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SEEDA
LOST HEAVEN PART 1

僅か1年の間に3作というハイペースでアルバムを作り続けてきたSEEDA。その流れの締め括りとなった「HEAVEN」は、三たびシーンに衝撃を与えた傑作となった。彼は一体何を考え、そしてこの音楽にどのような足跡を残そうとしているのだろうか? 前作「街風」制作時のエピソードから目指す将来のヴィジョンまで語ってくれたロング・インタビューだ。

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

音楽を通して自由を求めてる。
日常生活で別にそんなに(自由を)求めてないな、とも思いましたし、
例えば『アルバムの60分間だけ俺に自由にやらせてくれ!』みたいな。
音楽を夢中にやってる間は天国にいるのに近いかな、って

 2006年12月「花と雨」。2007年10月「街風」。そして2008年1月「HEAVEN」。僅か13ヶ月の間に、SEEDAというラッパーは日本語ラップの常識とスタンダードを覆す作品を連発していた事になる。ここまで来ると同業者にとっては脅威どころか畏怖の念しか持ちようがないだろう。産みの苦しみを知っている者であればある程、SEEDAの成し遂げた事の大きさを理解できるのだと思う。
  
 だが、その産みの苦しみをSEEDA本人も感じながら制作を続けていたという事は、「街風」のリリース・タイミングで掲載された数々のインタビューを読めば明らかだろう。ただ、その苦しみは自身の才能のキャパシティが原因ではなく、彼を取り巻く環境が激変した為に生じた不協和音にあるというのが、一般的な意味での「産みの苦しみ」とは違う点だ。結果、彼は現時点で最も居心地の良かった完全自主制作という体制に戻って新作を制作する事になる。
 
 かくして産み出された「HEAVEN」は、短いスパンで作られたとは信じ難い表現の豊かさやデリヴァリーの安定感、世界観の揺るがなさを示した恐るべきアルバムとなった。ここまでSEEDAをクリエイティヴ的に駆り立てさせたという意味では「街風」にまつわる葛藤も決して無駄なものではなかったという事だろう。6作目にして日本語ラップの新たな希望すら感じさせる内容に仕上げたSEEDAのポテンシャルはいまだ底知れないものだ。
 
 
■本作の話に入る前に「街風」の話をしたいんだけど、リリース時、インタビューで自らアルバムの内容を否定する発言を多くしてたと思うんだけど、その真意は?
「あの時は……毒ばっか吐いてたっぽいですね(笑)。ちょっと立ち回りが下手だったかな、とは思ってるんですけど。自分名義のアルバムになる上で絶対に舵を切らなければいけない所でいくつか切らせてもらえなくて、ムカついてああいう事を言ってしまった」
 
■クリエイティヴ・コントロールという事かな?
「そうですね。自分の中にあるモンだから、第三者から見ると全く何が何だか分からなかったかも知れないですけどね」
 
■具体的にどういう所が不満だったの?
「僕はストリート色みたいのを押してやりたくなかったんですよ。僕は僕の今の生活があるし、ハードな事はそこまで歌いたくなかった。でも、スタッフ的にはそちらを押してくれ、という事で不満が溜まって。あと、曲順が決められなかった事とか。大した事じゃないですけど、僕にとっては大した事だったんです」
 
■普通、HIP HOPのアルバム出す時にレーベルと生じる軋轢とは逆のパターンだよね。ストリートな内容にしたくてもレーベルは柔らかい内容を求めてる、っていう話はよく聞くけど。そういったストリート色を排してどういう曲を本当は入れたかったの? 
「例えば『HEAVEN』に入ってる“空”とか……普遍性の強いものプラス、トラックがあったかいもので、フィーチャリングにコーラスがあったりする曲。最終的に、会社(EXIT TUNES)と自分の間の妥協点で動いてたから、微妙に自分っぽくない感じになってしまったんですよね。でも、そこは会社と話して、また同じ会社でやらせてもらうんですけど、全部自分がイヤだって言った事はナシの上でやらせてくれるって事になって。会社も全部受け入れてくれたんですよ」
 
■一方で、KREVAとILL BOSSTINOをフィーチャーできたというのは、メジャーで制作したからこそだと思うんだけど、活動のフィールドがメジャーとインディーに分かれているけど、2人とも日本のHIP HOPではトップ・クラスの勝ち組じゃない? そんな彼らと曲を作った事によって得たものはある?
「仕事として捉えてやらないとああいう風にはならないな、って思いましたね。ダラダラやって『あ、今日はノリでアイツを入れよう』とか、ノリで全部やらない人達ですね、あの人達は。しっかりしてて。サラリーマンが会社行って働くように、しっかり取り組まないと食っていけない。逆にそこをやっていけばそれも見えてくる。自分がやりたい事がハッキリしてないとダメだとも思いましたね」
 
■今作の「HEAVEN」っていうタイトルを目にした時、“花と雨”に象徴されるような、SEEDA君の持ってる死生観が表われてるアルバムなのかな?と思ったんだけど、実際聴いてみると、そういう部分はいくつかあるんだけど、決してそういう内容がメインのアルバムではないよね?
「そうですね。音楽が自分にとって何か?って考えた時に、『自分にとって自由だ』っていう事に気付いて。それをオーヴァーに言ったら『音楽=天国』って事じゃないですか」
 
■音楽をやるっていう事が自分にとって自由というものを象徴する行為という事?
「音楽を通して自由を求めてる。日常生活で別にそんなに(自由を)求めてないな、とも思いましたし、例えば『アルバムの60分間だけ俺に自由にやらせてくれ!』みたいな。音楽を夢中にやってる間は天国にいるのに近いかな、って」
 
■自由を求める行為というのは、SEEDA君にとって現実逃避みたいな部分もある?
「そういう面もありますね。“紙とペンと音と自分”とかは『人に言えねぇけど、実はこういう事ノートに書いてたんだよ!』的な、しょっぱい事を歌っても良いじゃん、みたいな(笑)。最後の“NICE DREAM”も『いつ自分が消えるか分からない』と思わなければ書けなかった曲だし。一歩ズレたら痒いような事も歌いまくってる感じですね」
 
■以前のSEEDA君の曲は、自嘲しているような言い回しが時々出て来てたと思うんだけど、あれってこういうストレートなリリックを書くのにテレがあった結果だったのかな?
「そうですね。それはありますし、もっと遡れば英語を多用していた時は自分が喋りたいテンションが英語でしか浮かばないから英語で書いちゃったりしてて(笑)……去年観たBOSS君のライヴが衝撃的で。曝け出しても、その曝け出してる自分が強かったらアリだな、って思ったんですよ。BOSS君、般若君、MACCHO君、この3人が持っているものは何処でライヴをやっても衝撃を与えられると思う。自分もそういうライヴがしたいですね」
 
■今挙げた3人って、SEEDA君が影響を受けてきたラッパーとして前から挙げてきた人達だと思うんだけど、3人とも凄い「日本語ラップ的」な人達だよね。SEEDA君はよくバイリンガル・ラッパーと言われる事が多いと思うんだけど、実際ファースト「DETONATOR」とか聴くと凄く日本語ラップ的なリリックの作り方をしてたりしてて、ベーシックな部分では日本語ラップの要素を物凄く持っていたと思うんだ。で、そこから英語を多用するリリックになった事でそこがぼやけた時期があったと思うんだよね。そこが「花と雨」辺りでまた戻ってきたように思うんだけど、日本語ラップに対する意識ってここ数年で変わってきたりはしたの?
「正直変わっていないです。結局僕が好きなHIP HOPはアメリカも日本も変わらなかったっていう。ただ、ぼやけてたって言われてた時期は、自分の中でフロウのレヴェルをもっと上げたいと思ってやってたんです。その当時聴いてたものも、今般若君のCDを聴いて好きな部分も同じですね。例えば2PACの叫ぶような、感情を出す部分ってBOSS君も持ってると思うし、同じだと思うんです。逆に、別に今のアメリカのメインストリームのHIP HOPも好きじゃないし」
 
■ただ、ここ最近は意識的にリリックから英語を外してきてるわけでしょ? それこそ英語のHIP HOPも日本語のHIP HOPも根っこが同じだと言うのであれば、以前のように英語が多くても影響がないと思うんだけど?
「『花と雨』からなんですけど、その前の『GREEN』っていうアルバムを作った時に、一生懸命書いた歌詞が『何言ってるか分からない。歌詞カード読むと分かるけど』って言われるのがイヤで。特に日本人にCDを売るわけじゃないですか。だから、日本語が一番伝わりやすいんで日本語を増やしたいっていう。一番伝わる感じが良いんです」