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THA BLUE HERB

THA BLUE HERBはこれまで数多くの映像作品をリリースしてきたが、昨年行なわれた全国ツアーの模様を収めた『STRAIGHT DAYS / AUTUMN BRIGHTNESS TOUR '08』では、これまでリスナーの前では見せることのなかった、彼らの素の部分が露になった初めての映像作品だろう。このタイミングで、彼らがこのような過酷なツアーを組んだ理由、そして自らの素顔をさらけ出した理由とは?ILL BOSSTINOが語る!

インタビュー:高木晋一郎

「俺らがどういうことを考えているかってことをリアルタイムで伝えられるのはライヴしかあり得ない。日常であったり心の揺れであったりをそのまま表現できるのはライヴだけだよ」

 THA BLUE HERB(以下TBH)が昨年行なった、約1ヶ月で全国17ヶ所を廻り、そのすべての行動を彼ら自身のコントロールによって行うという全国ツアー『AUTUMN BRIGHTNESS TOUR '08』。その道程をドキュメントとして映像に収めたロード・ムーヴィー的な色合いもあるDISC 1と、ツアーのラスト・ライヴとなったLIQUIDROOMでのライヴの光景を収録したDISC 2から構成されたDVD『STRAIGHT DAYS / AUTUMN BRIGHTNESS TOUR '08』に表われているのは、オーディエンスをロックするために如何に行動するかというTBHの誠実な姿と、その結果としてライヴという一期一会の空間を完全にコントロールし、実際に感動的な終幕を迎えるという圧倒的な事実の強度だ。そのための意志は、ILL-BOSSTINOがインタビューで語ったこの言葉からも感じ取ることが出来る。

「1MC1DJよ。これ以上削るものはない。それで最大限の表現を作り出すっていうのがTBHにとって延々と繰り返した挑戦だから」

■まず、昨年行われた全国ツアー『AUTUMN BRIGHTNESS TOUR'08』についてですが、なぜこういったハードなツアーを行なわれたんですか?
「俺らが日本中の人たちにどうやって音楽を届けるべきなのかってことを考えたときに、札幌にいて、いろんな街のオーガナイザーからオファーが来るのをいつまでも待ってるだけじゃダメだなって、その発想がスタートだった。それにはDJ KRUSHとBRAHMANの動きからインスピレーションを受けたんだけどね。そして自分たちだけでツアーを企画する能力、それを実行するライヴのクオリティ、その上で収益を上げるプロダクションの力っていうのを、THA BLUE HERB RECORDINGSとして完全に実行できる能力を養うことが、俺たちが次の段階に行くために必要なんだなって。今やHIP HOPの世界だけじゃなくて、音楽全体を見てもそれぐらいの行動力がないと生きていけないって感じるんだよね。常に俺は自分の音楽はこれからどうすべきかってことを考えてここまで来たんだけど、俺らをずっとサポートしてくれたCISCOが閉店したり、リリースがCDから配信に変わるだとか、そういう俺らを取り巻く状況が大きく変化してきて、また自分たちの想像しなかったような時代が来るなって思うし、それに対応するための行動でもあったんだ」

■ツアーを終えてその前提は確信に変わりましたか?
「そうだね。見えてたことは間違いなかった。ただ満足100ではない。満員に出来なかった場所もあるし、思った通り世の中甘くなかったのも事実。だけど、自分たちで企画したことを成し遂げたって事実も含めて良い経験になったね」

■では、今回の全国ツアーをドキュメントとして収めようと企画した理由は?
「それは森田(貴宏)監督に因る所が大きいかな。このツアーには2つのトピックがあるわけだ。ひとつはライヴの質そのもの、もうひとつはそれぞれのライヴに至るまでのプロセス。その2つを最上の状態で残しておきたかったから、1枚に混ぜるよりも2枚に分けてパックしようっていうのが監督:森ちゃんと俺とのディスカッションの中で出た結論で、それが今回の形式になったんだ」

■今回、「知識があった上で聴く音楽は、ない状態で聴くのとは少し違う」というニュアンスの発言をDVDの中でされていますが、その意味では今作は知識編/日常性のDISC 1と音楽編/非日常性のDISC 2という考え方も出来ますね。そこからはDVDでもう一回TBHとは何者なのかっていうことを再提示したい欲望があったのかなって思えたんですが。
「う〜ん……それよりも、もう俺たちは開かれているんだっていうことの表れだね。素をさらけ出してんの。特にDISC 1に関しては。それはもう、ああいう日常の俺たちを見せても、今まで俺たちがオーディエンスと過ごしてきた夜や、TBHの提示してきたメッセージや姿勢は揺るがないって思うからなんだよね」

■なるほど。
「オーディエンスのみんなもさらけ出してるよ、俺らに向かって。ライヴ中に泣いてる奴もいれば笑顔の奴も、あくびしている奴もいる。皆、ありのままだ。だったら俺たちもオーディエンスに限らず、すべての人に向けて、素の人間性みたいなものをさらけ出そうって気持ちが強かった。もちろん、そういった部分を隠そうとしてきたわけじゃないんだけど、俺らに対して笑いだったりとは対極の部分の方がメディアを通して伝えられることが多かった。それも俺らだから否定はしなかったけど、今は素の部分を見せてもいいと思う」

■それはリスナーを完全に信用したってことですよね。
「まさにそれ。間違いない。確かに、俺らに対して色んなレッテルだったり偶像を抱いてる人にとっては、DISC 1はかなり驚きだと思う。ただ、もうそれでいいんだよ。偶像的なことで語られることもあったし、札幌っていう街の距離感もあって、そういうミステリアスさで深読みをさせて、俺らもデカくなってきたって側面も確かにあった。だけど、札幌に限らずに俺らを近くで見てきた人間には、DISC 1の内容なんていつもの俺らだって思うよね」
 


『STRAIGHT DAYS / AUTUMN BRIGHTNESS TOUR '08』TRAILER

■俺も東京からTBHを見ていたからそういう偶像的な部分を感じていたし、書く側としても「そう書かねばならない」というような観念があったと思うんですね。
「そうだと思うよ。多くのインタビューの場合(リリースのタイミングでインタビューが多い故に)、俺らの面白い部分であったり、人間性を書く余裕なんてないわけじゃん。それよりも作品的な部分で書くべきことがあるから。だから、俺らも隠してたわけじゃないし、書く側も他の書くべきことを書いた、その結果だと思う。ただ、DISC 1は驚きがあるかも知れないけど所詮は前座よ。余興だわ。結局、DISC 2のLIQUIDROOMでの2時間のライヴがあるから、俺らもDISC 1を見せられたんだ。DISC 1でどう捉えられようと、DISC 2で俺らの流儀にがっつりハメてやるからって自信があったから。それに、DISC 2の2時間は、DISC 1の笑いと笑いの間にあった16回のライヴ全てで同じだけやったんだよってさかのぼって考えてもらいたいし、DISC 2を見ればDISC 1の行動が必要だったことが分かる。だから、この2枚は相互に作用しているんだよね」

■ちなみにテープはどれぐらい回したんですか?
「140本。森ちゃんも本当に大変だったと思うよ」

■その中で収められた森田監督とTBHの対話、それから当然ライヴの光景も含めて、今作は「TBHにとってのライヴ論」という色合いも強いですね。
「なんせあの毎日はライヴのためだけに生きてたからね。全部お任せで送り迎え付きっていう楽な過程ではなかったし、赤字も黒字も全部俺らの責任、しかも赤字になったのはひとつや二つじゃないっていうのが事実としてある。だけど、リリース・ライヴじゃないし規模の大きいプロモーションはなくても、各地方で自らアンテナ立ててライヴに来てくれた人に対して、特別な何かを残すべく努力をしなければいけないって思いは強かったね」

■また、TBHのみで会場に入ってライヴするんではなく、PAを同伴でツアーを回るという行動も印象的でした。
「伝えたいことの違いだろうね、俺らは言葉の意味が伝わらないと行く意味がないし、そのためには俺らのギャラを削ってもPAさんに同行してもらって、俺の言葉が確実にオーディエンスに伝わるようにセッティングをしてもらう。それが俺らにとってはベーシックなんだ」

■では全国を回って、ラストのLIQUIDROOMでライヴを終えた瞬間、今回のライヴでは手を叩いた瞬間ですが、どんな感情になるものですか?
「報われたっていうか救われたというか。あのエンディングが待ってるとは俺も知らなかったからね。チケットは完売してるのは知ってたけども、期待と同時に不安も当然あった。だけど最後に拍手を浴びて、あれが俺がずっと待ち望んでいた瞬間だし、最高のドラマだよね」

■聴いてる側も演じる側も、全ての感情が一つにまとまった瞬間だと感じました。
「ホントだよ」

■それを見て、その瞬間に演者は何を思うんだろうっていうのに非常に興味を引かれたんです。
「あの通りだよ。なんとかこの感謝の気持ちを伝えようってことしか頭にないよね。饒舌な俺が最後はああなるんだから、それぐらい特別な瞬間だね。オーディエンスにあそこまで連れてこられたって素直に思えるし、そういうことを一度でも経験すると、オーディエンスに対する考え方が変わる。俺らとオーディエンスの関係っていうのは、ああいうひとつひとつの瞬間を経て積み上げられたんだ」

■では、なぜそれだけオーディエンスに信頼されるんだと思いますか?
「いやー……なんだろう。分からん。7〜8年前だったら簡単にこう言ってたと思うよ。『俺たちがナンバーワンだからだ。俺が一番ドープなMCだからだ』って。でも、今は分からないな。その理由は……知らない方がいいや。自分らの表現をやり続けることでいいや。とにかくありがたいってこと」

■今回の内容は、TBHのライヴにまつわる多くのことを種明かしすることになりますよね。それによって誰か−−例えば同業者であったり−−に影響を与えたいという気持ちはありますか?
「まったくない。そういう感情は全然ないね。この俺たちのやり方がすべてだとは思わないし、それぞれがそれぞれのアートを高めるべきだと思う。ただ、セレブが集まるような世界に顔を出してファッションで名前を売るような煌びやかなタイプでは俺らはまったくないし、音楽を根底に置いてそれをどうコントロールするかっていう前提で、俺らはあのスタイル、あの努力であのエンディングを手にしてる。それだけだよ。ライヴっていうのは非現実だから、オーディエンスは楽しかったのは憶えてるかもしれないけど、内容は忘れてしまうかもしれない。だからDVDでそれを追確認してほしいって感情もある。だから、リスナーには純粋に楽しんでほしい。DISC 1なんて超笑えるしさ。DISC 2はいろんな感情を抱いてもらえると思う。17回のツアーをくぐり抜けることすら俺らには初めての経験だったし、それを140本のテープに収めて2枚のDVDに構築する森ちゃんもハードだったと思う。でも、ぶっちゃけ数百年後だよ。21世紀の初頭にTBHは実際の存在としていたんだ、そしてああいう(ライヴの)空間があったんだってことを残しておきたいって気持ちがあるんだ。でも、それをすべて綺麗に終わらせ、それを来たオーディエンスにも来れなかったリスナーに届けることが出来て嬉しく思うよ」

■では、TBHにとってライヴとはなんですか?
「俺らの生きている場所だね。俺らがどういうことを考えているかってことをリアルタイムで伝えられるのはライヴしかあり得ない。日常であったり心の揺れであったりをそのまま表現できるのはライヴだけだよ」

■もうひとつ、TBHにとって“完璧な”ライヴとは?
「完璧なライヴって言うのは……なかなかないね。やってる俺たちが完璧な表現をしただけでは完璧なライヴにはならないんだ。オーディエンスの作り出す雰囲気の完璧さも求められるし、俺たちにも当然完璧さが求められる。LIQUIDROOMのライヴも限りなく完璧に近いんだけど、1ヶ所だけミスしてる。それは俺とDJ DYEしかきっと気付かないぐらいのミスなんだけど、それによってパーフェクトではなくなっているんだ。ただ、それを編集しないで残しておくのもいいんじゃないのって。それによってまたパーフェクトを目指せるからさ」
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : STRAIGHT DAYS/AUTUMN BRIGHTNESS TOUR '08
ARTIST : THA BLUE HERB
LABEL : THA BLUE HERB RECORDINGS/TBHR-DVD-2
PRICE : 4,500円
RELEASE DATE : NOW ON SALE