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SEEDA(後編)

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「『コレで真剣にやってみよう』と思ったとき、『GREEN』を出したぐらいの頃から(モティヴェーションは)ずっと変わらないかもしれないですね……先週ぐらいに、一個良いイメージが浮かんだんですよ。次出すんだったらこういう形だなっていうのは1パターンは浮かんだんで……次は多分33%ぐらいは出来てくるかな(笑)」

■SEEDA君自身が以前から語っていたように、今回は今までのSEEDA君の作品と比べるとかなり明るい作品だよね。こういう内容にしたのはSEEDA君の気分的なものが大きいのか、昨今の世の中が暗いからこういう内容にしようと意識したのか、どちらなのかな?
「両方ですね。『HEAVEN』をリリースした後、都会に疲れてどこかリラックスできるところに行きたいという気持ちも自分の中にありましたし、だんだん世の中不況になってきてそっちもウゼェな、っていう(笑)。しかも、みんな哀愁系のアルバム出すし、クラブ行ってもみんな暗いし」

■「HEAVEN」でみんなエモーショナルなラップ・スタイルに影響を受けたかもしれないけど、それがダウナーな方にばっか行ってる気はするよね。エモーショナルってそういうことだけじゃないんだけど(笑)。
「『HEAVEN』を作った後、20台後半の自分がこれ以上この路線で行くのは老け込みすぎだな、って思ったんですよね。今の方向性にはBL君が同調してくれったていうのもデカイですね」

■確かにBL君もNORIKIYOの「OUTLET BLUES」で新機軸を打ち出して、今回のSEEDA君のアルバムもその延長線上にあるサウンドになっているよね。
「これは賛否あるとは思うんですけど、『サンプリングの流れを一旦断ち切ろう』って言ってましたね。だから、このアルバムはサンプリングで始まる曲はNGになったんですよ。『サンプリングNG』という条件以外にもBL君と決めた基準がいろいろあって、今回はその基準にひとつでも達しないトラックはどんなに良くても全部ボツにしました」

■他の条件とは?
「『哀愁系、泣き系じゃない』『ラップをジャスト(オンビート)以外でラップするのは禁止』」

■ジャスト以外でラップするのを禁止にしたのは何故?
「流行ってないから。BL君の話では日本以外の国ではみんなジャストでラップするのが流行ってて、ずらしすぎるのはいまの時代のスタイルではないっていってましたね。一概には言えないと思いますけど。JUELZ SANTANA も好きだし。でも、彼も昔ほどはずらしていない。」

■BL君はシビアだね。でも、今作はSEEDA君のアルバムで一番ワールド・タイムとリンクした音楽性かもね。具体的に今作はBL君とどのようなプロセスで制作を進めていったの?
「今までと違うのは、『5曲以上完成するまで最後まで一緒にやるか分からないよ』って(BL君に)言われたことですね。1曲目が良かったら2曲目もやるし、もし半分以上BL君のOKした曲が続かないと最後までアルバム一緒に作ってくれなかった。3〜4曲作ってから実質アルバム制作スタート、みたいな。最初にスピットした衝撃でBL君を納得させなくちゃいけなかった」

■ハードル高いね。
「だから、このアルバムの曲は2人がOKしてるものからしか選んでないんですよ」


“HELL'S KITCHEN feat. サイプレス上野 & BACHLOGIC”

■と、いうことはSEEDA君は良いと思ってた曲でもBL君の判断でボツになった曲はあるの?
「たくさんありますね。でも、BL君が推した曲でも俺が却下した曲もありますね。“HELL'S KITCHEN”なんて、レコーディングの2週間前まで違うトラックでしたからね。途中でBL君から『コレでやってよ』って別のトラック渡されて『……確かにこっちの方がカッコ良い……(既に依頼してたトラック・メイカーに)断んなきゃー!』って感じのことは何回かあってエグかったですね(笑)」

■「花と雨」の頃のBL君と今のBL君は変わったと思う?
「同じですね。音楽的にはもちろん変わってきてますけど、考え方は大きく変わってないと思いますね。常に音楽追求してて、シビアで、プライドが高くて天の邪鬼でもあるけど……すごい努力家だと思いますね。アレは天才じゃないですね、努力して理詰めで今があると思いますよ。例えば他の人はノリで音を足したり引いたりするけど、あの人の場合全部理由があるんですよね」

■BL君に共同監修してもらうことで、どのような効果を狙った?
「完成度が、僕ひとりだとちょっと劣ると思うんですよね。チャレンジしないと世界レヴェルには行かないけど、勉強してる時間はそんなにないから。僕が日本で一番すごいと思ってるプロデューサーはSUBZERO君とBL君なんですけど、自分がOKだと思ったものがBL君もOKだったら他人にもOKだって言えるだろ、って気持ちですね」

■ラップに関しては毎作新しいチャレンジを課しているように見えるけど、今回は?
「さっき言った『ジャストでラップする』ということですね。今までのなかで一番簡単……安易にやりましたね、結果的に。『ここはちょっとタメてカッコ良く見せる』とかは考えなくて、ラップのパートを一生懸命まっとうするというか。自分が出過ぎないようにするというか……ブログにも書いたんですけど、今まではどんな気分のときでもスタジオに入ったんですけど、今回はスタジオに入るときはポジティヴな気分のときしか入らなかったですね。ネガティヴになった瞬間、作業しないっていうのは基礎的なことですけど今までとは全然違うことですね。ポジティヴでやらないと、僕がやってるタイプのレコーディングだとメゲますね。もしかしたらBL君と僕が今やってるような作り方は、他のラッパーだと出来ないかもしれないです。みんな最終的に譲れないと思ってるところがあるだろうし。でも、僕がなんで今までBL君と一緒にやってこれたかというと、既存のラッパーの中では僕が一番フロウ/言葉の幅が広いと思うんですよ。だから、BL君の要求にも応えられる!……なんてね」

■今作の“脱サンプリング”なロック寄りだったりエレクトロニックなトラックの方が、新しいフロウを模索する上で新しいインスピレーションが浮かびやすい?
「そういうわけではないです。今でもサンプリング・トラックで新しい切り口は出来ると思います。でも、ジャストなラップを入れることによって、BPMの違う曲がいろいろ並んでた方がラップの幅が広く聴こえると思うんです」

■リリックの内容に目を向けると、所謂ストリートな視点は若干後退してて、その一方でもうちょっと大きな視点が目立つと思うんだけど、これまでなかったタイプの“DEAR JAPAN”や“HELL'S KITCHEN”のような曲を作ろうと思った理由は?
「より多くの人に今この時代何を伝えるべきか、って考えるとそうなってくるというか。一人称単数/半径500メートル以内の話は書き過ぎて飽きたっていうのもありますね。そういう曲じゃあ100曲書いたら1曲ぐらいは伝わるかもしれないけど、やっぱり自分に向けてる曲だから、自己満足だったんじゃないか、って。それはそれでいいと思ってるけど、今までにないような完成度で来ないとそういう傾倒のものはなんか違うんじゃないかな?って」

■でも、この部分は大きい変化だよね。政治的とまではまだいかないと思うんだけど、見せようとしてる対象が違うというか。
「このアルバムは自分の周りの人の意見をいっぱい取り入れてるんですよね。今までは自分の意見しか入れてなかったですけど、周りの人の意見で自分も賛同する意見をもらって“DEAR JAPAN”なんかは作られてるんですよ。ウチの親父の話も訊いたし、道ばたで会ったおじさんの話も訊いたし、医者に会ったとき高齢者制度の話も教えられたし。新聞/ニュース、いろんなものを見たときに賛同した意見を取り入れたんです。“DEAR JAPAN”が俺らの時代にケリをつけなければいけない問題だったら“HELL'S KITCHEN”は次の時代に残してもいいような問題を歌ってるというか。そういった部分に気付いてくれるのは嬉しいし、気付いてくれるんだったら次同じような曲を出すときはもっと違う切り口で深みが増している曲を作りたいですね」

■今後はもっと社会的なことを歌っていきたいということ?
「今の“時”の話ですね。2009年の今この瞬間、世の中にある自分の立場とか、世界における日本の立場とか。時代に対する答えを常に出すというか。今までは自分に対する答えを常に出すという感じだったと思います」

■「HEAVEN」リリース時に「音楽を通して自由を求めている」という風に語っていたけど、今作の方がそれを達成できているように個人的には感じたけど。
「100%でやらない方がいいってことを今回知りましたね。悪い言い方すると、気張りすぎて余裕がない=音楽じゃないっていうことになっていくんですよね。詩人の会みたいになっちゃうというか。一生懸命に書いた歌詞を如何に音に楽しく乗せていくかっていう。100%でやった方がズッシリしたものにはなるかもしれないけど、それは今求めてないですからね」

■以前「自分が今理想としている形があるんで、それをやったら散ろうかな」と語っていたんだけど、今作ではその理想は何%達成できたと思う?
「……3%ぐらいですかね」

■と、すると、まだやれることはあるということだよね。ラップすることに対するモティヴェーションはどんどん高くなってきてる?
「『コレで真剣にやってみよう』と思ったとき、『GREEN』を出したぐらいの頃からずっと変わらないかもしれないですね……先週ぐらいに、一個良いイメージが浮かんだんですよ。次出すんだったらこういう形だなっていうのは1パターンは浮かんだんで……次は多分33%ぐらいは出来てくるかな(笑)」
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : SEEDA
ARTIST : SEEDA
LABEL : KSR/SDA-003
PRICE : 2,800円
RELEASE DATE : 5月20日