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INTERVIEW[インタビュー] RSS

DJ MITSU THE BEATS

常に“世界級”のビートを我々に届けてくれるDJ MITSU THE BEATSだが、今回のソロ・アルバムは実に6年振りとなる相当に久し振りなリリースだ。様々な形で変化/成長した彼のこの6年間を振り返りつつ、格の違いを見せつけてくれた最新作、そして今年リリース予定の日本人アーティストとの3rdソロ・アルバムの話までしてもらった。

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「本当にただピアノをループしただけのような軽い音楽っていうのはいまだにあって、それを支持する人も当然いっぱいいるわけで。で、僕もその括りにされてる部分がいっぱいあることに対して、口で言うんじゃなくて曲で示せば分かってくれるんじゃないかな、って」

 

 前作「NEW AWAKENING」(03年)以降、日本を代表するトラック・メイカーとして、文字通り世界的な知名度を獲得するまでになったDJ MITSU THE BEATS。元々仕事量の多い人ではあるが、今後一年間の彼はさらに忙しくなりそうだ。この度リリースされた、海外のアーティストをフィーチャーした6年振りのソロ2ndアルバム「A WORD TO THE WISE」、そして年内には日本人アーティストのみをフィーチャーしたソロ・アルバムをもう1枚、そして、GAGLE本体のリリース計画も進めているとのことで、派手さが抑えられている「A WORD〜」の音とは対照的に、かなり野心的な動きが多く見られそうで、当分彼周辺からは目が離せそうにない。だが、まずは「A WORD〜」の素晴らしいビートの数々に身を委ねるのが最優先事項だろう。

■MITSU君のソロ作ということで言うと、前作「NEW AWAKENING」から約6年間ほど間が空きましたが、このブランクは意図的なものだったんですか?
「ソロのことを考える時間がなかったんです。それよりもGAGLEのことをいっぱいやってたし、他アーティストのプロデュースやリミックスもいっぱいやっていて。(所属事務所の)JAZZY SPORTには、他にもgrooveman spotやcro-magnonといったアーティストたちがいっぱい所属してるじゃないですか。彼らのリリースするを待っていた、というのもありますね。リリースが一巡した2〜3年前ぐらいにソロ作を作ろうか、という話になったんですけど、それまでは突っ走ってたというか、目の前に来た仕事をどんどんやっていた感じですね」

■前作リリースから今日までのこの6年間を振り返ると、どんな期間だったと思いますか?
「あのアルバムがあったからこその仕事がものすごい多かったっていうのは、この6年間を通して感じていることで。あのアルバムを出してないでGAGLEの活動だけだったらビート・メイカーとしてそこまで注目されたかな?っていうのは多少思いますよね」

■「NEW AWAKENING」でHUNGER君以外のラッパーと絡むまで、外部仕事っていうのはほとんどなかったですもんね?
「なかったですね。GAGLEを聴いて依頼してくれてる人ももちろんいっぱいいるんですけど、ここまでの広がりや海外の方での評価を考えると、あのアルバムを出した意味は大きいですね」

■ここ数年でトラック制作に対する意識は変わってきましたか?
「ここ2年ぐらいの制作意欲は、作り始めた頃ぐらいの意欲があって。一時期、ダラダラじゃないけど、言われた仕事を期限までに作るっていう作業の繰り返しだった頃があって、でも、今は完全に生活の一部になっていて、朝起きてビートを午前中に仕上げて、午後もう一曲作るっていう生活をずっとしてて、生活意欲に波はありましたけど、ここ最近はだいぶ盛り返してきましたね」

■きっかけはあったんですか?
「レコードの堀り方が変わったのか、レコードの使い方が変わったのか……一時期はジャズばっかりとにかく掘ってたんですよね。でも、3年ぐらい前からファンクやソウルとか、ジャンルにこだわらないで掘るようになって、その変化って大きかったんじゃないかな、って今思いますね。(ジャズ以外を掘るようになったきっかけは)DJとしてそういうジャンルをプレイするようになったんですよね。昔はファンクだけで1時間DJとかは出来なかったわけで。今だったらレア・グルーヴのイヴェントに呼ばれたり、本に執筆させてもらったりするぐらいにはなってるんで、その繋がりが出来たっていうのが曲の制作意欲にも繋がりましたね。どんどん面白い音源が手に入るようになったというか」

■今作「A WORD TO THE WISE」というタイトルに込めた意味は?
「それは……GRAP (LUVA)が付けたので分かりません(笑)。と、言うのは冗談だけど、GRAPがこの曲名を出してきたときにアルバム・タイトルを考えてて、この言葉が僕の言いたいことを表わしてる言葉でもあるのかな?って。和訳するのは難しいんですけど、僕は『賢者には一言で足りる』という意味で捉えてますね」

■今作のフィーチャリングの面子は実にMITSU君らしいと思ったのと同時に、かなり渋い面子だな、とも思って(笑)。
「まあ、そうですね(笑)。売ろうとしてないって思われるかもしれないけど、まったくそういうつもりではなくて、自分が出来る範囲を意識しての結果で。コレに予算をプラス100万して、メインストリームでも知られているような人を呼んでやればいいのか、って言われたら、それは自分の仕事として恥ずかしい。もちろん一緒にやりたい人はいっぱいいますけど、この人選は今僕にとっては好きな人たちばかりですしね」

■もちろん前作と比べると全体的にグレードアップが計られていますが、奏でられている音はシンプルで普遍的なものですよね。一時期他アーティストに提供した楽曲では攻めてる音が結構聴けましたけど、今回は全体のトーンがシンプルにまとまってますよね。
「例えば普段家で作るような音でも、電子音だけで作ったり、今流行ってるFLYING LOTUSやSA-RAのようなベースがブリブリで引っ張っていくような曲を作ったりもしてるんですけど、それをソロ・アルバムで出すかって言われたら、それは違うな、って思ったんですよね。マネして作ってるというか、他のアーティストを聴いた上でそういうトラックを作ってるんで自分のアイディアではないわけです。まあ、サンプリングも元々他人のアイディアだと言われればそうなんですけど、今作の手法が今でも変わらずHIP HOPだと思ってるんで。サンプリングを中心として作って『NEW AWAKENING』を越えたいっていう気持ちが強くて。『NEW AWAKENING』と違う手法で作るっていう方法もあるんですけど、前作と同じ手法で越えることも出来るかな、って思って。ただ、音源もちょっと使ってるというのは前作と違ってて、そういった意味ではアップデートしてるけど、基本は僕が大好きなサンプリング・ミュージックとしてのHIP HOPを作りたかった。僕は今のメインストリームのHIP HOPをまったく聴かないんで、この音がHIP HOPだと思っててその頂点をまだ目指してると思ってるんですよ。絶対いると思うんですよ、コレ聴いて『古い』『いまだにこんなHIP HOP作ってるの?』って言う人が。でも、『え、コレがHIP HOPじゃないの?』って僕は逆に思うんですよね」


“PROMISE IN LOVE feat. JOSE JAMES”

■流行のスタイルを使うんじゃなくて、ものすごくオーソドックスな手法で今作の音を作ったということじゃないですか。でも、作り出す音のパーツひとつひとつはものすごく丁寧に作られているし、そういった部分のクオリティを上げることによって、巷に蔓延している流行りを模倣しただけのサウンドや、所謂『ジャジーHIP HOP』と呼ばれてるけど実際はただのオシャレなポップスのような音楽に対してMITSU君なりの回答を示しているのでは、と思ったんですよ。
「まったくその通りですね。やっぱり不満は常にありますよね。今さらジャジーHIP HOPを語るまでもないと思うんだけど、本当にただピアノをループしただけのような軽い音楽っていうのはいまだにあって、それを支持する人も当然いっぱいいるわけで。で、僕もその括りにされてる部分がいっぱいあることに対して、口で言うんじゃなくて曲で示せば分かってくれるんじゃないかな、って。一聴すると僕の音楽はジャジーな部分はあるかもしれないけど、抜きドコロとかメロディとかで全然違うというのは感じられると思うんですよね。まあ、今までジャズを使ってきたから、同列に捉えられても仕方ない部分はあるけど、そういう人たちより深いっていう自信はある」

■悪い意味でのジャジーHIP HOPにはなくてMITSU君にある要素と言ったら、几帳面さだったり真面目さという部分だと思うんですよ。真面目だったら良いのか、という意見はあるかもしれないけど、少なくともMITSU君の音楽に対しては音楽に対する誠実さが個性に繋がってると思うんです。
「そこはありますね。人間的には僕は相当適当なんですけどね。いつもJAZZY SPORTに怒られてる(笑)。でも、曲作りに関しては自分なりの『こうしていきたいい』っていう大まかな方向性に向かってるからこそこういう音楽になってるんじゃないですかね。もうちょっと黒人みたいにラフになりたいですけどね。でも、彼らの音楽は体から出てるものなんで、僕は踊ることも好きじゃないし、体からグルーヴが出るというよりも頭で考えて作るっていうのは日本人としてしょうがないと思ってるんで」

■そこはバッサリ割り切ってるんですね。
「黒人を目指しているわけではない。日本人オリジナルのHIP HOPってあると思うんですよね。昔はみんな同じようなHIP HOPを聴いてたのに、一時期からメインストリームとアンダーグラウンドといった形に分かれていったじゃないですか。そのときに『アメリカで聴かれてるHIP HOPは僕の好きなHIP HOPじゃなくなったんだな』って思いましたよね。だから、『自分でやるしかない』『突き詰めていくしかない』、って気持ちにカッコ良く言えばなったかもしれないですね。実際のところはそこまで考えてたわけではないですけどね。でも、結果としてそうなってるかな、って」

■今作では韓国のDYNAMIC DUOとの曲も収録されていて、HUNGER君とMITSU君はここ数年積極的にモンゴルや韓国のアーティストと絡んでいますよね。彼らの活動を現地で見て感じたことはありますか?
「特に韓国はみんな熱いですよね。例えばアメリカに行って現地のアーティストと酒を飲むかって言われたら、そこまで近い人はそう多くないけど、アジアだとやっぱりアジア人同士という意識があるのか、イヴェント終わった後に飲みに行ってお互い拙い英語で音楽について語り合ったりするわけですよ。そういうのが気持ちを高ぶらせられるというか、『一緒に曲を作りたいな』と思わせてくれる。あと、韓国の人は本当に日本のHIP HOPや僕らのことをよく知ってるんですよ。そういうのがあったから韓国のアーティストとコラボしたいなっていうのがあって、(韓国シーンの)頂点にいるのがDYNAMIC DUO。彼らは今はポップなこともやってて、街出るとファンに囲まれるぐらいの人たちなんだけど、それでも支持されてるのはアンダーグラウンドの活動もちゃんと出来てる人たちだからなんですよ。モンゴルは、HUNGERから繋がって、僕もDJをやりにモンゴルに行ったんですけど、みんなCDでDJでしてるから、僕がアナログのターンテーブルでDJをした初めてのDJらしいです(笑)」

■今年はこのアルバムの他にも日本のアーティストのみを集めたMITSU君のソロ・アルバムがリリースされるとのことですが。
「僕って日本のラッパーからトラックを求められることがほとんどないんですよ。頼まれたいのに(笑)。でも、(仙台に住んでるから)繋がりがないわけじゃないですか。僕の作るトラックってアルバムのメインになるかって言ったらなかなか難しいだろうし、頼みにくいところはあるのかもしれないですけど」

■フォローすると、COMA-CHIの“NAME TAG”はリード曲になりましたけどね(笑)。
「ああ、そうですね。僕は日本語ラップを避けてるわけではないし、日本語ラップが好きだから、、頼まれないんだったら自分で自分の好きなMCを呼ぼうって」

■今の段階で決まっている面子は?
「HUNGER、COMA-CHI、TWIGYさん、あるま、B.D君、RINOさん、S.L.A.C.K.、鎮座DOPENESS & 珍念、ICE BAHN……他にもオファーしてるところの人もいますね。現段階で考えてるのは、ちょっと変なトラックが多いかも。『A WORD TO THE WISE』とは違うなって部分と核として同じ部分もあるかな。外国のラッパーには渡せないと思ったけど、日本人には出来るかな、って思ったようなトリッキーなトラックが多いですね。だから、GAGLEとも『A WORD TO THE WISE』とも違うものになると思います」


TRACK LIST
01. “INTRO”
02.“A WORD TO THE WISE feat. GRAP LUVA”
03.“RIDIN' AROUND feat. KEV BROWN & CY YOUNG”
04.“BIG SUPPLY feat. LMNO”
05.“PLAY WIT CRIME feat. MASPYKE”
06.“PROMISE IN LOVE feat. JOSE JAMES”
07.“NIGHT IN VIENNA”
08.“THE WAY feat. COLONEL RED”
09.“HARD CANDY feat. MATHEMATIK”
10.“WILD CHILD & GEORGIA ANN MULDROW”
11.“FREE YOUR MIND feat. BLACK SPADE”
12.“TOKYO GIRL feat. MASPYKE”
13.“GET 'EM UP feat. ELZHI (SLUM VILLAGE)”
14.“DIM SKYLINE feat. MARK DE CLIVE-LOWE”
15.“IMPULZE feat. MATHEMATIK”
16.“RE-ESTIMATE”
17.“EX LOVERS feat. DYNAMIC DUO”
18.“PLAYING AGAIN feat. IVANA SANTILLI”

 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : A WORD TO THE WISE
ARTIST : DJ MITSU THE BEATS
LABEL : JAZZY SPORT, PLANET GROOVE/PGCD-K1011
PRICE : 2,500円
RELEASE DATE : NOW ON SALE