる曲が全然違う。同じ曲でも全然盛り上がらないところもあれば、鬼上がりする現場もあって、『エリアでここまで反応が違うんだな』っていうのが、前よりもかなり分かりやすいと思った。そういう意味でも、KOHHとANARCHYはどの土地でも反応良くて、全箇所でかけた気がする」
 
SEX山口「僕の場合、PUNPEE君の曲がかかるとほとんどの現場が盛り上がるんだけど、それでもまったく響かないところもあるし、一方でSOUL SCREAMをかけると盛り上がったり。しかも“花火”が盛り上がったのは熱かったですね」
 
DJ CELORY「お気遣いありがとうございます(笑)」
 
DJ NOBU「ソウスクはやっぱり安定感ありますよ」
 
DJ CELORY「なに急に(笑)。でも、同じ日本語ラップでも、イヴェントによって全然盛り上がり方や盛り上がる曲が違うようだね。それぐらい細分化と変化があるんだなって」
 

 
伊藤「イヴェントと言えば、今年は『SUMMER BOMB produced by Zeebra』や『908 FES』のような大規模なフェスに、AK-69の武道館、般若の日比谷野音、NORIKIYO/KEN THE 390/SALUのLIQUIDROOM、ANARCHYの渋谷クアトロ、ZORNのWWW、SIMI LABのUNIT……などなど、ワンマン・ライヴが多かったのも印象的です」
 
DJ NOBU「みんな、それを成功させてた印象だよね。そこに行き着くまでにはこの数年間、自分たちのお客さんに対してちゃんとアピールしてきたっていうプロモーションの成果が、形になってきたからなんじゃないかな。例えばAK君だって、昔から各地をライヴして回ってきての今だろうし、そういう動きの現時点での集大成が武道館だったのでは、と」
 
高木「雑誌の裏表紙にドンと広告を載せるような、不特定多数に向けた大型投下型のアピールよりも、現場でのライヴや、TwitterやInstagramだったりを通して、特定層にちゃんとアピールするのが、費用対効果的/囲い込み的にもより重要になってるのかなって。流石に武道館クラスになると、そういうミニマムな戦略だけでは難しいかもしれないから、それは最大で1,000人ぐらいの規模までの話なんだろうけど。でも、そこの壁を超えるか超えないかが、より大きな舞台へのステップへ登るための、現状での分水嶺になってるのかなって思います」
 
伊藤「その意味では、KEN THE 390やAKLO、SALUといった辺りは、着々とそのステップアップを見据えた活動をしてますね」
 
DJ NOBU「みんな、まずはLIQUIDROOMぐらいの規模のワンマンを目指しているっていうのが、シーンのひとつの流れかもね」
 
高木「且つ、そのキャパを埋める動員があるアーティストが複数いて、会場に来る観客もちゃんといるっていうのは、日本語ラップが浸透してきているっていう証左でもあると思う。昔だったらそれは難しかったわけだから」
 
MC正社員「日本語ラップが流行ってきてる感じはありますね。地下ラップ・アイドルも増えてるし、YouTuberのヘタレビーボーイとか、YouTube運営側からもピックされるような人間だったりも出てきてますね」
 

 
高木「ヘタレ君はアクセス数がホントにスゴいみたいね。小中高生とかがメインのビューアーみたいだけど」
 
MC正社員「そういう存在が増えてるのは面白いし、カオスな状態になってきたなって思います」
 
伊藤「そういうモノをチェックしてる若い年齢層が、日本語ラップに注目するようになったのは、『高校生RAP選手権』の影響も大きいのかな」
 
MC正社員「それはあると思いますね」
 
高木「ラップっていう表現が珍しくなくなったってこともあると思うし。でも、ヘタレビーボーイ君のYouTube動画って、すごくアクセス数があるんだけど、いわゆる“シーン”にそれがそのまま繋がってるかと言えば、そんなこともなさそう。だから、ネットのアクセス数と実際にコミットする数は、これまで以上に乖離してきてるのかなって。なので、それが指針にはならないと思う」
 
SEX山口「『いいね』とか『fav』の数はアテにならないですよね」
 
伊藤「あくまで個人的な印象だから、実際のリスナーはどうか分からないけど、ネットで盛り上がってた話題があったとしても、実際に現場や取材などでその話題が上がることって、実はそんなにない。だから、自分の知らないところにもリスナーがいっぱいいるんだなって、ここ数年よく感じる」
 
高木「だからこそ、アーティストはそういう不特定多数じゃなくて、自分の認識できる特定の層にアピールせざるを得ないのかなって」
 
伊藤「ただ、そうすると層を超えてブレイクスルーはしにくいよね」
 
高木「うん。で、そういった傾向が顕著に見えるようになったのが今年かなって」
 
MC正社員「それぞれにファンがいるんだけど、ファンとしても『そこしか見てない』人が増えたと思うんですよね。点がいっぱいあるけど繋がらないから、線にはならないというか。これはMCバトルの現場にも感じることなんですけど。なかなかバトルのファンは、バトル以外のアーティストをチェックしないですよね。逆もそうなんですけど」
 

 
DJ NOBU「あと、今年の雑感で言うと、レーベル・ゲームが面白かったっていうのと、アーティストで言えばKOHHだよね、やっぱり。ツアーで回ってても、KOHHのフォロワーがホントに多い。同じようなトピックとラップでやってて、昔で言えばRINO君とかジブさん、Mummy-Dさんのフォロワーがいっぱいいた頃を思い出したし、それだけ彼を“スター”としてみんな見てるんだと思う」
 
SEX山口「やっぱりKOHHですよね。『T.R.E.A.M. presents 今夜が田中面舞踏会 5 LAST DANCE』でも、stillichimiyaとKOHHが同じステージに立ったんですけど、お客さんはまったく離れずに、どっちのライヴも同じように盛り上がってたんですよね。だから、両方のリスナー層にアピール出来てるんだなって」
 
MC正社員「バトルにも、KOHHさんみたいなフロウで出てくるラッパーが増えたんですよ。まあ、KOHHさん本人は別にして、フロウだけ切り取ればバトルには向かないフロウだから、大体負けちゃうんですけど。『俺は適当』みたいなこと言って、『適当なら出るんじゃない!』とか熱く言い返されて負けていくというか(笑)」
 

 
伊藤「KOHHやレーベル・ゲームについては、別に章を区切って後ほど掘り下げたいと思います。あと、今年のトピックとしては、映画『TOKYO TRIBE』の公開もありましたが、その影響はあったと思いますか?」
 
DJ NOBU「BCDMG的には良い影響もあったかな。シーン的には分からない……」
 
高木「シーン的には特にないような気がしますね。もしかしたら10年後に『〈TOKYO TRIBE〉を観てラップを始めた』って人が出て来るかもしれないけど……でも、そういうタイプの映画でもないのかなって」
 
伊藤「ヒットしたと思うし、公開記念イヴェントを渋谷HARLEMでやったらキャパ限界ぐらい集客があったらしくて。でも、その客層はライヴでは盛り上がるんだけど、DJ中は棒立ちみたいな人が多かったと訊きました。だから、その日はいわゆるHIP HOPリスナーよりも、一般の人たちが遊びに来てたんだろうな、と。その意味でも、あの映画はマス・アピールしたんだと思うけど、それがHIP HOPの盛り上がりには繋がることはないんですかね?」
 
高木「本職のラッパーが出てて、みんな良い味出してたし、BCDMGがサントラを制作したっていう部分なんかは素晴らしい--あとスンミ役の清野菜名も--と思うんだけど、作品としてHIP HOPムーヴィーだったり、HIP HOP的なアティテュードを感じるものではないから、HIP HOPカルチャーとは繋がりにくいかなって。それは、映画の良し悪しとは別にして、そう思います」
 
伊藤「あと、YOUNG DAISは俳優としてバッチリでしたね」
 
SEX山口「漫画の主人公そのまんまだったし、存在感もちゃんとあって」
 
DJ CELORY「アーティストとしても、DJ PMXさんとの『THE MOMENT』も良かったよね」
 
DJ NOBU「般若も来年映画に出るんでしょ?」
 
伊藤「結構ガッツリ出るっぽいですね」
 
高木「Mummy-Dさんもドラマに出るし
 
伊藤「ラッパーでも、音楽以外の表現に対する興味を実現しようとする人が増えてきてますよね。しかも、音楽的なキャリアっていう土台をちゃんと持って、その上でまったく別のジャンルの仕事もやってるというか」
 

 
高木「その流れとは逆方向の進入になるかもしれないけど、SKY-HIは良い動きだったなって。『AAAの日高』としての知名度がまずありつつ、SKY-HIとしてアルバム『TRICKSTER』っていう良質な作品を作って、そこからまたAAAのファンにラッパーとして、ラップの魅力をちゃんと伝えられる導線を意識的に作ってて。来年以降は、そういうコア表現とマス表現をバランス良く行き来するアーティストが増えると、面白くなるかもしれないですね」
 
 
 
【座談会参加者個人的2014年ベスト・アルバム】
伊藤「では続いて、皆さんの今年のベスト作品を伺いたいんですが」
 
DJ NOBU「KOHH『MONOCHROME』、ANARCHY『NEW YANKEE』、Febb『THE SEASON』辺りはよく聴いたね」
 
DJ CELORY「俺もFebbはスゲェ聴いた」
 
伊藤「去年に引き続き、アンダーグラウンド方面でFla$hBackSは活躍しましたね。jjjもアルバム『YACHT CLUB』を出して、KID FRESINOもArμ-2とのコラボ作『Backward Decision For Kid Fresino』や、フリー・ダウンロード・アルバム『Shadin'』も発表した」
 
DJ CELORY「『Shadin'』は売り物レヴェルだよね(笑)」
 
伊藤「今年は、彼らの才能が本当の意味で開花した年だと思います」
 

 
高木「ソロ作が揃ったことで、彼らの感覚の差みたいなモノもより明らかになって。jjjはアルバムも最高だったけど、DJ KURONEKOのミックスCD『OVER CAST-19 SITUATION IN THE RAW』に提供したYOUNG FREEZ/KNELLの“Good Afternoon”だったり、プロデュース・ワークも本当に素晴らしかった」
 
DJ CELORY「90'sフレイヴァーでありつつ、今の時代にもフィットしてるサウンドとラップっていう部分では、彼らは唯一無二なのかなって。個人的にスゲぇファン」
 
DJ NOBU「センスとスキルがぶっちぎりで良いよね。数年前、BCDMGのアルバムでFebbとレコーディングしたんだけど、録りもタイトに決めてたし、レコーディング中の時点で自分のゴールが見えてた。そういう基礎体力が、他の人と何倍も違うのかなって」
 
SEX山口「アートワークも良かったですよね。全員違う見せ方で」
 
DJ NOBU「それが今を象徴してるんじゃないかな?スキルとか当たり前のモノは別として、スタイルと見せ方が全てっていう」
 
MC正社員「僕が今年一番聴いたのは、神門さんの『苦悩と日々とど幸せ』ってアルバムです。個人的な話になっちゃうんですけど、サラリーマン辞めて、イヴェント/レーベルの仕事をするようになってから、熱血系の歌詞が聴けなくなっちゃったんです。それは自分の問題なんだけど、それでも神門さんのアルバムは、どんなときに聴いても共感できるなって。多分、いろんなタイプの人が共感できるアルバムだと思うし、彼の作品の中でも最高の出来だと思います。あと、ZORN君の『サードチルドレン』も良かった。すごいいろんなことに挑戦してますよね」
 
SEX山口「アルバム単位で言うとstillichimiya『死んだらどうなる』、KOHH『MONOCHROME』、NORIKIYO『如雨露』、GAGLE『VG+』、BASI『MELLOW』。それからフリー音源だと、CBSの『TOWN』かな。HOOLIGANZの%Cがトラックを提供してたり。彼周りのアーティストは注目してます」
 
 

 
DJ CELORY「GAGLEは素晴らしかったよね」
 
伊藤「今年の上半期の良作だと、僕も最初に思い浮かんだのがGAGLE『VG+』でした。ラップ/トラック/スクラッチ/音質……全てにおいてクオリティが高いアルバムだと思いましたね」
 
SEX山口「震災後初のアルバムっていうのもあったし、無駄な部分が削ぎ落とされたGAGLEらしい作品だなって。1stアルバムとかデビューEPの頃に近い感じもあって」
 

 
高木「僕も一番聴いたのはstillichimiyaかな。ハードさと文系さ、真面目とふざけっていうバランスが一番キレイに形になってたし、それが意図的だったなって。HIP HOPリスナーの外に向けてもちゃんと注目されるような作品だと思うし、実際そうなった気もして」
 
伊藤「そういった立ち位置の人を、以前のハードコア・ラップ・シーンは“別モノ”って捉えてたところがあると思うんだけど、サイプレス上野やPUNPEEの登場以降、スタイルや現場が違ってても、お互いがちゃんと認め合うようになってる感じがありますね。今年で言うと、般若がアスベストを客演に呼んだり、MVをスタジオ石が手がけたことからも、それが分かる」
 
MC正社員「アスベストが般若さんのアルバムに入ったのは、メチャクチャ熱かったですね。良い仕事してました」
 
高木「あとは、CANPANELLA『VIVID』とSIMI LAB『Page 2 : Mind Over Matter』かな。そう考えると、ツボイさんワークは今年も素晴らしかったですね。OMSBのビート・アルバム『OMBS』も強烈でした」
 

 
伊藤「個人的には、商業的な方向でも、ストイックにHIP HOPのアートを守ろうとする姿勢でも、単純にクオリティを上げようとするアプローチでもなんでもいいんだけど、ある方向に『突き抜けた』アルバムに刺激を受けた一年でした。それはAKLO『The Arrival』やSALU『COMEDY』といったOYWM勢の作品が、レーベル・メイトなのにそれぞれアプローチの違う『HIP HOPリリシズム』を追求した作品だったり、KOJOE x Olive Oil『blacknote』のような、自身のスタイルへの絶対的な自信を感じさせる作品だったり、T.O.P『UNDERWORLD ANATOMY』のようなやりたい放題の作品だったり(笑)。でも、やはりインパクト/革新性/クオリティ/影響力などを総合的に考えて『この一枚』を挙げるとなると、KOHH『MONOCHROME』になるのかもしれないですね」
 
 
 
【クラブDJ的視点から見た2014年の日本語ラップ】
伊藤「DJ/現場的視点では、今年はどんな印象でしたか?」
 
DJ NOBU「今年は、全国的にクラブで日本語ラップが沢山かかるようになったと思う。東京でもツアーでも実感したし、日本語をただかけるだけでなく、反応がしっかり返ってくるところが数年前とは違うところかな」
 
DJ CELORY「それはホントに思う」
 

 
DJ NOBU「KOWICHIの“BOYFRIEND #2 feat. pukkey & DJ TY-KOH”とか、フロアですごく流行った」
 
DJ CELORY「今年一番かけたと思うもん、KOWICHIは。それからANARCHYの“Shake Dat Ass feat. AISHA”とか」
 
DJ NOBU「一方で、場所によるかもしれないけど、ハードなリリックの曲でもお客さんが対応できるようになったのかなって。DUTCH MONTANAの曲とか『BLUE PHOENIX』(DJ NOBU主催のイヴェント)では大合唱で」
 
SEX山口「『田中面』でも盛り上がってましたよ、DUTCH MONTANAは」
 

 
伊藤「クラブで日本語ラップがかかるようになった背景には、アーティストが積極的にYouTubeでMVを発表して、気軽にチェックできるようになってきた結果、普段は洋モノしか聴いてないようなクラブ好きの人にとっても、日本語ラップの敷居が良い意味で低くなってきたんじゃないですかね」
 
DJ CELORY「あと、俺もNOBUも関わってたから自分たちで言うのも口幅ったいけど、『KUROFUNE』が良いキッカケになったのかもしれない。あれで全国を回って、それ以降日本語ラップがスゲェかかるようになったって話も聞くし」
 
伊藤「『KUROFUNE』は、所謂オタクDJ的視点じゃなく、洋モノのHIP HOPもかけられる現場のプロDJが、日本語ラップをセレクトしてかけてたっていうのが大きかったと思いますね。現場のDJの視点で、日本語でグルーヴさせたっていうインパクトは絶対あったと思いますよ」
 
SEX山口「僕も、日本語ラップで一時間とかDJやることがありますけど、日本語ラップでフロアが盛り上がってるのを見ると痛快ですよね。トート・バッグ持ってるような男性が“FUCK SWAG”とかフロアで歌ってるのを見ると、スゴい時代だなって思う(笑)」
 
DJ NOBU「DJとしては、アーティストには『フロア向け』とか意識しないで、やりたいようにやってほしいな。サンプリングでも現行のビートでも、なんでも面白かったらDJはかけるから。作り手が受け手側にどう受け取られるかなんて、考えたって結局分からないんだから、それよりも、単純に曲のクオリティを考えてほしいなって」
 
SEX山口「ZEN-LA-ROCK × DJ KAYA“GWIG GWIG GWIG feat. JOY McRAW/SEX山口”だってフロアで受けたけど、“フロア受け”を本人たちはそこまで考えてなかったんですよね。ZEN-LA君も俺も、あれがEDMだって最初分かってなかったから。スゲェノリノリで作りながら『あ、これがEDMってジャンルなんだ!』ってなりました(笑)」
 
DJ CELORY「だから、自分がカッコ良いと思うものを作ってほしいってことですね」
 
高木「スゴい普通の結論に落ち着きましたね(笑)」
 
DJ NOBU「ホントだね(笑)。でも、それさえも出来てない人が結構いると思うから」
 
 
 
【2014年のMVP】
伊藤「先ほどから名前が頻出してることからも、2014年のMVP候補筆頭は、やっぱりKOHHということになりますかね?」
 
DJ NOBU「そうなるかな」
 
MC正社員「僕みたいなタイプから見ても、彼はやっぱり特別に感じますね。テレビに出てもすごく映えるし。ファッション誌やテレビですごく見たから、いわゆるラッパーだけでは収まらないアーティストなのかなって」
 
SEX山口「彼のライヴって、男女問わず、観てる人みんなの目がハートになってるんですよね」
 
MC正社員「あんなに刺青入ってるし、傍からみたら怖く思えちゃうはずだけど、みんながヒーローや貴公子のように思ってるのがスゴイですよね」
 
DJ CELORY「ある意味ロック的な受け方なのかもしれないね。今後の可能性をすごく感じる」
 

 
伊藤「NOBU君主催の『BLUE PHOENIX』でKOHHのリリース・パーティをやったとき、ド平日の深夜だったのに会場がパンパンでしたよね。あのパーティで普段見ないような子も来てたし、KOHHのファッションに影響を受けてるような子もいたし、ギャルっぽい女の子も多かった。最近の彼のライヴって、とにかく大合唱になるんですよ。夜遊び好きな感じの、派手目な女の子が“貧乏なんて気にしない”のサビを大声で合唱してたのは、良い意味ですごくショッキングな光景だった(笑)。彼のようなストリート寄り且つキャリアが浅いアーティストで、あそこまでライヴが盛り上がってる人を見たのは久し振りです。いわゆるHIP HOPファンはもちろん、ファッションからサブカル、他ジャンルの音楽ファンまで全方位的な注目を集めつつあるKOHHは、多様化著しい今の日本語ラップにおいて、かなり希な現象を起こしていると思います」
 
DJ NOBU「全てが洗練されてるよね。スタイルもトラックもラップも全て。すごく緻密に色々考えてるし、本当は究極に難しいことをやってるんだけど、簡単そうに飄々とやってて、そういう全てが上手くハマってるんだよね。それは音楽性だけじゃなくて、プロモーションの仕方もそうだし、本人も自分の見せ方をちゃんと考えてて。あと、人間性も素晴らしい」
 
伊藤「彼は、リリックでは難しい言葉を使わないし、実際はテクニカルなことをやってても、基本は分かりやすさが前面に出てる人だから、本来は好事家やマニア受けするタイプのラッパーじゃないと思うんだけど、そういった層からも高く評価されているのも興味深い。例えば、AKLOの『The Arrival』は、分かりやすくテクニカルな日本語ラップ・アルバムだったと思うんだけど、それとはベクトルが逆ですよね」
 
DJ NOBU「そういう、HIP HOP IQを必要としなくても楽しめるという部分が広まった理由なんじゃないかな。KOHHはそういった部分を抜きにして、普通に楽しまれてるんじゃないかなって」
 
伊藤「その意味でも、KOHHはここ数年の既存の価値観を変革させた重要な存在だと思うんですよね。KOHHのエグゼクティヴ・プロデューサーである318の存在も大きいと思う。2ndアルバムを先に出したりとか、MVの仕掛け方などのマーケティング手法も、大胆且つ痛快。だから、今年の裏MVPは318なのかもしれない」
 
高木「318は、状況の読み方が上手いんでしょうね」
 
SEX山口「一瞬の判断力がスゴいと思いますね」
 

 
DJ NOBU「KOHH以外で言うと、活発に動いてたのはNORIKIYOだよね。去年の年末に『花水木』、今年の7月に『雲と泥と手』、12月に「如雨露』と3枚もアルバムを出して」
 
SEX山口「客演も多かったですね」
 
伊藤「年間を通しての音楽的な活動のアクティヴさでは、NORIKIYOがMVPかもしれないですね。その活動の過程では、Zeebraや日本語ラップ・シーンへの辛辣なメッセージもあったけど、活動の量/質を通して自らの発言の説得力を高めていったというのもあると思う」
 
SEX山口「『如雨露』はとにかく刺さりまくりましたね、特にリリックが」
 
DJ NOBU「あのリリース量でこのリリックの質っていうのはスゴいよね」
 
伊藤「『如雨露』のリリックの精度の高さは見事でした」
 
DJ CELORY「よく書きたいことが枯渇しないなって思う。アルバム一枚出して空っぽになっちゃう人もいるのに」
 
DJ NOBU「でも、それがラッパーらしい姿だとも思う。『言いたいことないのに、妄想をラップだけしてる』みたいな作品が、実は全体のリリース量の大半だったりだと思うんだけど、NORIKIYOは『言いたいこと』と『ラップしたい』ってことが繋がってて、『素晴らしいラッパーだな』って思う。やっぱり、リリースが多いから常に録ってるんだろうし、そういうのも大きいのかもしれない。KOHHにしてもNORIKIYOにしても、常にリリックを書き続けてるイメージだよね」
 
高木「NORIKIYOにしても、KOHHにしても、AKLOにしても、今年重要作だと思われる作品を出した人って、リリースまでの動きが軽やかだと思うんです。もちろん、『産みの苦しみ』は絶対あるだろうけど、作品上はそういう部分をおくびにも出さないで制作しているっていうか。内容的にも『俺はこれに命かけてる!』みたいな押し付けがましいエゴを出すんじゃなくて、もっと『リスナーに届けるには』って部分に腐心してるなって」
 
DJ NOBU「そうかもね。確かにみんな“等身大”感がある。俺も最近は『これしかねぇ!』みたいなラップは聴かないもんね。そんなの聴いても『みんなそうだよ!』って言いたくなっちゃう(笑)。その意味でも、やっぱり『どう聴かせるか』についての意識をちゃんと持ってるか持ってないかで、差が生まれてると思うね」
 
伊藤「さっきも言った通り、アートフォームとしてのHIP HOPを突き詰めたりとか、商業的に完成度の高いアルバムを作るとか、色んな方向性があると思うんだけど、どの方向性にせよ、その突き詰め方が中途半端なアルバムは、いくらラップやトラックのクオリティが高かったとしても、ほとんど印象に残らなくなってきてるんですよね。ある意味でベースのクオリティが向上した結果なのかもしれないけど、普通にカッコ良いラップとカッコ良いビートだけでは、最早話題をさらうことが難しくなってきてる--jjjのインタビューで『どれだけ“言いてぇことなんか別にねぇ”っていうのをカッコ良く言うかが俺らの感じ』って言ってたけど、それって実はすごく難しいことで、ラップ・スキル以前に“雰囲気”の演出の仕方が上手くないとリスナーを惹きつけることは難しい。だから、ラッパーにとっては酷な時代になってきてるとも思うんですよね」
 
DJ NOBU「結果が出てる人は、アーティスト自身の意識もめちゃくちゃ高いし、ブレーンやレーベルのサポートがしっかりしてるよね、戦略を立てられる人がいるか否かで、作品の内容も変わってくると思う。だから、やっぱり今年のポイントは『見せ方』だったんだろうなって」
 
伊藤「なるほど。皆さんの個人的なMVPとなると、誰になりますか?」
 

 
DJ NOBU「318と紅桜かな。紅桜みたいな存在って今までいなかったと思うんだよね。骨太で土臭くて、でもライヴもスゲェイケてるし」
 
伊藤「僕も、今年取材を通して一番刺激を受けたのは紅桜でした。彼のインタビュー記事は、いろんな人から『ヤラれた』という感想を頂きましたね。作品を聴くと、まだまだ荒削りな印象だけど、彼からは大器の予感がビンビンします」
 
DJ NOBU「ANARCHYが出てきたときに近いよね。これから名前が上がっていって、良いビートが集まったり、色んな輪が広がったときに、どう化けるんだろうっていう期待感がすごいある」
 
伊藤「初期のTOKONA-Xってこういう感じだったのかな?って想像しちゃいましたね。カリスマ性も高いし」
 
DJ CELORY「紅桜はブルースを感じるよね」
 
SEX山口「そのブルースがどういったところから来てるのか、じっくり話してみたい人だなって思います」
 
MC正社員「紅桜さんって、UMBの岡山予選でずっと準優勝ぐらいで勝てなくて辛酸を舐めてきた人だったから、こうやって名前が挙がるのは感慨深いですね」
 

 
DJ CELORY「俺の個人的MVPは、まだここで名前が出てないところで言うと、ISH-ONEと十影かな。ISH-ONEの『D.R.O.P.』はYMGのトラックも含め、良い感じで大成してきたと思う。それから、ISH-ONEのプロデュースしたS7ICK CHICKsも新しい感じがあって面白かったな」
 
伊藤「S7ICK CHICKs『LIPS7ICK」は、実はすごく良くまとまってるアルバムだと思ってて、それはISH-ONE率いるプロデューサー・チーム:#TEAM2MVCHのディレクションが大きいんだと思います。彼女たちには申し訳ないけど、個々のスキルという意味ではまだ未完成な人たちを、こうして上手くユニットとしてパッケージ化したのって、それこそプロデューシングの妙だと思うし、USラップのアーティスト育成法にも近い部分があると思う。だから、ISH-ONEはラッパーとしてだけでなく、プロデューサーとして今後はもっと評価されることになるかもしれない」
 

 
MC正社員「僕がMVPだと思ったのはMC漢さんですね。EPも良かったし、年間通してずっと話題を提供してくれたなって。話題を持続させるのって難しいじゃないですか。でも、漢さんが出て来て、話題をちゃんと提供し続けたのが鎖グループのレーベルとしての姿勢にも繋がるなって。あと、裏MVPはMC松島氏を挙げたいですね。彼はMCバトルがスゴい好きな人で、そのバトルをどう盛り上げるかって考えたときに、自分ならではの道として、バトルのレポート書いたりっていう広げ方を丁寧にやってたなと思います。もちろん音源も頑張っていたと思うし」
 
高木「Twitterのハッシュ・タグ『#せんごく松』『#UMB松 』で見れる彼のコメントとか、優れた解説だよね」
 
DJ CELORY「『戦極MC BATTLE』のブレイクDJで、DJ YANATAKEがBOBBY SHMURDA“HOT NIGGA”を使ったことも、そのハッシュタグで知ったもんな」
 
MC正社員「ただ、ラッパーというよりブロガー的なアプローチが強くなってるとは思うんですが(笑)」
 

 
高木「僕の個人的MVPはHABANERO POSSE。今年はメインストリームでもガンガンかかるフロア・バンガーを量産したし、マージナルな存在じゃなくなったなって」
 
DJ CELORY「HABANEROの曲は、やっぱりクラブでかける頻度が高かった。“HURRICANE KICK feat. DJ TY-KOH”も既にかけてるよ」
 
DJ NOBU「彼らの曲は、単純に盛り上がるからね」
 
高木「日本語ラップのリミックスが多いっていうのもあるけど、ベース・ミュージックの中に日本語ラップをガンガン詰めてるのが素晴らしいなと」
 
SEX山口「首/腰/足にしっかりくる音楽になってますよね。本人たちの物腰の柔らかさとは裏腹に、作品はダンス・ミュージックとしての屋台骨が超鉄骨。しかも真珠入り」
 
伊藤「例えばPUNPEEとかもそうなんだけど、彼らみたいな『行動的なナード』は、HIP HOPにとって常に欠かせない存在だし、彼らの存在/音楽観がある種保守的なハードコア・ラップに良い影響を与えると思うんです。HABANEROやPUNPEEは、DJということもあり、メチャクチャ音楽を聴いてると思うし、ラッパーだけではカヴァーしきれないフレッシュな音楽性を供給できる貴重な存在ですよね」
 
高木「HABANEROもそうですけど、WATAPACHI × KOHH、HYPERJUICE × MINT/Jinmenusagiみたいなクロスオーヴァーしたサウンドが、もっとじゃんじゃん出てくると面白いなって、個人的には思ったりしてます」
 

 
伊藤「あと、東京のHIP HOPってことで言うと、個人的には再始動後の妄走族の活動も挙げておきたいです。あくまで自分たちの活動にケジメを付けるための再始動だったと思うけど、イヴェント開催やフリー音源の配信、アルバムなど、一年通して活発に動いて、結果的に彼らより下の世代のハードコア・ラップ勢に良いゲキを飛ばしたな、って思いますね」
 
【後編はコチラ
 
 
PERSONAL CHART 2014
伊藤雄介(Amebreak)

01. 「MONOCHROME」/KOHH
02. 「The Season」/Febb
03. 「VG+」/GAGLE
04. 「The Arrival」/AKLO
05. 「COMEDY」/SALU
06. 「如雨露」/NORIKIYO
07. 「blacknote」/KOJOE x Olive Oil
08. 「UNDERWORLD ANATOMY」/T.O.P
09. 「YACHT CLUB」/jjj
10. 「VIVID」/CAMPANELLA
 
 良作多しな一年だったので、なかなか絞り込みづらかったですが、最終的には、繰り返しヘビロテで聴いたアルバムという基準で10枚選ばせて頂きました。一応順位も付けましたが、そのヘビロテ度合いをなんとなく順番にしてみたぐらいな感じなので、作品の優劣の順番とはまた異なります。本文でも話していますが、やはりどんな方向であれ、自分のスタイル/アートを突き詰めている人の作品は、どれも刺激的でしたね。
 
 
SEX山口
「死んだらどうなる」/stillichimiya
「MONOCHROME」/KOHH
「MELLOW」/BASI
「VG+」/GAGLE
「如雨露」/NORIKIYO
「b(ackr)oom sounds」/%C / TOSHIKI HAYASHI
「TOWN」/cbs
「THE BLANK DISC」/8ronix
「WILD WORDS JOURNEY」/万寿
「HEALTHY」/TOKYO HEALTH CLUB
(順不同)
 
 10選では収まりきらないので追記すると、アルバムではDJ KENN & A-THUG、CAMPANELLA、LIBRO、SIMI LAB、単曲だとPUNPEE feat. Sugbabe “Last Dance (We are Tanaka) (Produced by Konyagatanaka)”、KYN“BEAUTIFUL DAY feat. 桜木カオリ”、79“Party Zombie fea. shunta”、FUNKYMIC“Electrik”なども2014セク山興奮HOTチューンでした。
 本年はスマホからガラケーに戻したりしまして、その影響なのか、楽曲の“即チェ”がなかなかできない環境だったのですが、逆にその環境がリスナーとしてスゲェ心地良かったなぁと。本当に聴きたいと思える作品をじっくり聴くことが出来たし、ヤベー作品に出会ったときの感動が全然違いましたね。そこらへんを忘れちゃいけないなぁと再確認したり。受動的な耳に慣れちゃってるのはもったいないと思いますので、2015年はそこらへんを改正開始! とか言っとく!
 
 
Mr. BEATS a.k.a. DJ CELORY
01. 「如雨露」/NORIKIYO
02. 「The Arrival」/AKLO
03. 「ISLAND」/EGO
04. 「紅桜」/紅桜
05. 「THE SEASON/Febb
06. 「VG+」/GAGLE
07. 「NEW YANKEE」/ANARCHY
08. 「MONOCHROME」/KOHH
09. 「死んだらどうなる」/stillichimiya
10. 「D.R.O.P」/ISH-ONE
 
 今年も沢山の日本語ラップ・アルバムを聴いたので、とても悩みました。他にもJAZEE MINOR、十影、Y’S、jjj、KID FRESINO、HIMUKI、SALUとかもよく聴きましたし。とにかく今は、それぞれベクトルが違う良質な作品が多いし、楽しみ方も異なると思うんです。だから面白いし、それだけシーンが成熟したんだなあと。2015年もDJ/プロデューサーとして出来ることをサポートしていきたいと思っています。