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PSG

PUNPEE/S.L.A.C.K./GAPPERからなる3人組:PSGは、2009年の日本語ラップで最も注目されている1stアルバムを送り出したグループと言えるだろう。アルバム「DAVID」は、今まで日本にありそうでなかった、肩の抜き加減と高い音楽性のバランスが絶妙な塩梅を醸し出している。ヘッズだけでなく、業界の大物たちからも高く評価されている彼らのAmebreak初インタビューだ!

インタビュー:高木晋一郎

「ふざけてる風だけどフロウによってカッコ良く聴かせるとか、ナメてる風だけど甘く見てるとドキッとさせるようなリリックってのはあるかもしれないですね。そういうギャップが好きなのかも。『普通はこう』って思考を捻ったりねじっちゃうのが」——S.L.A.C.K.

 

 リリース前からこれだけの注目を集めるグループもなかなかいないであろう。HIP HOPサイドのみならず、さまざまメディアや他ジャンルのアーティストが注目し、万雷の拍手でシーンに迎えられているPSG。彼らのアルバム「DAVID」が注目を集めるその要因を考えると、それぞれの面子の持つオリジナリティと、作品が持つハイクオリティさの妙味が前提にあることは疑いようもない事実であるが、それに加えて彼らの持つ「面白主義」的な側面に因るのではないだろうか。「面白い音」「面白いリリック」「面白い方法論」ETC.……と、行動原理の重点を“面白さ”に置くことで、HIP HOPをHIP HOPのまま、その魅力を拡充することに成功し、HIP HOP自体を更に「面白く」しリスナーにアピールすることに成功した彼ら。これからの快進撃は疑うべきもない。


■まず、3人の音楽的な原点って?
PUNPEE(以下P)「俺は親父ですね。BEATLESとかが基本なんですけど、ソウルやジャズも聴いてたし、HIP HOPも進行形で聴いてたり、音楽ファンなんですね。そういう親父の聴いてた音楽が入り口かもしれないですね」

■S.L.A.C.K.君も同じになるの?
S.L.A.C.K.(以下S)「そうかな……。でも、(音楽への興味が)スムーズ過ぎてあんまり意識したことないですね。HIP HOPの入り口としてはDRAGON ASH“GRATEFUL DAYS”を聴いて、且つ平行してスケボーもやってたんで、そこからの入りもありますね」
GAPPER(以下G)「俺は、友達が親の転勤で海外に行ってたんですけど、そいつが戻ってきたトキにHIP HOPを聴いててそれで知って。で、高校の同級生だったPUNPEEに更に教わって……って感じですね」

■地元は3人とも板橋区だよね。PUNPEE君とS.L.A.C.K.君は兄弟だから当然同じ地元だけど。その中でどうPSGは形成されていったの?
P「遡りまくると、もともとPSG+2MCの4MC+1DJって形でやってたんですよ、DJは俺で。で、最初にS.L.A.C.K.が抜け、次にGAPPERが抜け、結局グループ自体も消滅して……」
S「で、PUNPEEとGAPPERは『P&G』でグループを組んで、俺はソロで動いててって感じだったんですけど、“&”って反転させると筆記体の“S”になるじゃないですか。で、それが俺の中でも盛り上がって『P&GじゃなくてPSGでやんない?』って」

■名前先行だ(笑)。
S「あと、ESGが好きだったからその家族感も引用して……っていうのは後付けですけど(笑)」
P「ただ、この3人は『やめなかった』んですよね。だからこそ作品まで辿り着けたのかもしれない」

■なるほど。ではそのPSGとして作品作りはいつ頃から始めたの?
P「自分としてトラックの提供だったり客演だったりもしてましたけど、それと平行してPSGとしても曲はコンスタントに作ってたんですね、結成当時から。ただ、俺はアルバムを出すってことにハードルを感じてたんで、リリースとかはあんまり考えてなかったんですけど、S.L.A.C.K.が『MY SPACE』出したことで突破口を開いてくれたんで、じゃあPSGとしてもアルバムを作ろうかって。……ただ、正直S.L.A.C.K.がアルバムを出したことでの焦りって部分もありましたね、お兄さんとしては(笑)」
S「俺が出せたことで、じゃあ出しちゃえばいいじゃんって軽いノリに出来たっていうか。かつ、周りの評価、特にBL(BACHLOGIC)君に評価してもらったのはかなり大きなキッカケにはなってますね」
Amebreak伊藤「俺も直にではないけど、PSGのことはBL君発の情報が回ってきて、それで知ったんだよね。業界内の人は結構そういう人多いと思う」
S「俺らもBL君の超ファンだったし、そういう天才から評価を受けてるんなら出そうと決心して」

■制作の初期段階ではどんな作品にしようと思ってたの?
P「言いたいことが全員バラバラっていうのもあるんですけど、あんまりメッセージ性とかで引っかけたくなくて。それよりもクラブで普通にかけられるような、シンプルでダンス・ミュージックとして機能するモノをってことは考えてましたね。フロウもしっかり曲の中に落とし込んで、ラップも音楽の一部として機能するような」
G「でもメッセージ性がまったくないってわけではないですよ」

■そこで思ったのは、いわゆるナンセンスなリリックでもないし、かといってキテレツなわけでもないしっていう、不思議なバランスのリリックだなって。
S「ふざけてる風だけどフロウによってカッコ良く聴かせるとか、ナメてる風だけど甘く見てるとドキッとさせるようなリリックってのはあるかもしれないですね。そういうギャップが好きなのかも。『普通はこう』って思考を捻ったりねじっちゃうのが」

■その「ナメた感じ」って結構この作品の重要な部分な気もするんだけど、それはどんな意識の下に?
S「『そんな力入れなくてもこれだけいけるんだよね』っていうか……『無理しなくても普通に自分のやりたいことやればいいじゃん』っていうか。言葉にするのは難しいけど」
P「器用さって部分も含めて、『こういうのが出来るぜ』『こういうの考えつくんだ俺ら』っていう意表を突きたいっていうのはあるっすね」
G「でも俺はキメるとこはキメたいな」
S「GAPPERはそうだよね。でも俺もソロだったらそういう部分もあるし……、だからPSGで一緒に作るとこういう感じになるのかもしれない。でも小憎たらしいけどポジティヴだと思うんですよね」

■3人のメンタリティが作用しあうと、そういう意識が生まれるというか。作品のある程度のイニシアチブは誰が握るの?
P「今回は俺っすね。裏番長としてS.L.A.C.K.って感じで」
S「俺とGAPPERはどんなビートが来ても全部乗せてやるって気持ちでしたね」
P「で、作って裏番長のOKが出たモノを監督の俺がまとめると(笑)。ただ、そういうリリックの方向性がバラバラなのも、それをそのときの記録として形にしちゃっても面白いかなって。遊びの延長みたいな形で」
G「マイク入れっぱなしにしといて、勝手に録れてる笑い声とかも素材になったり。そうやって遊んでるよね」
P「HIP HOPだから、機材の使い方とかも俺たち流にしちゃうってのは基本ですよね」

■そこで思ったのは、「HIP HOPは何でもあり」って時に、他のジャンルのエッセンスを持ってきて「何でもあり」にしがちだけど、PSGの場合は「HIP HOPの中で何でもあり」をやってるって感じだよね。それは「まだHIP HOPの中で遊べることあるよ」ってことを提示してるようにも感じたんだけど。
S「難しく考えなくても、例えばガム噛みながら録音したり、菓子食いながらラップしたり、そういう『やり方/方法論』だけでもいくらでも新しいことは生み出せると思うんですよね。HIP HOPの自由さとか新しさを、多くの人はポップスみたいな『ちゃんとした』方向に近づけ過ぎだと思うんですけど、HIP HOPなのに頑張って他のジャンルと並ばせようとしても、それって違うんじゃない?って思っちゃう」

■その意味では、ダンス・ミュージックとしての機能性ってことでは、ダウンビートでのダンス感、HIP HOPならではのダンス感みたいなモノを提示してるよね。
S「4つ打ちとか御法度だな、俺がいる限り(笑)。なんか4つ打ちは4つ打ちとして聴きたいんですよね。HIP HOPを何かと混ぜりゃいいみたいなのは……俺の中ではないっす。元を味わい尽くせぬまま、別の方向に行くのは早くない?って。味わい尽くしてないのに『HIP HOP飽きた。他のことを!』なんて言う人多いけど、それはちょっとサムいっすよね」
P「俺は混ぜるのもアリ派だから、何でも聴いて何でも使うし、どんなビートでも作りたい。だから他のジャンルでも『これ消化できるかな?』って嫌らしく聴いてて(笑)」

■でも、モロHIP HOPなのに聴感上はすごくポップなアルバムだよね。これだけいびつなアプローチや打ち出しをしてるのに、耳には結構すんなり入ってくるなって。
P&S「それは運が良かったよね」

■運なんだ(笑)。
S「『聴こえを良く』なんて計算全然してないっすからね。兄貴は少ししてるけど」
P「俺としては『カッコ良いワンループ』『カッコ良いビート』を厳選した部分はありますね」
S「俺の感覚としては『ピタゴラスイッチ』の連鎖装置みたいな、やってることは超複雑だけど見栄えは超気持ち良いみたいな。そこを目指したかな。だから、赤ちゃんとかが喜んでくれたら嬉しいっすね」

■でも子供が喜びそうってのは感じた。奇妙さとポップさが同居するっていう雰囲気が子供にも受けそうだなって。
S「『いろんな音があって面白い』とか『変なしゃべり方』とか。確かにそうかも」

■話は変わるけど、PSGはリリース前からDJ ZEEBRA氏がDJでかけたり、KREVAさんも『日本語ラップキラッ!』で評価したりと、HIP HOP内からの先行評価がすごく高かったけど、それについてはどう感じてたの?
S「ZEEBRAさんは俺のHIP HOPへの入りだった人だし、見本になってたような人だから嬉しかったですよね。だから王様にちょっと辿り着けたような……」
P「農民が(笑)。ジブさんがDJとして出演してたイヴェントで、PSGの“MONSTER”をかけてくれたんですよ。しかもラップもしながら!それで俺らも飛び入りでライヴやらしてもらって。あれはスゲー嬉しかった」
S「あり得ないよ。昔は自分たちがその人の曲を憶えてたのに、今はその人が自分たちの曲を憶えてくれてるなんてね」
P「且つ、自分たちからガンガン売り込んだんじゃなくて、例えばBL君みたいにYouTubeとかmyspaceみたいなメディアを通して自然に聴いてもらって、それを気に入ってもらって広めてくれたっていうのは、純粋に嬉しかったっすね」
S「それと親孝行になるっすよ。親に『俺らのCDをZEEBRAとかKREVAが評価してくれた』って言えば、それなりに伝わるし」
P「自分たちがそういうのに直面したからかもしれないけど、そうやってトップの人たちがちゃんとアンダーグラウンドを見て、しかも評価して発信してくれるっていうのは、やってて安心できますよね。尊敬すべき人たちです」

■最後にPSGは3人にとって母艦?それともソロの集合体?
P「ソロの集合体って感じだよね?」
S「まあ、ひとりひとりがソロで作品出せるっていうのが理想ではありますね」
P「でも、この3人でもまた作ると思うし……」
S「あー、でも俺はやっぱりソロかも!(笑)」

■今日はPSGでインタビューしてんだけどね(笑)。
S「まあ、どっちでもヤバい作品を作ろうと思ってますね」
G「俺は今のとこHIP HOPをやる場所がPSGしかないから、とりあえずここを土台にって感じですね。でもソロも考えてます」

■ある意味で、いろんな出し口のひとつってことだね。
S「そうっすね。曲の中で『こんなビートでやりたかねえよ』ってことすらラップできたりするのもPSGしかないと思うし。そういう普通だったら飲み込まなきゃいけないリリックも出せて、それが新しい表現として提示できて衝撃を与えられるっていうのはなかなか出来ないですからね」
P「目の前でやられた俺が一番衝撃だったけど(笑)」


LIVE INFO
11月2日(月)@横浜BRIDGE
11月3日(火/祝)@渋谷FAMILY
11月7日(土)@DISK UNION渋谷店インストア・ライヴ(DAY TIME)
11月7日(土)@代官山UNIT(S.L.A.C.K.のみ)
11月28日(土)@渋谷FAMILY
11月29日(日)@渋谷FAMILY
11月30日(月)@池袋BED
12月12日(土)@中野HEAVYSICK ZERO
12月19日(土)@渋谷ASIA(『KAIKOO』)

FILE RECORDSオフィシャル・サイト
http://filerecords.com/release/filerecords/psg/david.html

PSGオフィシャルmyspace
http://www.myspace.com/psgdavid

 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : DAVID
ARTIST : PSG
LABEL : FILE RECORDS/FRCD-198
PRICE : 2,300円
RELEASE DATE : 10月9日