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DJ MITSU THE BEATS

以前から噂されていた、DJ MITSU THE BEATSの日本人アーティストのみが参加したニュー・アルバム「UNIVERSAL FORCE」がリリースされた!世界的に高く評価されていて、かなり多作な人なのにも関わらず、日本語ラップ曲のプロデュースは意外な程少ない彼。世代を超えた国内シーンの実力派たちが一同に集結した今作がきっかけとなって、新しい動きが産まれるかもしれないぞ!

インタビュー:高木“JET”晋一郎

「僕って日本語ラップ・シーンから離れたところにいるって感じてるんです。GAGLEやってるのに、プロデューサーとしてはあまり日本人に楽曲を提供する機会がないし、日本人アーティストとは離れた場所にいるってのは不思議だなって。そういう情況があるから、それなら自分からアプローチしてみようと。これを聴いてトラックを頼んでくれる人が増えればいいなって」

 昨年リリースの海外アーティストを迎えたプロデュース・アルバム「A WORD TO THE WISE」に続き、日本勢を迎えたアルバム「UNIVERSAL FORCE」を完成させたDJ MITSU THE BEATS。GAGLEという母体を持ちながら、プロデュース・ワークとしては積極的な日本勢との制作をこれまで行なってこなかった彼に、「日本勢との作品を」という期待は高まっていた。そして、それが実際に形になった今作は、MITSU THE BEATSの音楽観を総合したようなヴァラエティに富みながらも、どこを切っても彼を感じさせるサウンドと、当然のことながら言葉の意味性にも寄り添った世界観としても深みのある構成、そしてヴェテランからニューカマーまでの幅広いMCが集結した作品として完成し、その期待をまったく裏切らない高密度の作品となった。


■まず、今作の制作はいつ頃から?
「2年前ぐらいです。2nd(『A WORD TO THE WISE』)を出す前に、今後の活動の予定として海外の人と作る作品——これは2ndになったんですけど——、インスト・アルバム、ミックスCD、そして日本人と作る作品って大まかな構想を組んでいて。だからそのときにはもう制作を決めていました」

■日本人勢との制作という構想は、海外勢との「A WORD TO THE WISE」からのカウンターってことではなく、それ以前に既にあったんですね。
「そうですね。TWIGYさんとの“ONLY YOU”は一年以上前には作ってたんで、時期的には被ってたりもしつつ」

■もっと根本的に、「日本人との」という着想をした理由は?
「JAZZY SPORTとの話し合いの中で、ぽろっと『日本人アーティストと作りたいな』って話したのが形になった感じです。だからそこまで大きな意味で考えていたわけではなく、最初は気軽な感じでした」

■内外のアーティストを混同させないで、アルバムとして別々に構築したのは?
「その前に、なんで海外アーティストとばっかりの作品を作ったのかもよく自分で分かってなくて(笑)。だから、『A WORD TO THE WISE』は実は何か目標があってああいう方向性になったわけではなくて、結果的に海外勢との作品になったんですよね。基本ホントに僕はテキトーなんですよ(笑)。ただ、混在させるよりは“日本人だけ”って形にした方がインパクトはあるし、このタイミングで僕が日本人のアーティストとしてやるのは意味があるかなって……まあ、そう後付けで思いましたけど(笑)」

■フフフ……、これだけリスナーが想像力をかき立てる構成でのリリースなのに、当の本人が一番無意識ってのは凄い(笑)。
「ただ、僕って日本語ラップ・シーンから離れたところにいるって感じてるんです。GAGLEやってるのに、プロデューサーとしてはあまり日本人に楽曲を提供する機会がないし、日本人アーティストとは離れた場所にいるってのは不思議だなって。かつ海外勢とのコラボなんかで、『日本人とはやらない人なんだな』って、より日本人アーティストと壁を作ってしまってた気はするんですよ。DJプレイで呼ばれるのも、HIP HOPのイヴェントは一割ぐらいで、九割はクロスオーヴァーだったりする。そういう情況があるから、それなら自分からアプローチしてみようと。これを聴いてトラックを頼んでくれる人が増えればいいなって」

■日本人との制作っていう欲望自体はあったってことですね。
「現在進行形で頑張ってる人たちや、今まで僕も聴いてきた大御所の人と作ったらどうなるんだろうって、チャレンジしてみたいって感情はありましたね」

■なるほど。では今作を作ったことで、海外アーティストと日本人との違いって何か感じました?
「やってみて思ったのは、違いがまったくないってことだったんですよね。提供する曲にしても、今までと変わらず“その時期”に作ってた曲だし。ただ、『この人は普段こういうビートはやってないから』って、相手のことをよく知ってるからこそ、提供するビートの方向性も、海外勢より決めやすかったかもしれないです。制作の進め方に関しては、ビートを相手に投げてそれにラップを乗せてもらって、戻ってきたモノをまたエディットするっていうのは同じでした。録音に立ち会ったりは、今回も少ない」

■地理的な問題もあると思うんですけど、日本人アーティストとともそういう制作だったんですね。
「『ちゃんと話し合って気持ち高めてた方がいい』って人もいると思うけど、そうしなくてもサラッと作れるんじゃないかなって僕は思うんです。淡泊な作り方だとは思うんですけど」

■今回の人選はどのように?
「僕が好きなアーティストがまず前提でした。ただ、候補として名前を挙げたアーティスト全部とは実現できなかったから、もっと他にもやりたい人もまだいるし、曲数が許せばもっと繋がりの深いアーティストともやりたかったんですけど。例えばSTERUSSとかFULLMEMBERみたいな、お互いに深く認め合ってるようなアーティストとか。そう上げてったらキリがないんで、今回は『まずこうなった』って感じです。だから、相手さえOKしてくれればすぐに第二弾を作れます」

■人選的にはニューカマーからヴェテランまで幅広いですね。
「僕もキングギドラやペイジャーから日本語ラップを聴き始めたし、そういう人たちと出来る機会だなって思ったんで、ZEEBRAさんやTWIGYさん、RINOさんにお願いして。ただ、そういう人選はみんな意外だと思うみたいなんですよ」

■確かに。いわゆる文系的なだけではなく、ハードさや東京感のような部分もパックされてますよね。それは一曲目のB.Dさんとの曲から顕著に表われてると思うんですけど。
「こういうのも何ですけど、僕はホントに真面目な人間だし、ハードな経験もほとんどない。だけど、そういう(同じようなメンタリティの)人たちとだけ一緒に作るんじゃなくて、もっと自分の中にないハードな世界観や、GAGLEではやったことのないような言葉使いを自分のビートに乗せたかったし、それでこそコラボレーションの意味があるなって。それは狙った部分ですね」

■何か参加メンバーに共通する部分はありますか?
「単純ですけど『真面目にやってる』というか。僕も音楽を好きで真面目にやってるってだけだし、そういう気持ちを感じる人っていうのは共通してると思います」

■抽象的ですけど、MITSUさんがラップを聴いて“ピン”とくるポイントってなんですか?
「やっぱり、その人しか持ってないオリジナリティを感じるかどうか。このアルバムに入ってる人は、みんなそのスタイルの元祖というか、誰かのマネをやってる人はひとりもいないし、そういう心のある人が好きです」

■日本語とその他の言語とでは、ラップが自分のビートに乗ったときになにか違いはありました?
「意味が完全に伝わってくるって意味では、トラックの世界観に更に(意味が)乗っかる感じですよね。それが完全に違います」

■エディットの方向性は変わりますか?例えば音の抜き差しを聴感でなく意味で合わせるとか。
「それは多少あります。この“言葉”を聴かせたいってところは、それを強調するような展開にしたり。だからそのポイントの作り方が英語よりも明確ではありました」

■その意味では、英語では聴感や感覚、勘で作る部分が、日本語ではもっと意味に寄り添ってるというか。
「そうですね」

■話は戻りますけど、内容についてのディレクションはほぼなかったということですね。
「ほとんどなかったです。ZEEBRAさんとの“ONE HIPHOP”は一度会って打ち合わせして方向性を決めましたけど、ZEEBRAさんからの提示がバッチリだったから、そこに乗る形で。他の曲に関しては完全にお任せです」

■各MCにトラックはどれぐらい渡したんですか?
「ほぼ1曲ずつです。だから『こういうトラックでラップしてほしい』ってこと一点だけが渡すトラックの基準で。それでもひとつもやり直してほしいなんて曲は戻ってこなかったし、こっちの提示したい世界観をより深くしてくれるモノばっかりだったのは、こちらの意図が音でしっかり伝わったってことだろうし、嬉しかったです」

■今回に関してはS.L.A.C.K.君とあるま君の曲以外は、ビートがあまり揺れずに、オンで入る曲が多いですね。
「そういう揺れるビートはやってきたので、自分としてもヴァリエーションを見せたいなって」

■その部分からMITSUさんの中で、日本語にはオンのビートが合うっていうイメージがあったのかなとも思ったんですが。
「正直そこはあまり意識してなかったんだけど、結果的にそういうビートが多くなったってことは、漠然とそういう感覚を持ってたのかもしれないです」

■今作は全体的に音数が多く、豪華な感じがありますね。
「シンプルなだけで終わらすのは今回はやめようって。前は3〜4トラックで完成するようなモノに凝ってたけど、自分としてもそういう単調なビートに飽きてたし、それよりも展開付けて広がりのあるモノにしようと思いました」

■楽曲に関しては全曲解説(近日公開予定!)のページに譲るとして、総論的なところで今作を作っての手応えは?
「『僕が作った日本語のアルバム』ってことで、みんなが注目してくれてるっていうのはフツフツと感じます。1stの頃の、どんな作品になるんだろうって期待されてた頃を思い出すような。そういう反応って僕の関わる作品に関してはここ最近なかったし、僕としてもまた新たな気持ちになってますね。初心に戻ったような、不安と期待の入り交じるような」

■MITSUさんとしてもフレッシュな感じなんですね。
「そうですね。だから普通のビートメイカーのアルバムとして聴いてほしいです。あまり好き嫌いせずに、普通に日本語ラップ・アルバムのひとつとして聴いてほしい。僕の作品のリスナーの中には日本語ラップを聴かないって人もいるけど、そういう人にもこの作品を聴いてほしいし、逆に僕のソロ作品に距離を感じてる日本語ラップ・リスナーにも聴いてほしいし、この作品によって両方の偏見がなくなると嬉しいですね」

■最後に、今後の動きとしては、インタビューの冒頭に話されてた計画を進める感じですか?
「そうですね。インストのアルバムはMADLIBの短いループ集みたいなのじゃなくて、演奏も含めた、曲としてしっかり成り立ってるようなモノをアルバムにしようって。それはHIP HOPにこだわらないものにしたいと思ってます」
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : UNIVERSAL FORCE
ARTIST : DJ MITSU THE BEATS
LABEL : PLANETGROOVE, VILLAGE AGAIN/ZLCP-0016
PRICE : 2,600円
RELEASE DATE : 8月4日