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L-VOKAL

L-VOKALがメジャーに移籍してから初めてリリースするアルバム「FREE」は、そのタイトル通り、多種多様なビートの上を自由にラップで乗りこなしていくL-VOKALの飄々とした佇まいが印象的だ。今回の音楽性の変化の理由がこのインタビューで明らかになる!

インタビュー:一ノ木裕之

ラップはみんな超レヴェル上がってるけど、
音的にも雰囲気的にも新日(本)プロレスって感じがする。
固定ファンはいるけど、一般の人からしたら分かりにくいっていう。
もちろん、そっちもいいと思うけど、固定ファン向けのこともやりつつ、
大きなものをやってもいいと思う

 エレクトロ系のトラックも取り入れる等、カラフルになったサウンドとシンプルな歌詞の世界、KREVAやレーベル・メイトのMICROらに始まるフィーチャリングの布陣……L-VOKALがメジャーから発表する新作フル「FREE」は、物事を冷ややかに斜め見る視線がとりわけ印象的だった前作「LAUGHIN'」を知る者には少なからず驚きのアルバムかもしれない。それも彼のフットワーク軽いマインドと行動力の成せる業。日本語ラップがまだ開いてない引き出しはいっぱいあり、他の音楽がそうであるように、その引き出しは多ければ多いほど良いに決まってる。

■全体のカラーが前作の「LAUGHIN'」からぐっと広がったけど、今回のアルバムのスタートは?
「最初はジャズで行くって決めてて、ライヴも生バンドをイメージしてたんですよ」

■その原型は跡形もないけど。
「跡形もない(笑)。最初(DJ) DECKSTREAMのトラックを2〜3曲もらってて、『これは生バンドで』って。だけど、生バンドはやっぱり時間かかるから、もうちょい長いスパンでやろうと思って。そこでBACH LOGIC(以下BL)のエレクトロみたいな新しめの音が来て(“HYPNOTIC”)」

■“HYPNOTIC”は特にこれまでの音楽性からも飛躍が大きい音かなと。
「最初やりたかったこととイメージ全然違うなと思ったけど、これは今しか出来ないし、俺どんぐらい行けるかな、みたいな。そもそもどうやってラップ乗っけるんだろうみたいな音じゃないですか。だから、あえて乗っけたいなっていう。それでBLと2人で色々やってPerfumeみたいな歌にしちゃって、『なんだろね。HIP HOPじゃないね』とか言いつつ作ってった。そっからアルバムを『FREE』っていうタイトルにしたんすよ」

■それはリリックで書く内容も含めて自由にってこと?
「あ、もう全て全て。自由な音楽っていう。もちろん俺がやってることはHIP HOPですけど、人になんて言われるか分かんない。けど、いいやみたいな。俺が自由にどこまで行けるかなあみたいなのがテーマっすね」

■日本のHIP HOPに自由さを感じることって少なくて、HIP HOPでいることってなんて不自由なんだろってことの方が多かったりする。アルバムでは「不自由な方が面白い」って言ってたりしてるけど。
「自由なものってないっすよね、結局は。表現も限られてくるわけだし。でも、自由を求めるのが生きがい。どこまでHIP HOPをぶっ壊せるか、自分のフレイヴァーに出来るかっていうのが楽しいし、そこは大きな意味で自由を求めるみたいなところがあると思う。HIP HOPって枠の中じゃなくて全然違う要素を入れるみたいな」

■メジャーから初めてアルバム出すってなると名刺代わり的なものを出すって考え方もあるでしょ? 
「メジャー1枚目だからやっぱそれは名刺代わりだと思うんですよ。けど、別に2枚目、3枚目作ればいいや、みたいな。別に、次のアルバムで色が180度変わってもいいし、同じでもいいし」

■その点では、前作にあった名刺の一つともいうべき皮肉めいたネタやそれに類したユーモアが大きく後退してるのが意外といえば意外で。
「まあ気付いたらそんな皮肉めいたものはなくて。だから今とりかかってますね、無茶苦茶。これ、なかったなと思って。でもそれはそれでいいと思ってるんですよ。アルバムにはそれぞれストーリーがあると思うし」

■そもそも一つ一つの名刺代わりとも言えるわけだしね。ある意味、「LAUGHIN'」の頃のようなシニカルな歌詞の方が書く上では簡単だったりしたんじゃ? 
「そう。やっぱね、ディスるのってスラスラ書けるし、社会に対して言うことはいくらでもあるから。愚痴と一緒じゃないっすか。延々止まらないじゃないですか、人間愚痴り始めたら」

■多くの人にも理解されつつ、HIP HOP的に良いって言われるものの方がハードル的には高い、と。
「全然高いっすよ。それはホントに思う。ディスなんて今この瞬間に16小節簡単に書けますもん、多分。でも、良いことを言いたいとか、愛について歌いたいとかさ、ムズいっすよね。だからやっぱKREVA君のリリックは凄い。それに、彼はホントにHIP HOPが好き。会う度に愛を感じるし、お客さんの連れこみ方はHIP HOPを愛してる人の動きだなと思う」

■その意味では「LAUGHIN'」の頃は歌う視点も、ラップを向ける対象もよりミクロなところにあったっていう。
「かもしんない。『LAUGHIN'』の時はもうちょいアンダーグラウンドなHIP HOPにこだわってた気がする。けど、今回は音楽をやりてえなって感じがすげぇあった。『LAUGHIN'』みたいなことでヘッズはロックできても、日本全国はロックできない。『LAUGHIN'』みたいなモンを聴いてもらうためにはもっと色んなことやんないといけないと思うし、チャレンジしていきたいんですよね」

■そういうところはすげぇ大事だと思う。
「いや絶対っすよ。みんな基本的に一緒。ラップはみんな超レヴェル上がってるけど、音的にも雰囲気的にも新日(本)プロレスって感じがする。固定ファンはいるけど、一般の人からしたら分かりにくいっていう。もちろん、そっちもいいと思うけど、固定ファン向けのこともやりつつ、大きなものをやってもいいと思う」

■色んなお客さんを連れて来れるようになればいいし、また連れて来られる音楽を作らないとっていう?
「まだまだ出来てないけど、夢はそうっすよ。4つ打ち好きでもポップスのお客さんでも、もっと俺のライヴに来ればHIP HOPが活性化されるし、そしたら(例えば)GEEKのCD買ったりSEEDAのCD買う人もいるかもしんない。SEEDAにしても、もっとぶっ飛んでくれたら、SEEDAのファンが俺のCD買うかもしんないし。D.Oさんがすげぇ良い例ですよ。やっぱ外に出て営業しないと」

■その点では今回の客演のメンツも象徴的なかも。KREVA、MICROの両氏からNIPPSさんのような人まで。
「フィーチャリングもそういうことだと思う。今回も自分で全部ゲットしにいった、俺が尊敬してる人たちだし、向こうにも絶対リスペクトのある人たち。仕事のために作った曲なんてないっすよね、メジャーだからと言って」

■以前から日本語ラップへのきっかけになったと話してたNIPPSさんとの共演は特に念願だったのでは?
「前に何回か道端で会ったことがあってデモ渡してて、チェックもしててくれてたから、またバッタリ会ったときに『曲やりたくて』つったら『全然いいよ』みたいな感じで」

■共演した印象は?
「天才っていうか、自分がフェイクだなとか思っちゃうぐらい天然のアーティストですよね。思うがままに生き、思うがままに喋り。俺が初めてカッケェと思ったラッパーだし、一緒にやるのは夢だった。それが叶っちゃったから、自分の中で色んな意味で大きな曲ですね。後は次行くしかねえなっていう」

■その“次”の活動については今どう考えてます?
「『LAUGHIN'』の次だからこう来るって思ってる人の予想を完璧崩したなっていうのがあるから、次もまた崩したい。常に期待は持たせたいし、今度は何で来るんだろう?みたいなアーティストが理想だし面白い。そんな奴になれたら嬉しいっすね」

■重ねてアルバムについて一言。
「最初は最初でストーリーあるし、真ん中は真ん中で、最後は最後でストーリーがある。じっくり聴いてもらいたいアルバムになったからゆっくり噛んでほしい」
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : FREE
ARTIST : L-VOKAL
LABEL : FAR EASTERN TRIBE RECORDS, ユニバーサルミュージック/UMCF-1011
PRICE : 2,500円
RELEASE DATE : NOW ON SALE