日本を代表するHIPHOPサイト! Amebreak[アメブレイク]
  • INTERVIEW
  • KNOWLEDGE
  • NEWS / REPORT
  • COLUMN
  • RECOMMEND
  • MEDIA
  • EVENT / LIVE INFO
COLUMN[コラム] RSS

2015年国産HIP HOP振り返り座談会(後編)

談:DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH!/Mr. BEATS a.k.a. DJ CELORY/SEX山口/MC正社員(戦極MC BATTLE)/高木“JET”晋一郎/伊藤雄介(Amebreak)
文:高木“JET”晋一郎


【前編はコチラ


【座談会参加者個人チャート】
 
伊藤雄介(Amebreak)2015 TOP 10
01.「DIRT」/KOHH
02.“お嫁においで2015 feat. PUNPEE”/加山雄三
03.「Think Good」/OMSB
・「IN THE NAME OF HIPHOP」/tha BOSS
・“時間ヨ止マレ feat. MURO & PUSHIM”/東京弐拾伍時
・「Conq.u.er」/KID FRESINO
・「夢から覚め。」/5lack
・「PAReDE」/MASS-HOLE
・『P-VINE 40th ANNIVERSARY THE SEXORCIST x NEW DECADE x REFUGEE MARKET』(10月23日@代官山UNIT)
・ D.L死去
(※上位3位以外は順不同)
 


 
伊藤「すごく大雑把な括りですが、『東京の北側』が地元だったり拠点にしている人たちの活躍が凄かったな、と。まあ、この傾向はここ数年変わらないと言えば変わらないんだけど。KOHHやY'sは北区・王子、5LACKとPUNPEEの高田兄弟は板橋区出身だし、池袋bedから出て来たり今でも活動の中心にしてしてる人たちも多い……って考えると、東京の北側の人たちが、別々のアプローチなんだけど、面白いことをやってるなって。池袋bedを拠点に始まった『THE SEXORCIST』『NEW DECADE』『REFUGEE MARKET』という三つの重要パーティが結集したP-VINEの40周年イヴェントに集った豪華な面々がそれを証明してるな、って。あと、5LACKがやってるパーティ『WEEKEN'』は今年足を運んだ現場の中でベスト・パーティでしたね。現場の話の流れで言うと、『SUMMER BOMB』やAmebreak/CASTLE RECORDS共催の『THE COMING』でのライヴを観てて感じたのは、若いお客さんの“ノリ方”が3〜4年前のそれと変わってきたことで。実際にDJだったりイヴェント運営する上で感じていたことですが、2000年代中盤ぐらいから、クラブ・プレイもライヴもお客のテンションがドライな情況が多かったと思うんですね。だけど、SNS上では来てたお客さんが『楽しかった!』っていうコメントを残してたりするから、イヴェント内容が悪かったわけではない。『会場で盛り上がる=楽しい』っていう感じじゃなくて『自分が楽しければいい』っていう、個人主義的な考えがダウナーな客層を産んだというか」
 
SEX山口「『現場を共有する』っていう感じは弱かったかもしれないですね」
 
伊藤「だけど、ここ最近のKOHHやZORN、ANARCHY辺りのライヴを見ると、お客さんの盛り上がり方が確実に変わってきてる気がして。その盛り上がり方も、かつての首を縦に振ったり“プチョヘンザ”的なノリじゃなくて、“ターン・アップ”的な近年のノリ方に変化している。もちろん、盛り上がり方はHIP HOPのトレンドで変化するモノだけど、ちょっと前のお客さんだったらこんな素直に盛り上がってたかな?って思ったんです。だから、『現場で盛り上がることが楽しい』って思う10代〜20代前半の若い人たちが増えたんだと思う」
 
DJ NOBU「今年はデイ・イヴェントが定着したよね。以前はHIP HOPのデイ・イヴェントは集客が難しかったけど、今はお客さんも入るようになって。しかも、大型のイヴェントだけじゃなくて、VUENOSクラスのデイ・イヴェントでもちゃんと回ってるし」
 
正社員「『戦極MC BATTLE』含め、MCバトルの多くはデイですからね」
 
伊藤「デイ・イヴェントというか、フェスですけど、RHYMESTER主催の『人間交差点』もありましたしね」
 
SEX山口「自由が丘のお祭りで『Erection』というパーティをやったら普通に盛り上がったし。昼間に盛り上がるのは良い傾向かなって」
 
伊藤「そういう意味でも、僕は“現場”に希望が持てた一年でしたね」
 
 
 
DJ CELORY a.k.a. Mr. BEATS 2015年TOP 10
・『D.L presents HUSTLERS CONVENTION』(6月25日@渋谷VISION)
・“Special Radio feat. IO”/KID FRESINO
・「TOKYO 25:00」/東京弐拾伍時
・『フリースタイルダンジョン』
・「IN THE NAME OF HIPHOP」/tha BOSS
・「拓く人」/LIBRO
・「栞」/WATT a.k.a. ヨッテルブッテル
・「滲まない / edge vol.1」/KM
・「The Corner」/BudaMunk
・“お嫁においで2015 feat. PUNPEE”/加山雄三
(順不同)
 

 
DJ CELORY「KMのフリーDLアルバム『滲まない / edge vol.1 』は、トラップだったり先進的なビートを形にしてるけど、もう少しHIP HOP寄りで、アンダーグラウンド感もあり、彼ならではな新しい切り口を形にしてるなって。収録曲のBULL“One Night Vacation”では、SOUL SCREAMの“ひと夜のバカンス”をトラップにしてたり」
 
高木「“1986”はSUIKEN“Double TROUBLE”を下敷きにしてますね」
 
DJ CELORY「『Bon Voyage』(DJ CELORYがレジデントDJを務めるパーティ)に来てたりしてた奴だったから、自分の位置を見つけたかなって、ちょっと嬉しかったね。そういう先進のビートと同時に、オーセンティックなビートも新しい形で受け入れられてるよね。先日SADAT Xが来日したとき、現場に観に行ったんだけど、お客さんが20代前半なことに驚いて。しかも、プレイされてた曲も、例えばPETE ROCK & CL SMOOTH“THEY REMINISCE OVER YOU (T.R.O.Y.)” みたいな王道じゃなくて、『この曲、SHOWBIZ & AGのアルバムに入ってた……なんだっけ?』みたいな、そういう曲がガンガンかかるんだ。そういう、ひたすらアンダーグラウンドな雰囲気だから、客は9割9分が男で、女の子なんて全然いないんだけど(笑)」
 
SEX山口「分かります。ここ数年は関西でDJをやったときもそういう感じを結構受けましたね。BLACK SMOKERから出た5LACKのミックスCD『8LACK 8ALLADE』もそういう雰囲気があったし」
 
DJ CELORY「20代前半の子たちの間では、90年代の音楽を新鮮に感じているんだろうし、90sに対して新しい捉え方をするシーンが出来てきてる感じがするんだよね」
 
 
 
SEX山口2015 TOP 10
・「1212」/スチャダラパー
・「Think Good」/OMSB
・「夢から覚め。」/5lack
・「BUSINESS CLASS」/THE OTOGIBANASHI'S
・「ビールとジュース」/サ上と中江
・「Salad Bowl Boys」/HOOLIGANZ
・“アシダマナダヨ”/十影
・“illson feat.NIPPS、オカモトレイジ(OKAMOTO'S)”/MAGiC BOYZ
・『DOUBLE IMPACT』(OZROSAURUS/サイプレス上野とロベルト吉野)(8月25日@横浜Lizard)
・ PUNPEE
(順不同)
 

 
SEX山口「THE OTOGIBANASHI'Sは他と被らない、本当に好きなことをやってる可愛いヤツらだなと。いきなりみんなでNYに行って、それが『Business Class』に繋がったりっていうのも面白いし、思い立ったらNYに行けちゃうって部分も含めて、楽しそう(笑)。人気の出方もスゴいですよね」
 
伊藤「『WOOFIN'』誌の表紙にもなりましたしね」
 
SEX山口「それから、サ上と中江の『ビールとジュース』もすごく好きなアルバムでしたね。ここ最近のラッパーで、こういう形のコラボが出来るのは、上野君しかいなかったと思うし」
 
高木「相手がパフォーマーとして超一流の東京女子流の中江友梨という組み合わせも良かったですよね。しかも、中江友梨がラップは当然だけど、リリックも自分で書くっていうアプローチも、ラップとして正しかった」
 
SEX山口「作品としてちゃんと良かったし、HIP HOPとしてしっかりと評価したい作品でしたね。だから、もう少し届いてもよかったなって」
 
高木「サ上は、今年は規模は小さいけど、メディア・スターになったと思いますね。AMラジオのパーソナリティやCMへの起用だったり、『ラッパーをメディアに起用するなら』という部分では、宇多丸さんと双璧ぐらいになってるのかなって」
 
DJ CELORY「CMで『ドーン!』って聴くと『お、上野だ』って思うもんな(笑)」
 
SEX山口「あと、HOOLIGANZの『Salad Bowl Boys』は、こういう言い方は正しいか分からないけど、90年代のFATHER MCとかHEAVY Dあたりの作品を聴いてる感じを受けたんです。要するに、ちょっとキレイな服装をして、セクシーに見せることの出来るグループだなって。ラップのハメ方も上手かったし、BANの覚醒 -- どんどんキ○ガイになってく感じ -- もすごく良かった。それから、MAGiC BOYZは、もう存在としてビックリしたし、イルすぎるなって(笑)」
 
高木「しかもスターダスト所属と、ももクロやエビ中の男子版なんですよね」
 
SEX山口「その制作にNIPPSさんやMACKA-CHINさんが参加してるっていうのは、かなりキテるなって。もう何がなんだかよく分からなくて気になります(笑)。十影君の“アシダマナダヨ”は、PVを観たときに、なんだかすごく悔しいというか、嬉しいというか、そんな感情が(笑)。それからオジロとサ上とロ吉の2マン・ライヴ(『DOUBLE IMPACT』)がとにかく素晴らしかった。特にオジロは、出てる音はメチャメチャ凶悪でハードなんだけど、MACCHO自体は、ライヴが進む中でどんどん鎧を脱いで、最後は裸のMACCHOが観客と対話してる感じでしたね。今年のベスト・ライヴでした」
 
 
 
DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH! 2015年TOP 10
・ D.L死去
・ MURO 30周年
・ KANDYTOWN
・ MASS-HOLE
・ KOHH
・ PUNPEE
・ OMSB
・ Fla$hBackS
・ KIANO JONES
・ “Childish ~ I'll feel sorry for my G thang”/GOKU GREEN
(順不同)
 

 
DJ NOBU「Fla$hBackSは、グループとしてのリリースはなかったけど、個々の動きが印象に残ってるんだよね。FEBBが期間限定公開していた“BRAIN”とか、ISSUGI“U KNOW”のようなJJJのプロデュース・ワーク、KID FRESINOの『Conq.u.er』も良かったし。だから、結果、Fla$hBackSは気になる存在でい続けたよね。あと、MASS-HOLEにハマったな、今年は。GOKU GREEN“Childish〜I'll Feel Sorry For My G Thang”は、単純にラップやトラックとかが好きすぎて、入れました。GOKUもI-DeAも最高すぎる。それから、MUROさんのDJ活動30周年。ずっと背中を見てきた存在だし、30年間必要とされる現場があり、DJが出来るって凄いことだよね。MUROさんとD.Lさんはずっと憧れだから、自分には本当に特別な存在」
 
高木「あと、NOBU君も所属するBCDMGも関わっているKANDYTWONは、来年ブレイクしそうですね」
 
DJ NOBU「彼らは、生活の中にHIP HOPやラップというモノがあるんだよね。仲間と遊んでたり、飲みに行って、そのまま地元帰ってレコーディングしたり」
 
伊藤「だから、必然的にリリース量も多くなりますよね。ファッション界隈でも注目されてるし、ラップするだけじゃなくて、ライフスタイルとしてHIP HOPを実践できている感じがありますね」
 
正社員「クラスのイケてる人たちがラップしてるって感じですよね。『イケてる〇〇君がラップやってるから、ラップはカッコ良いんだ』って思わせるだけの、影響力と説得力があるような気がして」
 
高木「なるほど。だからKANDYTOWNにインタビューしたとき、反発心が湧いたのか(笑)。でも、ホントにイケてる奴らって感じですよね」
 
DJ NOBU「俳優/バンドマン/モデルとか、彼らのHIP HOP以外の交友関係も面白いし、興味深いね。そういう人たちが、SNSや雑誌などで彼らを紹介してくれて、広がっていったところもあるなと思う」
 
 
 
高木“JET”晋一郎2015 TOP 10
・「1212」/スチャダラパー
・「conceptually」/Y.I.M
・『SKY-HI TOUR 2015 〜Ride my Limo』/SKY-HI
・「SWEET TALKING」/BUSHMIND
・ サイプレス上野
・ KOHH「DIRT」
・『フリースタイルダンジョン』
・「Think Good」/OMSB
・「祭事」/餓鬼レンジャー
・「Bitter, Sweet & Beautiful」/RHYMESTER


 
高木「Y.I.MやTOKYO HEALTH CLUB、ENJOY MUSIC CLUBのような、いわゆる『HIP HOPとはこうであるべき』論の埒外にある存在が面白かったですね。ラップという表現が一般化して、イズムを超えて純粋に『ラップが面白い』ということを行動原理にする人も増えて。そして、イズムや歴史を踏まえないからこそ生まれる、禁じ手を気にしないアナーキーな感じも、実はHIP HOPっぽいと思うんですよね。GAMEBOYSやRAP BRAINSのような、おそらくHIP HOPの知識はあるんだろうけど、そこを敢えて外していくような存在も、そのアナーキーさは似通ってるなって。また、Ceroのようなネオ・ソウル/シティ・ポップのブームの流れで、BPM帯や雰囲気の似てるHIP HOPに、そういった方面からも注目がされてる部分がありますね。入江陽の“やけど feat. OMSB”は、その文脈の上にある名曲です」
 
伊藤「その中でもY.I.Mを挙げたのは?」
 
高木「とにかく言ってることが面白かった。去年リリースの『Y.I.M』収録の“classA feat. 焼酎ビッチ fromうる性やつら”の『胸でかくねえから家出たくねえ』とか」
 
伊藤「結構固い韻だな(笑)」
 
高木「一方で“大丈夫※月給十万で迎える三十”での『パートタイムジョブ月給十万で迎える三十』に象徴されるリリックは、今の若年層の雇用不安や労働環境を反映していたり。社会を映す部分がすごく強いのも面白かったですね。女性ラップでは盤石なlyrical school、『戦極MC BATTLE』にもメンバーが出場したライムベリー、アイドル版のアルファとも言える校庭カメラガール、ゆるふわなハイタッチガールズなど、アイドル方面も熱いです。それからrisetteの常盤ゆうとトルネード竜巻のなかまきこが組んだらラップを始めたというばいなっぷるくらぶ、MCバトルにも登場しているあっこゴリラ、PAGEがプロデュースしているchelmicoなど、この方面は来年はもっと増えるかなと」
 
伊藤「そろそろ次の話をして下さい(笑)」
 
高木「ライヴだとSKY-HIの『RIDE MY LIMO』は素晴らしかったですね。陽気な曲だったらバンド全員で踊るし、悲しい曲だとピン・スポットみたいな、今までの日本のHIP HOPが『クサい』って避けてきた部分を形にしていて。でも、それぐらいやらないと、一般層には伝わらないとも思ったんですよね。ショーとしてのライヴの見せ方がやっぱり上手かったし、もう一段階、日本のラップが注目されるようになるには、SKY-HIのアプローチは非常に重要だなって。それがメジャー・サイドの魅力だとしたら、BUSHMINDの「SWEET TALKING」はアンダーグラウンドの才能が結集した好盤だったと思います。でも、どちらも閉じないで、他と連携することで芳醇な作品性を生み出してるし、“連携”がシーン全体のキーワードなのかなと思いましたね」
 
 
 
MC正社員2015 TOP 10
01. 『フリースタイルダンジョン』
02. 言xTHEANSWER vs. LEON(第8回『高校生RAP選手権』)
03. 『戦極 feat. 芸人ラップ王座決定戦 第一章』(8月24日@渋谷R-LOUNGE)
04. 『戦極スパーリング』(5月1日@渋谷FAMILY)
05. 呂布カルマの無双状態
06. 『THE 罵倒2015 第五戦(最終予選)』(11月22日@新木場ageHa)
07. 『AsOne RAP TAG MATCH』(12月30日@渋谷asia)
08. 『UMB』(鎖グループ主催)(9月23日@新宿ReNY)
09. 戦極CAICA(MCBATTLEレーベル) 設立
10. 『戦極MC BATTLE 第13章 全国統一編』(12月27日@渋谷O-EAST)
 

 
正社員「やっぱり、今年は『フリースタイルダンジョン』ですね。ずっと地下のバトルに出てた奴が、テレビに出てスポットを浴びて人気が出るっていうのは熱い。その中でも『R-指定 vs. CHICO CARLITO』『般若 vs. 焚巻』は本当に良かった。CHICOのあんな乗り方のラップが地上波に乗るのもすごかったし、内容も素晴らしかったんですよ」
 
DJ CELORY「その解説聞きたいな」
 
正社員「まずCHICOが『ロン毛とロン毛、本でも読んで』ってラップをしたんですけど、それは晋平太の曲からの引用なんですよ。それに対してR-指定が『ロン毛が絡まってるぜ』っていう返しをするんだけど、それは2008年UMBの般若vs.しろくま戦で般若が出したパンチラインで。晋平太が審査員、般若がラスボスにいる場で、そのふたつのラインが出て、しかもそれが地上波で放送される……もう感動しかなかったですよ!」
 
DJ CELORY「深いな〜」
 
伊藤「それ、君以外に解った人いるの?(笑)」
 
正社員「結構……いや、多少はいたと思いますよ(笑)。般若と焚巻の試合も、昔から天才だと言われてた焚巻が、ラスボスの般若を引っ張りだしたのは熱かったし、般若のフルースタイルも、2008年の般若が蘇ったと思いましたね」
 
伊藤「『フリースタイルダンジョン』の反響はバトルの現場にも波及してる?」
 
正社員「『高校生ラップ選手権』と併せて影響してると思いますね。『戦極スパーリング』っていう、バトルの練習イヴェントを金曜の夕方に渋谷FAMILYでやってるんですけど、この前は180人入っちゃったんですよ。しかも、終わった後に、普通の格好の女の子たちがサイファーしてて」
 
伊藤「凄いな〜」
 
正社員「女の子が観る側も出る側も増えてますよね。『高校生RAP選手権』の言xTHEANSWER vs. LEON戦で、言xTHEANSWERが負けたときに、観てる女の子が泣き出しちゃったんですよ」
 
伊藤「甲子園に応援に来てた女子高生が泣くみたいな感じなのかね」
 
正社員「まさにそうなんですよ。だから、これはもうスポーツとして捉えられてるんだと思うし、観てる女の子たちが『自分もやりたい』と思ってスパーリングに来てるのかなって。そうやって、スポーツ化が進んでるんだけど、それ故に、そのカウンターとして呂布カルマや戦極宮崎杯チャンプの智大、UMB愛知予選チャンプのBASE君とか、他を寄せ付けないパンチラインやHIP HOPワードで優勝するという流れもあるんですよね。『THE 罵倒2015 第五戦(最終予選)』に出てたRYKEYさんもやっぱりマイクを持ったときのオーラが違うって感じもあったし、あの大会は全体としてダーティで良かった。スポーツ化に対するカウンターとして、もう佇まいや存在性、パンチライン力で強いと思わせるラッパーの存在感が増してると思います。あと、ブレス式主催の『AsOne』にも大物MCたちがガンガン参戦してますよね。Sing02さんとMeisoさんがコンビでバトル出たり、MC漢さんとDABOさんが組んで出たりとか、2005年には考えられなかった(笑)。無名から大物まで、本当フラットな状態で勝負できるからMCバトルは面白いですよね。『戦極13章』ではライムベリーのMIRIちゃんや芸人さんなんかも出てるし。一方で、主催者だけが儲かりがちっていうのが、MCバトルの闇ですよね。自分が戦極CAICAというレーベルを始めたのも、『バトルで強く、且つ音源も作れるラッパー』をちゃんと成り立たせて、“バトル”と“ライヴ”の両輪で魅せられるツアーを出来るようにしたいと思ったからなんです。そうやって、バトルMC/MCバトルをちゃんとビジネスとしても成立させなきゃなって」
 
伊藤「なるほど」
 
正社員「それから、使うトラックとかもオリジナルを増やしていってDJやトラック・メイカーにも注目が集まるシステムにしたいと思うんですよね。これだけブームになってるのに、ちゃんとビジネスとして整頓出来ていないのは、やはり問題だなって。これは来年の課題です」
 
高木「鎖グループ主催の『UMB』が、来年から『KING OF KINGS』という名義に改組されるということも含めて、ブームだからこそ改めてバトルの枠組みが整理される年になるような気もして」
 
正社員「鎖の『UMB』で優勝した崇勲とは10年近い付き合いなんですけど、昔からバケモノのようなスキル -- 見た目も怪物っぽいんですけど(笑) -- そんなスキルを持ってたけど、ずっと準優勝ばっかりで。『UMB』での崇勲の優勝は誰も予想してなくて。だけど、崇勲が見事優勝して、プロップスを得て、賞金を獲って、アルバム『春日部鮫』も優勝したことによって、これまでよりも聴いてもらえたと思うんですよ。だから、やっぱりMCバトルは夢があるなって思います。来年はみんなで良い年にしたいです」