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O2 from MSC

巧みなライミングとそこから描き出されるイルな世界観が、MSCが注目を集め始めた頃から高い評価を得ていたO2。そんな彼がついにソロ・アルバム「STAY TRUE」を昨年11月にリリースした。彼の目の前に広がるリアリティをヴィヴィッドに描写することに成功した本作で、彼はリリシストとしての評価を決定付けた筈だ。寡黙な印象のある彼だが、かなり語ってくれたので貴重なインタビューとなることだろう。

インタビュー:高木晋一郎

「体が小さくて弱くてもラップが出来るからかわいがられたり……ブラジルのスラムで裸足でサッカー・ボール蹴って這い上がってくような、そういう自己防衛にも似た部分がありますよね、ラップって。ちょっと社会的に不適合な部分も俺にはあるから、そこをラップすることでバランスを保ってるのかもしんないっすね……それはヤバいのかな(笑)」

 「MSCのオカルト担当」:O2が初のソロ・アルバムとなる「STAY TRUE」をリリースした。これまでにもMSC関連作でそのリリシストぶりを発揮してきた彼だが、今作では彼の冷徹な視線から描かれる“現実”がそのままリスナーの眼前に表われるような世界観作りと、それとは相反するようだが、そこに虚々実々が織り込まれたリリックが非常に印象的だ、また、彼独特のラップ・フロウと相まって、決して派手さはないが、ズルズルと彼の世界に引きずりこまれるような中毒性も彼の放つ魅力のひとつだろう。時に幻惑され、時にシビアに「それそのもの」を突きつけられるような作品だ。


■そもそもO2さんとラップとの出会いは?
「下町兄弟っすかね。ラジオを聴いてたら流れてきて、これは面白えなって」

■じゃあ、まずリリックにピンと来て。
「そうっすね。それが中学生ぐらいで。あとはやっぱりダンス甲子園とか、MCハマーが『みなさんのおかげです』に出たのを観たりとか」

■ガッチリ聴き始めたのはいつ頃から?
「96年ぐらいから日本語ラップのミックス・テープが増え始めたじゃないですか。それを高校に通う行き帰りでショックウェーブで聴いたりしてましたね。それから、(LIBRAスタッフの)MUSSOと同じ高校だったから一緒に連んだり、センター街が好きな奴も多かったから、渋谷でプラプラしたり。で、カラオケ行ってもまだスチャダラぐらいしか入ってなかったから、スチャダラのカラオケでKダブシャインのリリックをラップしたり(笑)。あとは地元で溜まったり。そんな高校生でしたね」

■自分でリリックを書いて、ラップを始めたのはいつ頃?
「17〜18ぐらいかな。女の子にモテるかなって(笑)。で、パーティとかでPRIMALとGO、それからMUSSOもラップしてたんですけど、そこに混ぜてくれって感じで始めましたね」

■そこでSIDE RIDEが構成されると。
「それに、ラップなら俺の言葉でも聴いてくれる奴がいるのかなって。書いてたリリックの内容はそんなに今と変わらないっすね。四街道ネイチャーのトラックで自律神経失調症のことをラップしたり、ちょっと内向的だったかもしれないけど。それから、反骨精神みたいなのも変わらないトコかもしれないっすね。アメリカの黒人が這い上がるための、立場を変えるためのパワーにHIP HOPがなったって事実もHIP HOPが好きになった理由だし」

■今回のアートワークやリリックの中に地元の話は出てきますが、そういった事象をリリックに落とし込む理由は?
「まずはうちの地元のことを知ってほしいっていうのがありますね。自分の住んでるとこは、道路一本挟むと豚の皮を加工してる地域なんですね。でっかいゴミ処分場が作られたり、街自体は綺麗になってるんだけど、少し路地に入ると出稼ぎの外国人が皮を鞣してたり、そういう地域なんですよね」

■そういったことを、世の中の九割九分九厘の歌詞は描かないし、ある意味では隠蔽してますよね。で、O2さんのリリックで面白いのは、そういったことを殊更声高に問題提起したりするんではなく、非常にフラットに、かつ厳然と存在することとして書きますよね。その温度のあり方は非常に印象的だなって。
「ウチの地元の方は『古き良き下町』みたいにメディアでは言われることもあるけど、実際にはこういう面もあるわけだし、俺としても『古き良き』ってイメージはあんまりないし。荒んでる奴も多いし、そういったことを利用してる奴もいる。そういうのを見たまま書いてるだけだし、自分としての社会の見方はこうなんですよ。その現実を切り取りたい。それを聴いてほしいなって思いますね。いわゆる煌びやかな東京は書いてないと思うけど、これが東京なんだよって」

■その東京を描くのに、O2さんが舞台にしてる都営団地っていうのは重要な題材ですよね。
「あの曲(“六丁目団地”や“団地BACK IN THE DAY”)を聴いて『僕も都営団地なんです』って話しかけてくれる人も多くて。でも、ホント当たり前の状況を描いてて、あの曲に書いてるエピソードもそのままあったことですからね」

■団地の今の状況は?
「やっぱり過疎化と高齢化が進んでますね。街を上げて老人の街にしようかって考えもあるみたいで。でも、金貯めるために住んでる奴もいれば、結婚して新しい家族用の部屋に引っ越したりした同級生もいるし、色々っすね」

■話は変わって、このアルバムの製作はいつ頃から?
「2年ぐらい前っすかね。1stなんでスゲェ昔に書いたヴァースもあるし、一緒に曲作った奴が飛んじゃったりいなくなっちゃったりして大幅に内容を変えた曲もあるしって感じで」

■O2さんのリリックの取っ掛かりはどういったところから?
「ソロのときは、音が先でって感じですね」

■今回のトラックに共通するのは、すごくロマンティックな雰囲気を持ってるってトコだと思うんですが。
「そういう音が好きなのかな、今は。でも、サウスみたいな音もやってみたいし、自分のノリじゃない音にも挑戦してみたいっすね。それからいろんな人に聴いてほしいって気持ちもあるから、そういう届きやすい音を無意識に選んだかもしれないですね」

■O2さんのフロウ自体も、メロディアスとはまた違った、泳ぐようなフロウだと思うんですが、それも聴感上良くすることを考えて?
「ちょっとそういう雰囲気も狙ったっぽいですね。やっぱりリリックが暗いじゃないですか。それもあって、少しポップに聴かせるためにそういう方向を意識したかもしれないですね。それから、フロウから決めてく部分も結構強いからそうなるのかもしれないっすね」

■では完成させての手応えは?
「自分でなにかを成し遂げたことがあんまりなかったから、嬉しいは嬉しかったですね。でも他の人を聴いてカッコ良いって思うのも多々あるし、『俺はやべえだろ』っていうような思いは……乏しいですね。でも、俺のために動いてくれる人がいるっていうのがまず嬉しかったですね」

■今回は客演を全面に招いてますが、テーマの設定はその客演ありきで決まってくんですか?
「けっこうそうですね。せっかく誰かと作るんなら、一緒に話し合って作った方が面白いモノが出来ると思うんで、例えばメシア(THE フライ)だったら、あいつとはそういう国のあり方だったり国家の話をよくするんで、必然的に一緒に作るとなるとそういうテーマになっていきますよね。そうやって決めていきました」

■今作だとECDさんの参加が印象的だったんですが。
「イリシット・ツボイさんの紹介で会わせてもらったんですけど、自分がずっと聴かせてもらってたアーティストだし、すごく音楽を知ってる人だなって。こういう人がもっといろんなトコに出てってほしいなと思うんですけどね」

■さっき、リリックが暗いって話がありましたけど、ヘヴィな現実は現実として描きながらも、それを絶望的に描くことはないですよね。
「結果的にポジティヴに響けばいいかなって。やっぱりネガティヴは結果的に“死”しかならないっていうか、生きるための音楽を作るんなら、どんな形であれポジティヴに届いてほしいなって」

■そのポジティヴさっていわゆる頑張れソング的なことじゃなくて、冷徹に現実を描くことで、そこに立ち向かうためのヒントを与えるというか、そういうポジティヴィティを感じたんですけど。
「ああしろこうしろ言われるのは俺も嫌いですからね。それから、ホントは恋愛の歌なんかも次は書きたいなって。でも、今回書いた内容は、今書きたかった内容ですね」

■且つ、自分の理想であったり希望みたいな部分はあまりないですよね。
「ちょっと照れくさかったり、上手いイメージが湧かなかったりしたのかもしれませんね。ECDさんとの“火星呆景”で『銀ブラ/OLと寝るペニンシュラ』っていうのは本当の願望で(笑)」

■相当具体的ですね(笑)。
「ホントそろそろそういうのがあってもいいかもなって(笑)」

■その意味で言えば、結構お金の話も出てくるじゃないですか。それは抽象的な意味でのお金じゃなくて、結構具体的な“カネ”をイメージしてなんですね。
「そういうことを言える音楽はHIP HOPだけだし、『豊かな国』『美しい国』とか言ってるけど、実際には金がなくて病院に行けない奴もいるし、金持ちが日本を動かして、いつまでたっても俺らには金が下りてこないっていうことに対する感情だったり、そういう(現実的な)金の話ですね」

■それから、どんなテーマであってもラップの温度が変わらないですよね。
「性格的な部分なのかな。集合集宅だったからあんまり大きな声で練習出来ないみたいな(笑)。そういう生活感もあると思うし」

■それも含めてリアリズムというか。
「そうっすね」

■最後に、O2さんがラップする意味は?
「体が小さくて弱くてもラップが出来るからかわいがられたり……ブラジルのスラムで裸足でサッカー・ボール蹴って這い上がってくような、そういう自己防衛にも似た部分がありますよね、ラップって。ちょっと社会的に不適合な部分も俺にはあるから、そこをラップすることでバランスを保ってるのかもしんないっすね……それはヤバいのかな(笑)。でもサラッと聴いてほしいっすね。日本語ラップならなんでも言っていいと思うし、ヴァイオレンスだディスだって部分じゃない、自己表現もあるっていうのを分かってもらえると嬉しいですね。なんでもほどほどにほのぼのにって感じで聴いてもらえれば」
 
 

EVENT INFO
LIBRA presents 『HOT POT SPOT』
 
日時:2月27日(土)24:00開場
場所:新宿LOFT
料金:前売り 1,500円/w/FLYER 2,000円/当日 2,500円(各ドリンク代別)
出演:LIVE: O2 feat. PRIMAL, RUMI, MEGA-G, ガッツ a.k.a. ケツバット, SHINGO★西成, HIDADDY, ECD, HANABI, 太華, MASTER, メシア THE フライ, 少佐, DOGMA, 麻暴, TAB001, GUINNESS, 漢, NOR, 惣一郎
DJ: GROUNDWORK DJ's/DJ SCRATCH NICE/DJ FAT山/DJ DOMMON/DJ IMG
(問)LOFT:03-5272-0382
プレイガイド:ローソンチケット(L・コード:77363)/チケットぴあ(P・コード:348-203)

 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : STAY TRUE
ARTIST : O2
LABEL : LIBRA RECORD/LIBPCD-004
PRICE : 3,000円
RELEASE DATE : 11月4日