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DABO

ソロ・デビュー、そしてニトロも10周年という記念すべき2009年に、DABOがこれまでの活動を総括したベスト・アルバム「I'M THE BEST」をリリースした。3枚組という圧巻のヴォリュームには、彼が日本語ラップ・シーンに残してきた大きな足跡が確かに刻まれていると同時に、アルバムごとに大きく進化を遂げていく様を再確認することで今後への期待を強めさせてくれるものとなっている。

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

活動的にはまだ一周してないって思ってるけど、
「ラッパー:DABO」としてはデビュー10周年だから、
そういう物差しでは完全に一周なわけで。
「10年も時間あったのにまだこんだけしか出来てない」って思うから、
もっとやんないと、って思ってる。
だから、今の俺はハングリーだよ

 DABOが初めて音源という形でその存在をあらわにしたのがSHAKKAZOMBIEの“共に行こう -version pure-”(97年)での客演。以来、彼は「ヴェテランが脅威に感じるイキのいい若手」から「日本語ラップ・シーンの稼ぎ頭」、「ムーヴメントを牽引する中堅」、そして「ベスト・アルバムをリリースした10年選手」といった感じに、堅実にそのキャリアを築き上げてきたし、その時期その時期に相応しい称号をしっかり得てきたように思える。そして、それは実際に今回のベスト・アルバム「I'M THE BEST」に耳を通したリスナーなら誰もが感じることなのではないだろうか?だが、一方でこのベスト・アルバムにはパズルのピースのように欠けているものがあるような印象を受けるのも事実。それは、欠陥という意味ではもちろんなく、将来のたために残されたものだ。彼のこれからのキャリアは、その欠けているピースを埋める作業と言っても過言ではないのかもしれない。事実、DABO自身の今後に向けた焦点も、ベスト・アルバムを出したことによって更に定まってきていることは、以下のインタビューを読んで頂ければ明らかだろう。

■ベスト・アルバムが完成しての感想は?
「……不思議な感じだよねー。ベスト・アルバムって不思議だね、初めて作ったけど。普通のアルバム作りとはまったく違うからさ、稼働もほとんどないし。選んで並べて、って感じだからさ」

■「自分がベスト・アルバムを出す」ということに対しての感想は?
「出しちゃったなー、みたいな。感慨とかは別にないんだよね」

■それはあくまで通過点だから?
「そうだろうね。『集大成』って言われるだろうし、当然売り文句に入ってくるんだろうけど、そうとは言い切りたくないな、って。昔の曲がいっぱい入ってるから、本人的に『まだまだ全然(技術的に)出来てないな』って思ってしまう自分もいたりして。このアルバム作るにあたってひたすら昔のアルバム聴いたりしてたからさ、『このときこうしといたら良かったなー』とかが出て来て止まらなくて。でも、それは俺がひとりで気にすることであって、作品としてはリスナーのみんなには楽しんでもらえるものになっているとは思うからオススメなんだけど、本人的には自分の伸びしろがまだあると思うから、全然もっと新しいことをやりたい、っていうことの方が大きい。だから、このアルバムのパッケージもシンプルな感じにして、ジブさんの豪華なベスト・アルバムとは対照的なアプローチにしたかったんだよね。ジブさんはあのぐらい豪華にするぐらいベスト・アルバムは感慨深かったんだと思う。武道館とかも観て『あー、この人は一周やりきってる人だろうな』って思った。でも、俺はまだそこまで行ってないと思うから」

■“一周感”っていうのは確かにあるかもしれないですね。確かに今回のベスト・アルバムは、RHYMESTERやジブさんというよりはKREVA氏のそれに近いな、と思ったりはしたんですよね。で、その違いって今まで作った曲数が多いか少ないかの問題じゃないんだな、って思って。曲数で見るとRHYMESTERよりDABOさんの方が多い可能性すらありますからね。
「そうだね。俺はこないだ34歳になったんだけど、RHYMESTERやZEEBRAが同じ歳の頃なにしてたんだろうなー?って思うと、今の俺ぐらい(の立ち位置)だったのかも、って思うよね。RHYMESTERやZEEBRAはさんピン世代なわけで、彼らは日比谷野音から武道館だからね。それは確実に“一周”だと思うよ」

■ちなみにラップを始めたのは何歳なんでしたっけ?
「始めたのは17歳ぐらいの頃だね」

■ベスト・アルバムに関する感想としては概ね今おっしゃったような答えが返ってくると思ってたんですが、その心境で敢えて現時点までのキャリアを振り返るとどうですか?
「 まあ、波瀾万丈じゃないの?」

■でも、ニトロ以降はそんなに波が激しかった印象はないですけどね。
「ニトロ以降はね。(ニトロ以前は)ラップできるダメな人みたいな感じだったからさ(笑)。浮き沈みというより、沈んだところから上がったって感じだから波瀾万丈じゃないかもな。ドラマティックって感じかな?」

■余談ですが、最初に書いたリリックって覚えてます?
「あー……DABOっていう名前の前のMCネームがあるんだよね。“Q太”って名前だったんだよ。Q-TIPが好きだったからってだけなんだけど(笑)。何ヶ月ももたなくてすぐDABOに変えちゃったし、しかもラップ書いて家の鏡の前でラップするってだけだったしね。最初に書いたラインまではちょっと思い出せないけど」

■17歳の頃はこうしてベスト・アルバムを出すまでレコーディング・アーティストとしてキャリアを積むことになると思っていましたか?
「思って……いませんでしたね。CD出すような人間になるとも思ってなかったからね」

■ラッパーになり始めの頃もそこまでのヴィジョンはなかった?
「うん……それどころじゃないからね、10代後半は(笑)。俺なんかはクサってる普通の10代だったからさ、何にも思うようにいかない。ラップでお金をもらうっていう発想がそもそもなかったし、ただラップがしたかっただけだったからさ。昔はクラブ行ってもあんまりラップさせてくれなかったけど、インスト2枚持って行って乗り込んで『ライヴさせろ!』って、俺とK-BOMBとかやってて。『レコードならある!』って(笑)。みんな最初はそんな感じだった思うけどね」

■それが「俺、ラッパーとしてやっていけるかも」って思ったのはいつ頃?
「いやー……それこそニトロ以降、23〜4歳頃?“共に行こう”の頃もまだそんなこと思ってなかったと思うからね。99年に初めて12インチ切って○○万円もらってもまだピンときてなかったからね。やっぱりニトロの1stだろうね。勝手に盛り上がっちゃったからさ、なんか。あのときは『追い風』ってこういうことを言うんだろうなぁ、って思ったよ。客の見る目が違うワケだよ。『ま、待たれてる!』ってタマげてさ。そのときからだよね、『なんとかなっちゃうかもしれない』って思ったのは。詳しくはアメブロで書いた『ニトバナ』を(笑)」

■アメブロと言えば、選曲に関して今回はブログの読者からの投票を募ってましたが、どれぐらいその結果は反映されているんですか?
「基本モロだね。でも、大体想像していたのと変わらなかったかな。“徒然草”とかはちょっと意外だったけど、あの曲はHUNGER/MACCHO参加で面白いしね。結局入れなかったけど意外と投票が多かったのは“君の名は…(だってしょうがないじゃない)”(DABO feat. DELI, MUMMY-D)とか。結構良い順位で、『俺のファンはバカだなー』って思って超面白かったんだけど(笑)」

■新曲の“WATCH OUT (HI-FIVE)”は、まさに先ほど話してもらったこのアルバムに対するスタンスをよく表わしていますよね。それこそジブさんは“JACKIN' 4 BEATS”という、分かりやすくベスト・アルバム用に「打ちに行ってる」曲を作ったわけですよね。そういった曲とは趣が違う曲にした理由は?
「もともとベスト・アルバムに入れる用に作った曲ではないんだけど、よく考えたらこの曲はリリック的にベスト・アルバムにピッタリの内容なんじゃないの?って思って。トラック聴いたときに『新学期』とか『春の訪れ』的な感覚をビートに感じたんだ。それってまさにベスト・アルバムを出すにあたっての俺の現在の心境をよく表わしてると思うんだ」

■アルバムの3枚目は客演曲をDJ HAZIMEさんがミックスしていて、DABOさんは業界で一、二を争うぐらい客演の数が多いと思うのですが、一方で客演は最小限に留める人もいるわけで。DABOさんがここまで客演をこなしてきた理由は?
「レコーディングが上手くなるための修行の一環というか。自分名義の曲では録らないようなオケだけど、他人から言われたらやってみたいような曲もあるしね。あと、俺は人間ウォッチングが好きだから、レコーディングの作業をしていく中でオファーしてくれたその人を観察するのが好きなんだと思う。だから、俺は客演仕事は大好きなんだよね」

■今までやった客演で印象に残っているのは?
「何個かあるけどね。やっぱ笑っちゃうのは、データのやり取りで会ってないけどLL COOL J feat. DABO(“QUEENS IS (REMIX)”)とかね。アレとかは流石に自分でも笑っちゃったよね、絵ヅラ的に(笑)。あとはBoAちゃんとかCHEMISTRY(KAWABATA)とか。やっぱ人前に出てる人はプロだなー、って思わされたよね」

■歳を取るにつれてラップのアプローチにどのような変化が出て来たと思いますか?
「自分の中の流行もあれば、USの流行も目の端に入れちゃうから、そのとき好きなタイプのラップをするアーティストっていうのはいるし、昔COMPANY FLOWばっか聴いてた頃は、今の若い子がフリースタイルするときみたいな、スウィングしないラップをしてて、“MR. FUDATZKEE”とかそうだし、如何に狂ったイマジネーションをイルな詩にするとかは、90年代イズムじゃん?無名時代は基本そういうマインドでリリックを書いてた。で、メジャー入って『PLATINUM TONGUE』の頃に顕著だけど、オンで乗せるラップに変えて、ここ何年かはサウスとか、JUELZ SANTANAみたいなフロウがツボってる。意味とか、どんなイルなことを編み込んでいくかということよりは響きの方がここ何年かはブームだったと、自己分析したら思うかな。で、最近は次に向けてまたちょっと違うアプローチを試したりはしてるんだよね」

■DABOさんのキャリア史上最も重要な曲は何になると思いますか?
「あー、それは“拍手喝采”じゃない?あの曲は俺のキャリアにおけるギフトだと思うんですよ。デビュー・シングルが“レクサスグッチ”でも“ZERO”でも“PINKY”でも違ったと思うし、あのトラックに巡り会えたのも、あのラップが書けたのもギフトだと思うし。“レクサスグッチ”も人気あるけどダントツで“拍手喝采”が人気あるワケよ。どこ行ってもあの曲に関しては盛り上がらないことはないから、やっぱり武器だと思うし、それをメジャー・デビュー・シングルのタイミングで作れたのも奇跡的だと思う」

■確かあの曲は「PLATINUM TONGUE」を出す半年ぐらい前にリリースされたんですよね?それこそあのアルバムでは最初に作った曲だったんですかね?
「そうだね。あの曲と“マチガイナイ”はどっちとも(外人プロデューサーの)P.KINGなんだけど、あの2曲だけ最初NYでレコーディングしたんだ。『DEF JAMに挨拶行くよー』ってRIKOに言われて(笑)。 で、そのついでにNYでレコーディングとフォト・シュートしてしまおうって、『なんかスゴいメジャーっぽいんですけどー』って24歳の俺がハァハァして(笑)。NYで初めてのレコーディングだったんだけど、外人のエンジニアは基本日本人の声の扱い方が分かってないから、どうやっても良いテイクが録れなくて。でも、一応録り終えて日本に帰ってきたんだけど、『ちょっと待て。コレ、カッコ良いか?オケもデモで聴いたときよりショボくない?』ってなって、俺と担当A&RとD.O.I.君のスタジオに行ったんだ。で、『コレってなんでカッコ悪いんですかねー?』ってD.O.I.君に音聴いてもらったら『あー、DABO君、コレ、モノラルですねー』って言われて。『D.O.I.君、それ、チャッチャッとやって音広がるようにって出来ます?』って聞いたら『あー……ちょっと20分もらえますかね?』って言って。で、作業が終わってスピーカーで聴いたら『ドカーン』ってあのイントロが鳴って(笑)。D.O.I.君が音のパーツを見えるようにいじってくれたら物凄いことになって。結局その後D.O.I.君のスタジオでラップも録り直したんだよね。NYで録った状態のままでリリースされた可能性もあるわけだし、あのとき思い留まってD.O.I.君のところに行かなかったら……って考えると奇跡だから、あの曲はやっぱりギフトですよ」

■自分の中で、一番「俺、やってやった!」と思った曲は?
「自分の曲だったら“レクサスグッチ”とかね。あの曲は狙って作ったし、やってやったかな」

■それは、バウンス・トラックでラップする日本人がまだ少なかった時代において、ひとつのエポックとなり得る曲を作れたから?
「そうだね。俺は本当はTWIGYの『SEVEN DIMENSIONS』(99年)にハメられただけの人間だから(笑)。でも、サウスのビートってラップ乗っけるの楽しいからさ、意味なくてもずっとラップしちゃうんだよね。そういうサウスのビートを俺のセンスで選んで、俺なりの和風サウスのアプローチで乗せてみたんだけど、アレは“拍手喝采”とは違った意味で『コレは大したモンだぞ』って思わせられたんじゃないのかな?」

■ちなみに、トラックで言うとどの曲が一番印象深いですか?
「“DIAMOND”とか好きかなー……アルバム作ったとき、最後の方は超過密スケジュールで、D.O.I.君のスタジオにほとんど泊まり込みで朦朧となりながら最後の作業してて。この日にミックス終えて成田行かないと、NYのマスタリングが間に合わないっていう状態で作ってたのが“DIAMOND”。D.O.I.君がヘロヘロになりながら確認の音を出して。PUSHIMが声を入れてトラックの味付けがされた状態の曲を聴くのはそのときが初めてだったから、スゲェ感動して。だから、感慨深いね」

■ベスト・アルバムって、出した本人の思いはともかく、“記念碑”であることは間違いないと思うんですね。特に日本語ラップにおいてはまだまだベスト・アルバムを出せるアーティストもそう多くないわけですし。でも、一方でベスト・アルバムの後の展開次第では自らを隠居に追いやってしまう危険性すらあるわけで、諸刃の剣だと思うんです。RHYMESTERが活動休止中にも関わらずクラブでのライヴ営業を再開したのは、少なからずそういったことに対する危機意識の表われなんだと思うし。ベスト・アルバムの「恵みと呪い」というか。
「そういうことは俺も考えたね。そう見られることをどう避けていこうか、という逆算の旅だった。だからことさら豪華にはしたくなかったし、軽く出したかったというか。ベスト・アルバムって極端な話出さなくてもいいものだと思うんだ。別にこれで終わりじゃないしさ」

■と、なると重要なのはこの後の展開ですよね。
「(次作は)本当は夏の間に聴かれたいのね。6月ぐらいに出したらひと夏は聴くだろうから夏から秋にかけてツアーをするとかね。でも、その一方でガッツリ作りたいし、プロモーションもちゃんとしたいって気持ちもあるから」

■それはジレンマですねー。
「活動的にはまだ一周してないって思ってるけど、『ラッパー:DABO』としてはデビュー10周年だから、そういう物差しでは完全に一周なわけで。『10年も時間あったのにまだこんだけしか出来てない』って思うから、もっとやんないと、って思ってる。曲数は作ってるけど、別にギネス・ブックに載りたいワケじゃないからさ、この中の何曲がどんだけ人々に受け入れられたんだろう?とか思うと悔しいし、焦るよね。だから、今の俺はハングリーだよ。10年一周ということで、原点回帰モードで今は制作してるから、前のアルバムとかの世界観とは切り離したベクトルで考えている。『活動を通して訴える』ということより、ラッパーとしてシノギを削る方が今は優先だ、って」

■その焦りの感覚は、今一線で活躍している他のラッパーを見て感じるんですか?
「同業者に関しては焦りというよりジェラりだよね。『お前そんなに人気あんの?いーなー』みたいな、超単純にそういう話。良いことだと思うけどね。良いモノ観て客が反応してるの観るとこっちも燃えるし 『俺も負けねーよ』っていう、超男の子な話。俺も調子こいてるワケじゃないし……。例えば、いつか俺がラップを徐々にしなくなって『さびしんぼナイト』みたいに司会業とか、ちょっと本を出したりコメントを求められる立場になってもおかしくないし、そういう逃げも面白いなって思ったりもするけど、それはまだ全然先の話であって、今は目先のことをもうちょいやりたいな。俺は次の段階に勝ち逃げする前に、やっつけなきゃいけない宿題が残ってるからさ。武道館とかもやりてーなー、って思うけど『じゃあ今年の夏に武道館押さえましょう』っていうのも違うワケで。『ロード・トゥ武道館』が大事なワケでさ、俺はまだ武道館はやりたくない。波を作ってから俺は武道館で泣きたいよ、っていう(笑)」

■一周するための道を引かなくちゃいけないってことですよね。
「そう。だから、今はラップに関してスゲェやる気なんだよね」

LIVE INFO
DABO「I'M THE BEST」RELEASE PARTY

日時:2月6日(金)23:00〜("FEVER SPECIAL" @ ageHa)
場所:新木場ageHa(江東区)
出演:DABO/BIGZAM/DELI/SUIKEN/S-WORD/MACKA-CHIN/GORE-TEX/XBS/RYUZO/ZEEBRA/MUMMY-D/TARO SOUL他

 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : I'M THE BEST
ARTIST : DABO
LABEL : EMI/TOCT-26758〜60
PRICE : 3,500円
RELEASE DATE : NOW ON SALE