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STERUSS
TRI ANGLE

横浜を代表するクルーの一つ:ZZ PRODUCTIONを引っ張る3人組のSTERUSS。傑作「円鋭」によって彼らが更に確固たる信頼をヘッズから得た事は間違いない。彼らが作り出したアルバムの深い世界観の源は何処にあるのか?

インタビュー:高木晋一郎

長く、何回も何回も聴いてほしいですね。
それで聴いてくれた人の経験に合致する事があったら、
「こういう事を言ってたんだ」って
気付いてくれたら凄く嬉しいですね――CRIME SIXXX

 サイプレス上野とロベルト吉野らと共に「184045」(非通知045スタイル)を旗印に、横浜を地場に活動するSTERUSS。決して短くはない活動歴ながら、なかなか分かりやすい脚光を浴びる機会に恵まれなかったCRIME SIXXX/BELAMA2/DJ KAZZ-Kの3人だったが、2006年にリリースした「白い三日月」は、いわゆる文系B-BOYを中心に熱狂的に受け入れられ、STERUSSの名を確かなものに押し上げた一枚だった。
 
 そして、彼らが次の一手として打ち出したアルバムは「円鋭」。多分STERUSSがアルバムにこのタイトルを付けたのは、言葉遊びや諧謔ではないだろう。言葉だけ捉えれば両極端な存在ではあるが、円いモノも磨けば鋭くなり、その逆も然り。両極でありながらも何処かで繋がっている。それはある種、人の心と似ているのかも知れない。人を包む円い部分も、傷つけてしまう鋭さも、そういったアンビヴァレントな存在を誰しも心に抱えている。だからこそ、人の心や内面をしっかりと衒いなく描くSTERUSSのアルバムには、この「円鋭」という言葉がスッと落ち着くのだ。
 
 
 
■2nd「白い三日月」はSTERUSSの知名度やリスナー層を大きく広げる一枚になったと思いますが、現時点から考えるとそれは何故だと思いますか? 
CRIME SIXXX(以下C)「トピックが幅広かったから、HIP HOPど真ん中の人間から私的な部分を好む人まで色々な層に聴いてもらう事が出来たんじゃないかなって。やっぱりライヴをやっても全然反応が変わってきましたね」

■その変化で心情的には何か変わった部分はありますか?  
C「音の隅々、言葉の隅々まで聴いてくれる人がいるって事を知って、より多くの人に聴いてもらいたいって気持ちがありますね」
 
■何故前作の話を訊いたかというと、この「円鋭」には前作からの反動を感じたんですね。前作の大きなトピックであった“マイク中毒PT.2”は、リリック的にも感情や経験を具象的に言い切った曲であり、STERUSSとしては特殊な形式の曲だと思います。また、「白い三日月」全体としても赤裸々な部分が垣間見えた。ただ、一方でSTERUSSは凄く抽象的な表現で世界観を構成していくという側面がありますね。その上で、今回の「円鋭」はSTERUSSの抽象的な表現論が強く出ていると感じて、その遠因となっているのは、特に“マイク中毒PT.2”への注目に対する反動であったり、具象:抽象表現のバランスを取りたいという気持ちがあったのかなと思ったんですけれども。 
C「自分の考えや表現に確固たるものはまだないと思ってるんだけど、その意味ではおぼろげながらも『こうなのかな?』って思う事を出したかったというか。だから、人の言葉を借りずに自分達だけの言葉でやろうと思ったときに、その言葉が『言い切る』よりも、『ちょっと考えつつも』って部分に振れたのかも知れないですね。自分達の考え/思い/言葉を前面に出す時に、迷いだけ書かないなんて事は出来ない訳だし」
BELAMA2(以下B)「“マイク中毒PT.2”に関しては、本当に実体験だからこそ言い切れた曲だし、『白い三日月』の制作の時のモティヴェーションが『外に出よう』って意識が強かったんですね。あのアルバムを出したからこそ色んな場所にも行けたし、友達や繋がりも増えてっていう、今までよりも多く得る事が出来た経験を、一旦自分達の中に持ち帰って、自分達の内面として今回のアルバムでは出したかったんですね」
 
■その意味でSTERUSSの抽象性って、「掴み所のたくさんある」抽象性だと思うんですね。Aという事象を表わす場合にSTERUSSの場合はそのイメージの切り取り方:見え方をストロボ的に変えていくんだけど、言葉自体は非常に取っつきやすい。いわゆる「何を言いたいのかが分からない」手の届かないアブストラクトではない。それは例えば「好きだ」って感情を100%は言葉に出来ないように、「Aそのものを表わせるAという言葉はない」という諦念を抱きつつも、どうしてもその「A」という事実を表わしたいがためにもがき、高まってしまう抽象性という感覚に近いんだと思うんですが、それ故にSTERUSSの言葉は多くの人の心に引っかかってエフェクトする作用を産んでいる、そう思うんですね。 
B「『こういう気持ちを表わしたい』って欲求はあるんだけど、どう届ければいいのか分からない、そのゴチャゴチャした内面を言葉に表わして、『でも届けたいんだ』って表現しているのかも知れないですね。“色捕り鳥”は特にそうかも知れない。上手く言えないモヤモヤしたモノを書こうとするから、散文:乱文になりがちなラップになってるって言われたらそうかも知れないけど、自分に素直に書くからこうなるんだと思います」
C「音楽を聴き始めた時に電気グルーヴやスチャダラパーを聴いて、最初に何が面白いって思ったかというと、やっぱり『言葉』なんですよね。言葉って一言一言出すのに凄く勇気がいるし、内面の言葉を聞かせるのはどうすべきか、言葉をいかに武器にするかって事を考えたら、こういったスタイルになったのかなと思いますね。まだはっきりした答えはないですけど」
 
■それはSTERUSSのリリックに根本的に存在する自己対話型、内省的な表現方法とも繋がりますか? 
B「確かにそうかも知れないですね。強く言い切ってる部分であっても、それは自分に向かって言ってる所もあると思うんですよね。それは僕の場合強いかも知れない」
DJ KAZZ-K(以下K)「それは俺も聞きたい。俺が何かテーマ持ってきても、2人ともそういうリリックになるじゃん」
B「それはレ○ンガスみたいなラップしろって事? 『なんとかYO!』みたいな(笑)」
 
■確かにあのCMは具象かつ外向きの塊みたいなリリックですからね(笑)。 
B「でも、人とは違う表現って事を考えた末にこうなった気がしますね。B-BOYって基本的に天の邪鬼だと思うんですよ」
K「俺たちの世代は特にそうかもね。今は高校生でHIP HOP聴いてるなんて奴はザラだろうけど、俺らの頃は少なかったし、情報も全然なかったわけじゃん。だけど『他の奴らが聴いてる音楽よりカッコ良いものを聴いてるぜ』って……」
B「自分に言い聞かせてたかもね。だから自分に言い聞かせるのが昔から得意だったんだよ。自意識過剰の小心者版かな(笑)。今更そんな事気付いちゃったんだけど、大丈夫かな?」
 
■まあ、その悩みは後で解決して頂くとして(笑)、STERUSSはいわゆる「大きな物語」、例えば「ボロ儲けしてリムジンで」とか「天下国家を」と言うような事よりも、眼前の光景をいかに表現するかっていう「小さな物語」を描くグループだと思うんですね。その指向性は何故? 
B「大きなモノってたくさんあると思うけど、自分の中の心情や感覚って、外の世界よりも深くて広いモノなんじゃないかって思うんですよね。その引き出しで書いてますね、僕は。だからマイペースになれればなれるほど、自分の音楽性が表現出来るんですよ。だから自分の中から書こうって気持ちがありますね」
C「純粋に自分達の音楽をやろうとしたら、大きな世界は書く必要がないし、それより経験や教わった事を表現しようとしたらこうなったんだと思いますね」
B「でも、例えば『世界は今』みたいな事を無視してる訳じゃなくて、その情報も自分の中に蓄積されてると思うんですね。その蓄積されたモノが違う形で表現されてるんだとも思いますね」
 
■なるほど。えー、非常に抽象的な質問が続いてしまって申し訳ないので……もう少し具体的に。ではガラッと質問を変えると、今作は非常に客演が絞られてますね。 
K「制作の方法論も変えたっていうのもあるかも知れないですね。今回は本当に自分達だけでガッチリ作ったから」
 
■その方法論を変えた理由は? 
K「最初から『変えよう』と思ったわけじゃなくて、作っていく過程でそうなったというか。制作途中に『今回の客演はどうするか』って事を考えた時に、『ラッパー/トラック・メイカーの客演はなしでいこう』と。だから探りながらですね」
B「STERUSS自体がグループな訳だから、今回はこれだけでもヴァリエーションが生まれてるし、これ以上今回は良いかなって」
C「シンプルにしたいというか、『客演を呼びたいから曲を作る』って考えは排除しようと思って。客演を呼ぶのはもちろん面白いし、一緒に曲を作りたいアーティストは本当に沢山いるけど、この形で完成した上で更に客演のための曲を作る必要はないだろうなって気持ちですね」
K「SUIKAのtotoさんはポエトリー・リーディングで、女性で声質が全然違う人なわけだから、STERUSSとして一緒に曲を作ってみたかったし、鈴木勲さん、スガダイローさんのようなプレイヤーとも一緒に作ってみたかったんですよね」

■では、“尖”に 鈴木勲&スガダイローという、ジャズ・プレイヤーを呼んだ理由は? 
K「それは“真夏のジャム”(『白い三日月』に収録)で俺が勝手にサンプリングした所から始まって。勲さんは横浜でも頻繁にライヴをされてて、コンタクトを取れるのにそれを無視するのは自分としておかしいなと思ったから直接会いに行って聴いてもらったら、『面白いね』ってサンプリングも快諾してくれて。それで、自分達のおじいさん位の年齢なのに、ヒップホップを面白いと思える、そんな凄いミュージシャンとは絶対に何か一緒に作りたいと思って、それで今回オファーさせてもらって」
 
■制作はどう進めていったんですか? 
K「まず、本格派のジャズの人で、あの年齢まで音楽一本で生きてきた人で、俺達より2倍以上も年上……その人に『こうしましょう』とは言い辛くて……(笑)。それでデモを持って行って『こういう曲をやりたい』っていうプレゼンをして、そこから進めてったんですけど……いざスタジオに入ったら全然違うモノになっちゃって、デモと同じなのはリリックだけで。だからセッションっぽいっていうか、本当に JAZZとHIP HOPのセッションになったと思いますね」
 
■いわゆるジャズっぽい雰囲気というより、方法論がすでにジャズというか。 
B「もうとにかくフリーだったよね」
 
■2人ともいわゆるビッグ・バンド的な楽譜付きのジャズじゃなくて、鳴った音にその場でどう合わせてどうセッションしてグルーヴを出すかってタイプだから、その意味ではシーケンスの中からグルーヴを産み出すというHIP HOPとは対極のスタイルですよね。
K「ホントに経験出来ない作り方を見せてもらったって感じですね」
C「何回かセッションもさせてもらったんですけど、曲が毎回違うんですよ。どこでラップに入るかも『こういうリフが4回入ったら入って』とか、目で合図だったり。そのスリリングな感じが最高に楽しかったですね」

■リスナーとしては、この客演の少なさは、「純化した形でのSTERUSSの作品を打ち出したい」のかなって思ったんですけども。 
B「そういう気持ちもあったと思うんですよね、気付かないうちに」
K「それも前作からの反動かも知れませんね。やっぱり同じモノを作りたくないし」
B「僕としては、すごくマイペースに作れたんですよね。だから納得感はすごくある」
K「STERUSSはZZ PRODUCTIONの中でも一番年上で、サイプレス上野やマイク大将と一緒にいる時間が、もしかしたらBELAMA2やCRIME SIXXXといるより最近は長いかも知れないぐらい時間を共有してるんだけど、今STERUSSとしてやらなきゃいけないかもしれないって気持ちもあった。一度は俺達だけで作り上げなきゃって気持ちが」

■それは3人とも78年生まれで、「今年30歳を迎える」っていう節目感も作用してますか? 
K「それは……あるね(笑)」
 
■俺も78年組だから凄くよくその気持ちが分かります(笑)。なんか「30までには一個『何か』を作っておきたい気持ち」ってあるじゃないですか。 
C「自然にあったかも知れないな~」
B「昔考えてた29と今って全然違うよね」
K「全然違うよ! 俺スーツ着て髪の毛真ん中分けだと思ってたもん」
 
■その仕事話を引き継ぐと、3人とも仕事を、特にMC2人は音楽とは全く別の仕事をされている訳ですけれども、「働きながらラップをする」という事はどういった意味合いを持ちますか? 
B「仕事をするのもラップするもの、今の自分を維持するための行動だと思いますね。特に『仕事を活かしたリリックを書こう』なんて気持ちはないし、自分にとって普通に生活を送るために選んだ事って感じですね。自分の中でバランスをとるために良い影響を及ぼしてると思いますけどね、僕の場合は」
K「仕事をしてないと自ら何かを探しに行かないといけないけど、仕事をしてると勝手に色んな発見がありますからね」
C「職種云々じゃなくても、仕事をしてる事自体が詩に影響してる所はあると思いますね」
B「そうだね。特にクワちゃん(CRIME SIXXX)は若い人(CRIME SIXXXの職業は高校教師)と、俺は上は100歳ぐらいの人までと接する訳だから(BELAMA2の職業は介護士)、普通の人よりも関わりの幅が広いと思うんですよね。その分、同世代と話すより違う気づきもあるだろうし」
 
■その意味では、STERUSSの音楽は年齢に関係なく聴けるものだろうし、抽象性が高いから、聴く側の精神状態でも、思考の変化でも聴こえ方が変わる部分も強い、耐久性が高いモノなんだと思いますね。 
K「そうだと良いですね。色々な捉え方があっても、リスナーの心が幸せになってくれればいいですね」
B「人それぞれ聴き方は違うと思うけど、リラックスした状況で聴いて欲しいですね」
C「長く、何回も何回も聴いてほしいですね。それで聴いてくれた人の経験に合致する事があったら、『こういう事を言ってたんだ』って気付いてくれたら凄く嬉しいですね」
 
 
STERUSS/“ソラノウタ”
 
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : 円鋭
ARTIST : STERUSS
LABEL : LOCKSTOCK/LSTCD-003
PRICE : ¥2,625
RELEASE DATE : NOW ON SALE

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