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RUMI

RUMIが「Hell Me TIGHT」「Hell Me WHY??」に続く「Hell Me」シリーズ第3弾「Hell Me NATION」をリリース。過去2作以上に明解なHIP HOPサウンドを追求したように受け取れる今作だが、そのアプローチによってこれまで以上に彼女のラッパーとしての才能が顕著になった傑作に仕上がったと言えるのではないだろうか?

インタビュー:高木晋一郎

「『お前はHIP HOPじゃない』って言われたこともあれば『お前はパンクだよ』って言われたこともあるし、ぶっちゃけ今でもなにがHIP HOPかは結局分からないんだけど、『それを探し続ける過程がHIP HOPなのかな』って結論に落ち着いて、そこからアルバムの像が徐々に見えていった感じですね」

 

 「Hell Me TIGHT」「Hell Me WHY??」をリリースしてきたRUMIが、最新作「Hell Me NATION」で、この「Hell Me」三部作を完結させた。これまでよりも明確に、分かりやすく描かれた世界観は、これまで以上にRUMIの根本にある優しさや慈しみといった感情をつまびらかにしている。これまでのRUMIのスタイルから苦手意識をもって聴かず嫌いでいたリスナーこそ聴いてほしい、豊かなリリシズムに溢れた胸に響く一枚である。


■まず、今作の制作状況から教えて下さい。
「今回は今までの制作の中で一番時間がかかりましたね。コンセプトを絞るのが難しかったし、もっと言えば『HIP HOPって何?』って迷宮にハマってしまった時期があって、そこで時間がかかっちゃって」

■根本的かつ答えの見えづらい問題ですね。
「『お前はHIP HOPじゃない』って言われたこともあれば『お前はパンクだよ』って言われたこともあるし、ぶっちゃけ今でもなにがHIP HOPかは結局分からないんだけど、『それを探し続ける過程がHIP HOPなのかな』って結論に落ち着いて、そこからアルバムの像が徐々に見えていった感じですね」

■RUMIさんの作品の自由度から考えると、例えば「HIP HOPだと思ってくれないならそれで結構」という回答の仕方もあると思うし、それはそれで説得力のある答えだと思うんです。でも、そこでHIP HOPというアートフォームに対する自分なりの答えを見つけようと思った理由は?
「今まで結構ノイジーなモノだったり、グライムみたいなサウンドを取り込んで1枚目2枚目と作ってきたんだけど、10代の頃はど真ん中のHIP HOPを聴いてきたし、それなのにそういった部分を今まで出してこなかったなって。そこから『今回はHIP HOPに寄ってみよう』と思ったんだけど、そこで『あれ、HIP HOPって何だっけ?』って問いが浮かんできて。だから、『人からどう見られるか』って部分から浮かんだ問いと言うより、自分の中から浮かんだ問いだから、その答えを探そうって」

■今回の作品って、今までの作品よりもリスナー・フレンドリーな部分が強いと思ったんですね。端的に言えば分かりやすいし、多くの人が寄ることが出来る作品だと感じたんですが、それは、そういった思考を経た故なんでしょうか?
「そうかな……。でも分かりやすさは意識した部分ではありますね。自分の性質として、分かりづらい表現だったりダークな方向に行こうと思えばいくらでもいけるんですね。逆に分かりやすくする方が難しくて。でも、伝わらなきゃどうしようもないんで、分かりやすくするのは考えましたね。それと、近い人に聴いてほしかったんですね。ラップに慣れてる人は、単語をバッと羅列されてもそれを聴き分けてイメージできる脳になってると思うんですけど、クラブに関わりのないような友達に聴かせると、やっぱりラップは聴き取り辛いらしいんですね。なるべくそれを避けようって」

■3枚目にしてそれを思った理由は?
「気付くのが遅かったというか(笑)。なんとなく頭では分かってたんですけど、今までの活動を経て、それに実感として気付いたというか」

■その意味では今回は言葉数も減らしてますよね。
「早口な方なんでギュッと詰めたくもあったんですけど、それによってライヴで聞き分け辛くなるっていうのは避けたかったし、一回聴いた後に思い起こしやすいモノにしたかったんで、短く、分かりやすくって方法論は採りましたね。だから少し実験してみたというか。それに、若い頃って『こんなラップも出来る!』っていうのを見せたくて仕方がなかったんですよ。でも、今回はそういうスキル的な部分よりも、伝えたいことを伝わりやすいようにって」

■今回はトラックもあまり歪さはなくて、スムーズに響くモノがほとんどですね。
「そうですね。カッコ良くても難しいビートは今回外して。不協和音というよりはキチッとビートとメロディがハマってるモノをチョイスしましたね」

■リリックに関して伺うと、今回って敵があったらそれを「ぶっ壊す」というよりは、「グニュっと曲げてしまう」というような、そういう変革へのアプローチを感じたんですが。
「前は『嫌だ』って気持ちが強くなるとずっとその方向に意識が進んじゃってたんですけど、でも今は嫌なことがあったら『何が何でも楽しんでやる!』って(笑)。それが影響してるのかな。なかなか変わらないモノに怒りを集中させると、そこに囚われてがんじがらめになっちゃうなって。大きな敵とかどうにもならないような理不尽に対して『違う』っていう気持ちは今でもあるんだけど、それって結構言うだけは簡単だけど、それを本当に動かすのは自分の身の回りだったり小さな事の積み重ねなんじゃないかなって思うんですね。それがここ最近のモードだったかな。だから距離的に近いに対するリリックっていうのは全体にあると思います」

■大きなところに対してワーワー言うのって、けっこう無責任でもいいですよね。でも自分の身の回りの事を言うのって、ある意味では責任が生じるし、言葉にも重みがより必要になりますよね。
「分かりやすいところで言うと、ライヴで『こんなときにあの曲聴いてます』ってことをリスナーから聞いたりして、自分の曲が人の生活に入り込んでるんだなって実感してきたんですよね。だったら、ちょっと大袈裟かもしれないけど、役に立てればなって。私の曲って『楽しー!』って暮らしてる人より、もっとマイノリティというか、思いがあって暮らしてる人に聴かれてると思うし、私自身もそういう人に書いてる部分もあるから、そこで元気になってほしいというか、そういう感情がありましたね」

■且つ、今回は「何が嫌です」っていうのをかなり明確にしてますよね。特に“ご臨終”はシーンに対する批判が“Hell Me WHY??”よりも分かりやすく表現されてて。
「ラップって『みんなで手を上げて共感』も大事かもしれないけど、“問題提起”っていうのも大事な要素ですよね。物議も起こらないようなリリックを書いててもしょうがないなって思いがあるんで、どうしてもそういう(プロテスト)表現は出てきますね。それから、“ご臨終”は『ULTIMATE MC BATTLE』(以下UMB)に出たのが影響してて。バトル前にヘッドフォンして壁に向かってフリースタイルの練習をずっとしてる人もいるんですけど、私はそれに『何か違う!』って(笑)。不思議だなって思ったし、フリースタイルってこんなに不自然じゃないはずだよなって。プラス、バトルで色々相手側から言われて、それについての考えが形になった曲ですね」

■ちなみに(昨年の)UMBに出た理由は?
「最初は、2007年の決勝をクラブチッタに観に行ったときにインタビューされて、そのときに『なんで女性の出場者が少ないと思いますか』って訊かれて、私も酔っぱらってたから『私が出てないからじゃないですか?次は出ます!』って言っちゃってて、後でその映像を見て『じゃあ出ます』って(笑)」

■言質を取られてたと(笑)。出てみての感想は?
「面白かったですよ。また出ようかなって」

■(昨年の)東京予選の決勝で般若と当たるなんて考えてました?
「あの試合はもう時空が歪んじゃって。決勝が始まるまで相手が般若だなんて知らなくて、始まったら『え!』みたいな(笑)。とにかくビックリしましたね。その日出てるのは知ってたけど、決勝まで会っても見てもいなかったから、ビックリしてろれつが回らなくなっちゃったし、顔見てたらいろんなこと思い出しちゃって……。とにかく般若はすごかったです」

■なるほど。話を作品に戻すと、“ご臨終”や“AKY”はある意味で「こうでこうで、それは嫌だ/変だ」っていうロジカルな批判性があるとしたら、“銃口の向こう”ではそういうロジックを越えた、誰もが共感すべき“感覚”からの批判という部分もありますね。
「例えば“銃口の向こう”のトピックだったら、『歴史上こういう事実があってこの二つは敵なんだよ』って言われても、『それは分かるけど……でも』っていうのが子供の頃から感覚としてあったんですね。私が小学生のときに湾岸戦争が始まって、歴史上のことだと思ってた“戦争”が今、現実に起こってるってことがすごく恐くなっちゃって、その感覚は今でも続いてるし、やっぱり『おかしい』と思うんですよ。でも、歴史上の理由というのも理由のひとつではあると思うし、それも解決しないといけないと思うから、両方の角度から、個人的な感情の部分と歴史的な部分を込めて書いた感じですね」

■“始まりは涙”や“サボテン”もそういった情念とか情緒の部分が強いですね。今回は特にそういった部分がすごく強くなってるような気がしたんですけど。
「中島みゆきとか昔のフォークとか、言葉から血しぶきが飛んできそうな音楽を聴いてきたんで、それが影響してるのかもしれませんね」

■そういった音楽に影響を受けた訳は?
「幼稚園ぐらいのときに柏原芳恵の“春なのに”(作詞:中島みゆき)が好きで、小学校の時は工藤静香(“MUGO・ん…色っぽい”や“黄砂に吹かれて”など、中島みゆきは多数を歌詞提供)が流行ってたんですね。で、高校生のときに『よく考えたら全部中島みゆきだ!』って気付いて(笑)。そこから追って掘り下げて聴き始めたら『すごいことになってる』って。とにかく彼女は言葉の持つ力がすごいんですよね。私にとったら偉大すぎて越えられないなって思ってるんですけど、少しでも自分の音楽の中に落とし込んでいけたらなって」

■また、例えば“サボテン”や“迷子”ではキュートさも含めた女性性という部分がかなり強く出ていますね。
「特に“女性性”ってところには意識をおいてはいないんですけど、例えば1stのときは自分自身とラッパーのRUMIは別者っていう感覚があったんですね。完全に切り離して別の人格というか。でも、今回は同一人物というか、自分の内面だったり友達に言うような言葉を、そのままRUMIに乗せて出すことが出来たから、そういう部分が出たのかなって思いますね」

■今回で「Hell Me」シリーズの三部作が終了ということですが、終えてみての感触は?
「1stは、出すまでに悩んでたグチャグチャしたモノを詰めた作品で、出した頃にはその闇から抜けててすっごく元気だったんですけど、聴いた人からは『ああ、あの病んだ女ね』みたいな評価もされて(笑)。そこで『こうやってみんなに判断されてくんだな』って少し恐くなってしまって、だから三部作で『私はこういう人です』ってことを顕わそうと思ったんですね。それを振り返ると、おおよそ自分の内面は作品に出来たかなって。特にこの三枚目は家族にも聴いてもらいたいと思うし。一枚目は絶対嫌だけど(笑)」

■確かに、1stと今回のジャケットの落差たるや相当なものがありますよね(笑)。
「まあ、歳を取ったっていうのもありますよね。若者は怒り狂ってもいいけど、おばちゃんが怒り狂ったら恐すぎるだろうって。なので変なおばちゃん路線もありかなと(笑)。この作品は気楽な気持ちで聴いてほしいですね。これで何かに気付いてほしいし、まず元気を出してほしい」

■三部作を終えて、次の展開は見えてたりしますか?
「アルバムって単位じゃなくて、EPとかで直球のHIP HOPだけって作品も作ってみたいですね。その意味では細かく動こうかなって。大きな作品って単位だと、よりフォーキーな方向に向かうかなって自分では考えてます。ダンス・ミュージックのフィールドじゃない人にも届くアプローチもやってみたいなって漠然とは考えていますね」


RUMI「Hell Me NATION」特設サイト
http://www.pop-group.net/rumi
POPGROUP RECORDINGSオフィシャル・サイト
http://www.pop-group.net

 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : Hell Me NATION
ARTIST : RUMI
LABEL : POPGROUP/POP-120
PRICE : 2,600円
RELEASE DATE : 11月11日