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MEISO

2003年の『BBOY PARK』MCバトルで颯爽と登場し、優勝をかっさらっていった当時は無名のMC:外人21瞑想。現在はMEISOとしてハワイで生活/活動を続けている彼は、あのMARY JOY RECORDINGSから昨年リリースされた「夜の盗賊」で、極めてテクニカル且つリリカルなラップで好事家の耳を虜にしている。いまだ知られざる部分も多いが、彼のルーツからラップに対する考えなどを訊いた、貴重なインタビューをお送りしよう。

インタビュー:一ノ木裕之

「曲作りは毎回産みの苦しみとの格闘ですが、スタミナを維持してボンヤリと見えてくる完成図に向けてハンマーを振り上げ、削り続けることが大事だと思います。『It ain't over till its over(終わるまで終わりじゃない)』という英語の言い回しがありますが、どこまで突き詰められるかが自分との勝負であり、負けないように必死に食いしばることに力を傾けています。また、必死にならずに曲が出来てしまわないようにハードルを常に高めているつもりです」

 高校時代に東京・吉祥寺からハワイのホノルルへ移住。一時帰国した2003年には『BBOY PARK』のMCバトルに外人21瞑想として出場し、優勝をさらって一躍名を上げた彼が、ここにMEISOとしてアルバム「夜の盗賊」を完成させた。自らの才能や情熱さえ疑った時期を過ぎて、リリースされるかどうかも分からないままに作り上げたというそのアルバムは、都会のリズムとの葛藤を映しながらも、イマジネイティヴに風景を飛躍させていく。彼の中で再び音を立てて動き出したHIP HOPの時計は、本作に続いて発表となった日系MC:KAIGENとのユニットKAIGEN21MEISOのアルバムへ、そしてソロとして向かうであろう新たな作品へとさらに時を刻んでいく。


■ラップ以前にも音楽経験があるようですね。
「ラップを始めたのは95年で、その前に特に音楽に関わっていたわけではないのですが、幼い頃から様々な音楽を聴くのが好きで、気付けば即興の鼻歌を歌っている子供でした。ハワイの大学時代には声楽を少しの間学び、コーラスの大会に出たりもしましたし、コーラスでの体験が後に自分のスタイルを編み出すにあたり血と肉になったと思います」

■HIP HOPとの結びつきはどのように?
「HIP HOPとの出会いはアメリカとの出会いでした。『DAGEROUS MINDS(邦題:デンジャラス・マインド/卒業の日まで)』という映画で、生活からのダイレクトな詩世界とクーリオの“GANGSTA'S PARADISE”を知って、一気にHIP HOPの面白さに引き込まれて、西海岸物や日本語ラップも手当たり次第に聴きあさり、シングルCDのインストを聴きながら授業中に書いたリリックをラップしたりしてました。周りにHIP HOPをやっている人がいなかったので友人にDJを紹介してもらってAMAKARAというユニットを組み、デモ・テープ片手に地元吉祥寺のクラブを回ったのが始まりでした」

■MEISOさんのラップからは日本語ラップ的バックグラウンドがむしろ見えないのですが、日本語でラップする上で目を開かされたインスピレーションの元などは?
「日本の文学作品からは日本語の美しさ、会話や映画の台詞からは口言葉の面白さを常に学びます。また、日本文化/芸術の特徴のひとつである『繊細さ/subtlety』を有効に取り入れたいです」

■翻訳の仕事もされているようですが、それによって培われたボキャブラリーやセンスなどはありますか?
「翻訳では原文の意味が伝わりやすいように最良の言葉を最良の順番に並べることが求められます。この目的は技術的に詩と同じ工夫が必要となるので、作詞と翻訳は自分にとって互いの技術の鍛錬。翻訳の仕事では新しい知識やボキャブラリーが必要となり、巧く訳そうと努める過程で様々な表現方法の勉強になっていると思います」

■「俺らは都会のリズムじゃオフビートだ」——“聞コエルカ?”(『夜の盗賊』)にはそんな一節がありますね。東京、もっといえば吉祥寺で感じた「リズム」と今、居を構えるホノルルの「リズム」の違いは?
「東京のリズムは、自分がリズムに乗るというよりは『乗らないといけない』といった緊迫感に近いもの。ハワイに行くと皆それぞれ自分のペースでゆっくりとやっている人だらけで、待ち合わせをしても平気な顔して1〜2時間遅れてくる。最初はビックリしました。二つの違いを知ることで自分にはどっちの方が合っているかを考えるチャンスを与えられ、さらに他の場所で違った生活リズムを体験してみたいと考えるようになりました」

■フリースタイル集団:DIRECT DESCENDENTS(以下DD)のメンバーとして地元レーベルから作品も出してるそうですが、メンバーになったいきさつと今に至る活動は?
「ハワイに移住してすぐに地元のラッパーを探していると、RAREという天才的才能を持った日系人ラッパー/ライター/B・ボーイと出会いました。彼には『自転者EP』のジャケと『夜の盗賊』のリリック・ブックのアートもやってもらったのですが、彼の紹介でフリースタイルの鬼:KELVIN ZERO(当時はRUBIXとして知られていた)と会い、彼らのクルー:RECに加えてもらいました。その何年か後に、自分とKELVINが当時先輩のクルーだったDDと曲を作ることになり、2曲を自分のビートで録音して、完成した頃には自然とメンバーになっていました。しかしDDでの活動というものはあってないようなものなんです。巨大クルーの中にいくつものクルーが存在していて、そのユニットによるライヴが行なわれたり、その場のメンバーによる呪術的フリースタイル・セッションが突発的に始まったりといったことが活動の中心でした。DDの活動はHIP HOP道を究めようとしている修行者が集まり切磋琢磨する場所で、ふざけた奴ら中心でありながらHIP HOPに関してはくそ真面目な、『道場』のような存在です」

■「夜の盗賊」としてアルバムをまとめるまでの経緯を教えてください。
「ジャズは『夜の音楽』だ、という言葉をたまに耳にしますが、HIP HOPもやはり『夜の音楽』。もちろん朝聴くのにもいいし、いつ聴いてもいいけど、夜、暗いときにHIP HOPを聴くとその効果は一段と増す。曲を作るときにも同じことが言えて、周りが寝静まった夜にリリックを書くことが自然と多いです。これはHIP HOPのルーツとメッセージがネガティヴな状況からポジティヴな物を作るというエネルギーに基づいていることと無関係ではないかもしれません。暗い夜に星や月が輝くように絶望的状況でその美しさを増すアートなのかもしれませんね。アルバムを通したコンセプトがあって『夜の盗賊』を作ったわけではないのですが、全ての曲にこの脈が一本の筋として通っていると思いたいです」

■タイトル曲はBLACK STARの“THIEVES IN THE NIGHT”を韻踏み翻訳したものだそうですね。
「“THIEVES IN THE NIGHT”は自分にとって志の高い芸術家の作品としてのHIP HOPとの出会い。高校1年で西海岸のラップを主に聴いていた自分に、この曲のスマートなスタイルと知性に満ちたリリックは衝撃でした。セックス、ドラッグ、マネー、ヴァイオレンスがメインのテーマとして扱われていた主流の物に対して、自分と正直に向き合い、真実を求め、社会の矛盾を題材としたこの曲は自分の中でのHIP HOP革命で、曲のテーマ、志の高さ、デリヴァリーのスタイル、メロウな音楽方向性など、様々なHIP HOPというツールの可能性に目を開くきっかけともなりました。曲の魅力を解き明かしたくて、自分の言葉に置き換えてみようと思ったのが翻訳曲を作った理由です。作ってみるとまったく違う曲になっていましたが、言語を超えてその精神を少しは受け継ぐことが出来たのではないかと思います」

■街でもがく人々の様が映った曲の数々は、ある意味実に東京的とも映るのですが、それはMEISOさん自身のいわば心象風景ですか?あるいはMEISOさんが外から東京を、あるいは他の街と人を見つめた視点から生まれたものなんでしょうか?
「曲の多くは自分の体験から来る心象風景だとも言えます。自分の経験に限定せず、都会で生きる人の気持ちを代弁することを目的として曲を作ることを心がけています。したがって、曲の内容では自分だけでなく多くの人が共有する経験に焦点を当てたつもり。曲にもよりますが、都会がテーマの曲ではそうなる場合が特に多いです」

■曲作りに感じた生みの苦しみや、特に力を傾けた点は?
「曲作りは毎回産みの苦しみとの格闘ですが、スタミナを維持してボンヤリと見えてくる完成図に向けてハンマーを振り上げ、削り続けることが大事だと思います。『It ain't over till its over(終わるまで終わりじゃない)』という英語の言い回しがありますが、どこまで突き詰められるかが自分との勝負であり、負けないように必死に食いしばることに力を傾けています。また、必死にならずに曲が出来てしまわないようにハードルを常に高めているつもりです」

■「夜の盗賊」に相次ぐ形で、ユニット:KAIGEN21MEISOでのアルバム「音故致新」も発表されましたね。
「KAIGENさんから1曲コラボしようとお誘いを受けたことから話は始まり、『こんなビートもあるよ』『これも、いいね〜』とやってるうちにアルバムになってました。アルバムの方向性としてはタイトル(英題:Root is the new leaf)の通り、古い音(ROOTS)と新しい音(LEAF)の融合です。HIP HOPの精神にどっしりと構えつつ、KAIGENさんと共に実験的な葉っぱの培養を試みたような感じ。狙いは日本語ラップ/HIP HOPの進化ですね」

■『音故致新』はチョップ・スタイルに代表されるラップのヴァラエティがより見えるとともに、SOLEをはじめとしたゲストの人選にもMEISOさんのラップ的なバックグラウンドを見る思いがしました。
「『音故知新』では『夜の盗賊』よりも実験的なスタイルを使用し、聴きやすさよりも挑戦をテーマとして作りました。よりチャレンジ精神の詰まったアルバムになっていると思います」

■改めて双方のアルバムや今後についてなどを聞かせてください。
「『夜の盗賊』はMEISOというMCがどんなMCかを紹介する、自己紹介の一発目。その目的を果たしたと感じています。『音故至新』ではKAIGENさんとのコラボでの実験を通して、MCとしてのひとつの可能性を形にした。共に完璧な出来だとは思いませんが、制作時に持ち合わせていた力を全て出し切り、行けるところまで行ったという満足感はある。3月に日本でアルバムのリリース・パーティをやった後、次のアルバム制作に掛かろうと思います。ラッパーとして向かう方向は、テクニックの追求をすると共にテクニックを超越した音楽/詩を追求したいです」
 

EVENT INFO
MARY JOY RECORDINGS presents ESP SESSIONS
MEISO「夜の盗賊」RELEASE PARTY
 
日時:3月7日(日)17:00開場
場所:渋谷 club asia
料金:前売り 2,500円/当日 3,000円(各ドリンク代別)
出演:LIVE:MEISO/SHING02 + DJ A-1/RUMI + SKYFISH/おみゆきCHANNEL/田我流/CANDLE/CHIYORI
DJ:DJ KENSEI/DJ RYUHEI/DJ IMG/DJ YAZI/DJ DOPANT他
FREESTYLE SESSION(参加予定者):ISSUGI (MONJU, DOWN NORTH CAMP)/YAHIKO (DOWN NORTH CAMP)/WAX-N-KYN (SD JUNKSTA)/あるま/NONKEY/CANDLE/本田Q/カルデラビスタ/KATOMAIRA + 鎮座DOPENESS + SABO (KOCHITOLA HAGURETIC EMCEE'S)/KTY + PONY + 田我流 (stillichimiya)他
(問)club asia:03-5458-2551/http://asia.iflyer.jp/venue/home
プレイガイド:チケットぴあ(Pコード:348-417)
ローソンチケット(Lコ=ド:77800)
e+(イープラス)

 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : 夜の盗賊
ARTIST : MEISO
LABEL : MARY JOY RECORDINGS/MJCD-052
PRICE : 2,500円
RELEASE DATE : 12月9日
TITLE : 音故致新
ARTIST : KAIGEN21MEISO
LABEL : POETIC DISSENT/PCDTR-003
PRICE : 1,800円
RELEASE DATE : 1月13日