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SCARS

2006年に1stアルバム「THE ALBUM」をリリースしたSCARSは、恐らくここ2〜3年の日本語ラップ・シーンにおいて最も新鮮かつ大きなインパクトを与えたグループのひとつだろう。そんな彼らが2年振りに昨年の大晦日リリースしたアルバムが「NEXT EPISODE」。SCARSフォロワーとも言うべきスタイルのアーティストが増えてきた昨今、彼らは新たなストーリーを提示しようとしている。

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「『THE ALBUM』出したときは、何人かは既にシーンにいたけど、それ以外はこれからシーンに入るってときで、ミュージック・ビジネスとかについてもあんまり分かってない人が多かった。今はスキルも上がったし、シーンの中にいることによってみんな考え方が変わってきた。CDを作るにあたっての制作過程がみんな分かってきたから、それを踏まえて物事を進められるようになったし、それに伴ってカネも付いてきてやれるようになった。俺の立場からSCARSのメンバーを見ると、スッゲェ成長したと思いますよ」——I-DeA

 SCARSの2ndアルバム「NEXT EPISODE」のセールスが、メンバーたちの当初の予想以上に好調らしい。それはSCARSというグループ、そしてそのメンバーたちが1st「THE ALBUM」以降の日本語ラップ・シーンに与えた影響の大きさをそのまま反映したものであろう。BESの不参加、A-THUGは刑務所に入り身動きが取れない、そして今作収録の“曝けだす”で明らかになったメンバー間の不和……正直、こんな状態でよくアルバムを出そうと思ったな、というのが作品を聴く前の筆者の素直な感想だったりしたのだが、それら負の要素すらも売りにしてしまう商魂のたくましさが本作の内容面での面白さに直結しているから大したものだ。多少のトラブルには負けないぐらい、彼らの音楽に対する向上心は高いということが、このインタビューからも窺えると思う。(注:本インタビューは1月中旬に収録されたものです)

■1st「THE ALBUM」が出て2年以上経っていますが、この2年間はどんな2年間でしたか?
MANNY(以下M)「俺はあんまり音楽活動はしてなかったですね。人間的には結構変わったと思うし、それは今回のアルバムで出せたと思う」
STICKY(以下ST)「2個歳取ったぐらいですね(笑)」
I-DeA(以下I)「あんまり変わってないですね。基本的な仕事量はそんなに変わらないんだけど、まわりの人たちが作品出してってちょっとカネになったんで。俺みたいな立ち位置の人間はみんながカネにならないと儲からないシステムなんで。まわりの人たちがCDのビジネスをちゃんとしていったに伴って状況も良くなった」
SEEDA(以下SE)「基本的にDJ ISSO、I-DeAやSCARSとなにか一緒にやるんだったら、みんなの生活にプラスになるぐらいの(儲けが)ないと俺は動かないけど、そういう意味ではうまくいったと思いますね」

■「THE ALBUM」を出してのリスナーからの反響はどんな感じでしたか?
SE「どうだったんだろう……そっからずっと突っ走ってきてるからあんま覚えてないですね」

■確かに、「THE ALBUM」が出てすぐSWANKY SWIPE「BUNKSMARMALADE」が出て、SEEDA君の「花と雨」も出ましたからね。
I「振り返ってるヒマはなかったっぽいですね。『CONCRETEGREEN』も始まったし」

■あの頃の怒濤の展開はプランされたものだったんですか?
ST「ある程度のヴィジョンはあったんじゃないの?」
SE「そうだね。並べて出そうってのはあったね」
ST「『(2006年は)自分たちの年だ』って自分たちでも言ってたしね」

■SEEDA君のブログでも触れられていたし、“COMEBACK”でMANNY君が「弁護士費用稼ぐ忠誠心」って言ってるけど、今回のアルバムはA-THUGの裁判費用を稼ぐために作ったということなんですか?
SE「それだけじゃないですけどね」
ST「それが要因のひとつではありますね」

■SEEDA君のブログで、「SCARSの制作に入る」って書いてたときに、凄く唐突な印象を受けたんですね。実際アナウンスされてリリースされるまで2〜3ヶ月しかかかってないし。
I「作ろうって話になったのが、多分2008年の9月ぐらいかな?」
ST「多分最初のミーティングがそれぐらい」
I「それぐらいに話が出て、10月末ぐらいから録り始めたって感じですね……あ、違う、(最初のミーティングは)10月だ。だから、めっちゃギリですね」

■結構なスピードだと思うんですけど。
SE「スピードに関して思うんですけど、今までの人たちはTOOSLOWで俺たちは普通ですよ。実際の声録りだったら2週間ぐらいでイケるでしょ。それ以上やってるんだったら遊んでるだけっしょ」
I「あんまり詰めて作る人いないじゃないですか。みんな、一週間に1〜2日スタジオ入って、みたいな感じで一ヶ月かけたりするけど、俺のスケジュール帳の11月のところは全部SCARSの制作で埋まってましたよ。だから、(外部仕事をやってないから)今カネがなくて大変です(笑)」

■A-THUG君は刑務所にいるわけで、一体誰が主導で今回のアルバムは動いているんだろう?というのが謎だったんですけど。
SE「でも、A-THUGじゃない?ミックスCD作ってた頃に『お前ら、俺が入ってる間にちゃんとやっとけよ〜』とか言ってたから(笑)。その延長だったと思うよ、俺は」
I「その話もあったし、個々は『THE ALBUM』出してから認知されはしたけど、SCARSとしては最近あんまり話題になってなかったから、ここで一発やっときたかった。みんなカネも欲しかったし『じゃあやりますか』みたいな。そこからはあっという間でしたね。年内には出したいっていうのはみんな共通してたし」
SE「それぞれみんな理由は違うんだけど、年内に出したいっていうのは一致してたっぽい」
ST「カネだよカネ」
SE「俺が思ったのは、08年はみんなグループというよりも個人の活動に重きを置いてたんだよね。だから敢えてSCARSをやりたかったっていうのは俺の中ではあった」

■一度整理しときたいんですけど、SCARSは現在誰がリーダーなんですか?
I「リーダーはA-THUG?誰かが言ってたけど彼は天皇みたいなモノで(笑)」
SE「今回のアルバムに関してはSTICKYが舵を取るということで、彼が第2リーダー的な感じで」
ST「まあ、大したことはやってないですけどね」

■今回はどんなアルバムにしようと思ったんですか?
I「まあ、A-THUGはいないし、BES君もいないっていうバラバラな状況なんで、アルバム全体にコンセプトを立てて作るのが現状無理だった。でも、それを逆手に取って曝け出す方を選んだんですよね。曲単位のコンセプトはそれぞれあるけど」
SE「まあ、『THE ALBUM』も全体のコンセプトはないですけどね」

■『THE ALBUM』はこの面子でシーンに打って出るみたいなアティテュードがテーマだったと言えますよね。
I「そうですね。1stには1stの衝撃があったと思うし、1stの衝撃って結構デカイからそれを超えなくちゃいけないというのは今回あった。で、トピック的につまらないとどこにでもあるグループのアルバムになっちゃうし、それはイヤだったからいろいろ考えましたね」

■当初アルバム・タイトルは「RE-UNION」だったと思うんですけど、なんで「NEXT EPISODE」に変更されたんですか?
M「出来上がった曲をまとめたときにそういう話になって」
I「客観的に“再結成”じゃなくない?っていう話になったんですよね」

■元々のSCARSのメンバー構成などを考えると、今回のアルバムは100%の状態で作られたわけではない、という意識が皆さんの中にもあるんですか?
I「まあ、そうですね。現状やれることでベストを尽くしたって感じですね。買う立場になるとどう思うかは分からないけど、SCARSのメンバーが全員入ってる曲は、今回のアルバムでも1曲しかない中で、『本当にリユニオンか?』って言われたら『うーん』って思わざるをえないっていうのもあったからタイトルを変えたんですよね」

■BES君は脱退したということなんですか?
M「脱退はないんじゃないですか?取り敢えず今回は参加してないってだけで」
ST「今は自分探しのひとり旅に出てるみたいなモンですよ」
I「彼は『REBUILD』の制作で燃え尽きてたと思うし」
SE「ちょこちょこ連絡は取り合ってますしね」

■SEEDA君は今回、“万券HITS”でいろんなフロウでラップしてたり、“ONE WAY LOVE”でオート・チューン使っていたり、いろいろなアプローチを試みていますが。
SE「まあ、オート・チューンは遊びですけどね。『HEAVEN』を作ったあたりのマインドとしては『もう哀愁系はイヤだ』って感じで、実際聴いてるのも明るいのばっかだし、なるべく楽しいことをやりたいっていうのがあったんですよね。09年は不況を飛ばすぐらい明るいパワーでいきたいな、と」

■恐らくこのアルバムを聴いた人が一番ビックリするのが“曝けだす”だと思うんですけど。
ST「言いたいことを言いたくてI-DeAに相談したら『やっちゃえば?』って感じだったんで。みんながやってないことっていうのを考えたりもしたし」

■リリックで歌われている通りのことがあったからこの曲があるワケですもんね。
ST「そうですね、だから彼(BAY4K)は今ここにいないんだろうし(笑)」
SE「ぶっちゃけSTICKYがいるときはBAY4Kはいないし、BAY4KがいるときはSTICKYはいないし。疲れますよ(笑)」

■STICKY君のリリックの、簡単に他人を信用しない感じは、STICKYファンにはたまらないところだと思うんだけど(笑)、身内とのモメ事で逆にそれが増した?
ST「そうですね、人間不信っす」

■サラリと言うなー(笑)。2年前と比べて、SCARSはどういった部分で成長したと思いますか?
SE「みんな建設的になったと思いますね。なにがあってもただケンカするんじゃなくて、それでもプラスに変えられないか、って考えるようになった。
ST「僕に関して言えば、音楽でカネが稼げるようになってきたこと。前のアルバムのときはそんなことは一個もなかったですからね」
M「SCARSとしてどう成果を上げていくか、ということを考えるようになった。あと、みんな成長してるから、言いたいことも言えるようになったし、今回は凄い作りやすかったと思う。みんなのスタイルも分かってるから、I-DeAがみんなを的確にハメてくれて、僕もブランクはあったけどサクッと制作に入れた」
I「『THE ALBUM』出したときは、何人かは既にシーンにいたけど、それ以外はこれからシーンに入るってときで、ミュージック・ビジネスとかについてもあんまり分かってない人が多かった。レコーディングの仕方とかも前は全然なってない人も多かったけど、今はスキルも上がったし、シーンの中にいることによってみんな考え方が変わってきたし。CDを作るにあたっての制作過程がみんな分かってきたから、それを踏まえて物事を進められるようになったし、それに伴ってカネも付いてきてやれるようになった。俺の立場からSCARSのメンバーを見ると、スッゲェ成長したと思いますよ」
SE「俺たちは良いアルバムを作った上でソウルをつぎ込みたいから、みんなから音楽的な意見を聞いて取り入れていくんですよ。他の人たちが作ってるのを見ると、『それ、プリプロじゃないの?』っていうところで終了させている。俺たちはもうちょっと作り込んでると思う。細かくなれるかなれないか。で、俺たちはなれる」
I「SCARSは聴いてる人が思っている以上に音楽的ですね。他のグループではここまで音楽的に追求してるグループはいないんじゃないかってぐらい、SCARSは音楽的に追求してますね。ダメなモノはダメってハッキリ言うし」
ST「まあ、HIP HOP好きっぽいからね、俺たち。そこであんまり変なモノは提示できない」
I「音楽に関してはハングリーですよ、俺たちは」

■「THE ALBUM」を出して、SCARSは確実にシーンに大きな足跡を残したと思うんですが、皆さんがそれを実感することはありますか?
SE「俺たちが出てから、俺たちが歌っている内容に近いことを歌っている人が増えたとは思いますね」
I「似たスタイルの人が出て来たら、それに食われないようにしなきゃいけないっていうのはありますよね。そういう人たちより音楽的に別格なところにSCARSはいたいっていうのが俺の中ではありますね」

■SCARSの将来的なヴィジョンはなにかありますか?
M「今はまだないんじゃないですかね?」
ST「取り敢えずA-THUGの出所祝いをするかしないか、っていう」
I「そこでまた一波乱あると思う(笑)」

“COME BACK”のPVはコチラ
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : NEXT EPISODE
ARTIST : SCARS
LABEL : SCARS ENTERTAINMENT/SCRS-001
PRICE : 2,625円
RELEASE DATE : NOW ON SALE