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NORIKIYO PART 1

クラシックの呼び声高い1stアルバム「EXIT」から僅か1年で、NORIKIYOは前作とは別次元の新たな傑作を生み出した。BACH LOGICとの共作と言ってしまってもいいだろう新作「OUTLET BLUES」は、ラップ/トラック共に現在の日本語ラップ最高峰のクオリティを放っている。満を持して掲載の超ロング・インタビュー。2回に分けてもったいぶりながらアップしていきます!

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

やっぱり感動に人は金を落とすと思うから、
コール&レスポンスとかはあくまでオカズで、
メイン・ディッシュがどこかっていうのが最近分かってきた。
高みというか、奥深さを知ったって感じですね。
音源ありきではあるけど、ライヴが命だと思うし、ライヴがダサかったら意味ない

 BACH LOGIC(以下BL)が全曲をプロデュースすると発表された時点で、NORIKIYOの2ndアルバムが今年の日本語ラップの中で最も話題を呼ぶ作品になることは約束されたようなものだった。それは、BLが同じく全曲を手掛けたSEEDA「花と雨」が起こした衝撃、そしてあのアルバムがハードコアな日本語ラップにおける表現の、全部とは言わないまでも特定の部分において限界を押し広げた功績があるからだ。NORIKIYOは、影響は受けてはいるだろうが確実にSEEDAとはまったく別の視点を持っているラッパーだ。だが、「花と雨」が与えたその後の影響なくして、NORIKIYOが現在置かれている地位や評価はないのもまた事実である。それはNORIKIYOがどうだ、という話ではなく、受け手側/シーンの側の勝手な見解なのかも知れないが、筆者含め我々リスナーは、ある種勝手にストーリーを描いていくことでその作品にロマンを加えていくのだと思う(JAY-Zの「REASONABLE DOUBT」が何故リリースされた数年後にクラシックと呼ばれるようになったのか?それは、作品の内容が変わったからではなく、リスナーが抱くストーリーに彩られた作品のイメージが変化/更新したからである)。 

 と、考えると、インタビューの後編でNORIKIYOが「シーンに対して興味はない」と語っていても、彼の存在は確実に今のシーンと繋がっている筈だし、今作「OUTLET BLUES」は現在のシーンを象徴/代表する作品と言えるだろう。シーン最先端のビートに乗ったシーン最先端のラップ。完成に至るまでの文脈から実際に完成した内容まで、こんなにヘッズを興奮させる要素に満ちたアルバムもそうそうないだろう。好みは人それぞれだが、このアルバムをスルーすることは、日本のHIP HOPにシーンが存在すると信じているリスナーなら絶対に許されない。

■今、NORIKIYO君のようなハードコアなHIP HOPアーティストがメジャー流通でリリースすることにどのような意味があると思いますか?
「まず、自分がハードコアだとは思わないですね(笑)。ハードコアが何なのかはよく分からないけど、自分がハードだとは思わないし、至って普通の環境だったし。たまたまズルをするのが上手くて街の裏側にいる時間が長かったのかも知れないけど、見れば分かると思うけど渋谷や池袋、新宿にハードな奴はゴマンといるし、どう考えても俺よりMSCやBES君とかの方がハードコアでしょ。それを考えると俺は全然ハードじゃないし、自分がメジャー流通で出すっていうのは、たまたまそういう環境になっただけ。ただ、俺のリリックが引っかかった時に初めてちょっと考えた。最近は責任感というか、自分がヤバイと思うアーティスト……THA BLUE HERBだったり般若君のライヴだったりを観てちょっと意識が変わってきた。やっぱ自分だけの問題じゃなくなってきたというか、自分の曲ではあるけど解釈するのは聴いた人だから、そういうのも含めて責任感が出て来ましたね」

■そういう思いはアルバムを作ってから芽生えた?
「作ってからよりそう思うようになったし、作ってる最中もそれを感じ始めてた。般若君やMACCHO君のライヴや、5月の『GO OUT!』でBOSS君のライヴを観て、ロックしてる人……無理矢理『セイ・ホー』を何回もやって盛り上げるみたいな無理をしない人たち……歌詞を聴いて、歌詞のポイントで盛り上げられる……究極言っちゃうと知らない曲でも盛り上がれる。般若君やMACCHO君とかそうじゃないですか。俺、BOSS君の曲とか数曲しか知らなかったけど、凄い感動したし。やっぱり感動に人は金を落とすと思うから、コール&レスポンスとかはあくまでオカズで、メイン・ディッシュがどこかっていうのが最近分かってきた。高みというか、奥深さを知ったって感じですね。音源ありきではあるけど、ライヴが命だと思うし、ライヴがダサかったら意味ない。よくよく考えると、音源って音やジャケしか情報はないけど、ライヴは目の前でそいつがいて、目の前で歌ってるわけだから、それがダサかったらどう考えてもおかしい(笑)」

■最近では珍しい、先行カットの12インチ・リリースがトピックの一つとして挙げられると思うんですけど、このご時世に敢えてアナログをカットする理由は?
「俺はDJもやってたから、最初はただ単に俺のアナログが欲しかっただけなんですよ。無理言って作ってもらったんだけど、やっぱアナログは消えてほしくないし、出発地点というか、DJたちが現場でかけるというのが正しい波及の仕方だと思う。アナログが消えてほしくないという義務感で作ったわけではないけど、そこのラインは残しておかないとダメでしょ、とは思った。土臭い所というか、モノがなくなってデータだけのやり取りはそりゃ便利だけど、般若君も言ってたけどそこにシーンはないから。これから出来るのかも知れないけど、目に見えない所で人とやり取りするから反応も分からないし」

■HIP HOPアーティストとして本質的な部分ですよね。
「キッズたちに向けて配信するのもいいけど、現場を司ってる指揮者たちに渡しとかないと意味がないと思う。この文化は現場ありきだと思うし」

■12インチと共に、先行でミックスCD「RE-ROLLED UP 28 BLUNTS」も出しましたよね。最新作の前振りにしては豪華すぎるぐらいの完成度でしたが、あのミックスCDを出した理由は?
「あれは、アルバムの前に一枚出して、一個のものを売るためにもう一個売るっていう作戦もあったけど、ただ単純に夏まで制作してる間の金がなかったから、こりゃ暮らせねぇよ、ってなって(笑)。ライヴのギャラも多くもらえるようになったけど、とても食えてるとは言えないから、その間の繋ぎで何が出来るかって考えた時、『CONCRETE GREEN』で出会ったトラック・メイカーたちや、SEEDAが紹介してくれたコネクションとかもあって、協力してくれる人がいっぱいいたから作れた」

BL君の新しいトラックを聴いた時、USを超えたというか、
USのメインストリームより新しい、何か違うものがここにあると感じた。
最初は戸惑ったけど、目の前にこんなに美味しい料理が乗っかってて
それを食わない手はない、って思ったんですよね

■「RE-ROLLED UP〜」や「EXIT」を聴けば明かですが、NORIKIYO君の周りには良いトラック・メイカーが多いのに、今回全曲BL君にトラックを依頼したのは何故?
「BL君の曲は聴いてイメージが浮かばない曲が少ない。何らかのイメージや感情が湧いてくるからリリックを書きやすいんですよ。後は人参ぶら下げられたっていうか、アルバムを今の会社で作るってなった時の打ち合わせで社長が『全曲BLプロデュースとかどう?』って言ってきて。『そんな金出してくれんの?ならそれで!』って」

■BL君がアルバム一枚を丸々プロデュースするのはSEEDA君の「花と雨」以来だと思うんですけど、「花と雨」を意識したというのはないんですか?
「BL君オール・プロデュースってなっていざ作り始めるってなった時に、『花と雨』っぽい内容のアルバムは作らないようにしよう、っていうのは俺とBL君の中であった。比べられるだろうと思ったから、全然違うものを作るつもりで俺はトライしたんですよね。で、12曲くらい選んで9曲くらい録った段階で、BL君が首かしげて『一回アルバム解体しない?新しいの作るから』って言ってきて(笑)。『何でよ! 急にどうしたんすか先生?』って言ったけど、俺はBL君お得意のサンプリングの土臭い曲ばっかり選んでて、BPM的にも作風的にも似通った曲が多くなっちゃったんですよ」

■「RE-ROLLED UP〜」に入ってるヴァージョンの“BAD & GOOD”のような曲(“BAD & GOOD”のアナログにも収録)、ってことですよね。
「そうそう。ああいう曲がいっぱい揃っちゃって、一個一個聴くともちろん良いんだけど、まとめて聴くとのっぺりしてメリハリが利いてない感じになっちゃって。BL君が『このまま作っても良いものは出来るけど、新しいものじゃない』って言って『確かに』みたいになって。で、BL君に最近作ってるビートを聴かせてもらったら、ガンガンシンセ弾きまくってて『これトランスじゃん!』みたいな(笑)。今じゃ慣れたけど、4つ打ちとかトランスみたいなビートばっかで、ラップは出来るだろうけどどうやって自分のスタイルで乗っけたらいいんだろう、って思った。で、その時にBL君が『土臭い曲は全部排除!サンプリングはしないでシンセで無茶苦茶ぶっ飛んだ、ポップじゃないけどラジオとかで聴けるようなクオリティの高いトラックにして、ラップは何も変えないでいいから、こういうトラックに乗っけてみたらどうなるか、化学反応を見たい』って言ってきて、それは面白そうだと思った。ただ、一曲だけ土臭い曲で自信あるのがあるからそれだけなら入れていい、って言ってきたのが“アウトレットブルース〜蛇の道をゆく〜”なんですよ」

■「EXIT」のトラックはNORIKIYO君の思う王道のHIP HOPサウンドに対する思い入れを感じていたんですが、やっぱりBL君が提案してきたトラックに対して戸惑いはあった?
「最初はありましたね。だけど、彼がやろうとしてることが分かったし、違うものを作る、今までないもので勝負しないと面白くないから。聴き手は2作目に1作目と同じようなものを求めるし、俺も1枚目と同じような感じを(リスナーとして)自分が好きな人たちに求めていたけど、一方で2枚目で1枚目と違う内容のものを出してきた時、リスナーとして俺は頷かされてきたから。だから、俺も違うことやって頷かせよう、って。BL君に曲を変えないか、って言われた時にちょうど般若君が“夢の痕”のプリプロをしてて、帰りに般若君を送ってく時に『根っこが曲がった時はニセ物だけど、根っこが一緒だったらトランスでも何でもお前が出てたらお前だろ』みたいな事言われて間違いねぇな、って思って。結局俺は俺のやるべきことをやればいいんだ、って思うようになった」

■僕はこのアルバムを聴いて物凄いスリルを感じたんですよ。BL君の音はUSのHIP HOPやポップスに影響を受けていて、参照している部分も多いと思うんだけど、彼が作る音は確実にUSの音とは違う、新しい何かがある。そういう思いにさせられる音って、実は日本語ラップでは今までそんなに聴いたことがないんですよ。USに匹敵するクオリティという意味では今までいっぱいあったかも知れないけど。で、そんな新しいトラックに、現在日本語ラップ・シーン最先端のNORIKIYO君のラップが乗っかってるというのは凄くワクワクさせられました。
「嬉しいですね。実際BL君の新しいトラックを聴いた時、USを超えたというか、USのメインストリームより新しい、何か違うものがここにあると感じた。最初は戸惑ったけど、目の前にこんなに美味しい料理が乗っかっててそれを食わない手はない、って思ったんですよね。こういうトラックが出来たてのタイミングでコイツのトラック独占できるんだ!って。めちゃめちゃ棚ぼたですよね」

■“ALL CITY BOMBING”のトラックはエレクトロでもロックでもない、かなり新しいサウンドですが、この曲はどういう経緯で出来たんですか?
「あれは一番最後に出来た曲で、ラップの入った曲は12曲出来てたんだけど、何か足りないとは思ってたらBL君が『最近超ぶっ飛んだ曲が出来た』って言ってきて。『キー君の曲は全部シリアスだから、力抜いて聴ける曲が必要だよ。一曲出来たからやってくれます?』って言われたから『いや、やってくれますも何も一回聴かせて下さいよ』って言って(笑)。『いや、これはやってくれるって言わないと聴かせられない』って言われて『じゃあやりますよ!』って言ったらあの曲で。最初聴いた瞬間、これはMICHAEL JACKSONか、ってぐらい思って愕然として。最後に問題が降りてきた(笑)。それに加えてフックのパンキッシュなところには女性ヴォーカルを入れたい、って言ってきて、俺はどうなるのか全然想像が付かなくなって、新しすぎて曲がイメージできなくなったのは初めてだった。俺は自分がコントロールして作るのが好きなんだけど、今回は当たり前の話だけど俺とBL君が作ったから俺だけのアルバムじゃない。要は半分BL君で半分俺なんですよ。そこのバランスがこの曲だとちょっとBL君寄りになっちゃうんじゃないか、と思ったから、この曲はテーマも全部決めて、女の子が歌う所とかも俺が決めないと自分の筋がブレると思った。で、最近営業で地方に呼ばれる話をグラフィティに喩えた“ALL CITY BOMBING”っていうコンセプトを考えて。大阪にもよく行くし、韻踏合組合の中でも特によく遊ぶのが遊戯君とHIDA君だったし、彼らならこのトラックを面白がってくれそうだと思ったから彼らにフィーチャリングを頼んだ」
 
 

後編に続く

 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : OUTLET BLUES
ARTIST : NORIKIYO
LABEL : EXIT TUNES/QWCE-10012
PRICE : 2,625円
RELEASE DATE : 8月20日