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MR.BEATS a.k.a. DJ CELORY
MY WAY

日本を代表するヒップホップ・プロデューサー:MR.BEATS a.k.a. DJ CELORYがソロ・アルバムとしては2作目となる「BEAUTIFUL TOMORROW」をリリースする。丁寧なディレクションの行き届いた、プロデューサー・アルバムの理想型と言っても過言ではない快作だ。2008年現在、彼がプロデューシング、そして日本語ラップ・シーンにかける思いとは?

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

日本人として、この島国に生まれたから出来るもの。
HIP HOPというカルチャー自体が基本的にアメリカ産なわけだけど、
そこをそれっぽくなくやる、日本人にしか出来ない唯一無二なスタイルを意識してきた

 SOUL SCREAMのプロデューサーとしてシーンに登場したMR.BEATS a.k.a. DJ CELORYは、キャリア的にはかなり早い段階でその才能を開花させた感がある。今振り返ると驚かされるのだが、あの傑作「THE POSITIVE GRAVITY〜案とヒント〜」での豊かなサンプリング・ループの数々は、10年選手が作り出したものではなく、当時まだ20代前半の若者が作り上げたものだったのだ。あのアルバムから早9年の歳月が経つわけだが、数々の試行錯誤を経た結果生まれた今作「BEAUTIFUL TOMORROW」のサウンドは、感触こそハイファイになったかも知れないが、そのサウンドの持つ説得力は、トラック・メイキング以外でのプロデュース能力の向上も伴って、「THE POSITIVE GRAVITY〜案とヒント〜」当時よりも増しているようにさえ感じられる。彼がやはり日本を代表するヒップホップ・プロデューサーである事を再び証明した今作は、本サイト読者なら絶対にその仕上がりを確認しておいた方が良いと思うぞ。 
 
 
■今作の前にリリースされた日本語ミックスCD「BEATS LEGEND II」は、アルバム前の景気付けという理由以外にも、やはり昨今の日本語ラップが面白いから、というのも理由としてありました?
「そうだね。自分の中では、ここ数年の日本語ラップは若い世代の子達で凄く実力を持った人達が出て来て面白くなっているのにも関わらず、世の中、もうちょっと外側の人達からは『冬の時代』的に思われている所を、『そうじゃないんだぞ』って言いたかった気持ちもあったかな。だから、『BEATS LEGEND II』に関しては、クラシック中心でない、新譜寄りの選曲で固めてみたつもりだし」
 
■今作「BEAUTIFUL TOMORROW」は、凄くポジティヴな感触のアルバムですよね。所謂ポップ畑じゃない所での日本語ラップ作品で言うとズバ抜けて前向きな内容なのが新鮮だったんですよ。アルバム・タイトルにも表われてるじゃないですか。ある意味ヒップホップらしくないタイトルかも知れないですよね。
「『BEATS LEGEND II』の話とも繋がるんだけど、『日本語ラップの未来が明るくありますように』っていう思いが一番込められているものではあるんだけど、日本語ラップだけの狭さでは表現したくなかった、っていうのもあって。より多くの人に聴いてもらいたいし、幅広い層を日本語ラップに取り込みたいっていう気持ちもあったので、こういうタイトルを付けたんだ。多分ヒップホップに置き換えれば全ての筋が通るアルバムではあると思うんだけど、一方でJ-POPだけしか聴かないような子にとっても日々の生活においてリンクできるような、そんなバランスで作ったアルバムだね」
 
■元々CELORYさんのトラックって明るい曲が多くて、特に最近はメチャクチャダークなトラックは作ってないと思うので、そういう意味ではここ最近の作風の延長線上だと思うんですが、でもやっぱりこのアルバムと外部提供の曲では感触の違いを感じるんですよね。
「根本的に、やっぱり俺はSOUL SCREAMで育ってる……育ってるってヘンかも知れないけど、でもそうじゃない? だから、自然に出て来るものでもあるんだよね。別に気取って作ってるつもりもないし、自分が素直に思う気持ちをアルバムに表現出来たと思ってる」
 
■ストリート寄りなHIP HOPはそれはそれで盛り上がってると思うし、J-POP寄りのスタイルもそうだと思うんですけど、SOUL SCREAM的な良い塩梅というか……分かりやすさとHIP HOP的なコアな部分が両立出来ている作品が最近少ないからこのアルバムが新鮮なのかな?という気もして。
「SOUL SCREAM自体も当時からそうだったじゃん?」
 
■異端児と言わないまでも、独特なスタンスではありましたよね。
「FUTURE SHOCKの中でも異端児だったと思うしね。別にそこを狙ってたわけじゃないんだけどね。自然に自分の中から湧き出て来るものをメンバー全員で表現したものがああいった作品だったし、今回もそう。多分それが俺のスタイルなんだろうね」
 
■ここ最近のCELORYさんのトラックって、「日本語ラップとしてのヒップホップ・トラック」という意味でのハマり方を意識してるのかな?って感じたんですよ。無闇にUSのトレンドを取り入れるわけではなく、日本語のフロウに合うトラックを模索しているのかな?と思ったりしたんですが。
「そうだねぇ。もちろん音楽ってトレンドも大事な要素だと思うんだけど、それより自分にとって大事なのはオリジナルなもの、自分でしか出来ない雰囲気だったり、そういうものを持っている事が大事だと思ってて。そこを突き進んでいった結果の今のトラックなんだと思う」
 
■それを初めて強く感じたのがZEEBRA氏の“STREET DREAMS”だったんですよ。オーセンティックに聴こえるけど、実は結構面白いトラックで。メジャー感があるんだけど、USのメインストリームでは絶対にない音だったんですよね。だから、あの曲はUSヒップホップのサウンドを意識した上でのヒップホップ・クラシックではなく、本当の意味での日本語ラップ・クラシックなんじゃないかな?って思ったんですよね。
「これはディスではないんだけど、基本的にみんなUS(のヒップホップ)を追い続けているじゃない? それも良いし、俺も大好きだし、俺も実際DJではかけてるんだけど、誰か一人、日本人ならではのもの、日本人だから出来るものを作り続ける人がいても良いんじゃないかな、とは思ってて。そんな所が出てるのかな」
 
■そういう意識って昔からあったんですか?
「いや、昔は全然US追ってたかな。これは音楽とは離れた部分なんだけど、歳を重ねる毎に凄く歴史が好きになっててさ。個人的には幕末の時代とか大好きで、そういう所に影響されてるのかも知れない。日本人として、この島国に生まれたから出来るもの。HIP HOPというカルチャー自体が基本的にアメリカ産なわけだけど、そこをそれっぽくなくやる、日本人にしか出来ない唯一無二なスタイルを意識してきたのかな?」
 
■追っかけるだけじゃなくて、自分のオリジナリティを模索出来るのって一つの余裕じゃないですか。そういう意味ではトラック・メイキングのスキルが上がったという部分も関係してるんですかね?
「あと、俺は環境が凄く恵まれてると思うんだ。自分のやりたい事を推してくれる良いスタッフがいて、そういう人達がいてくれたっていうのも大きいと思うんだ。FUTURE SHOCKにいた時からそうだったけど、『売れる曲を作れ』なんて言われた事ないし、自分達がやりたい事、表現したものを素直に受け止めてくれて、それを世の中に送り出してくれるスタッフが沢山周りにいて。制作においてストレスを抱えた事なんて殆ど味わった事ないし」
 
 

SOUL SCREAMの頃から自分は自分で伝えたい事があったから、
ソロでもやりたいと思ったんだろうね。

■前作「BEATS JAPAN」以上に1曲単位でのCELORYさんのプロデューサーとしてのイニシアティヴの強さを感じる事が出来たんですが。
「そこは凄く勉強させてもらった部分だね。一枚目の反省点としては、もうちょっとプロデューサーとしての手腕を磨きたいという所があって。今回はそこをかなり意識して進めていった」
 
■丁寧さがトラックだけじゃなくて楽曲全体に行き渡ってる印象を受けました。一番分かりやすくそれが感じられるのがフィーチャリングの人選ですよね。
「曲のテーマから、誰にどのように歌ってもらいたいという所まで含めて、そこは凄く意識して作ったね」
 
■今作のようなプロデューサー・アルバムって、そこが一番難しいんじゃないですか?
「トラックは誰でも作れると思うんだ。それを一つの筋の通った形で、且つオリジナリティを出すのが一番難しい部分で、それはホント前作を作って痛感した事で。SOUL SCREAMでも意識してはいたけどなかなか出来なかった部分でもあったのね。それが凄く消化出来たアルバムかも知れない、今回は」

■今回“STREET DREAMS”がパート2として収録されてますけど、何故この曲はCELORYさんにとって特別な曲になったんだと思いますか?
「正直、ジブさんにこのトラックを渡した時、他のストックのトラックと同一線上の感じで、ちょっと良いなと思ってた位な感じだったんだ。やっぱりジブさんが歌ったから、あのテーマでラップしたからこそ生まれた化学反応だったと思うし……自分で作った曲を聴いて泣いたのが初めてなんだよね。ジブさんのヴォーカルが入って、朝方家に帰って一人でまた聴いて、泣いたんだ。そんなのは初めてだったんだよね。何で泣いたのか、理由は具体的に説明出来ないけど、凄く心に響いてさ。だから、余計に思い入れも強いし、リリースされたら実際みんなの評判も高かったしさ。自分で言うのも何だけど、日本語ラップの歴史に刻まれる曲を作ったと思ってる」
 
■プロデューサー的観点から見て、今の日本語ラップをどう思います?
「超面白いと思う。ムチャクチャ成熟してきてると思うし。やっぱりみんなの平均点が上がってきてると思うんだよね。ラップが上手いのは当たり前で、その先じゃん? その先の個性、内容、どう表現するのかまで来てるから。昔はラップ出来る事が凄かったからね。聴き取れなくてもラップが出来るだけで凄い、みたいな」
 
■今回のアルバムを作っていてその成熟を感じた瞬間はありましたか? 例えば若手は録るのが早いとか。
「もちろん録るのが早いっていうのもあるね。このアルバムの中での若手の子達は、どうすればこの曲がカッコ良くなって、そのためにはどのように持って行こうかみたいな、プロデューサー的視点を持ち合わせた上でレコーディングをしに来てる。ただトラックを聴いて『ああ、こういうテーマですか、じゃあ詞を書きます。じゃあラップします。はい、カッコ良いでしょ?』みたいな感じじゃなくて、みんな意志を持って臨んでいる。そういうのは昔と確実に違うな」
 
■ところで、CELORYさんが初めてトラックを手掛けたのって何歳の頃なんですか?
「『THE DEEP』(SOUL SCREAMのファースト・アルバム。1996年リリース)の頃だから、19(歳)位かなぁ」
 
■20歳頃の時点でトラックの作り方はもうマスターしてたんですか?
「当時の黄金セット、(AKAI)S-950と(E-Mu)SP-1200(両機種ともサンプラー)ですよ。S-950はアレルギーに習って、SP-1200はBEN(THE ACE)君に習ったんだ。それで作り方を覚えたんだけど、それをどうやって具現化していくかっていう、大きな意味での手法は、『THE DEEP』制作時にDJ TONKさんがいたり(MUMMY)D君がトラック作ったりしてたから、そこで学んだよね」
 
■その「THE DEEP」から早十数年ですが、今までヒップホップのトラックを作り続ける事に行き詰まりを感じた事はなかったんですか?
「そんなのしょっちゅうだよ。俺はいつも壁にぶつかってる気がする。……トラックはたくさん家で作ってるんだけど、人に聴かせる前でボツるトラックはたくさんあるし」
 
■SOUL SCREAMのセカンド「THE POSITIVE GRAVITY〜案とヒント〜」からサード「FUTURE IS NOW」の間がリスナーとして聴いてて、最大の転換期だったんじゃないかな?と思うんですが。
「確かにあの頃が一番悩んでたかも。『THE POSITIVE GRAVITY〜案とヒント』は、初めてアルバム通して自分一人で作ったアルバムなんだ。それで、それなりに評価も得て、あの時点での完成型を掴んだんだ。そこからしばらく同じような手法で自分なりに作ってたんだけど、そこで行き詰まったんだよね。それはやっぱり時代感とかもあったのかな? それって凄い大事な事だと思うから。あのまま(のスタイル)で作り続けてたら絶対に時代に取り残されると思った。やっぱりずっと現場で(DJを)やってるから、常に新しいものは吸収していくわけじゃん? そこと自分の作るトラックとのギャップに凄い葛藤したんだよね。だから、常に時代感は忘れたくないんだよね。そこと自分なりのオリジナリティとのバランスは今は保てるかな、という気はしてる」
 
■プロデューサーの中にはCELORYさんのように自分名義のアルバムを作る人もいれば、全く作らない人もいるじゃないですか。CELORYさんが自分名義の作品を出し続ける理由は?
「何だろうね?……自分の可能性を決めたくない。可能性は見えてるのかも知れないけど、そういう風に思いたくないのかも知れない。もちろん、ラッパーにトラックを提供し続けるだけでも良いんだけど、俺もそれなりに言いたい事があるんだろうね。でも、自分でラップする事は出来ないからね。SOUL SCREAMの時も自分で結構葛藤していた部分かも知れない。やっぱりグループだから、『こういう事を伝えたいわけじゃないんだよなぁ』っていう事もやらなきゃいけない時もある。SOUL SCREAMの頃から自分は自分で伝えたい事があったから、ソロでもやりたいと思ったんだろうね」
 
EVENT INFO
2月9日(土)『BON-VOYAGE』(渋谷nuts)にて『BEAUTIFUL TOMORROW』Release Party開催決定! 詳細は渋谷nutsまで
毎月第1木曜日@渋谷nuts『ANYTHING -SUPER FLY-』
毎月第2土曜日@渋谷nuts『BON-VOYAGE』
奇数月第4金曜日@代官山AIR『DOWNTOWN』
 
 

TITLE: BEAUTIFUL TOMORROW
ARTIST: MR.BEATS a.k.a. DJ CELORY
LABEL: PONY CANYON/PCCA-02573
PRICE: ¥2,625
RELEASE DATE: 1月16日

 
(1) ショッキング・ダイナマイト feat. スチャダラパー, bird
(2) GIFT feat. HAB I SCREAM, 秋田犬どぶ六
(3) DON'T STOP MY LOVE feat. 村上てつや, MUMMY-D, KOHEI JAPAN
(4) HAPPY TURN feat. TARO SOUL, HUNGER, KIN DA SHER ROCK
(5) 大人の責任 feat. CRAZY KEN, 宇多丸, Kダブシャイン
(6) 3 THE HARD WAY feat. MURO, BIG-O, AFRA
(7) MY WAY feat. SOUL SCREAM
(8) OBSESSION feat. FULL OF HARMONY
(9) STREET DREAMS PART 2 feat. ZEEBRA, SIMON, 晋平太
(10) I'M PROUD (FLY HIGH) feat. DABO, SEEDA
(11) LOVE @ 1ST SIGHT feat. COMA-CHI, 青山テルマ
(12) 灰のように feat. 般若

TITLE: BEATS LEGEND II
ARTIST: MR.BEATS a.k.a. DJ CELORY
LABEL: PONY CANYON/PCCA-02539
PRICE: ¥2,310
RELEASE DATE: NOW ON SALE


(1) FREESTYLE I/ZEEBRA, 般若, UZI, Q, SIMON, DJ OASIS
(2) 理由/般若
(3) INTRO feat. JACK HERER, dNessa/"E"QUAL
(4) そりゃぁないよ/RADIO AKTIVE PROJECT(K DUB SHINE, DJ OASIS)
(5) WANNABEES CUP 2002/DABO
(6) 音楽遊び/サイプレス上野とロベルト吉野 feat. SHINGO☆西成
(7) FUNK ING./MURO feat. GORE-TEX
(8) ADRENALIN/SEEDA
(9) LET'S GET IT STARTED/ZEEBRA feat. SWIZZ BEATZ
(10) STILL NEVA ENUFF/AKTION feat. ZEEBRA
(11) ごうだつゲーム/"E"QUALl
(12) 未来は暗くない〜THE NEXT/BLAST feat. ANARCHY, サイプレス上野, COMA-CHI, SIMON, SEEDA
(13) MVP/UZI feat. 48.9(HAB I SCREAM, GAMA, RINO LATINA II)
(14) OVER THE BORDER/KIN DA SHER ROCK
(15) FREESTYLE II/HAB I SCREAM, 晋平太, サイプレス上野
(16) THE THREE 16'S(THE RETURN)/ZEEBRA feat. TWIGY & D.L
(17) OPEN/BIG-O & DJ WATARAI
(18) STREET DREAMS/ZEEBRA
(19) THIS IS HOW WE DO/DJ CELORY a.k.a. MR.BEATS feat. DABO, HI-D
(20) Hands up type II/YA-KYIM feat. TOMOGEN from DOBERMAN INC.
(21) バカヤROW/KM-MARKIT feat. VERBAL(m-flo)
(22) PIECES OF CAKE/UZI feat. UBG(OJ FLOW, KM-MARKIT, ZEEBRA)
(23) JUST GO/JHETT a.k.a. YAKKO feat. KODA KUMI
(24) KABUKI 道 DX/FULL OF HARMONY feat.宇多丸(RHYMESTER)
(25) DESTINATION/MAY J.
(26) MERMAID/KM-MARKIT feat. FULL OF HARMONY
(27) FREESTYLE III/COMA-CHI, TARO SOUL, KIN DA SHER ROCK, KEN THE 390
(28) H.I.P/KEN THE 390 feat. MUMMY-D & TIARA
(29) HAVE A NICE DAY/KOHEI JAPAN
(30) SOUL SPITS/TARO SOUL
(31) こっちきてみな 〜FLOW ON〜/DABO feat. COMA-CHI
(32) イッサイガッサイ/KREVA
(33) ラストライン/DJ CELORY a.k.a. MR.BEATS feat. AKTION, B-YAS, 秋田犬どぶ六
(34) 心配すんな/般若