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LARGE PROFESSOR

HIP HOP史に残る数々の偉大な功績を残してきたLARGE PROFESSORが、本来は13年前にリリースされるはずだったソロ・アルバム「THE LP」は、コアなヘッズに待望されていたのにも関わらず、当時の音楽業界の激流に巻き込まれ結局世に出ることはなかった……だが、遂に今年、正規のリリースとしては初めてこのアルバムがリリースされることとなった!当時リリースされていたら間違いなく大きな話題となっていたこのアルバム、良心あるヘッズなら絶対に聴いておかなければならないブツだ。

インタビュー:高橋芳朗

「今でも『THE LP』のエッジーでしっかりしたサウンド・プロダクションは大好きだよ。このアルバムを聴いて頭に浮かぶ言葉はひとつだけ——“HIP HOP”さ」

 

 名著『EGO TRIP'S BOOK OF RAP LISTS』には〈NOTABLE RAP ALBUMS THAT WERE NEVER RELEASED〉なるコーナーが設けられていて、K.M.D.「BLACK BASTARDS」を筆頭に計7枚の未発表アルバムが紹介されているのだが、LARGE PROFESSORの幻のソロ・デビュー作「THE LP」はそのなかでも最も正式リリースを待ち望まれていた作品と言っていいだろう。今回のリイシューを機に実現したインタビューはメールでのやり取りだったこともあって比較的淡白な受け答えになっているが、この不遇の名盤に寄せるLARGEの複雑な心境は発言の節々から汲み取ることができると思う。

■本来リリースされるはずだった1996年から約13年もの歳月を経て、今回ようやくあなたのソロ・デビュー・アルバム「THE LP」が正式に日の目を見ることになりました。今「THE LP」を聴いて胸をよぎるのはどんな思いですか?
「今でも『THE LP』のエッジーでしっかりしたサウンド・プロダクションは大好きだよ。このアルバムを聴いて頭に浮かぶ言葉はひとつだけ——“HIP HOP”さ」

■では、この「THE LP」がお蔵入りになってしまった経緯について改めて詳しく教えていただけますか?
「レーベル内での政治的な動きがたくさんあってね。当時は音楽業界全体がもっとR&B寄りのHIP HOPに移行していて、多くのラッパーがストリートというよりスムーズなものを打ち出そうとしていたんだ」

■「THE LP」がお蔵入りになったことは以降のあなたのキャリアにどのような影響を与えていますか?
「キャリアという意味では打撃だったね。業界の人々は、みんな俺がちゃんとした仕事をしてなかったと思ってしまったみたいなんだ。一旦そういう評価が下されてしまうと業界から追放されかねないからね。でも音楽自体はなんの影響もなかったよ。ただ政治的な部分だけだね」

■そもそも「THE LP」に収められている楽曲はいつごろレコーディングされたものなのでしょう?というのも、あなたはA TRIBE CALLED QUEST“KEEP IT ROLLIN'”(93年)の自分のヴァースの最後で“Queens represent , buy the album when I drop it”とラップしていますよね。“KEEP IT ROLLIN'”の録音を行なっていた時点でソロ・アルバムの制作はある程度進行していたのでしょうか? 
「“KEEP IT ROLLIN'”であの発言をしたときにはすでに数曲出来上がってた。ちょうどソロ・アルバムの契約を結んだ時期で、もっともっとドープなビートやライムを作ってやろうと思ってたんだ」

■当時の状況を思い出して頂きたいのですが、あなたがこのソロ・デビュー・アルバムを制作するにあたって心掛けていたこと、またテーマ/コンセプトに掲げていたのはどんなことですか?
「もっとストリートに根ざしたソングライティングを目指してたね。MAIN SOURCEの『BREAKING ATOMS』では幅広いテーマを扱っていたから、今度は焦点を絞って自分のファンと真っ向から向き合いたかったんだ」

■アルバムからの最初のリード・シングルとしてリリースされた“MAD SCIENTIST”の未発表ヴァージョンでは、GALT MACDERMOTの“SPACE”がサンプリングされていますね。これは“MAD SCIENTIST”とほぼ同時期にリリースされたBUSTA RHYMES“WOO HAH!! GOT YOU ALL IN CHECK”のネタでもあるわけですが、この一致は単なる偶然なのでしょうか?
 「あれにはちょっとしたミックスアップがあったんだ。“WOO HAH!! GOT YOU ALL IN CHECK”を手掛けたRASHAD SMITHが例のループを聴かせてくれて、俺は完全にイカれちゃってさ。それであのループ使ってもいいかって訊いたら快諾してくれたんだ。まさかBUSTAのためにやった曲だなんて知らなかったからね。後日BUSTAに俺の曲を聴いてもらったとき自分もあのループ使うって教えてくれて、それで俺の曲はボツにしたんだ。でも、俺もあのネタを使ってたことを今明かすのも面白いと思ってね(笑)」

■あなたと師弟関係にあるNASとのコラボレーション“ONE PLUS ONE”はアルバムのハイライトと言える楽曲になると思うのですが、この曲の制作秘話などありましたら教えてください。
「あれは本当に突発的なセッションだったんだ。俺がスタジオであの曲のレコーディングの準備していたらNASがやってきてさ。彼が立ち寄るなんて全然知らなかったんだ。で、『この曲やってみるか?』って聞いてみたら完璧に仕上げてくれた。たしかに“ONE PLUS ONE”はアルバムのハイライトだと思うよ」

■“SPACEY”のプロデュースを務めているTONEY ROMEについて教えてください。また、その“SPACEY”でNEEK THE EXOTICと共に客演しているVANDEMATORなるアーティストについても詳しく教えてもらえますか?
「TONEY ROMEもVANDEMATORも俺の地元フラッシング(クイーンズ)で一緒に育ったホームボーイなんだ。『BREAKING ATOMS』のレコーディングやってたときもずっとそばにいたよ。彼らはドラム・マシーンをいじくって、俺が使いたくなるようなビートにまで仕上げてくれたんだ。すごく自然な流れだったよ」 

■今回のリイシューにあたり、アルバムには“AMAMAN”“QUEENS LOUNGE”“BOWNE”“BIG WILLIE”といった未発表曲が追加収録されています。これらはどの時期に録ったどういう位置付けの曲なのでしょう?
「これらの曲はもともと『THE LP』を作っていた93年から95年ごろにレコーディングしたんだ。でもリリックが未完成だったりまだラフなミックスだったこともあって、あの当時は発表を控えていた。でも最近になって昔のデモを聴いたらポテンシャルがあるって感じてね。完成させて磨きをかけて、今回のプロジェクトに加えたいと思ったんだ。これらの曲は『THE LP』のそのほかの曲と一緒によく聴いてたしね」

■「THE LP」の収録曲中で最も気に入っているビートはどれになりますか?その理由も含めて教えてください。
「一番気に入っているビートは“LARGE PRO VERBS”かな。俺の相棒VANがちょうどビート・メイカーとして上達したころで、そうやって彼がステップアップするのを見るのは楽しかったね」

■同様に、アルバム中で最もお気に入りのリリックをあげるとしたら?
「一番気に入っているリリックも“LARGE PRO VERBS”なんだ。ちょうどそのころ聖書にはまりだしたこともあって、自分なりの格言が書けたのはよかったね。あの言葉は永遠に生き続けると思うよ」

■最後に今後の予定について詳しく教えてください。昨年には「1ST CLASS」から約6年ぶりの新作「MAIN SOURCE」をリリースしていますが、近々アルバムを制作するプランはありますか?
「そうだね、新しいレコーディングはする予定だよ。フレッシュでドープなビートやライムを作るのは大好きだからね」
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : THE LP
ARTIST : LARGE PROFESSOR
LABEL : Pヴァイン/PCD-93253
PRICE : 2,415円
RELEASE DATE : NOW ON SALE