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活発にアルバム・リリースを重ねる神が3rdソロ「Master of the PUNCH」を完成させた。ユーモアからシリアスまで、凝った曲作りには元々定評のあった神だが、今回はコンシャスな側面が特に印象に残る。彼がラップを通して世に訴えたいこととは?

インタビュー:吉橋和宏

「(アルバムを通して伝えたいことは)世の中に対しての怒り、不満、不安。みんな薄々感じてるんだけど、それを表現しないじゃん。平和ボケっていうかさ、気に喰わねぇことがあって、『やってやろうぜ!』みたいなのがないと思うんだよね。日常に密接してることはうまくごまかされてるし。そこの悪い流れを断ち切るためのメッセージ」

 妄走族の神が、3枚目のソロ・アルバム「Master of the PUNCH」をリリースした。神自身も「勝負作」と位置付ける本作は、レゲエ勢をゲストに招くなど音楽的な拡幅を魅せる一方で、アルバム全体に強烈なメッセージを展開するコンシャスなアルバムとなった。レベル・ミュージックというHIP HOPの本質を前面に押し出したこの作品を通して、神が実現を目指す理想郷とは?

■今作は良い意味で、曲じゃないですよね。それよりも「アルバム全体としての破壊力」みたいな部分に重点がある気がします。
「そうだね(笑)。もちろん流れは意識したけど、結局全体を聴いたら『ああ……』ってなる感じだろうし、それがやっぱりアルバムの意味だと思うんだよね。『これはコンピじゃねぇからちゃんと聴いてね』っていうか」

■じゃあアルバム全体で伝えたかったことは?
「世の中に対しての怒り、不満、不安。みんな薄々感じてるんだけど、それを表現しないじゃん。平和ボケっていうかさ、気に喰わねぇことがあって、『やってやろうぜ!』みたいなのがないと思うんだよね。日常に密接してることはうまくごまかされてるし。そこの悪い流れを断ち切るためのメッセージっつうか。今若いヤツらがこの国の代表になっていくワケだから早めに教育しないといけないと思うし、今は親がダメだから俺が教育する。だから耳を傾けてほしいし、ソッポ向いてても後で自分が痛い目遭うからね、っていう」

■確かにそういう“平和ボケ”っていうのはあるかもしれないですね。
「そう。ダメなヤツ見たらひっぱたきゃいいのに、親が『叩いたらダメ!』みたいなこと言ってるじゃん。でも、痛みを味わわせるっていうのは絶対に必要な教えだと思うんだよね。相手に対しての加減も分かってくるから。誰かを守るため、助けるために武器を使わなきゃいけない時もあるかもしれないけど、今はそんなの関係なくやたらめったらやらかすような世の中になっちゃってる。それって絶対痛みを知らねぇから甘えてんだよね。そういう意味でも、身近なところから俺は変えたい。ラップっていう手段を持ってるなら、もっと世の中に訴えかけるべきだし、社会のことを言うべきなんだよね。今売れてる曲って、『お前が好きだ。ずっと一緒にいたい。愛してる』とか……そんなのばっかりだし、それじゃダメでしょ(笑)。こういう曲がもっと売れない限り良くならないよね。でもそれって、すごく寂しい、悲しいことなんだけど」

■ただ、そんな中にもユーモアはあって。
「真面目なのばっかりやってても飽きちゃうし、そこら辺にいるヤツと一緒になっちゃうから。俺はオリジナルだっていうことを意識してやってるし、飛び抜けて個性があると思ってる。でも俺は楽しいことが大好きな人間だから、そうなっちゃうんだろうね(笑)。真面目過ぎるのはクサいし、真剣に取り組んでるんだけど、『そのまんま出しちゃったらつまんないだろ?』っていうところなんだよね。音楽っていう字の如く、楽しまなきゃ。それもスキルというか技だよね」

■人間としての温かみが出ますよね。神さんは個性としても人情味を大事にされてますし。
「うん。例えば恋愛でもさ、実際はダメなヤツもいるワケじゃん。なのにみんなかっこいいことばっかり言うんだよね。『おまえも絶対ダサいとこあるだろ? それを出せ!』って言いたいよね(笑)。俺は出してるし。だって、それだけじゃ人間としてつまんねぇじゃん。音楽を提供する側の人間ももっと考えなきゃいけないと思う。単なる操り人形でいいならそのままでもいいけど、俺は絶対違うと思ってるからずっとこのスタイルでやり続けるし。万が一こういう曲が売れるようになってもそれは変わらない。確かに売れたもん勝ちだとは思うけど、自分の可能性もその分でかくなって人に聴かせられる環境もどんどん出来てくるんだから、そうなってる人間がもっとやんなきゃいけないはずなんだよね。そこにゴールを見つけちゃってるような音楽がいっぱいあるから、ホント気に喰わねぇ」

■誰でもCDを出す時代ですからね。
「うん、そうそう。別に誰がCDデビューしてもいいと思うけど、要はその動機なんだよね。ただ出してぇっていうナンパな考え方だったら、フザけんなって話。俺は『音楽をナメるんじゃねぇ』って思ってるから。例えば俺も役者としてVシネ・デビューが決まったけど、それも一緒じゃん。今まで俺がやってきたことじゃないし、役を演じるっていうことに関してはド素人。だけどそれで何がしてぇかっていうと、俺はHIP HOPをそっちの世界にも拡げたいんだよね。そこを突破していくのはもちろん俺のためでもあるけど、HIP HOPのためでもあるっていうかさ。ポップスみてぇなヤツらがどうかはしらねぇけど、俺が思ってるHIP HOPは所詮まだちっちゃいと思うから、それを拡げるためにやってるんだよっていうか。そこの違いかな」

■行く先に目的があって、っていう。
「そう。だから俺は役者も真剣にやるし、ホントに『よろしくお願いします!』って感じだよ(笑)。そこの世界に行ったら一番下っ端なワケだし、そこはもちろん分かってる。それでもやりてぇっていう気持ちが強い。その結果、Vシネの主題歌も挿入歌も全部HIP HOPだったら『ヤベぇだろ?』っていう。俺の生き方はこうだっていうのをそっちの世界でも表していきたいし」

■ちなみにいつデビューするんですか?
「もう撮ったよ。哀川翔さんが主演なんだけど、編集にどれぐらい掛かるのかわかんないからまだ発売日がわかんないんだけど」

■どんな役柄だったんですか?
「哀川さんが若頭で、俺はその跡目争いでモメてる幹部役。叔父貴衆が集まってるようなシーンだったよ(笑)。セリフはほとんどないけど、アドリブでセリフ言ったり、苦悩に苛立ってるような顔の表情とか動きだったりっていうのはやらせてもらえたね。でもやっぱり緊張感が違うよね。だから慣れないと難しいけど、逆に慣れると多分すげぇハマるんだなって思うよ、あの世界。それはちょっとだけ想像できたね。ハマってみたいし、やるからにはそこまでいきたいよね」

■話が戻りますけど、日本を変えたいっていう気持ちと同時に日本の音楽業界を変えたいっていう気持ちもあるんですか?
「うん、それも含めて変えていきたい。でかいこと言うようだけど、音楽が変われば多分日本も変わると思うんだ。やっぱり演歌が主流だったときは、それこそ俺が言いたい『人と人との繋がり』を軽んじてない時代だったのかなって思うし。これは冗談じゃなくて、国会議員にも俺の音楽を聴いてほしい。政策だなんだっつってるけど、『街の目線』に下りてこないと何も分かるワケねぇじゃん。何度もでかいこと言うけど、音楽を変えることでゆくゆくはそういう腐った体制も直していきたいんだよね。このインタビューを読んで曲を聴いてくれりゃ、俺の言いたいことが分かると思う。俺はきっかけを作りたいだけで、綺麗事は言ってねぇ。『だからみんなちょっと考えてくれよ』っていう感じだね」
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : Master of the PUNCH
ARTIST :
LABEL : KIX ENTERTAINMENT/KIX-1012
PRICE : 2,100円
RELEASE DATE : NOW ON SALE