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THE FLEX UNITE

大阪を拠点に活動するTHE FLEX UNITEは、関西シーンのみならず、今後の日本語ラップを担うに相応しいポテンシャルを持ったグループだ。SHINGO★西成、Romancrew、KREVAなどのアーティストたちからのフックアップを通して徐々にその名を浸透させていった彼らが満を持して1stアルバム「F.L.E.X.」をリリース!2MCの妙を活かしたマイク捌き、今時のフロウを試みつつも広く受け入れられるメッセージ性の強化も怠らない、そんな彼らの志の高さが完成度の高さとなってアルバムに反映されているのではないだろうか。

インタビュー:浦田 威

「stillichimiyaの田我流と話して感化された部分もあるんですけど、彼らの地元、山梨は繁華街がシャッター街になってるって現状があって、僕の地元、西成も同じように少子高齢化で若者が少なくなってきてるんで、僕ら世代が地元を活性化させるために頑張らないとどうにもならない。音楽以外の地元の同世代の友達もみんな含んで、次世代に残せるものを作りたいって気持ちも込めてます」——勝

 2005年結成、関西出身の勝とAZZ ROCKからなり、オーソドックスな2MCの掛け合いを核とするTHE FLEX UNITE。現行USメインストリームのフロウ、乗せ方を作品へと取り入れ、2010年最新のビート解釈、フロウで本場の醍醐味を地に足着いた、国産HIP HOPへと昇華することに成功した彼らの1stアルバム「F.L.E.X.」は、BACHLOGIC、EVISBEATSなど関西を代表する優れたトラック・メイカー陣を集め、ラップ/ビート双方で2010年現在、最も刺激的な2MC形態の作品と言って差し支えないはずだ。個性が溢れる今だからこそ、聴き手の興味を惹く特殊なバックグラウンドや“飛び道具”的な個性はなくとも、日常の中での地道な研究、スキルの研鑽、人との繋がりによって優れた最新のHIP HOPを産み出し得ることを鮮烈に証明した、彼らの声には耳を傾ける価値があるはずだ。


■まず、09年は国内シーンで色々優れた作品も出ていたと思うんですが、そういった同業者の作品はチェックしていましたか?それと、今回の作品は2010年のスタートという意味で、タイミング的にも良かったように思うんですが。
AZZ ROCK(以下A)「(同業者の作品は)動きはチェックする方ですね。最初は年末リリースで考えてたんですけど、結果的には年明け一発目ってことになって逆によかったと思います」

■曲調は新しさが目につく反面、曲名では、90's HIP HOPの引用が多いように感じましたが。
A「新譜も好きですが、世代的にも僕らの根本はやっぱり90's HIP HOPやし、“MOMENT OF TRUTH”ってタイトルはいつか使いたいと思ってて、GANG STARRのアルバムから引用しました」
勝(以下M)「この曲名にはエピソードがあって、BL(BACHLOGIC)君から(同名曲の)トラックを送ってもらったときに、(トラック名に)“MOMENT”って書いてあって、意味とかはあえて聞いてないんで分からないんですけど、この曲に対してBL君がその言葉を考えたんやったら、オレらもその言葉に対して考えてみよか、って。日本人の俺らが2010年に出す“MOMENT OF TRUTH”とはどういうものになるんやろう?って、自分たちが楽しむ意味も込めてこのタイトルにしました」

■以前、EPを出した頃から比べると、2人ともフロウや乗せ方といったスキル面で相当な進化があったと思うんですが。
M「色々意見を出し合って良くなった部分はあるんですけど、僕もAZZ ROCKもまだまだ伸びしろはあるとは思ってますね」
A「THE FLEX UNITEは2005年結成なんですけど、元々3MCでやってた時期もあって。3人だとスタイルがバラバラでもアリやったりして、僕はその中でもその場のノリとかを重視して、分かりやすくストレートな方向でやってたんですけど、2MCだとスキル面でひとりにより比重がかかってくるんで、騙しがきかない。そこは色々意識して考えましたね」

■これまで変遷もあったようですが、現在の正式メンバーを教えてもらえますか?
A「僕ら2人と、バックDJは僕がやってる『STREET IS WATCHING』っていう日本語ラップMIX CDのVol.2にも起用してるDJ KAZGOODの3人ですね」

■アルバムを聴くと、“GUESS WHO'S BACK?”だと最近リリースされた色んなアーティストとネタが被ってたり、“DREAMS (REMIX)”ではAZZ ROCK君がTHE NOTORIOUS B.I.G.を引用してたり…ビギーだと同じ関西、ERONE君の“ゆめものがたり”なんかもありましたよね。
M「“GUESS WHO'S BACK?”はSLAUGHTERHOUSEともネタが被ってて」
A「被ったのは後で知ったくらいでたまたまなんですけど、ビギーは“JUICY”の引用で、4年前に僕が25歳のときに書いた曲ですね」

■歌詞で言えば身内ノリのテーマは少ないですが、“普遍性”というものは意識しましたか?
A「長く聴けるようにっていうのは常々考えてますね」
M「お互いを殺さないように歌詞の内容にしても“自分自分”ではないし、グループの1stアルバムとしてふさわしい作品になるように気をつけました」

■バランスの取れた2MCの掛け合いが作品の核になってると思うんですが、参考にしたり、特に好きな2MCのグループはいますか?
M「参考ってなると特にないんですけど、A.T.C.Q.とか、METHOD MAN & REDMANには憧れましたね」
A「あー、理想ですね。M.O.Pなんかも好きです」

■最近、ライヴのクオリティはみんなレヴェルが上がってきてて、そんな中オーソドックスな2MCで「ライヴが良い」って評価までいくのはなかなか大変ですよね。
A「はい、ライヴでヤラれるのはやっぱりシンゴ(SHINGO☆西成)さんだったりするんですけど、そこは僕らが真似しても絶対に勝てない部分があるんで、僕らなりのやり方で良い作品を作って、ライヴで聴いてもらって『ヤバい』って言ってもらえたら嬉しいですね」

■今回の作品は掛け合いのバランスが良くて色々細かい展開もあるし、“聴こえ”の部分がすごく良い作品だと思いました。トラックも全編充実してるし、例えば英語の分からない人がさらっと視聴して「コレは優れたHIP HOPアルバムだ」って思うような感覚があるような気も。
M「そういう“聴こえ”の部分は結構考えてて、バランスの良い曲を作ろうってのは意識しました。掛け合いは単純にライヴでやってても意識の通じ合いを感じるし、歌ってる自分たちが一番楽しいんですけど、まだまだもっと出来るはず。構成は偏ったら面白くないし、3rdヴァースにしても単に捨てる時間ではないと思ってて……」
A「3rdヴァースはお楽しみの時間ですね(笑)」

■なるほど、メッセージの面では勝君のリリックに再三出てくる“次世代”というキーワードが気になったんですが。
M「stillichimiyaの田我流と話して感化された部分もあるんですけど、彼らの地元、山梨は繁華街がシャッター街になってるって現状があって、僕の地元、西成も同じように少子高齢化で若者が少なくなってきてるんで、僕ら世代が地元を活性化させるために頑張らないとどうにもならない。音楽以外の地元の同世代の友達もみんな含んで、次世代に残せるものを作りたいって気持ちも込めてます」

■地元以外でも、昨年は「くレーベルコンピ」への参加、ライヴなど東京のシーンを見る機会も多かったと思うんですが、東京での活動で刺激を受けた点は?
M「最初、面識ない頃にKREVA君がTVで僕について話してたでって人から訊いて、大阪でライヴに来たところをシンゴ兄ちゃんに紹介してもらって。後日、油断してたら電話が架かってきて(笑)、そこでコンピに誘ってもらって。東京でライヴもさせてもらったんですけど、東京に行く度に街の規模の大きさとか、自分たちのやってる活動の小ささとか、足りなさっていうのは痛感しました。外に行った分、自分たちを見直せたっていうのはあるかもしれないです」

■個人的には関西よりも東京のMCの方が同業者の作品を細かくチェックしてるイメージがあるんですが、同業者の、特にUSの新しい音源は聴く方ですよね?
A「そうですね、僕ら2人ともUSの新譜は単純に好きなんで、結構聴いてますね」

■では、最近のリリースで好きな作品は?
A「SAIGONが好きになりましたね。あとRAKIMもさすがって感じのライム&フローしてたし、CLIPSEも良かった。EMINEMもめっちゃ韻踏んでるやんって感じで勝手に良い刺激もらいました(笑)」
M「NYの若手やったらSKYZOOが3日でアルバム作ったとか、スタンダードなラップやけど“リリシスト”って呼ばれてたりして気になってて、新しいアルバムでの進化や、歌ってる内容が知りたくなりましたね。GUCCI MANEはビートへのラップのハメ方とかカッコ良いし、WALEも良かった。あと、ちょっと遅いかもしれないですけど今更COOL KIDSにハマってたり、JADAKISSも声の出し方とかライミングとか、新しくはないけど積み上げてきたものがあってヤバかったし、FABOLOUSもオシャレで女の子向けの甘い歌も歌えるし、ホント外さない3割打者ですよね。自分よりも音楽聴いてる人は沢山いるんで、全然偉そうなことは言えないんですけど」

■最近、ZEEBRA氏のTwitterでも目にしたんですが、異性に聴かれることを意識した作品作りは心がけていますか?
M「このアルバムでもR&Bの要素を入れようかとも考えて、結局今回はナシになったんですが、そこはやっぱり課題としてありますね」

■しかし、R&Bじゃなくともラッパーのセクシーさというのは打ち出せると思うんです。例えばTALIB KWELIの作品とか。
M「やっぱり女性も男性も共感できることを歌ってますよね。“GET BY”とかクラシックやと思うし、ああいうのもやれたらいいと思うんですが」

■そういった色んな音源を聴いて消化した上での、USの新譜の上っ面ではない部分、深みというモノがこの作品にはあると思うんです。
A「そう言ってもらえると嬉しいですね、最初の形はどこから入ってもいいと思うし、そういう向こうのHIP HOPに詳しいリスナーの人達にもこのアルバム聞いて欲しいです」
M「入り口は沢山あっていいと思う。SIMON君とか音に対してのアプローチとか滅茶苦茶研究してるやろうなって、同業者として感じる部分があったんですけど、こないだチラッと話させてもらって、『勝君からもそういうの感じるよ』って言ってもらって、素直に嬉しかったですね(笑)」

■リスナーの話で言うと、国産の作品だけ聴いている人と、USだけ聴いている人の間にはいまだ深い溝があるようにも思うんですが、その点についてはどう思われますか?
M「日本語の作品だけ聴く人もいて、そこから自分たちがサポートされてる面もあるし、音楽は自分が聴いて楽しいってのが第一なんで、(どちらかだけ聴くのも)全然アリやし、細かい部分はスルメみたいに、じわじわ楽しんでくれたら良いと思いますね」

■アルバム中のメッセージに目を移すと、良い意味で“生真面目”というか、悪ぶったトピックやビッチネタなんかもなくて、所謂“普通の人”のレールは踏み外していないですよね。
M「そういうトピックも面白いとは思うし、ソロなら自分の体験の中で、自分なりに言えることを曲にしたりするかもしれないですけど、2人でやる音楽の中で、そこを前面に出そうとは思ってないですね」

■変態じゃなく、金持ちでもなく、東京の中心にいるわけでもない。普通のHIP HOP好きが正攻法でクオリティの高い作品を作り上げたという意味で、この作品には価値があると思います。
M「表には見えないですけど、色んな人の支えがあってやらせてもらってるって感覚やし、それに応えるためにもいい結果出したいし、出さなアカン」
A「お世話になってる人たちのためにも、僕らはコレで終わったらアカンと思ってます」
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : F.L.E.X.
ARTIST : THE FLEX UNITE
LABEL : JIVE TALK RECORDS/JTRCD-001
PRICE : 2,415円
RELEASE DATE : 1月20日