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#RAPSTREAM CO-SIGN feat. NF Zessho

文:高木“JET”晋一郎

 
 福岡を地盤に活動を展開するラッパー/トラック・メイカーのNF Zessho。ティーンエイジャーの活躍がめざましい昨今の日本のHIP HOPシーンにおいて、1993年生まれという若き俊英も、10代から活動を始め、ネットに作品をコンスタントに発表してきた。
 
「生まれも育ちも福岡です。もともと親父が不良上がりで(笑)、Zeebraの“GOLDEN MIC”が小学校の頃から家で流れてましたね。そういうのも好きだったし、個人的にはORANGE RANGEとかRIP SLYMEを聴いて、そこからグッとHIP HOPにハマった感じでした。自分でラップを始めたのは15歳のときです。いわゆるネット・ラップを知って、それが超楽しそうに見えたんですよね。それで、『俺もコレでいっちょ人気者になってやるか!』みたいな動機で始めました(笑)」
 
 
 ネットでの発表が既に原点にあるというネット・ネイティヴ世代らしい話だが、それが彼にとって人生の転機にもなる。
 
「そういうのからインターネットにのめり込んじゃって、日常生活に支障をきたして(笑)、高2のときに学校を辞めちゃったんですよ。それで、家でゴロゴロしててもしょうがないから、家を出て、ネット・ラップを発表する中で知り合った神奈川の人の家に転がり込んで。それで17歳のときはバイトしながら藤沢の方で暮らしてました。当時からDINARY DELTA FORCEとかBLARHMY、DLIP RECORDSの人たちはメチャクチャ好きだったんですけど、未成年だったのもあってクラブは行けないし、繋がる機会はなかったですね。で、どうにも神奈川での生活が立ち行かなくなっちゃって、それで一年ぐらいで福岡に戻ったんですが、そしたら福岡が居心地良すぎちゃって、結局福岡で生活してます」
 
 
 以上の話からすると、ネット・ラップ・シーンとの繋がりや、そこへの思いが強そうな雰囲気も感じるが、ネット・ラップへは複雑な思いがあると話す。
 
「ネット・ラップは当時からあんまり好きじゃない……というか、嫌いでしたね。最初はネットしか見てなかったし、そこに衝撃を受けたから面白いとは思ってたんですけど、16歳ぐらいのときに、PSGの“かみさま”のPVを友達に教えてもらって、そこでPSGのアルバム(『DAVID』)にメチャクチャ喰らったんです。それで、福岡のクラブにライヴを観に行って、そのときにPRIDE MONSTER FAMILIAとかを知ることにもなって。そうやってHIP HOPを深く知るにつれ、『ネット・ラップってメチャクチャダサいんじゃない?』って思い始めちゃって。でも、発表の場がネットしかないから、そこでやるしかないっていうジレンマは感じてましたね」
 
 
 その話通り、ネットでの作品発表を中心にしていたNF Zessho。
 
「フリー・ダウンロードは神奈川にいるときから発表してました。神奈川から福岡に帰る夜行バスの中でも歌詞を書いて、それを福岡に戻って形にしたのが、これもフリーで出した『092EP』で」
 


 
 そして、13年には初のフィジカル盤となる「Natural Freaks」をリリースする。彼の盟友となるEnpizlabのYoshinumaやArμ-2、Pigeondustなど、気鋭のトラック・メイカーが手がけたビートと、スキルフルで軽やかなNF Zesshoのラップが組み合った一枚だった。
 
「Enpizlabは、Yoshinumaが元々やってたクルー兼レーベルだったんです。そこに俺が加入する形になって。Yoshinumaとは17ぐらいのときにネットで知り合ったんですが、彼が『かなへびコンピ』に参加したのをキッカケにULTRA VYBEの人と繋がって、Yoshinumaの方に『アルバムを出さないか』って話が降ってきたんですよね。だけど、Yoshinumaが『それよりNF Zesshoってラッパーがいて』って僕を紹介してくれて、それでリリースしたのが1st『Natural Freaks』だったんです。今聴くと粗はあるんですけど、当時は『かなりイケてるでしょ』って思ってたし、『“RAPSTREAM CO-SIGN”に絶対呼ばれるでしょ』って思ってて(笑)。自分としても次のステップにいくためのアルバムって気合いが入ってたし、俺の歳ぐらいでラップをバリバリやってるヤツにその当時は出会ってなかったのもあって、CO-SIGNに声がかからなかったのは結構ショックでしたね。でも、その時期に取り上げられてたのがほぼ同世代のFla$hBackSで、作品を聴いたら『うわ!かカッケェ!』みたいな。それで、やっぱりまだまだヤバいヤツはいるんだなって思いましたね。自分ももっと頑張らなきゃなって」
 
  
 NF Zesshoとしてのラップ作品と並行して、Gudamanss名義でトラック・メイカーとしても活動を開始し、DEJIの作品や、ビート・テープの発表なども行なっていた。
 
「もともとビート・シーンにも興味があって、そこでPigeondustとも繋がったり。Arμ-2はYoshinumaが最初に知り合ってて、それで彼のSoundCloudを聴いたら、メチャクチャカッコ良くて、しかも同い歳ってことに本当に驚いた。それで1stアルバムを作るときに、Twitterでいきなり話しかけたんですよね、『電話番号教えてくれ!』って(笑)。彼もOIL WORKSからリリースしてたから福岡にもちょいちょい来てたのもあって、それでそのタイミングで直接会うことも出来て、そこから仲良くなりました。自分でもビートを作るのは、結局、そっちの方が早いっていうのがありますね。雰囲気はこうでとか、ノリはこうでっ話しながら作るより、やっぱり自分でやった方が早い部分が確実にあって。Yoshinumaとは仲がいいけど、それでもハマらないトラックはあるし、Yoshinumaも彼の世界があるから、『こうしてほしい』って言うことを、全然聞いてくれなかったりもして(笑)。それに、最近は自分のやりたいことをビートに反映させることが出来るようになってきたんです。FL STUDIOを導入してからトラック・メイクが掴めてきて、自分の気持ちやイメージを、そのままビートに落とし込めるようになって」
 
 
 上記の言葉通り、やはりコネクションを作るのは、クラブなどよりもネットが多いと話す。小都市や地方ならそれも分かるが、クラブも多い大都市である福岡市に住みながら、その動きは意外にも思えるのだが……。
 
「……天神で遊んでるヤツらって気取ってるんですよ。スゴいフチのデカいハットとか被ってたりするのを見ると、『お前、それ天神以外で被れんぞ!』って(笑)。親不孝のHIP HOPシーン、RAMB CAMPの流れとかは大好きで、リスペクトしてるし、『BASE』があった頃は、バーカンにいたFREEZさんが自分のコップを片してくれるだけで超かしこまってしまうぐらいで(笑)。だけど、今の同世代でラップやってるヤツとかだと、チャラついた大学生とかが多いんで、あんまりノリが合わない感じもあって……まあ、自分がふてくされてるだけだと思うんですけど(笑)。ただ、単純に人付き合いも苦手な方なんで、クラブでコネクション作ったりっていうのもしんどいし、B・ボーイが怖いんですよ。不良が怖い(笑)。だから、基本的にナードな方向、というか、普通の人なんで、だいたい家にいて、地元の仲間と遊ぶか曲を作ってる方が楽しいんですよね。そういうタイプなんで、曲作りは気持ちを整理したり、心とデトックスしたり……というかほぼそういう気持ちで作ってますね。そのときの気持ちが作品に反映されるタイプだし、そういう曲を作りたいなって」
 
 
 
 ニュー・アルバムとなる「BEYOND THE MOONSHINE」も、その意味では彼自身のデトックスのような部分を強く感じる作品だった。物語性よりも、彼のその時々の思いや、心の揺れのような部分が表現されたリリックは、ブルージーな部分と希望が平行する若者らしい瑞々しい心の中が描かれ、NF Zesshoの“今”を感じさせられる。
 
「未来に対して『良いヴィジョン』が見え辛いんだけど、そこにちょっとだけ見える『微かな希望』にすがりついてる感みたいなのはあったと思いますね。わりと毎晩落ち込んじゃうようなタイプなんで、メンタルは弱いかもしれないですね。楽しく遊んでても、別れてひとりになると『あんなこと言わなきゃよかったかな……』とか落ち込んだりするようなタイプなんで。でも、最近は元気になってますね。このアルバムでちょっと吐き出せたから、そうなったのかもしれない」
 
 
 約2年振りのアルバムということで、決してスパンは短くないのだが、本人にとっては、この二年は悩みの深い時期だったという。
 
「2014年は何も出来なかったんですよ。どんな曲を作っても前作を超えられないって壁にぶち当たっちゃって、作っても作っても、ボツにしてて。だけど、14年の終わりに、Arμ-2から5曲ぐらいビートをもらって、その中の一曲でリリックを書いてみたんですよね。それが今回収録された“JET PILOT”で。あの曲が出来たときに、『これだ!』って手応えがあって、モヤモヤしてたモノがようやく解消されたんです。『このクオリティまで行ければ、作品として大丈夫』って基準に、この曲でたどり着いた感じがあって。そこからは早かったです。プラス、今まで、2ヴァースにフックみたいなオーソドックスな形で作ってたんですけど、今回もその形はあるけど、そこに拘らないで、小節数も構成も、もっと自由に作ったのも大きかったですね。録りに関しては家で全部録ってるんで、時間の自由も利いて」
 

 
 そういったメッセージ性に加えて、良い意味で聴き流せるような流れのあるフロウも印象的だ。
 
「外国語のラップを聴いて気持ちよく感じるような、耳気持ち良さは考えましたね。だけど、それだけだと流れていっちゃうんで、今回は歌詞カードを付けて、内容もしっかり分かってもらいたいなって。俺の中で、アルバムって高尚なモノで、タイムレスでなモノでありたいから、特定のシチュエーションでしか聴けない曲は絶対に作りたくない。年中、どういうタイミングで聴いても『良いな』って思えるような、タイムレスな曲を作りたいと思うんですよね。今回はそれが出来たと思うし、今のところ、完璧だと思います。HIP HOPを聴かないヤツにも、誰がどんな状況で聴いても、カッコ良いと思ってもらえるアルバムになったと思います。一年後になると粗が見えてくるかもしれないけど、今のところ、100%行けるところまでいったなって。俺が思う音楽性の高いモノが、作品として落とし込めたと思います」
 
「タイトルの『BEYOND THE MOONSHINE』の意味については、“MOONSHINE”には“戯言”って意味があって。自分のラップする身近なこととか、恋とか、友達のことって、結局戯言だと思うんですよね。だけど、単なる戯言では終わらせたくないから、その先(Beyond)に行きたいってことで、このタイトルを付けました。プラス、月や太陽って、地球にいる限り逃れられないモノだと思うんですけど、それも超えたいなって。色んな柵とか枠組みとか、そういう部分から自由になりたい」
 
 
 
 このアルバムで新たなステップに登るであろうNF Zessho。ただ、リリース・スピードの速い彼だけに、現状にはまだ納得がいってないという。
 
 「俺の中で、今の時点で2ndアルバムを出すというのは『遅いな』って思うんですよね。俺が思ってた構想の中では、今ではもう音楽で食えてるはずだったんですよ。だけど、結局今も週6で8時間働いてるし、そこに時間が取られなければ色んなことが出来るはずだから、本当にもったいないなって。だから、今は早く音楽で飯が食えるようになりたい。ライヴも、クラブに行かないし、人と仲良くなれないから、全然お呼びがかからなくて。だけど、これからはもっとライヴをして、いろんな展開が出来ればって思います。Enpizlabとしても、Yoshinumaと作品を作りたいって思うんです……けど、Yoshinumaは完璧主義だし、俺も人の言うことをあんまり聞かないんで、いつになるかはちょっと分からないですけど、作品は作りたいですね。自分としては、こういったラッパーとしての作品も作るし、ビート・アルバムも、歌モノもやってみたいし、ceroみたいなバンド・サウンドにしっかりラップが載るようなバンドも組んでみたい。目標はまだいっぱいありますね」
 

Pickup Disc

TITLE : BEYOND THE MOONSHINE 
ARTIST : NF Zessho
LABEL : Enpizlab Records
PRICE : 2,160円
RELEASE DATE : 8月19日