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KGE THE SHADOWMEN

レペゼン44 BLOX!一度聴いたら忘れられないそのオリジナルなフロウが強烈なKGEがついに1stアルバムをリリース。決して短くないキャリアを持つにも関わらず、敢えて時間をかけて作り上げた今作。彼がこのアルバムにかける思い入れの強さはハンパなものではない。

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「みんなが同じ方向に行くなら、俺はその逆を行きたい。ただ、誰も自分が向かってる方向に向いてないから、その道がまだ見えないんですよ。でも、その道が見えたらダントツじゃないですか。そういう意味で発想っていうのを大事にして曲を作ってましたね」

 

 千葉/茨城エリア出身のアーティストの楽曲への客演などを通して徐々に名を上げていったKGEは、現在の日本語ラップ・シーンではBESやSMITH CNなどと並んで、最も刺激的なフロウを繰り出すMCのひとりだと言えよう。これまでは、その耳に残るフロウだったりフィーチャリングでのヴァース内の独特なパンチラインの数々だったりといった、部分的な要素がフォーカスされていたことが多かったと思うが、1stアルバム「NEWGIGANTE」を聴くと、客演曲では推し量ることの出来なかった、トータルのアーティスト性の高さに驚かされる。90年代後半から10年以上に渡って黙々と自分のターンを待ち続けた執念の一枚とも言える本作は、確実に日本語ラップ・リスナーの記憶に刻まれる一枚となることだろう。

■KGE君と言えば44 BLOX周辺から名前が出ててきた印象があるけど、当然千葉出身ということだよね?
「そうですね。柏の隣の隣の野田っていう街で。DABO君とかモロ先輩ですね。当時、柏にDA ROOTSっていう服屋があって、DJ TOMIKENさんとかが働いてて、俺もガンガン制服でリリック聴いてもらったりして(笑)。その頃柏にWARTERっていうクラブが出来て、そのクラブであるときラップ・コンテストがあったんですけど、当時はFULL CONTACT(MARS MANIE/KEN WHEEL)とかCOBA5000とかも出てて、俺も出たんですけど、そのときのライヴがきっかけでTOMIKENさんやYAKKOさんのイヴェントに誘われるようになったんです。実は自分、最初はブレイカー少年で、『ダンス甲子園』に影響されてダンスやってたんですよ。で、いろんなダンスのヴィデオ買っていく内に、たまたま裏ジャケに載ってたあったウィンドミルの写真を見て買ったのが『さんピンCAMP』のヴィデオだった(笑)」

■KGEっていうMCネームの由来は?
「さっき話したコンテストに出たとき、YAKKOさんに『MCネームどうするの?』って言われて、その場の安易な思いつきで付けたんですけど、俺、小学校のとき近所の忍者道場に通ってたんですよ。戸隠流っていうちゃんとした流派で。『自分にしかないなにかってなんだろう?』って考えたときに忍者っぽい感じで“影武者”って名前を思いついたんですけど、そしたら地元のヤツらからその名前で呼ばれるようになって、その後短縮されて今の名前になりましたね」

■KGE君のラップ・スタイルがオリジナルだっていうことは聴いた人なら誰もが認めるところだと思うけど、どうやって今のスタイルが出来上がったの?
「例えば一時期はCOMPANY FLOWのEL-Pみたいなラップしてみたり 、いろんなことを試して自分なりに消化した結果今に行き着いた感じですね。あと日本人で最も影響を受けた人が二人います。それはEGG MAN とGOCCIです」

■KGE君の世代のラッパーだとジブさんとかRINOさん辺りの名前を挙げる人が多いけど、なんか、その二人っていうのが44 BLOX/JBLっぽくてイイよね(笑)。
「自分はがっつりマネから入りましたからね。そんで日本語でラップしてて一番身近だった人がこの二人だったんです。その後AZとかBIG L辺りのUSのラップに影響を受けまして。今のスタイルが出来上がってきたのは2004年ぐらいですかね。ラップにもメロディってあるじゃないですか。そのメロディを自分なりに作れるようになったのがその頃なんですよね」

■44 BLOX周辺のラッパーって本当にオリジナルなスタイルの人が多いと思うんだけど、その環境が自分のオリジナリティを触発したと思う?
「ここに辿り着くまでの運が良かったですよね。DELIさんもたまたま地元が近くの松戸だったりして知り合いになれたわけだし。なかなかそういうのって自分から歩み寄って獲得できるものではないじゃないですか」

■周囲の環境には恵まれてたけど、今回1stアルバムが出るまでに相当時間がかかったわけで、これは“出せなかった”のか“出さなかった”のか、どっちなのかな?
「自分のスタイルを人様に聴かせるにあたって、プラモデルみたいに自分のスタイルを組み立てる時間が必要だったんですよね。だから、ラップ始めてから10数年かかってるけど、『やっと出せた』という思いはそんなになくて、結構自分ではドライに考えてますね。どんなに時間がかかっても、(リスナーが)自分の一番甘い部分だけを味わえるようにしたかったんですよ」

■06年に出したミックスCD「BLOW IT OUT」はどういう経緯で出そうと思ったの?
「アルバムを出すにあたって、ひとつ(方向性を)探りたかったというか。『BLOW IT OUT』を出したことによって評価してくれる人もいたし、自分がやってきたことが間違ってなかったっていう自信になりましたよね。あのミックスCDを出した後にDABOさんやDELIさん、MUROさんといった自分が大好きな人たちがフィーチャリングに誘ってくれたから余計にその思いが強いですね」


“STILL STREET”

■今回のアルバム・タイトル「NEWGIGANTE」にはどういう意味が込められてるの?
「分かりやすく言うと“元気玉”ですね。10年以上、俺はいろんな人から元気をもらっていたわけですよ。ヘッズやリスナーだったりイヴェントに呼んでくれるオーガナイザーだったり……俺は攻撃しないでずっと気を溜め続けるっていう選択をしてたんですけど、JBMやMIKRIS、B.DやMARS MANIEといった周りの人たちがゲーム・オーバーにならないように戦ってくれてたんですね。そういった人たちに支えられて今やっとメーターがマックスまで来て攻撃することが出来た。(ドラクエの)呪文の中で一番強いのがギガンテだと思うし、元気玉に似てると思うから、それを6月17日に放ったって感じですね」

■KGE君にとって1stアルバムを出すということは、10数年待つぐらい大事なことだったわけだけど、その1stアルバムを通してKGE君が表現したかったことは?
「まあ、そんなに重くは考えてないですけどね。俺は決してブリンブリンを身に着けるようなヴィジュアル重視なタイプでもないし、ワルなタイプでもないから、一曲一曲の発想で勝負したかったんですよ、そこは。『ラップでこんな曲/表現が出来るんだ』って思わせたかったんです。みんなが同じ方向に行くなら、俺はその逆を行きたい。ただ、誰も自分が向かってる方向に向いてないから、その道がまだ見えないんですよ。でも、その道が見えたらダントツじゃないですか。そういう意味で発想っていうのを大事にして曲を作ってましたね。例えばTHE BROBUSの“IMAGINE”とか般若君の“やっちゃった”、ちょっとマニアックだけどJBMとSESAMEの“10億円事件”とかすごい好きで、そういった曲にインスパイアされましたね」

■「BLOW IT OUT」はサウスのビートを取り入れたりしてたけど、今作は結構スタンダードなサンプリング・トラックが多くて、90年代的なクラシカルなイメージも強いけど。
「そこは意識しましたね。『BLOW IT OUT』に入ってるトラックがサウスっぽいのも多かったっていうのもあって、そういう音を期待してくれてた人には良い意味で裏切ったんですけど。俺は高校生のときにTOMIKENさんやMAILMAN(DABONGZ)に90年代のHIP HOPを聴かされて叩き込まれてきたし、初めてNY行ったときにたまたまMUROさんが現地でDJしに来てて、MUROさんがレコード掘ってるところとかも後ろで見てたりして、そういう生き様が単純にカッケーなって思った。弾き系のトラックも嫌いじゃないですよ。次作ではそういうトラックでもやりたいですね」

■今作ではやはり44 BLOXの面々のフィーチャリングが目立つけど、KGE君とって彼らはどんな存在?
「俺含めみんな個人プレイに走ってるんで普段は別に毎日ツルむほど仲が良いってワケじゃないけど、少なくとも俺はみんなを良きライヴァルだと思ってるし、それは他の人たちもみんなそうだと思ってたのに違ったみたいな。あと如何せん俺含めやることが遅いんで、上手いテンポで作品を出したりとかは苦手なんですけど、俺は絶対いつかNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDが起こしたような化学反応が44 BLOXでも起こせると確信してやってるんで、俺は自信を持って44 BLOXの一員だって言いたいですね。みんなピースな奴らですよ」

■ラップを始めてから現在までの10数年間ラップを続けて来れた理由は?
「大好きだからです」

■アルバムを出して意識的に変わった部分はある?
「やっとスタートラインに立てたって感じですよね。今まではいろんなアーティストが新しいCDを出したりする度、『俺だって負けねぇよ』って思ってたけど、たかだかミックスCD一枚出したぐらいでよく『俺はラッパーだ』って言えてたな、って。1stアルバムを出したっていう肩書きが付いて、やっと胸張ってプロのラッパーだって言えるようになったな、って出してみて思いましたね」

■最後になにかメッセージは?
「さっきも言ったけど、HIP HOPっていうひとつのカルチャーがどういう歴史を辿ったかっていうのを掘り下げるのってすごく大切なことだな、って思ってて。例えばお笑い芸人になりたいヤツだったらやすきよとかドリフまで遡るだろうし、HIP HOPも同じじゃないですか。今自分が一番好きなことだったり打ち込んでることがあったら、『KEEP ON DIGGIN'』してほしいですよね。少なくとも俺はそれに気付いてからHIP HOPや音楽自体が何百倍も楽しくなったし、それがあるから今の自分があると思ってる。歴史を知っていくと、何故自分がここにいてどうあるべきなのかっていうのを考えるのが楽しくなるから、リスナーの人も演ってる人ももっと掘り下げることを勧めますね」


 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : NEWGIGANTE
ARTIST : KGE THE SHADOWMEN
LABEL : BANG STAYSTONED/BSK-001
PRICE : 2,625円
RELEASE DATE : 6月17日