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GEEK

「CONCRETE GREEN」シリーズなどでのフックアップをきっかけに、急速にそのプロップを上げてきたGEEK。実は10数年に及ぶ長いキャリアを持つ彼ら。そんな彼らの確かなスキルは昨年リリースされた1stアルバム「LIFE SIZE」で作品という形で見事に開花。今年はOKIのソロ・アルバムも高評価を得たが、早くもグループとしての2ndアルバムもリリースさせた。その長かった不遇の時期を取り返すかのように、彼らは充実した制作活動を行なっていることは、このインタビューからも明らかだろう。

インタビュー:高木晋一郎

やっぱり、嬉しいんですよね。
昔は作っても聴いてくれるのは地元の友達しかいなかったのに、
今はそれよりももう少し反響があるから、
嬉しくって書きたい欲求と作って聴かせたいって感情が湧きますよね。
だから、今は作ることが楽しくてしょうがないんですよ——OKI

 コンピへの参加や客演を経て、昨年にはデビュー・アルバム「LIFE SIZE」を完成させ、今年上旬にはOKIがソロ・アルバム「ABOUT」をリリースし、その注目度の高さを確かなものにしたGEEKが、2枚目となるアルバム「LIFE SIZE II」をリリースした。彼らの作品から感じるのは、タイトルにもある通り身の丈の世界を描きながらも、それに「共感をしてくれ」というような感情はあまり感じさせない、いわゆる「あるあるネタ」に陥らないリリックの確かさだろう。それは日常性にプラスし、それを興味深い内容に変換しラップする話術(構成力)の高さ、かつラップでしかありえない情報量を活かした描写力の明瞭さという、至極まっとうなラップ表現こそが内容の確かさを保証している。声のでかさや繋がり、社交性や政治性ではなく、「ラップの良さ」だけで注目を得ていく彼らの歩みは、やたらと痛快だ。

■まず、作品の話に入る前に聴きたいんだけど、前作「LIFE SIZE」、それからOKI君のソロ・アルバム「ABOUT」をリリースしたことによって、自分たちを取り巻く状況は変わったと感じる?それは今回収録の“BEFORE AFTER”でも語られてるけども。
OKI(以下O)「いろんな面があるけど、90%は良い方向に進んでますね。残りの10%はまあ色々あるんですけど(笑)。例えば“BEFORE AFTER”や“無賃乗車”みたいなリリックは、『LIFE SIZE』の頃は書けなかった内容だと思うんですね、そういう経験がなかったから。そういうトピックが増えたのは嬉しいですね」
SEI-ONE(以下S)「俺は、『ABOUT』を聴かせてもらって、俺もちゃんと頑張って成長しないと、聴いてもらえないだろうってのは感じていましたね」

■そこで訊きたいんだけど、「ABOUT」の注目にSEI-ONE君とEDO君はどういう感慨を抱いたの?
S「もう『すげえな』って。OKI君が凄いのは昔から知ってたんだけど、それがひとつの形になったらこんなハンパないことになるんだって。自分としてもソロ・アルバムのハードルは相当高くなったと思いましたね」
DJ EDO(以下E)「GEEKの2MC/1DJのスタイルの中から、1MCとして飛び出したらどんな形になるのかは、ソロを作ってるって話を聞いてたときから楽しみだったし、結果カッコ良かったから、今回のアルバムを制作する弾みにもなりましたね」

■なるほど。今回の制作はいつ頃から?
O「9月に1週間、北海道のスタジオを押さえて合宿スタイルでガッと録ったんですね。そういう状況だったから、3月ぐらいから色々進めていって、スタジオに入るまでにリリックは当然全部書いて、事前に歌い込みもして録音に臨むって感じでした。でも作業の進め方の関係で、3日間で15曲を録らなくちゃいけなくなって……」

■タイトすぎる!
E「2人ともヴォーカル・ブースに住んでるみたいになってたもんね(笑)」

■今回は多数のプロデューサーの起用によってか、音的に凄くカラフルな仕立てになったと思うんだけど。
O「幅広くやりたいってことを考えてて、そこはかなり意識しましたね。元々3人ともBOOT CAMP CLICKとかが好きだったから、重くて遅いビートがこれまでの中心だったんだけど、今回はBPMだったら60から130ぐらいまで、いろんなビートを試したかったんですよね」

■その意識に至った理由は?
O「自分たちの状況の変化ですね。『LIFE SIZE』はトラック・メイカーなんてSEI-ONE君かDJ EDO君、それか地元の友達ってぐらいだから、身内で作った感が強かったんですけど、あの作品でいろんな人が注目してくれて、色んなトラック・メイカーともコンタクトがとれるようになったから、カラフルに、リスナーを飽きさせないようにっていうのは意識しました。俺、YOUNG JEEZYの曲も、当然ラップもスゲェ好きなんですけど、アルバム一枚を纏めて聴くと……」
S「『みんな同じ曲じゃないの?』って(笑)」
O「そう。『さっき聴いたかも、この曲』って(笑)。そうならないようにですね」

■今回の作品で一番印象的だったのは、ひとつひとつのトピックスが凄く明確で、リリックもそのトピックをしっかりと支えるように軸をぶらさずに書かれているってことだったんだけど。
O「もともとGEEKはトピック先行なんですよね。まず前提となるトピックスを決めて、それからトラックを選んで、その上でリリックを書くのが大体の手順で。プラス、トピックを『言い切れる』ことが最近になって出来るようになったんだと思います。その上でひとつのトピックのもとに話を広げていった前回と違って、今回はトピックを『掘り下げていく』って展開を考えてましたね」
S「『俺はこのトピックにこういうことを書く』ってリリックを提示したら、OKI君がそれに応えて書く。その逆もそうなんですけど、それによってひとつのテーマがより深く表現できるようになったのかなって」

■大ざっぱな言い方になるけど、今回は分かりやすく言えば“笑える曲”も“泣ける曲”も“社会派”も含めて、トピックはかなり広範に選択されてるけど。
O「制作に入る段階で、ある程度アルバムの全体像を考えながらトピックを決めて選抜していきますね。それで大体6曲ぐらい曲が出来た段階で、『今足りないトピックやトラックはなんだろう』ってことを考えて、そこを補っていく方法ですね。だからバランスが良くなるのかも。それでテーマが決まったら、1ヴァース書いて、それをSEI君に送るんですね。その帰りを待つ間に新しいバースを書き始めて」
S「だからテーマをもとに、OKI君のリリックに対して『俺はこう思うんだ』ってことをヴァースに綴るってやり方ですね。その逆もあるんですけど」

■対話型というか。例えば相手のリリックに関して「ここはこう変えようよ」とか、ディスカッションする場合はあるの?
O「今回、というか今までまったくないですね。逆に『やべえリリック出してきたな〜』って感心するばっかりで(笑)。自分で納得がいかなかったり、『喰われた』とか思ったら書き直すけど、相手のリリックに意見することはないですね」

■EDO君が客観的に意見したりとかは?
E「ないですね。MC2人に関しても、お互いに褒める意見しか聞いたことないですね。それが良い刺激になってるんだと思うんです」

■どれだけリスペクトし合ってるんだって気もするけど(笑)。でも凄く意外な話に思えた。これだけ明確にテーマに絡む精度の高いリリックをお互いに出して、その軸がぶれないって事は、合議のもとにリリックを練ってるのかなとも思って。
E「やっぱり、なんだかんだ10年以上一緒にいて、『リズムが合う』のかなって」
O「地元は違うけど、環境や好きなモノ、見てきたモノが近いから、価値観もかなり近いんだと思うんですよね。でも、それには10年って時間が必要だったと思いますね」
S「『CONCRETE GREEN』や『LIFE SIZE』以降、いろんな人や状況から刺激を受けてるけど、昔から俺にメチャクチャ刺激をくれてたのはOKI君だし、いまだに一番刺激をくれるんですよね。それが俺にとっては凄くラッキーなことだと思いますね」

■では、お互いの凄さってどんな部分?
O「SEI君はリズムの取り方がとにかく黒人(的)なんですよ。遅くビートを取ってもしっかり首が振れるラップが出来るっていうのには憧れますね」
S「俺はOKI君のリリックの鋭さですね。高校の頃から『OKI君はスゲェ色々考えてるな』って。そこはナい物ねだりかもしれないけど憧れますね。『俺は浅はかな野郎だわ』って(笑)」

■そこまで卑下する必要ないでしょ(笑)。トピックは「LIFE SIZE」、言わば日常的なトピックがベースにだけど、その指向性の理由は?
O「心から思ってないことはリリックに書けないですからね。それに、『大きなことを言えるほど大した人間じゃねえ』っていう自己認識があるんだと思うんですよ(笑)。自信満々なタイプじゃないし。でも『話は分かるけど、だからどうしたの?』ってことで終わらないためにも、起承転結をしっかりつける意識はしてますね」
E「大声で意見を押しつけたりは出来ないけど、『こうした方がいい……かもね』とか『俺らはこうする……よ』ぐらいは言えるっていうか(笑)。でも、そういったメッセージの打ち出し方だからこそリリックが分かりやすくなるって言うのもあるかも」

■だからか、もの凄く普遍的な内容になってるよね。だから、愛だの恋だのとか、頑張れソングじゃなくても、非ヒップホップ・リスナーに届くリリックを書けるってことをこの作品は明確に表わしてるなって思った。
O「勝ち上がることよりも生き残ることを意識してますからね(笑)。ライヴをこなせばこなすほど、自分たちの素の部分を出せるようになったし、より正直なリリックが書けるようになったから、自分たちらしいアルバムが出来たかなって思いますね」

■最後に、これからの動きを教えて。
S「ミックスCDを自分たちでリリースしたいなって計画があって、それは手がけ始めてますね。でも、ミックスだけどもクオリティはアルバムと変わらないものを作ろうと。それを来年の早いうちには」

■凄く活動的にリリースを続けるんだね。
O「やっぱり、嬉しいんですよね。昔は作っても聴いてくれるのは地元の友達しかいなかったのに、今はそれよりももう少し反響があるから、嬉しくって書きたい欲求と作って聴かせたいって感情が湧きますよね。だから、今は作ることが楽しくてしょうがないんですよ」

“PIPE DREAM”のPVはコチラ!↓
http://amebreak.ameba.jp/media/2008/12/000593.html

 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : LIFE SIZE II
ARTIST : GEEK
LABEL : KSR/KCCD-350
PRICE : 2,415円
RELEASE DATE : NOW ON SALE