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PIT GOb

練マザファッカーの一員としてシーンに登場したPIT GOb。昨年は数々のトラブルに見舞われ、キャリア上の大きな転機となったようだが、彼は更に逞しく、更にアーティストとして成長して帰ってきた。盟友:無也と共にNYで作り上げた「REBORN」という銃弾を受け止める準備は出来ているか!?

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「練マザファッカーみたいに大人数でやるスタイルもスゲェカッコ良いんですけど、俺的にはひとりでロックできるようなラッパーにまずなりたいですね。人によっては俺は常に『練マザファッカーのPIT GOb』っていう見方があるだろうし、それは当たり前で俺の中でもそれは変わらないけど、今回はPIT GObというひとりの男を見せたかったんです」

 昨年の1月某日、テレビを観ていた筆者の目に飛び込んできたのは、その前年末筆者が練マザファッカー(以下練マ)のインタビューに訪れたビルの映像だった。ニュースで(元)相撲力士の若麒麟と共に名が挙がっていた平野力という男が、あのPIT GObだと分かるまでそう時間はかからなかった。

 結局PIT GObに関しては嫌疑不十分で不起訴処分となったものの、練マのリーダーであるD.Oが別件で逮捕されてしまい、彼のメジャーから出る予定だったアルバムは発売中止(現在、再リリースに向けて動いているという)。PIT GObの1stソロ・アルバムも発売が半年程延期されて09年9月にリリースされるなど、一連の事件でPIT GOb、そして練マが負ったダメージは大きい。

 だが、練マの復活は予想以上に早く、インパクトのある形で実現することになりそうだ。2010年の一発目の仕掛けとして、PIT GObが2ndソロ・アルバム「REBORN」を完成させた。本人的にも大きな転機となった一連の事件を受けて、彼が今作で掲げたテーマは“再生”。パートナーに、彼の幼なじみでもあり、現在NYの鬼ゲト—でひとり闘い続けているプロデューサーの無也を起用し、これまでのPIT GObのイメージを一新することに成功している。これまでの淡々とした(故に不穏な怖さがあり、それが魅力だった)フロウから、大胆に激しくスピットするスタイルに代わり、各楽曲のエンターテインメント性も飛躍的に向上している。D.Oも復活シングルが9月8日にリリース、そしてアルバムも年内に発表されるようだし、数年前とは違う意味で彼らの今後がまた楽しみになってきた。


■例の事件から1年以上経ちますが、一連の騒動でGOb君が感じたことや学んだことはありますか?
「学んだことは……警察は本当にウソつきだな、ってことと、色々やってもらってた人たちの存在がデカかったな、って。仕事でも色んな人が関わっていたけど、今ひとりとか少人数でやってみて、今までのありがたみが分かりましたね。まー、本当に勉強になりましたよ、良い意味で!」

■あの事件の直前に練マのアルバムが出て、クルーとして大きく展開していく予定だったと思うんですけど。
「あ、でもあのアルバムに関しては、やっぱり『リンカーン』に出演したときのメンバーで作ったっていう部分があって。多くのメンバーは練マ以外にクルーを持っている人たちばっかりだったから、今のところ練マとしては昔の形に戻ったみたいな感じですかね。最近は練マとしての音源は出してないので、そこまでクルーとしての活動はないんですけど。ケンカ別れとかそういうのはないです。ただ、普段よく会うのが昔からのメンバーなんですよね。あと、俺もまだ練マだぜって思ってるヤツはいつか何処かで繋がると思うし!」

■練マのアルバムが出た頃は、D.O君がリーダーっていう意識も強かったと思うけど、練マとしての活動が今なくて、GOb君のソロ作が今回出るっていうことで、意識的にも以前とは違うんじゃないですか?
「そうですね。今でも自分は練マザファッカーだし、練マとして活動していくというのも自分の中では今でもあるんですけど、今回はPIT GObというひとりの男をもっとアピールしたくて、幼なじみの無也の協力も得て、昔の気持ちに戻りつつ『生まれ変わり』ということでまったく違うPIT GObを作り上げたと思っているので、そういう部分が意識に反映されてるのかもしれないです」

■確か前作「53」は、昨年の春頃リリース予定だったけど、一連の騒動があったために延期されて、結局9月頃にリリースされたんですよね。今あのアルバムを振り返ってどう思いますか?
「アルバムはあの事件の前に出来てたんですけど、『事件の後に作ったんじゃないのか?』ってよく言われるんですよ。なんかリンクする部分が多いみたいで。“耐える”だったり“修行”だったりってフレーズが結構出て来るんで。あのアルバムは俺の中では始まりであり、それまでの集大成でもありましたね。今までお世話になってきた雷家族の先輩たちや、D.Oや練馬の仲間だったりっていう、俺がラップを始めてから歩んで来た人たちとの関わりを見せたかったんです。今振り返るとまだまだ未熟だったと思うし、俺のラップって低い声/一定のトーンでフロウするスタイルだったんで、アルバム一枚通して聴くと聴いてる人が飽きるんじゃないかな、って思う部分もありました。今までのラップだと感情があんまり伝わらないのかな、って思う部分も。それで、今回無也と相談して、“生まれ変わり”ということで感情をむき出しにしたスタイルに挑戦してみました」

■そもそも無也君とはどうやって出会ったんですか?
「無也のことはもう小学生の頃から知ってて。BOOT STREETの近くに神南小学校っていう学校があって、あそこは前は大向小学校って名前だったんですけど、そこにお互い通ってました。アイツが NYに行くまでは毎日のように一緒にいましたね、兄弟の様に!アイツん家に行ってはスクラッチを延々聴かされては俺が意見言って、そんなことばっかりやってました。MPCは持っていたからその頃から音作りはちょこちょこしてたけど、無也が本格的に音を作り始めたのはNYに行ってからですね」

■じゃあHIP HOPアーティストとして二人が確立していったのは、お互いが別の場所にいるとき、ってことなんですね。
「そうですね。で、2004年頃から無也がビートを送って来るようになって、その頃から漠然とではありますけど、『いつかNYで無也オール・プロデュースでアルバムを作ってみたいな』と思うようになって、そのタイミングが今来たって感じです」

■漠然と思っていたその計画がこのタイミングで実現した理由は?
「まず、1stアルバムを作って次は何かな?って思ってたっていうのがひとつで。一旦行きたいって思ったらずっとそのことが頭から離れなくて、気付いたら飛行機のチケットを取りに行ってました(笑)。それで無也に『俺そっちに作りに行くよ!』って言ったら無也もOK!みたいな。それが今年の春ぐらいの話です」

■やはり今作と前作を比べると明らかに違うのは、その覚悟の度合いというか、このアルバムにはこれまで以上にギラギラしたGOb君の姿が刻まれてますよね。
「やっぱりNYで作れたからっていうのもある。開放感というか、やっぱりHIP HOPやってる以上アメリカで何か出来るっていうのはスゲェ嬉しい。誰もが思うだろうし。そして、曲作りに関してはスゲェ時間をかけましたね。一回録ってから自分で何回も聴き返したり、色んな人に聴いてもらってダメなところはやり直したり、無也もプロデューサーとして納得いかないとOK出さないヤツだから。手こずったけどあきらめないで作り続けたし、徹夜で翌日の昼ぐらいに出来上がった曲を聴くときは、上手く言えないんですけど、達成感で本当に幸せでしたね。『おー出来た。ヤベーこの曲』みたいな!」

■実際NYで録音してみて、日本と違いましたか?
「日本だと、基本的にレコーディングする人が(その場の)主役だと思うんで、僕が先輩のレコーディングに遊びに行ったときとかも、邪魔しちゃいけないから静かにしてたりしますけど、NYでは(無也のレーベル:GEKOKUJO NYC所属の)SHARP-A-DONがやって来てはシャンパンとヘネシー持って来て『飲め』って飲まされてベロンベロンにされるわ、作業してる人より周りの方がうるさいわで(笑)。あと、今回は無也がプロデュースとエンジニア両方やってたっていうのがあって、ズバズバダメ出しされましたね。日本のエンジニアだったら思ってても逆に気を使って言わない人とかいるだろうけど」

■それこそ全編英語の“REBORN”とか“P.I.M.P”とか、これまで以上にトピック面で挑戦というか、単純にすごい楽しんで曲を作ってるな、という印象を受けました。
「この内容はNYじゃなかったら出来なかったと思います。何も考えないでNYに行ったから、人によっては無計画だって言う人もいるかもしれないけど、今回はNYの空気の中に入っていった上で、僕が考えたことを曲にするというのが大事だったんですよ」

■先程も話に出ましたが、これまでの感情を押し殺したような淡々としたラップから、今回はエモーショナルなラップに180度変わっていると言ってもいいですよね。
「声だけ聴くと僕だと分からない人もいるかもしれないですよね」

■そう。そういった面で新しいスタイルに挑戦することが不安だったりはしなかったですか?
「あー、でも不安よりも、もっと自分の感情を人に伝えるにはどうすればいいんだろう?ということをすごく考えて。これまでのスタイルも気に入ってたけど、もっと人に伝えるには自分の感情をもっとラップに込めないといけないんじゃないか、って思って。だから、ためらいとかはなかったです。NYにも行ったことだし、ニュー PIT GObを見せたかったんですよね」

■D.O君に宛てた手紙という形式を取っている“LETTER TO D.O”が非常に興味深いのですが。
「僕だから言えることだったり、リリックの中にもある様に『お前にぶちまける俺の思い!』みたいに、一度振り返ってみてD.Oにぶっちゃけてみようかなと思って!」

■D.O君が派手な動きを出来ない分、練マ/D.OFFICEは俺が支えていく、っていう思いもあったりしますか?
「ん〜、ひとりが止まったら全員止まっちゃうっていうのは僕の中では違うと思うし、動けるんだったらアピールしまくった方がいいと思うんです。僕は今でもクラブとかに行ったりするけど、それはある意味自分が止まってないってことを証明したいし、クラブに来てるヤツらにもまだ練マザファッカーはいるっていうことをアピールしたいっていう思いもありますね、俺の中では。だから、アルバムもそうだし、ライヴもワンマイクで出来ないとカッコ悪い、って思いもあって。練マみたいに大人数でやるスタイルもスゲェカッコ良いんですけど、俺的にはひとりでロックできるようなラッパーにまずなりたいですね。人によっては俺は常に『練マザファッカーのPIT GOb』っていう見方があるだろうし、それは当たり前で俺の中でもそれは変わらないけど、今回はPIT GObというひとりの男を見せたかったんです」

■今作を作ってGOb君が得たものはありますか?
「最初から最後まできっちりやる。無也もひ とりでやっててスゲェ頑張ってるな、って思いました。NYにひとりで行って日本より助けてくれる人が少ない中で頑張ってるんで、僕も負けてらんないな、って思ったし。音楽でどんだけの人に僕のメッセージを伝えることが出来るか、って思う意識の部分が相当変わったと思いますね。まさに“REBORN”ですね!」
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : REBORN
ARTIST : PIT GOb
LABEL : D.OFFICE/PITGOB-53
PRICE : 2,800円
RELEASE DATE : 8月4日

※CD+DVDの2枚組