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ISSUGI FROM MONJU

良質なアンダーグラウンドHIP HOPをリリースし続けるDOGEAR RECORDSから発表されたMONJUのMC:ISSUGIのアルバムを聴いて「こんなアルバムを待っていた!」と思ったヘッズは少なくないだろう。ドープなビーツにドープなリリックが乗ればそれで十分……そんな風に考えているヘッズにとっては、ISSUGIのアルバムは超ストライクなはずだ。

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「一曲ずつすごい意味を込めてアルバムを作ろうっていう意識は、作ってるときはまったくなかったんですけど、東京で毎日生活してるヤツの感じが出てるのかな、とは思います。でも、曲の中でも“Just rhyme”って言ってるんですけど、自分の中ではイケてるトラックの上でイケてるラップをしてるってだけで、それが俺の好きなHIP HOPかな、って思ったし、それを大事にしたかったんですよ」

 

 クルーのロゴが大きくプリントされたあのウィンドブレーカー(映像ではBES“THE PROCESS”のPVなどで観ることが出来る)などを通してその名は以前から知られてはいたが、MONJUやS.L.A.C.K.、そしてISSUGIのアルバムが発表されるまで、多くのヘッズにとってはミステリアスな存在だったであろうDOWN NORTH CAMP(以下DNC)。だが、上記3アーティストの優れた作品のリリースによって、彼らが東京アンダーグラウンドHIP HOPに新たな価値観を与えたことは明らかだ……いや、“新たな”という表現は間違っている。彼らの音楽は別に奇を衒ったものではないし、HIP HOPに新しい刺激や衝動を主に求める人には理解しにくい類なのかもしれない。だが、東京の深夜のストリートを、彼らの音楽を聴きながら歩いてみてほしい。彼らの音楽は驚くほどその情景にフィットすることだろう。クルーの一員から放たれた現時点での最新形:ISSUGIの「THURSDAY」は、ここ数年失われていた(と個人的には感じている)サグではないがストリートな東京アンダーグラウンド・スタイルを最提示してくれたという点で、重要な意味を持つ作品だと思う。ISSUGIの口から、自身とDNCの過去/現在/未来と、もちろん「THURSDAY」について語ってもらった。


■ISSUGI君がラップをするようになった経緯は?
「中学入ったころにスケボーやってるヤツらに出会って自分もやるようになったんですけど、(スケートの)ヴィデオの中でかかってたBGMとしてHIP HOPを聴き始めて。キングギドラ『空からの力』とかBUDDHA BRAND“人間発電所”とかが出た頃に、日本語でもラップしてる人がいるっていうのを知って、自分でもやり始めました」

■入りはやっぱりスケートなんだね。
「スケートが自分が初めて出会ったカルチャーでしたね。『こういう楽しさがあるんだ』って思ったし、それまで触れたことのなかったストリートとの接点も感じられた。HIP HOPもスケートも、自分の感覚に合ってるんだと思いますね。上手く説明できないんですけど、ピッタリきたんですよ」

■DNCの面々と出会ったのはいつ頃?
「ラップを始めて何年か経ったころに、友達のDJが仙人掌(MONJU)や白昼夢と一緒にイヴェントに出てて。そこから更にDNCと知り合って仲良くなりましたね。俺が出会った頃には既にDNCというクルーは存在してましたね。俺がDNCのライヴを初めて観たときのメンバーは多分、白昼夢/仙人掌/メシア THE FLY/CENJU/SORA/TAMUとかで、基本今もいる人たちばかりですね。彼らのライヴは……なんか威力があったんですよね(笑)。良い曲とかそういうのを超越してて、カッコ良いなと思ったんです」

■今となってはDNCのウィンドブレーカーが、BES君とかもPVで着てるっていうのもあって、東京のアンダーグラウンドHIP HOPシーンにおける一種のトレードマークになってるところもあると思うけど、以前よりも知られてるっていう実感はある?
「やっぱMCバトルとかに出ることによって地方の人たちが知ってくれたっていうのはあると思いますね。でも、結構自分たちはマイペースでやってるんで、普通ですね」

■MONJUの「BLACK DE.EP」以降のDOGEAR RECORDSの動きとか見てると、マイペースとは言え最近はかなり活発に動いてる印象があるけどね。
「いや、でもDNC自体はいろいろと遅いですね(笑)。いろんな性格の人がクルーにいて、俺とかS.L.A.C.K.はどんどん音楽を作りたいって意識が強いけど、他のメンバーはそれぞれのペースで音楽を作ってる感じですね。だから、DNCで集まって音楽を作るって感じでは、今はないです。とりあえず俺は作ってるから、出来たらみんなに聴かせるって感じで」

■DOGEARはDNCのレーベルと考えていいの?
「そうですね。誰が社長とか、そういうのも特にないですけど、大きく括るとMR.PUGと16FLIP(MONJU)がやってるって位置づけでもいいかもしれないですね」

■MONJUの一員であるISSUGI君がソロ・アルバムを出そうと思った理由は?
「『BLACK DE.EP』を出して、次作も作ろうってなってたんですけど、時間のタイミングとかがなかなか合わなくて、自分は時間があるからソロを作ろうかな、って。 『BLACK DE.EP』を出してからのこの1年に、スゲェ刺激を受けるアーティストにたくさん出会えて、それで『俺も作りてぇ』ってなったって感じですね。具体的に言うと、S.L.A.C.K./BUDAMUNKEY/MALIK/PUNPEEとかですね」

■S.L.A.C.K.って出会ったのそんなに最近なの?
「そうですね。この1年ぐらいです。『BLACK DE.EP』を出した後に『MONJUが良い』ってメール送ってきてくれて。PUNPEEはMCバトルとかを通じて知り合ってはいたんですけど、弟がいることは知らなかったですね。イヴェントでPUNPEEに会ったら『弟がCDを作った』って言ってCDを渡されて、聴いてみたらヤバくて速攻連絡して。そこから曲を作ったり遊んだりするようになったんですよね。で、誰が言い出したのか分からないけど、いつの間にかDOGEARから彼のアルバムを出すことになってましたね」

■ISSUGI君たちがS.L.A.C.K.の才能をスルーしないで作品のリリースまで繋げたのは、後々すごく評価されることになると思うよ(笑)。
「『BLACK DE.EP』を出した後、マンネリしてたわけではないけど、BUDA君とS.L.A.C.K.との出会いは自分の中で衝撃的だったんですよ。それまでの日本人の作品では感じられないようなグルーヴがあって、『これこれ、俺がやりたいのは』って思ったんですよね」
 


“MORNING”

 
■「THURSDAY」というアルバム・タイトルに込めた意味は?
「いろいろトラックを聴いてたら“THURSDAY”ってタイトルの付いてたトラックがあって、それを聴いたら正に木曜日な感じだな、って思って。昔、仙人掌の家で遊んでる時期があって、それが大体毎週木曜だったんですよね。いろんなヤツらと木曜に遊んでたその空気が俺はすごい好きで、 俺にとって『THURSDAY』の音は、『今夜はこれから楽しいことが始まりそうだな』っていう音なんですよね」

■今作は、自分の一番好きなラップを、自分の一番好きな音でしてるっていう感じがすごく出てると思うから、そういう理由で「THURSDAY」って付けたのはなんか理解できるね。じゃあアルバム全体を通して表現したかったことは?
「一曲ずつすごい意味を込めてアルバムを作ろうっていう意識は、作ってるときはまったくなかったんですけど、東京で毎日生活してるヤツの感じが出てるのかな、とは思います。でも、曲の中でも“Just rhyme”って言ってるんですけど、自分の中ではイケてるトラックの上でイケてるラップをしてるってだけで、それが俺の好きなHIP HOPかな、って思ったし、それを大事にしたかったんですよ。純粋なラップ・アルバムって最近は意外と少ないと思ってて、例えばMETHOD MAN & REDMANのアルバムみたいなのが自分は好きなんですよ」

■アルバムも“THURSDAY”で始まって“FRIDAY”で終わるっていう構成だけど、やっぱりISSUGI君の中でも自分の日常を切り取った作品になったって思いはあるんじゃない?
「そうですね。“FRIDAY”のトラックも金曜日っぽい、週末ライヴをやりに行く前の楽しみな感じが出てると思ってて、普通の平日と週末に繋がるまでの手前の瞬間というか」

■何か明確なプロットやストーリーがあるっていうわけじゃなくて、言ってみれば何かをしてること/歌ってることよりはそれらの行動をする手前の漠然で曖昧とした状態を歌ってる曲が多い気がして。でも、一日の中ではそういった時間の方が実は多いぐらいなわけで、そういった意味でのリアルさを表現してるアルバムだと思ったんだよね。
「あー、意識してなかったけどそうかもしれないですね。特に何を歌おうと決めて録音してたわけではないけど、単純に思ってること/考えてることをリリックに書いてたつもりですね」

■“MORNING”を聴いて思ったんだけど、あの曲って基本は夜のことを歌ってるけど、1stヴァースは朝起きてその日の夜の楽しさに思いを馳せてて、そこからいきなり夜の描写に入るよね。もっと現実的な日々の生活の大変さとか、そういうリアリティはアルバムでも押し出してはいないのが印象的で。
「そうですね。『俺は大変だけど頑張ってる』っていうのはあんまり好きじゃないというか、別に言わなくてもいいと俺は思ってますね。俺は楽しいことだけをやっていたいってだけで(笑)。自分は辛いこと以上に楽しいことの方が多いからなんじゃないですかね。アルバム作ってるときも、曲作ってるのが楽しくてしょうがなくて、『仕事なんて速攻終われ』としか考えてなかったですね」

■MONJUは前から夜のイメージが強いグループだって言われてきたと思うけど、実際今作も“夜”に関する描写が多くて、ISSUGI君がその曲の中で過ごしてる時間軸っていうのがすごくリアルに響いてくるんだよね。
「リリック書いてる時間が全曲夜に書いてるっていうのも関係してると思いますね」

■でも、ISSUGI君は本当の意味での「夜の人」ではないよね。実際いるじゃん?夜にしか動いてない人って。
「朝のことは気にしてないんじゃないですかね?朝起きてても、俺にとっての一日の始まりは夕方ぐらいなのかな、って。例えば仕事はもう寝てるに等しいというか、一分の力も出してないですね(笑)。だから、一日がすごく短く感じてしまいますね。ホント時間経つのが早すぎて」

■夜に関する表現の多さからも分かるけど、ISSUGI君のラップは目線が実際の自分とかなり近いというか、生活の中にラップが組み込まれてる感じがすごい伝わってくるんだけど。
「純粋に音楽が好きなんで、朝出かけるときから聴いてるし、家帰るときも音楽聴いて、家でも音楽作ってるし、音楽中毒ですね。より新しいトラック/ラップを聴きたいし、HIP HOPで刺激がほしいんですよね」

■さっき、PUNPEEやBUDAMUNKEYなどの名前が出て来たけど、何で彼らにトラックを頼まないで全曲16FLIPのトラックでやろうと思ったの?
「MONJUも全曲16FLIPで出しけど、SEEDA君の『花と雨』のリミックス・アルバムは作ったことがあるけど、(純粋な)フル・アルバム単位で16FLIPが全曲を手掛けたことがなかったんで、DOGEARから出すアルバムで、16FLIPのトラックに俺のラップが乗っかっている俺のスタイルっていうのを一回アピールしたかったんですよね。今回は客演もDNCのヤツらだけにしてますしね。自分たちって、まだ土台が全然出来てないと思ってるんで、ある程度までガッツリとやっておきたかったんですよね。実は12月くらいに次作を考えてて、新曲6曲ぐらいと『THURSDAY』の曲のリミックスを4曲ぐらい入れたスプリット・アルバムにする予定で、そこにはBUDAMUNKEY/PUNPEE/MALIK/MASS HOLEにトラックをやってもらおうと思ってますね」

■そのアルバム以外のDNC/DOGEAR RECORDSの今後の動きは?
「いろいろやりたいことはたくさんあるんですけど、ストリートで年内に16FLIPのミックスCDの第2弾を出して、それはありものの曲と自分たち周りの新曲も入れる予定です。あと、11〜12月にはS.L.A.C.K.の2ndアルバム、さっき話した俺のスプリット・アルバム、あと『THURSDAY』のインストゥルメンタル・アルバムを出そうと思ってます。俺、ALCHEMISTのインスト集とかSTONES THROWが出してるインスト物とかが好きで、そういう動きを日本でやってるヤツがあんまいないな、って思ってて。来年は自分の2ndアルバムと16FLIPのアルバムを出したいですね」

EVENT INFO
DOWN NORTH CAMP PRESENTS
REFUGEE MARKET
 
日時:9月21日(月)16:00開場〜22:00まで
場所:池袋bed
料金:当日 2,000円(1D)/w/FLYER 1,500円(1D)
出演:TAK THE CODONA/PUNPEE/ISSUGI/S.L.A.C.K./OYG/DOWN NORTH CAMP/BUDAMUNKY他
(問)
※プリントアウトしたフライヤー画像でもディスカウント可

 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : THURSDAY
ARTIST : ISSUGI FROM MONJU
LABEL : DOGEAR RECORDS/DERCD-010
PRICE : 2,400円
RELEASE DATE : 7月15日