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COMA-CHI

物凄い勢いで音楽シーンを駆け抜けていってるCOMA-CHIが早くもニュー・アルバム「Beaty or the Beast?」を完成させた。自身の中にある二面性を刺激的なトラックの数々の上で表現した今作は、現在の彼女のバランス感覚を絶妙に表現していると言えるだろう。今作を経て、この先彼女はどんな音楽を作ろうとしているのか?そんなことにまで踏み込んでみた必読インタビューを公開!

インタビュー:高木“JET”晋一郎

「モロUSの受け売りは絶対嫌だし、かといってJ・ポップではない、USからの影響も日本ぽい感じも良い案配で混在してるのが私の中での“東京”で、そこでの音楽を作るっていうのが私の立ち位置かなって。だから、『東京の女子代表』としての音楽を作っていきたいですね」

 昨年リリースの「RED NAKED」を皮切りに、数多くの作品/客演を通してメジャー・フィールドにおいてもその実力の高さを証明したCOMA-CHI。新作となる「Beauty or the Beast?」では全編的にエレクトリックな音色と高い物語性を基調にし、前作とは異なったアプローチを見せ、新たなCOMA-CHI像を提示している。DJ JINや今井了介、MITSU THE BEATSといった敏腕プロデューサーとの明確な仕事ぶりも映える、普遍性の高い一枚だ。


■まず遡って、「RED NAKED」を出しての変化って、何か自身として感じた?
「『RED NAKED』は、自分がHIP HOPシーンの中で感じたことや経験してきたことへの、自分からのひとつの回答を出した作品になったと思うんですね。でも『HIP HOPを今まで聴いてこなかったけどCOMA-CHIの作品を聴いて聴き始めた』『HIP HOPは正直苦手だけどCOMA-CHIの作品は好き』って反応も結構あって、ヘッズだけじゃなくてそういう人たちにも作品が届くようになったんだなって感じて。だから、今回はHIP HOPって観点だけではなくもっと広いメッセージを届けたいなって思ったんですよね」

■確かに、根底にHIP HOPを置きながらも、それを超えるようなアプローチもこの一年は多かったね。
「それは楽しめた経験だったし、ステップ・アップに繋がる、進化できる一年でしたね。且つ、新しいチャレンジとして自然に楽しい気持ちでトライできたかなって。もちろん曲作りのツメだったりはストイックになるけど、自由な楽しい気持ちで作った方が良いヴァイブスが伝わるリスナーに伝わるかなって」

■客演もかなりの数になるよね。
「一年で15曲くらいやってましたね。気づけばすごい数になってたなって」

■しかも、その対象がRHYMESTERやm-floっていうビッグ・ネームも多かったし、且つそうやって客演に呼ばれるっていうのは、そのアーティストからの最大限の評価ってことになると思うんだけど。
「そういう方々から声をかけてもらうことは単純に嬉しいし、ありがたいことですよね。でも全然気負ったりとかはなかったかな。楽しんでやらせてもらってます!」

■そこで得たモノは?
「色々あるんだろうけど、『自分のこういう部分が相手には魅力的に映ってるんだな』ってことを客観的に知る機会になりましたね。例えば『こういうエッセンスを曲に加えて欲しい』とかって言ってもらえると、『あ、そういう部分を評価してくれてたんだな』って」

■それが今作に影響してる部分はある?
「客演が多かったからずっと制作を続けてるって形になって、制作してない期間がなかったから、自然と発声とかのクオリティが上がってたのかなって」

■今回のアルバムはどんなイメージで制作を進めていったの?
「前作よりもアッパーだったり、盛り上がる曲を多めにしたいなって。それは去年の夏にいろんなフェスだったりに参加させてもらって、クラブじゃない場、特に日差しの下でHIP HOPはなんと映えないことかと感じて(笑)。そういう場では『RED NAKED』の重ためビートな曲じゃアガりきれないなって。それでワッと盛り上げられるような曲や、突き抜けたテンションでパフォーマンスできる曲が欲しいなって思ったんですよね。オーディエンスの感じも今まで私が向かい合ってた層とは違うなってことを実地で感じたし、そういう人にも楽しんでもらえる曲が欲しいなって」

■とは言いつつ、オープニングの“Beauty or the Beast?”のリリックは内面性が高くて抽象的だし、MONKEY_SEQUENCE.19のトラックもいびつだから、リスナーによっては、特に“広い層”から入ってきた人には「えっ、こんな曲から?」って思うかもしれないよね。そこを入り口にした理由は?
「それが私自身のラップの入り口だから。だからそこは見せたいなって。COMA-CHIのタフなラップを聴きたいって声もあったし、それはシングルではなかなか見せられない部分だから、アルバムでは必ず入れたいなって。それに、こういう世界観って小説とか哲学みたいなのに近い世界じゃないですか。そういう世界を音楽に乗せられるっていうのはラップならではだと思うし、そのスゴさを形にしたいなって。だから不安はなかったし、シングルで間口を広げた分、そこで入ってきた人をガツっとこっち側に取り込みたかったんですよね」

■今回の「Beauty or the Beast?」というタイトルについては?
「私は歌もラップもやるじゃないですか。そして、その二つは自分の中で使い分けてるんじゃなくて、両方とも自然に出てくるんですね。だけど、その二つで『キャラが違うね』ってよく言われるんですよ。ラップは男勝りだけど、歌は女性的だって。そう思われてることに気づいたときに、私の中に、そういう二つの自分がいるのかなって。そこからそういう二面性みたいなものにフォーカスしたテーマにしようって。今作の1曲目と10曲目に関してはテーマがあって、1曲目の“Beauty or the Beast?”で二面性を表現して、最後の10曲目の“oneness”で統合するっていう、そういう構成を考えましたね」

■実際には二面性が強いの?
「あると思いますよ。スゴく女々しいなって自分でも思うときもあれば、全然カラッとしてるときもあるし。それは私だけじゃなくて、人間ってそういうモノなんじゃないかなって。そうやって個人の内面から出発して、男女から人間、最終的には宇宙はプラスとマイナス、陰と陽で出来てる……みたいな壮大なとこまでたどり着いて」

■Twitterで結構そういうつぶやきしてたよね。見ながら結構ハラハラしてた。大丈夫かなって(笑)。
「どっか消えちゃうんじゃないかって(笑)。ああいうツイートだけいっぱい残して消えたら面白いよね(笑)」

■今回の全体的なトーンとして、「RED NAKED」がそれこそタイトル通り赤裸々に自分を表現した、私小説的な作品だったとしたら、今回はもっと物語性が強くなってるよね。
「今までは曲の中で自分のことや実話を歌うってことがリアルだと思ってたし、それしか見てなかった。でも、自分の頭の中で広げた物語や想像も、ひとつのリアルの形なんじゃないかなって思ったんですよね。私がスゴく壮絶な人生を歩んできてたんなら、自分のことばっかり書いても面白いんだろうけど、結構平凡だし。それならイメージを膨らませてそれを脚色して、物語として組み立てるっていうのもいいかなって。そういう柔軟性が自然に獲得できての作品ですね。例えば“イエナイ”だったら、気持ちを言えないってことをベースに、もし自分がOLさんだったら、どういう風に『言えない』って感じるんだろうとか、自分とは違う視点でリリックを考えましたね」

■ストーリーテリングはもとからしたかったの?
「それは当然。そういう部分が私が『ラップってスゴい!』って思った理由でもあるから」

■今回は女性性みたいな部分も強くなってるけど、それもそういった物語性によって?
「女性性みたいな部分は結構意図的に広げましたね。今までは男性社会のHIP HOPシーンの中で、ある意味性別を消した状態で挑みたいって部分があったんだけど、バトルとかサイファーを経て、そして『RED NAKED』を作ったことで一段階超えられたなって感触があったんですね。で、次の段階に上るときに何をするべきかってことを考えたら、『自分は女の子である』っていうアイデンティティをしっかり表現できれば、更に面白いことが出来るんじゃないかなって。それに、シーンの中の自分ってことを考えたときに、男の子たちと同じことやっても、それはもったいないなって。それよりも女の子たちがかわいいと思えるようなHIP HOPを作り出すっていうのが、自分のやるべきことなのかなって」

■それに至る動機はなんだったの?
「昔はB・ボーイとばっかりつるんでたけど、今は高校のときの普通の女の子友達だったり、ネイリストやスタイリストなんかと遊ぶ方が多くなって、興味の対象が少し変わったのもありますね。だから、女であることの時間と濃度が増えたっていうか。ラップバカみたいな頃は何見ても韻のことしか考えてなかったけど(笑)、今はいち女子である時間を楽しめるようになったというか」

■興味の対象が広がったから、そこに対するリリックも増えたというか。
「ホントそうですね。そういう新しい部分と自分の芯である部分を、半分残して半分取り入れるみたいな。新しいCOMA-CHIとこれまでのCOMA-CHIを半々でミックスしたって感じですね」

■例えば“boyz! boyz!”みたいな女性性もあるし、“ギュッと抱きしめて♡”みたいな女性性もあって、その間に広がりがあるよね。
「そこが、『Beauty or the Beast?』なんですな!自分の中に両方あるんですよ。スゴくノリノリなときもあるし、考え過ぎちゃうようなときもある。それって、みんなそうなんじゃないの?って思うんですよね。それを素直に出した結果かなって。伝えたい思いとか感情があるからこそ歌えるし、それがないと作れない」

■今作を作ったことで見えたモノは?
「今回は“STEP UP!”のロック/エレクトロ的なアプローチみたいに、今までの、HIP HOP感とは違う雰囲気が取り込めたんで、これからももっと柔軟にいろんなコラボレーションや楽曲制作が出来ればなって。加えて、“TIME 2 PARTY feat. AK-69”とか“STEP UP! ”みたいなシングルでリリースした曲をフロアでかけてもらえるのは嬉しいし、そういうモノももっと作りたい。ポピュラリティを獲得しながら、フロアでもかかるっていう、それこそお茶の間でかかりながらもフロアをロックできるような曲を作りたいですよね。それから、自分なりの立ち位置が発見できたアルバムですね。モロUSの受け売りは絶対嫌だし、かといってJ・ポップではない、USからの影響も日本ぽい感じも良い案配で混在してるのが私の中での“東京”で、そこでの音楽を作るっていうのが私の立ち位置かなって。だから、『東京の女子代表』としての音楽を作っていきたいですね」
 
 
  
 

Pickup Disc

TITLE : Beauty or the Beast?
ARTIST : COMA-CHI
LABEL : KNIFE EDGE/PCCA-03171
PRICE : 2,625円
RELEASE DATE : 5月26日