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RHYMESTER

2007年のベスト盤リリース、そして武道館公演以降(クラブなどでのライヴ以外では)活動休止状態にあったRHYMESTERだが、結成20周年を迎えた節目の今年、ニュー・シングル“ONCE AGAIN”リリースと共に活動再開!RHYMESTERらしさに溢れながら、更に強度を高めていった同曲の生まれた背景/過程を訊く!

インタビュー:高木晋一郎

「今の自分にも納得してないし、世間的に言ったらまだまだ俺たちなんて何も成し遂げてないのかもしれない。そういう部分での不満はまだまだ持ってるよね。そして、そういう時代があったからこそ、常に弱者側からのメッセージを出していきたいって絶対に思ってるんだよね。それに、そこにしか意味がないと思う。俺と宇多さんが『早くここまで来いよ』なんて曲を書くわけがない(笑)」——Mummy-D

 

 今夏のフェスや『BBOY PARK』で販売されたRHYMESTERの公式グッズに書かれていた文字は……「KING IS BACK」! それだけでも復活作への期待感は否応なく煽られていたが、2年の休止期間を経て打ち出されたRHYMESTERの新曲“ONCE AGAIN”は、その期待にしっかりと応えるように高らかに“希望”を宣言する、リスナーのエモーションに直接響くような一曲として完成した。それぞれがソロとして得た糧をRHYMESTERというマザーシップに集結させ、我々の前に再び立ち現われたRHYMESTERは、更に高まったキングとしての凄味をリスナーに叩き付ける!


■まず、今のタイミングでRHYMESTERを再始動させた理由はなんだったんでしょう?
Mummy-D(以下M)「まず休止の理由だけど、2007年のRHYMESTERのベスト盤『メイドインジャパン -THE BEST OF RHYMESTER-』、それから武道館ライヴのふたつが、ずっと突っ走ってきたRHYMESTERに一段落つけるタイミングにはなったよね。そして、このタイミングで一回振り返ったり休むことで得られる何かがあるんじゃないかって思ったし、その上で次のアルバムに取り組まないとネクスト・レヴェルには行けないんじゃないかなって。それから、RHYMESTER内でもRHYMESTER飢餓感を煽った方がいいんじゃないかなって思いから休止に至ったわけね。で、休止の段階では俺らとしての『こういうことを言いたくなってるよね、RHYMESTERとして』って線と、外からの『RHYMESTERがいなきゃ困る』って線がビシッとハマるときに復活しようって話をしてた。それで今年の頭ぐらいに『今RHYMESTERをやるべきかどうかも含めて話し合おう』ってミーティングをして、そこで『とにかく一曲作ってみよう』って話になったんだ。それで作ってみたら手応えがあったから、じゃあ再始動してアルバムまで行こうかって。且つ、去年は(クラブ/ライヴ・ハウス中心の)現場でライヴをやってたじゃん。あれで『そろそろやんなきゃな』って感じは全員持ってたよね」
宇多丸(以下U)「(現場でのライヴは)今までのRHYMESTERの曲から定番曲を選んだ、『一見さん用RHYMESTER』なセットで廻ってたんだけど、そこで『ライブをやるのにそろそろ新曲がほしいよね』っていう必要性も実際に感じてたんだ。過去の曲はそれはそれで当然価値があるけど、やっぱり新曲をやる方が盛り上がるし、“B・ボーイイズム”よりも『HEAT ISLAND』の曲の方が盛り上がる。そういう意味でも新曲をやりたいなって」

■小箱ライヴでRHYMESTERの今までの曲を総括することは、RHYMESTERの自己像を再確認する作業でもありましたか?
D「それはあったね。自分たちの出発点の再確認でもあったし、俺らのステージをクラブで見たことのない世代も増えてるから、現場に立ってる若い子たちと同じステージに立って、俺らの実力を見せて、証明しないとなって」
DJ JIN(以下J)「それにホールでやればRHYMESTERのファンが見に来るけど、クラブは観客がもっと不特定多数になるからさ。それは自分たちに刺激になるし、そこで何かを示したいって気持ちはあったね」

■小箱ライヴで気付いたことや発見は?
U「……意外と俺らは人気がある(笑)。それから、俺らのやってることはまだ有効性があるなって。俺らのライヴの観せ方はいまだに若い子には衝撃らしいのね。だから、むしろ有効性は増してるのかなって。俺らしか出来ないことがあるって改めての気付きはあったね」

■もっと大きなところで伺うと、休止していたことで得たものはなんですか?
D「一番は……RHYMESTERってスゲえなって(笑)」
J「そうだね」
D「RHYMESTERは3人がそれぞれの持ち味を出して、それらが補完しあってRHYMESTERになってるんだなって。それから、『みんなRHYMESTER好きだなー』って。そういう自分のグループに自分でジェラスみたいな謎の心境もありつつ(笑)」

■なるほど。今回の“ONCE AGAIN”はDさんが総指揮というフォーメーションを採用されていますね。
D「まず、再始動に当たって『新機軸を打ち出したい』、そして『ネクスト・レヴェルに持っていきたい』ってことを考えた。その上でトータルできちんとしたRHYMESTER像を見せ、質の高いものを作るにあたっては、みんな並列な民主主義じゃないところで、誰かが責任とイニシアティヴを執らないといけないなって」
U「より強く広く遠く届けるためには、表現にもうひと成長——それはラップの上手い下手じゃなくて——必要と思ったんだよね。そのために自分のリリックには映画的な三幕構成を取り入れたんだけど、加えて監督としてのDにリリックを精査してもらって、リリックをもっと研ぎ澄ます作業を加えたんだ」
D「且つ、今までのRHYMESTERのまま、曲としての強さをどう表現するのかってところで、今までは斜に構えたりしてた表現を、今回はストレートに行ってみようって。そうしないと届かない瞬間もあるから。それに、そういう表現をしてもいいタイミングだと思ったんだよね」

■今、なぜストレートに出すタイミングだと感じたんですか?
D「俺としてはマボロシの経験が大きかったかな。マボロシは俺の中でタガを外す作業で、今までだと照れてたようなエモーションをそのまま出したり、あれもこれもやっちゃえってプロジェクトだったんだ。で、それに対しての手応えをすごく感じたから、そこで『音楽って素面のアートフォーム』じゃないなって感じたんだよね」

■冷静ならざる高揚感や情念の持つ強さというか。
D「それをRHYMESTERに持ち込めば、もっといろんな感情やエモーションをラップのスピードで、HIP HOPの手法で出来るんじゃないかなって」

■そういったエモーショナルな表現であったり、「敗者の復活」という非常に情緒的な部分を再始動の起点においた理由は?
D「もちろん、不況を初めとする日本の現状だとかを含めて、元気づけるようなメッセージはやっぱり必要なんだろうなって。でも、それよりも俺としては2年半の間にいろんなチャレンジをしてきた分、できなかったことへの挫折感を感じる部分もすごく大きいんだ。まず、その落とし前を付けないと先に進めないなって。だから、自分への応援ソング……って言い方は嫌だけど、自分へハッパをかけるっていうかね」
U「こういう『ゼロからの復活』『ライジング・アゲイン』みたいなことを言い始めたのは俺なんだけど、それに影響を及ぼしたのは(映画)『SR サイタマノラッパー』だったね。やっぱり『何もない奴がそれでも立ち上がるのか?』っていう物語は感動的だし、そういうのって原点だよね、HIP HOPの」

■“ONCE AGAIN”は、“敗者復活戦”(99年)と根本にある思想は一緒だと思うんですけど、“敗者復活戦”にあったようなルサンチマンというか、怨みみたいな感情は“ONCE AGAIN”にはないですよね。
U「それはね、話は一緒だけどこっちはラストのポジティヴな場面が長くて強調されてるからだよね。しかも、“敗者復活戦”は『リスペクト』っていう大きな流れの上での一旦落とす曲だから、落としっぱなしでよかったわけよ、その後に上がる曲があるから。でも、今回はシングルの一曲の中で落として上げるって作業をしなくちゃならなかったから、こういう書き方になったんだ。ただ、どちらも基にある動機は変わらないけどね」

■そういう動機が解消されないのはどういう理由になるんでしょう。
U「それは俺も考えた(笑)。やっぱり自分たちが認められるまでに感じたストレスや、抑圧された記憶が消えないんだよね」

■トラウマですか。
D「ま、そこまで病気っぽくはないけどさ(笑)。でも、今の自分にも納得してないし、世間的に言ったらまだまだ俺たちなんて何も成し遂げてないのかもしれない。そういう部分での不満はまだまだ持ってるよね。そして、そういう時代があったからこそ、常に弱者側からのメッセージを出していきたいって絶対に思ってるんだよね。それに、そこにしか意味がないと思う。俺と宇多さんが『早くここまで来いよ』なんて曲を書くわけがない(笑)」
U「やっぱり自己評価が高くないんだよね。ラップもいきなり上手いタイプではないしね、いまだに。考えて考えて、悩んで悩んで作ったモノがようやく人様に評価されてるわけで、いきなり出来たり天才的な感覚で作品を作るわけではない分、ざけんなよって感情があるわけですよ」

■ただ、RHYMESTERとしての武道館ライヴの成功や、休止期間も三者三様に結果を出してきたわけじゃないですか。だから、初めてこの曲を聴いた時に若干の違和感を感じたんですよね。『RHYMESTER勝ってるじゃん』って。
U「いや、世間的に見たらってことですよ。HIP HOPシーンではそれなりになってても、世の中に出たらね」
D「ぶっちゃけた話、『もう無理かな』って思うときなんかしょちゅうあるよ」
U「毎曲ですよ、そんなん」
D「だから、逆に『え、そう思うの?』って感じかな。もっと威張ってなきゃいけないのかな。もっと夢のある話をしてさ」
U「そういう面では夢を与えられなくて申し訳なく思うよ(笑)。でも俺らの役目は、天才型じゃなくても頭を使えばそこに匹敵する、もしくは勝つことが出来るかもよってことを見せることなんだと思う」

■JINさんとしてはこういうリリックが上がってきたときの心境ってどんなものでした?
「このシングルを作るための飲み会があり、BACHLOGIC(以下BL)のトラックがあり……っていろんなピースが集まってきて、スタジオでその上がりを聴いて……『参った!』と。これはすごいって正直に思った。とにかく本気で感動したし、ミックスのときにBLが『ラッパーって夢のある職業ですね』って話してて、俺もそう思ったね」

■では、外部プロデューサーとしてBLを招いた訳は?
U「これはAmebreakこそ説明不要でしょ。要はNO.1プロデューサーだから」
J「でもBLと制作したいってアイディアは前から出てたよね」
Amebreak伊藤「とは言え、ここ最近のBLの作風と“ONCE AGAIN”のオーセンティックさは、必ずしも一致はしませんよね」
D「最初にBLに聴かせてもらったトラックは、最近のBLの傾向が強かったから、新曲でやりたい方向性に当てはまるトラックではなかったんだ。ただ、外部プロデューサーを招くってことは客観視がほしいってことだから、あまりこっちからガチガチに指定するのも恐いなとも思ったんだけど、BLはオーダーメイドができる人だから、こっちからは『シンプルで、エモーショナルで、力強く、クラシック』っていう、俺だったら言われた時点で『無理っす』って席を立つぐらいの(笑)、そういう頼み方をしたんだ。で、BLはそれに対してスパッとこのトラックを提示してきたのね」
U「且つそれが想像以上にエモい感じだったから、最初は正直戸惑った。でも、ストレートに何かを伝えるときにはこれぐらいローなテンポの方がいいだろうしって。で、このトラックが軸となって聴かせる曲になっていったんだよね。だから順番としては、大まかなある程度のイメージをBLに伝えて、上がってきたビートから全体のテーマやイメージが導かれて、それが“ONCE AGAIN”になったんだ」

■一方“付和RIDE ON”ですが、“ONCE AGAIN”のカップリングにこの曲っていうのは……。
U「(名曲感)台無しっていうね(笑)」
J「逆にどう感じたの?」

■それこそ「空気読んで」とかに対してRHYMESTERは否定的だったし、RHYMESTERが今まで言わなかったようなリリックが結構出てきたんで、それに対して一聴目は違和感を感じたんですよね。でも、何度か聴き続けると『実はなんにも言ってない』てことに気付いたんですけど。
U「そうだよ高木君。これ、冗談だよ(笑)」
J「真面目に取り組みすぎてる(笑)」
U「トラック自体がリスナーを強制的にノセる強度があるから、このトラックの上で意味あることなんて歌ってもしょうがないわけよ。でも、実は『意味ない!』ってことを書くのは一番難しくて。で、Dとミーティングしてたときに、俺が10年ぐらい前にポロッと言った“付和RIDE ON”って言葉をメモに残しといてくれて、じゃあ、それで行こうよって。だから、バカ曲っていう括りで言えばおなじみのRHYMESTERですよ。真剣に取ると馬鹿を見るって言う(笑)」
J「とにかくダンス・チューンだから絶対ライヴで映えるし、それはRHYMESTERとして提示したいなって。このオケの発想はハウスとかテックから浮かんだ曲で、いつ使うタイミングがあるかなって温めてたトラックなんだよね。で、ハイブリッドで何でもありな風潮がHIP HOPにも強くなって、いろんな要素が絡んで複雑になってきてるから、この曲も今が出すのに良い時期なのかなって」
Amebreak伊藤「次のアルバムでは外部プロデューサーを多数招くという噂もありますけど」
U「映画の喩えで申し訳ないけど、俺らはやっぱりRHYMESTERだから、ちゃかちゃか画を切り替えたりCGガン使いではなく、基本的にはオーセンティックな構造や画作りになるよね。アクションも生身でやるようなさ。だから、外部プロデューサーを招いてもどうしてもRHYMESTER主演の映画になってくのが不思議」
D「予想以上にRHYMESTERの作品になってるよね」
U「『日本語でラップを成立させ伝える』っていうRHYMESTERの根本的な動機を研ぎ澄ませてる感じがあるから、RHYMESTERらしさを強化してるとも言えるよね。だから、RHYMESTER史上一番聴きやすい作品になるかも。且つ、一番RHYMESTERらしい作品になるかもしれないね」
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : ONCE AGAIN
ARTIST : RHYMESTER
LABEL : NEOSITE DISCS/KSCL1470-71(DVD付初回生産限定盤), KSCL1472(通常盤)
PRICE : 1,680円(DVD付初回生産限定盤), 1,223円(通常盤)
RELEASE DATE : 10月14日