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将絢(from Romancrew)

Romancrewから初のソロ作品をリリースするのは……意外にも(?)将絢!KREVA主宰のくレーベルからのリリース、そして全曲をあのEVISBEATSが手掛けるということで、トピック的にもスルーできない要素多数だが、何より将絢のあの低音ヴォイスから繰り出される世界観が凄まじく男前……日本語ラップが誇る屈指の伊達男から繰り出されるパンチラインの数々に酔いしれろ!

インタビュー:高木“JET”晋一郎

「『日本に生きてる』っていうだけの共通項で受け入れられたり、享受される音楽にしたいなって。だから普通の人の目線から見た普通の日常を、どう切り取れば面白くなるかっていうのを大事にしたかったんですよね」

 Romancrewの将絢とEVISBEATSがタッグを組み、KREVAが総合プロデュースを務めたミニ・アルバム「offutaride」。筆者がまず一通り聴いて感じたのは……失礼ながら「あ、狂ってる!」ということだった。もちろんそれは嫌悪感からではまったくないのだが、この徹頭徹尾のダンディさはなかなか日本語ラップでは類を見ない世界観であり、例えば往時の杉良太郎のような「構築されきったカッコ良さ」のような、ある意味ファンタジーにも似た伊達男ぶりを感じ、その意味では筆者と彼との“距離感”故に、筆者は“狂ってる”と感じてしまった。が、それはモテない男のゆがんだ思考故で、もしかしたら女性はうっとりと、モテ男は「え、普通じゃない?」と思うのかもしれないし、実際に将絢自身は非常にフラットにこの世界を描いたという。……うーむ。これほどリスナーの聴き方の差に興味が沸く作品もそうない、新奇性を感じさせる一枚だ。


■この「将絢 × EVISBEATS」というプロジェクトはいつからスタートしたの?
「去年Romancrewが出た『くレーベル祭り』のときの打ち上げにエビスさんも来てて、その時にKREVAさんが『一緒に作ればいいじゃん』って言ってくれたんですよね。で、その後にクレさんから『将絢に合いそうなEVISBEATSのトラック選んどいたから、こんなんでやれば』って。それがスタートですね」

■制作に当たってのEVISBEATSとのコミュニケートは?
「まずクレさんからもらったエビスさんのビートの中で、手のつけられそうなモノから形にしていって。で、シャッフルしてたり跳ねてるような難しいビートのモノは、単純なビートに組み替えてもらいましたね」

■今回のビート感は、EVISBEATS作品の中ではシンプルな方向に振れてるけど、それは将絢くんからのオーダーだったんだ。
「そうですね。それも最初から狙ってたことで。ラップもあまりオフビートにしなかったり、同じ韻を続けたりっていう、オーソドックスでシンプルなモノにしたかったんですよね」

■今作は物語性が強いけど、その方向性は?
「やっぱり(Romancrewとして)3人で一曲を作るとなると、なかなかそれは出来ない形だから、ソロでやってみたかったってとこですね。一曲の中で完結する物語を作るっていうのを。今回はそれがうまくいったって感じですね」

■やっぱりロマンとは感覚的に違ったりする?
「グループだとそれぞれの役割が何となくあったりするから、その役割を自分で全部やらなアカンのかなって最初は思ってたけど、結果それはそこまで意識することではなかったですね。逆にひとりの方が完成まで早かったです、ブレることがないし。その意味では、俺っぽい感じにっていうのは意識しましたね。全体を通して将絢っぽい作品になればいいなって」

■それが作品制作初期のイメージになるのかな。
「そうですね。リリックに関しては、リリックの中であんまり音楽のことは言わないようにしようって意識はありましたね」

■それはなぜ?
「照れちゃうんですよね、音楽のことを音楽を通して言うのって。説明しすぎというか」

■ベタになっちゃうってこと?
「サラっとさせたかったんですよね」

■温度が上がりすぎないようにっていうか。
「そうですね」
Amebreak伊藤「……それは分かるけど、じゃあなんでここで書かれたリリックには照れないんだっていう疑問があるんだけど」
「でも逆にこっちの方が照れないんですよね、俺は。照れます?」
Amebreak伊藤「だって『どうしたのマイフェアレディ(“あなた”)』だよ?」
「だって俺言うもん」
Amebreak伊藤「普通の人は言わねーんだよ!」
「俺は週に3回は言うね(笑)。でも、俺も何で音楽のことを言おうとすると照れるのか分からないんですよね」

■明確な思想信条というよりは、書く上で生理的にモヤモヤするから書かないって感じ?
「そうなのかもしれない。でも、それはとりあえず今回に関してはって感じですね。今後はもしかしたら書くかもしれないけど」

■ロマンだと、温度の高い部分はALI-KICK君やエムラスタ君が担ってたりするから、その流れで苦手になってるとか?
「いや、もっと元々の性格的な部分だと思う。それから、影響受けた昔の歌謡曲がそういう感じだったからなのかも。あんまり説明しすぎなかったり、余白が残るようなものが好きだったし、自分のリリックもそういうモノにしたいなって」

■関係ないようだけど、体育会系の部活って入ってた?
「入ってましたよ。サッカーとバスケ。中学のときは結構真剣にやってたし。あ、でもそのときに、一回テンションが上がって『オッケー(手を叩きながら)!!』みたいなことをやっちゃったことがあって、そういうテンションが上がった自分を後から思い出して『あーもうホントやだ』みたいな(笑)。それが全てのトラウマかも知れない」

■じゃあ、もうホントに元々の性格だ(笑)。元々繋がりで訊くと、将絢君史上で一番最初に書いたリリックって?
「完全にBUDDHA BRANDに影響を受けた感じですね。“スナイパー”みたいな単語も出てきてたかも知れない(笑)」

■フフフ、微妙に温度高いね、それ。
「そういうリリックを経て、それから『人と違うことを』って追求してったら今のスタイルになったんですよね。もっと違うことをラップで言いたいなって、それはスゴく考えてますね。みんながあんまり言いにくいことでも俺は言えちゃうし、その部分は俺の役割なのかなって今は思ってて」

■ちなみにリリックってどう思いつくの?
「基本トラックが先なんで、トラックを聴いて広がったイメージをを組み立ててくって感じですね」

■今回の世界観って徹底してスマートだと思ったんだけど。
「そんな気もないんですけどね。そこまでカッコつけて書いたわけでも無いし。まあ……そう思わせちゃうんでしょうね……」
Amebreak伊藤「(軽く怒り口調で)とにかくキザではあるよね!」

■一枚丸々ここまで隙なくキザっていうのは、日本語ラップではちょっと聴いたことなかったし、正直「狂ってる!」って思った。
「逆にそこまで意識ないんですよ。だから自分にとってはこれが自然なんですよね。普通に歌詞書いたらこうなるじゃんって」

■普通のキザな歌の“歌詞”ならば、情報量を少なくすればいいから簡単だとは思うんだけど、「ラップのリリック」の情報量でここまでカッコつけきるってのは凄いと思うけどね。
「それは『日本語ラップっぽくない』ってことでしょ。だから、そういう(文脈の)モノを何とか成立させたいんですよね」

■今回は、多くのリリックが他者を設定してその人に「話しかける/問いかける」っていう構成だよね。
「「俺の考えはこうで!」っていう、自分の世界だけで完結させるものにはしたくなかったからかな。そうすると何かしかの登場人物を設定した方が進みが良いですから」
Amebreak伊藤「そこがズルいよね。自己完結しないで答えを相手に委ねるところが」
「ズルいかもね(笑)。だから自分の考えや考え方はいっぱい入ってるんだけど、そう聴こえないのはそういう構造だからなのかもしれない」

■答えを誘導して、でも最終回答は相手に委ねるって、ナンパ師とかセールスマンのテクだって言うけど。で、それが登場人物が男女間だったのは?
「男同士の話っていくらでもあるし、ウェットになるじゃないですか。汗臭いというか。そういうのが自分の基本姿勢として苦手っていうのがあるかもしれない。きっと怖いんですよね、男同士の感じって。「男の友情!」みたいなのって、自分の感情の起伏や自分の内面をさらけ出すわけじゃないですか。もう、それが僕にとっては怖いことなのかもしれない。ただ、そういうのが出来ないからこその憧れは逆にあるんですけどね」

■なるほど。この作品の中で将絢君の内面性みたいなモノは若干見えづらいなって少し思ったんだよね。それはそういった「明確にさらけ出さない」ってことにもよると思うんだけど、でも同時に「カッコつけてるって気はない」ってことは、これが内面性ってことだろうし、その方向性が他のラッパーのリリックとは違うから、そこに気付きづらかってだけなんだろうね。
「そこかしこには出してるつもりなんですけどね。でも、内面性の表現みたいなものを、そのまんま出したり書いたりするのは苦手なのはありますね。でも、普通の“歌詞”ってこういうもんだと思うし、こういうのもあっていいんじゃない?って」

■こういう世界のインスピレーション源って経験? それとも何か別のモノ?
「経験もありますよね、当然。でも昔の本や歌謡曲から浮かんでくる部分も強いですね」

■昔の本や昔の歌謡曲って例えばどんなもの?
「すごいちっちゃいときに、寺尾聰の“ルビーの指輪”をテレビで見て、『ああいう大人になりたい』って思ったんですよね。それが幼稚園とかそのぐらいで、完全にその呪いを受けてますね」

■将絢君のダンディズムの源泉だ。でもよく分かるな。決して沢田研二ではなかったってことでしょ。ジュリーは結構温度高いけど、寺尾聰はもうちょっと枯れ味があるしね。
「そうそう。本だと谷崎潤一郎とか吉行淳之介とか」

■色気があるけどスマートな感じね。決してがっつかない。
「エロいんだけどジュクジュクしてないっていうか」

■非常に分かりやすくなった気がする。話は前後するけど、物語性と共に日常性が世界観の基盤にあるよね、今作は。
「『日本に生きてる』っていうだけの共通項で受け入れられたり、享受される音楽にしたいなって。だから普通の人の目線から見た普通の日常を、どう切り取れば面白くなるかっていうのを大事にしたかったんですよね」

■いわゆるHIP HOPリスナーとかっていうよりも、より属性を広く求めたってことだよね。今作の情景や舞台装置が“ストリート”じゃなくて、もっと普通の人間がいる場所に設定したのもそういうこと?
「それによって聴き手の限定をもっと広くできればなって。“あなた”に関しても普通のカップルならサンドイッチ作ったりするでしょって感じなんですよね」
Amebreak伊藤「『しゃれたサンドイッチ(“あなた”)』?(笑)」
「張り切って作るでしょ、みんな。そして、とりあえずアボカドつっこんどきゃいいでしょ、オシャレになるから。女は本当アボカド好きっすからねー(笑)」

■ひでえなあ。今回のターゲットに女性層は想定してた?
「正直そこは考えてないんだけど、結果としてそうなってしまうかもしれないっすね」

■「結果としてそうなってしまう」……今の答えは相当凄いと思う。
Amebreak伊藤「まあ、このムードの作品を男がひとりで聴くってのも想像つきにくいよね」
「この曲数だからこのムードが保てたのかもね。これが10曲続くと甘ったるくなっちゃうし、起伏をつけるためにムードを壊さざるを得なくなったりしたのかもしれないけど。だからこの曲数でちょうどよかったのかも。すいすい呑めるけど超酔っちゃうみたいな、シャンパンみたいな一枚になるといいですね」

■……喩えまでキザだぜ!
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : offutaride
ARTIST : 将絢 × EVISBEATS
LABEL : くレーベル/KLCL-0001
PRICE : 1,500円
RELEASE DATE : 6月16日