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QN from SIMI LAB

突如YouTubeに出現したSIMI LABという謎の集団の動画……その動画が話題を呼んでPUNPEEや環ROYといった日本語ラップ界の奇才たちからも注目されるまでになった彼らだが、そんなSIMI LABからメンバーのQNがグループに先駆け1stソロ・アルバムをリリース。弱冠19歳の彼は、年齢相応/不相応入り交じるその感性で、かなりハイクオリティな一枚を作り上げた。SIMI LABともども、今後が実に楽しみな存在だ。

インタビュー:高木“JET”晋一郎

「同世代を見ても『日本語ラップ(のフォーマット)そのまんまじゃん』って思ってしまうのが多くて、それよりも『自分の思うまんま』の、自由なことをやればいいのになって。もっと自分も単純に楽しめるような。そういう日本人らしくない……でも“黒い”って表現も嫌なんだよな……USに近い感じを出したかったというか、それを日本人でも出来るってことに感動してくれたら嬉しいですね」

 筆者がSIMI LABの存在をまず知ったのは、メテオの“MOTERU”へのQNとOMSB'Eatsの客演参加によってだったが、本格的に彼らの存在を意識したのは、昨年末にTwitterに流れてきた、彼らのPV“WALKMAN”からだった。感覚に働きかけるようなビートのタイム感や、それぞれの登場する4MCの自由闊達なラップの置き方など、サウンド的なフレッシュさを感じさせると同時に、人種も性別も混淆したMCたちが入れ替わり立ち替わり現われ、しかも言語は日本語という、謎の多い正体不明な雰囲気はリスナーの想像力を十二分に刺激するものであった。そのSIMI LABの中から、MCのQNが1stアルバム「THE SHELL」をリリースし、シーンにその存在を知らしめることとなった。アルバムからも顕著に感じられるが、このインタビューでも語られるような、「既存のモノ」との温度差やDIY精神は、彼のパーソナリティに依るであろう部分と共に、雑な言い方になるが19歳という年齢による部分も大きいだろう。その意味では彼の“今”であると共に、彼らの世代の「今の見方」が落とし込まれた「今だからこそ」生み出された作品だろう。

■まずQN君とHIP HOPの出会いは?
「ウチの姉がHIP HOPが好きで、それで中学校ぐらいからEMINEMとか50 CENTとかいろいろ聴かされてたんですね。で、中2のときにJURASSIC 5を聴いて『これはヤバイ』って。それで西海岸のアングラなんかを本格的に聴くようになったんですよね」

■どこら辺にピンと来たの?
「『POWER IN NUMBERS』(02年)を聴いたんですけど、JUJU(BEATNUTS)がプロデュースした“IF YOU ONLY KNEW”のフルートの使い方に衝撃を受けて」

■じゃあサンプリングって手法にまず反応したんだ。
「そうですね。あと中学の頃はブラバンだったりしたんで」

■ハハハ。管楽器の音になじみがあったんだ。
「そうかもしれないっすね。で、バイトしてターンテーブルを買ってDJをまず始めてたんですけど、それだけじゃ物足りなくなっちゃってKORGのシーケンサーを買って曲作りも始めたんですよね。それが中3ぐらい」

■回りにHIP HOPの曲作りをやってるような友達っていたの?
「いや、いなかったですね。それで姉ちゃんの紹介で、今回も参加してもらってるRATLAP君や、プロデュースしてもらったELMORE君と知り合って、今まで一緒にやってるって感じですね」

■なるほど。ラップを始めたのはいつ頃?
「トラックを作ったのはいいけど、ラップしてくれる人がいなかったし、DJだとなかなかイヴェントに食い込みづらいじゃないですか。だけどラップ出来れば、ライヴだったら一曲二曲みたいな形でも出やすいかなって。それにDJも好きだったけど、DJよりラッパーの方が目立つなって(笑)」

■結構人前に出たい欲が強かったの?
「そういう願望は強かったですね。それでラップを高2から始めて」

■じゃあ、ラップ始めてまだ3年ぐらいなんだ。
「現場やライヴに力入れて、そこで名前上げていくのが筋道でしょって人も同世代にいるけど、俺の場合はそれより音源作った方がいいんじゃないかって考えは前からあって。ラップ始めたときもすぐマイク手に入れて、音を録るってことを集中してやってました。それをMDに焼いて友達に配ったり」

■なるほどね。話は変わるけど、SIMI LABの成り立ちを教えてくれる?
「『SAG DOWN』(SD JUNKSTA/SDP主催の町田のイヴェント)でOMSB'Eatsと知り合って、普通に遊び友達になって『じゃあなんかグループ作ろうよ』って始めたのがキッカケですね。だから何となくノリでっていうか」

■QN君の音楽歴を訊くと、DJにしてもトラック・メイクにしてもラップにしても、誰かとじゃなくてひとりで進めてった感じだよね。その意味ではSIMI LABと組んだことでQN君の中で意識変化ってあった?
「OMSB'Eatsと出会ったことは大きかったですね。会う前は90年代HIP HOPを追っかけて、今のメインストリームはHIP HOPじゃない!みたいなことを言ってるような奴だったんだけど、OMSB'Eatsはメインストリームからアブストラクトまで幅広く聴いてて、それを聴かせてもらうことで、そういうのにもヤバいところはあるんだなって気づけたのは大きかったですね」

■俺がSIMI LABを知ったのは、メテオの“MOTERU”と、YouTubeで観た“WALKMAN”のPVだったのね。特にPVは、SIMI LABについて何の予備知識もなく見たから、人種も性別も混淆したこの集団は何なんだって衝撃がまずあったんだ。そういった構成メンバーになった理由は?
「地元の相模原がそういう感じだからですね。キャンプもあるし、外国から日本に来て働いてる人も結構多いんで、ハーフも多かったり。かつOMSB'Eatsがそういう人との繋がりもあったから、自然に今の構成になりましたね」

■SIMI LABの平均年齢ってどれぐらい?
「21〜22(歳)じゃないですかね。一番上が24で、一番下が17」

■“WALKMAN”の反響は大きかった?
「再生回数がみるみる上がって、『なんか起きるんじゃね?』みたいな感じはありましたね。ただ、あの曲はDYYP RIDEとMARIAがSIMI LABに入ったから、昼ぐらいにウチに集まって録って、そのまま『この曲でPV作んね?』ってそのまま撮影して、それを俺が編集してそのままアップしたモノだったんですよ。だから全部一日で作ったんですよね」

■そうだったんだ。あのときはほとんどSIMI LABに対する情報がなかったし、何者かは分からないけど曲は凄いっていうインパクトはスゴく大きかった。上げたときはこんなに評価されると思ってた?
「全然思ってなかったっすね。PV録ったのも、YouTubeに上げたのも初めてだったし」

■評判になったことでモティヴェーションは上がった?
「そうですね、それはかなり。このアルバムも最初は完全に自主で出そうと思ってたんだけど、評判になったことでもうちょっと大きな形で流通できるようになったし」

■このアルバムは当初は完全自主を考えてたんだ。
「そうですね。まずキッカケを作りたいって感じだったから。そして作って少しでも評判になればいいなって感じで、一年以上前から作ってましたね。何しろEARTH NO MADを始めトラックを作る奴が周りに多いから、トラックはとにかくいっぱいあったんで、あとはラップするだけだったから。それに、目立ちたがりの宿命じゃないけど、『じゃあ(SIMI LABの中から)まず俺が目立ってくるからさ』ってそういう感じもありましたね(笑)」

■制作はどういう風に進めていったの?
「俺自身やりたいことがコロコロ変わるんで、トータル性よりも、とりあえず一曲一曲作って、曲が集まったらその中で選択して構成しようかなって。ただトーンとしては、ヘッズ過ぎず、病んでる感じでもないモノにしようとは思ってましたね。日本語ラップって結構そういう打ち出しが強いじゃないですか。だからいかにもヘッズやマニアに受けるような曲は今回外したし、それよりも日本でまだ誰もやってない作品にしたいなって。それが収録する基準でしたね」

■今回の作品ってスゴく温度が面白いと思ったんだ。いかにもヘッズっていうような熱さはないけど、後半だと”TRAFFIC”みたいに温度が上がる曲もあって、全部がドライに冷めてるってわけでもない。その温度のバランスが面白いなって。
「前半はヘラヘラしてるけど、後半は結構シリアスだったり熱い部分も出しましたね。それは俺がコロコロ考えが変わっちゃうからかもしれないんですけど。だからOMSB'Eatsにも『その性格が今回は良い風に出たね』ってドヤ顔されましたけど(笑)。ただ、やりたいことがコロコロ変わるから、このアルバムも今やりたいことではもうないんですよ。タイトルの『THE SHELL』っていうのも“抜け殻”って意味で付けたんですよね。中身はもう違うよって」

■やばいね、生意気だね(笑)。リリックの質も、高邁な理想であったりっていうより、自分の周り500メートルというか、身近とか卑近ともまた違うんだけど、自分を取り巻いてることについてラップしてるよね。
「自分そのまんまでやればいいじゃんってリスナーにも分かってもらいたかったんですよね。ハスリンとかギャングスタじゃなくてもラップできるよって。それよりもただ音楽を楽しめばいいじゃんって提示はしたかった」

■その意味では、QN君のラップは聴感を大事にしてると思うんだけど、そういった方向性もそういった考えから?
「あんまりメッセージとか言葉でどうのってことがより、気持ち良い単語や発声を大事にしたいなって思いはありますね。それに、ただの日本語ラップから抜け出したいって気持ちはありますね。同世代を見ても『日本語ラップ(のフォーマット)そのまんまじゃん』って思ってしまうのが多くて、それよりも『自分の思うまんま』の、自由なことをやればいいのになって。もっと自分も単純に楽しめるような。そういう日本人らしくない……でも“黒い”って表現も嫌なんだよな……USに近い感じを出したかったというか、それを日本人でも出来るってことに感動してくれたら嬉しいですね」

■なるほど。SIMI LABでアルバムの予定は?
「来年には。OMSB'Eatsがイニシアティヴを取りそうなんですけど、奴はかなりアブストラクトなんで、その対抗軸としてEARTH NO MADの安定感のあるサウンドを取り込んでバランス取ろうかなって」

■最後に、QN君の目標ってなに?
「あんまり考えてないですけど、僕、個人というよりSIMI LABは日本のLIVING LEGENDみたいにしたいんですよ。で、でっかくなったSIMI LABの中核のポジションをずっと維持してたいっすね。だから僕個人ていうよりSIMI LABをもっとビッグにしたいです。一家の大黒柱的な」
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : THE SHELL
ARTIST : QN from SIMI LAB
LABEL : FILE RECORDS/FRCD-201
PRICE : 2,000円
RELEASE DATE : 7月29日