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韻踏合組合

怒濤のソロ・アルバム攻勢を経て、韻踏合組合が2年半振りにニュー・アルバム、その名も「都市伝説」をドロップした!10周年(?)という節目に相応しいこの壮大なタイトル……EVISBEATSが全曲トラックを手掛けた中身も堂々たる仕上がり!信じるも信じないも、まずは聴いてみてから!

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「去年の『SPOTLIGHT』の打ち上げのときにMummy-Dさんに『今何歳だっけ?』って訊かれて『32です』って言ったら、『あと10年は大丈夫だよ。俺らもこうやってやってんだからさ』って言われて『おー、かっけぇ』って思って。なんて安心感のあるセリフなんだ!って。音楽の出来る環境を維持したいし、もっと規模をデカくしていきたい」——ERONE

 10周年(とは言え、何の10周年なのかという、その根拠はちょっと曖昧なのだが)を迎え、更なる飛躍を目指す韻踏合組合が、そのメモリアル・イヤーに2年半振りとなるニュー・アルバム「都市伝説」を発表した。これだけ大所帯のグループが(メンバーの脱退はあったとは言え)今作含め6枚もの質の高いアルバム(もちろんソロ作など関連作を含めるとそのカタログは膨大だ)をコンスタントにリリースしていることは賞賛に価するし、その継続性が大阪HIP HOPシーンの現在の形に着実に影響を与えている……と、いうことを先日初潜入した彼ら主催のパーティ『ENTER』と、アメ村を廻って再確認した次第。コレに関してはウソかホントか分からない“都市伝説”ではなく、紛れもない事実!そんな彼らの今後10年を占う意味でも、今作は必聴な作品だ。(※インタビュー参加者はMCの4人)


■「SUPERSTAR」リリース以降はソロ・プロジェクト中心の活動でしたね。
HIDADDY(以下H)「(韻踏のアルバムの間にグループ内グループやソロ作品を出すというリリース計画は)『TRASH TALK』を出した頃ぐらいからなんとなく決まってましたね。具体的に『そうしよう』って話はしなかったけど、みんなの中にあったっぽいっす」
SATUSSY(以下S)「順番に、っていうのはざっくりあったね。今回のアルバムで(グループ的に)完全に一周した感じ。脱退したミンちゃんやだるまさん、EVISBEATSもソロ・アルバムが出てるし」
遊戯(以下Y)「こっからが二周目ですね」
ERONE(以下E)「一周目の終わりであり、二周目の始まりでもある」
Y「P-VINEで出していた頃の勢いが、また違う形になって出て来たって感じですね。10周年っていう節目だし」
H「……まず、本当に10周年か、って話なんですけどね」

■それ、東京でも活動初期を知る複数の関係者と話したんですけど……厳密には“結成”10周年ではないよね?っていう……。
E「韻踏合組合の名前自体が出来たのは97〜98年なんですよ」

■ダメじゃん!
H「でも、その時点で僕は(グループに)入ってないし、遊戯もいないし、HEAD BANGERZもなかったんですけどね」
E「99年末くらいにNOTABLE MC'Sとかが入って、2000年ぐらいに今に繋がるメンバーが全員揃ったんですよね」

■「今思えば、あのときが韻踏の始まりだったな……」って、みんなが共有して感じている瞬間ってないんですか?
E「ない(笑)。俺が一番最初に覚えてるのは、SATUSSYに『韻踏合組合って作ってんけど、入ってくれへん?』って言われたのが97年頃で」
Y「『VOL.0』が出たのが2001年なんだけど、本当は2000年に出る予定だったんですよね」
S「でも、『VOL.0』が出る前に最初は『赤盤』の前のヤツみたいのを配ってたよな」
E「あ、それを2000年の『BBOY PARK』で配ってたんだ……だから10周年なんですよ」
S「まあ、そういう話も込みで“都市伝説”ってことです(笑)」

■まあ、10周年という期間に大きな意味があるわけじゃなくて、グループ的にこのタイミングで一周したって感じてるってことが大きいってことですよね。感慨みたいなものってあるんですか?
Y「やり切ったとは思ってないけど、一周したって感覚はありますね。だから、韻踏として新しいものを提示しようって気にもなる」
S「感慨とかっていうよりは、逆にもっと新しいことをせんと、っていう方がデカイな」

■今作で一番目を惹く要素というと、やっぱりEVISBEATSが全曲トラックを手掛けてるって部分だと思いますけど、全曲ひとりのトラック・メイカーがアルバム一枚やるのって初ですよね?
H「HEAD BANGERZではAKIO BEATSが全曲作ったりしましたけど、韻踏としては初ですね」

■今でもソロ曲や韻踏内グループ名義の曲が混在しているように、トラックもいろんな人が入ってるごった煮的な感じがこれまでの韻踏作品の特徴だったと思いますけど。
E「最初は、いつも通りいろんなトラック・メイカーから音をもらってたんだけど、トラックの集まりが悪かったっていうのもあって、結果的に一番多く集まったのがEVISBEATSのトラックだったんですよ。で、良いモノも多かったし、逆にEVISBEATSひとりでやってみようって話になって。アルバム作る前から(前作の)『SUPERSTAR』とは違った作り方をしよう、って話はしてたんですよね。『SPLIT EP』シリーズがあったじゃないですか。アレはトラック・メイカーが音を出して、トラック・メイカーがMCをチョイスして曲名やテーマも決めて発注してたんですよ。そういう作り方を通してどう変わるか、っていう実験をしてて、結構違った感じに聴こえるし面白いって分かったから、今回はDJ含め全員でEVISBEATSのトラックを聴いて、多数決で挙がった曲の中から『このトラックは誰っぽい』って決めていったんです」

■今まではもっとラフな作り方をしてたってことですね。
E「今回はテーマもアキラ(EVISBEATS)と話し合って決めた曲もあるし、リリックのダメ出しとかもガンガンもらったし。トータル・プロデュースって意味でもホンマにEVISBEATSは絡んでる」
S「かなりガッツリ」

■アキラ君って、佇まい的にはそこまでガンガン口出ししそうなタイプじゃないですけどね(笑)。
S「こっちも『言ってくれ』って言ったしね」
H「最初は言い辛そうにしてたけど、作り込んでく内にプリプロの段階で送ったものに『違うから歌い直して』とか『曲が長いから短く』とか色々言ってきて。最後の方は何回も練習させられましたよね。『ループしとくから練習しといて』って紅茶入れ始めたり」
E「今までだったら曲のテーマがあって、リリックを書いて、サビをそれぞれが考えて一番良いのを使う、って感じやったけど、曲のテーマ+もっと踏み込んだものを今回は作ったつもり」

■EVISBEATS単独プロデュースによって、これまでとどう違った効果を狙ったんですか?
E「普段チョイスしてないっぽいトラックをチョイスしたかな」
H「全部通して聴いてもらったら『え?これ全部EVISBEATSなんかな?』って思うようなトラックもあると思うんですよ。いろいろ言い合った分、逆にEVISBEATSの新しい引き出しを僕らが開けた、っていう。MCに関しても『こういうリリックをこういう音に乗せるんや』っていう、僕らの新しい引き出しをエビスさんが開けてくれましたね」
E「元々アキラに引き出しはあったんだけど、それを開けてなかっただけで」

■リスナーが持ってるEVISBEATSのイメージってどんな感じなんでしょうね?やっぱ和ネタ中心、とかなのかな。
E「そういう作風も言ったら3〜4年前の作風で、最近はソウルネタも多いし、『都市伝説』作り出した頃はワールド・ミュージックとかワケ分からんところの音楽からチョイスしてるから、サンプリングネタは豊富。だけど、どんなネタを取ってもアキラの音になるのが凄い」

■久し振りに元メンバーも含め全員集結したリード曲“前人未踏”が話題ですが。
H「10周年やし」
S「ここしかないかな、みたいな」
E「次は10年後やな、みたいな。そういうのも含め“都市伝説”」

■やっぱ全員揃うのは特別、って感じですか?
E「いや、意外とそういうのもなく。普段から(元メンバーと)ツルんでるし、彼らのアルバムに呼ばれたりもするから、だから自然っちゃ自然ですよね」
H「まあ、でも特別ですね」
Y「聴いてる人の方が特別に感じてるのかもしれないですね」
H「だるまさんは呼んだらすぐ来てくれるけど、ミンちゃんとアキラ君はなかなか来てくれへんから」

■いろんなクリエイターが参加した“前人未踏”のリミックスがYouTube上で凄いことになってますが。
S「元々はシングルにパスワードが付いてて、ダウンロードできるようになってて」
E「まだ誰もやってないし、プロモーション・ツールとしてどれだけ広がるか試したくって。“MECCHA MECHA”のリミックスも結構あるんですよ(こちらはトラックが同じで、MCがヴァースを入れるタイプのリミックス)。(“前人未踏”リミックスを手掛けた)TOFU BEATSやokadadaは、言ったら俺らが持ってないファン層を持ってる。そのファン層に、CDを買わせるまでに至らなくても、韻踏合組合の名前が広がればいいな、と思って。フリー・ダウンロードだと一回きりで盛り上がるだけだけど、YouTubeだと残るし、参加したリミキサーで誰かが売れたとしたら、その人の作品リストで韻踏の名前が出て来るじゃないですか。それが狙いだったし、新しいトラック・メイカーも発掘できたから次に繋がるし」

■……意外と深く考えてたんですね(笑)。
E「テレビ局に何十万使ってCM流してもらうより、そういう方が効くと思うんですよ。日本語ラップ好きに(韻踏の名前は)既に知れ渡ってるし、全然関係ない、アニソンとか好きな層に届かせるにはこの方法しかない……それも“都市伝説”……」

■いや、そこはホントでしょ(笑)。
E「いや、でも都市伝説っぽいプロモーションじゃないですか。結局あんだけリミックスあるけど、本チャンはCD買わないと聴けないっていうのが狙いで」

■今作は、これまでのアルバムよりメロウな曲が多い印象があるのですが。
S「その辺もEVISBEATSを起用した成果というか」
H「曲を選ぶ時点で、例えばアップテンポな曲をやったら、それと似たような曲を入れるのはやめよう、って話し合ったんですよね。だから、今回はいろんなヴァリエーションの曲があると思う。韻踏って、メロウな聴かす感じの曲は今までなかったっていうのもあって多く聴こえるっていうのもあるんじゃないですかね」

■例えば“24”の遊戯君のヴァースとか、“THE ORGANIC”の組合長とか、特にアルバム後半はこれまで以上に“素直”に感情を出した曲が多いような気がするんですが。
E「“THE ORGANIC”は初めて聴いたとき俺も照れましたもん」
S「それもEVISBEATSのおかげかな。彼のトラックじゃなかったらやってなかったかも」
E「ヒダヤンの“タンポポ”もそうですよね」
Y「やっぱり音で決まるねんな。ゴリゴリな音でラヴソングなんかせぇへんし」

■「TRASH TALK」以降はIFK RECORDSという母体を通して「韻踏の自主性」という面を強く意識した活動をされてきたと思うんです。アーティスト活動に専念するという選択肢を取らず、ここまでセルフ・コンテインドな活動をしていこうと思ったきっかけや理由ってあるんですか?
H「大阪に、俺ら全員を受け入れるだけのところがなかったっていう。最初はいろんなレーベルと話を訊いたりしたんですけど、無理だった。だから、しゃあなしに始めていったって感じなんですよね。大阪は今でもそんなところないですからね」
E「俺らは早かったですよね」
H「僕らの出す条件に見合うことをやってくれるところがあったら、今でもやってほしいですよね」

■大阪を中心にずっと活動してきて、それこそ定点観測的に大阪シーンのこの10年を見てきたと思いますが、韻踏合組合メンバーの目で見て大阪HIP HOPシーンはどういう風に変化してきたと思いますか?
E「シーン自体はスゲェデカくなったし、成り立ってると言えば成り立ってるかな。10年前にはHIP HOPやってるハコなんか2〜3個しかなかったし、平日にやってるようなパーティみたいのはそれこそ東京より入ってると思うし、ラッパーもフリースタイルやってるヤツも増えたし」
H「2003年の『ジャンガル』ツアー・ファイナルで初めてクラブに来て韻踏を観て、それにインスパイアされてDJを始めた子が、今『ENTER』でDJしてるDJ PANASONICだったり」
E「俺らが『ジャンガル』を出したときに小5で聴いててヤラれた子が、今ラッパーとして活動してる(フィメールMCで2009年『BBOY PARK』のアンダー20 MCバトル決勝トーナメント出場者の)式部として活動してるとか。『ジャンガル』聴いてヤラれた若い子がもう俺らのすぐ近くまで来てるっていうのを感じますよね」

■種を蒔いて育ってるっていう実感?
E「いや、種を蒔いたって実感はないけど、勝手にこぼれてたみたいな。ただ、これは俺の意見だけど、俺らの対抗馬みたいなヤツらがもっと出て来てほしいな、と。SHINGO(★西成)君とかは凄いけど、もっと若い連中で『ファック韻踏』みたいなヤツが出て来てほしい。東京やったらいろんなスタイルの人がいるけど、大阪はまだまだ役者が足りへん。良いグループはいっぱいいたけど、作品なかなか出さんかったり空中分解してしまったり」
H「一枚のアルバムに人生を賭けるっていう気持ちも大切なんですけど、録って出してライヴして……で終わりじゃなくて、その頃にはまた録っててまた出してって動きをコンスタントにやって走り続けないといけないと思うんです」

■大阪の若手で、韻踏的に注目してる人はいますか?
E「『ENTER』に出てるヤツは俺らがある程度面白いな、って思ってるヤツですね。THE FLEX UNITEとか」
S「BOIL RHYME」
H「GOBBLA」
Y「奪還CLANとか個人的に好きですね、低血圧な感じが」
E「高槻の方のヤツらとかもいいですね。JABとかATIUSとか。あの辺も自分たちでシーンを作ろうとしてる感じが良いというか。俺たちも最初から誰の下にもついてこなかったから、今10年経って結果としてこういうものが出来てきてるから、そういうのも大事かな、って」

■2000年代を経て、2010年からの向こう10年の韻踏の展望や目標は?
S「20年後にこういうのをやってるというか、もう一皮剥けたいですよね」
H「2010年、三十路に入っていらんとこに肉が付いてきたんで、10年後も同じ体型を維持したいですね、ラップも含め全てにおいて」
Y「遊びも仕事も全部充実させたいですね」
E「やっぱもっと売れたいですね。こうしてAmebreakで取材してもらえたり、自分たちで『都市伝説だー』って言ったかて、大きな目で見たら名前は全然知られてないと思うし、普通に名前の知られてるKREVAやRIP SLYMEやRHYMESTERのような、俺らもそういうとこに行きたいし。去年の『SPOTLIGHT』の打ち上げのときにMummy-Dさんに『今何歳だっけ?』って訊かれて『32です』って言ったら、『あと10年は大丈夫だよ。俺らもこうやってやってんだからさ』って言われて『おー、かっけぇ』って思って。なんて安心感のあるセリフなんだ!って。音楽の出来る環境を維持したいし、もっと規模をデカくしていきたい。今800人客集めて『よっしゃ!』ってなってるけど、ホンマやったら大阪城ホールでライヴやってる予定やったし、RHYMESTERやZEEBRAのようなもっと上の世代の人に負けたくないし、そういう気持ちを最近忘れてたな、って思ってて。般若やSHINGO君とかのステージ観て悔しいと思うし」

■去年と今年の12月にやる『SPOTLIGHT』でRHYMESTERと対バンみたいな形でライヴをやるのも、自分たち的に奮起する、っていう思いがあるんですね。
E「ホンマはRHYMESTERの後にライヴやりたいですからね」
S「今年は(後に)やります」
E「(お客さん)帰っちゃうんやないか、って(笑)」
 
 

LIVE INFO
前人未踏TOUR 2010 TOKYO

日時:11月13日(土)17:00開場〜21:00 CLOSE
場所:渋谷THE GAME
料金:前売り 3,000円/当日 4,000円(各ドリンク代別)
出演:韻踏合組合/だるまさん/AMIDA/MINT/HI-KING/DJ A-1/DJ KAN/DJ KITADA KEN/エムラスタ(MC)
(問)HOT STUFF PROMOTION:03-5720-9999
プレイガイド:チケットぴあ 0570-02-9999/http://t.pia.jp/(Pコード:118-474)
ローソンチケット 0570-084-003/http://l-tike.com/(Lコード:72083)
e+(イープラス) http://eplus.jp/

前人未踏TOUR 2010 FINAL
“SPOTLIGHT”

日時:12月23日(木/祝日)17:00開場〜21:00 CLOSE
場所:心斎橋BIG CAT(大阪府)
料金:前売り 3,500円/当日 4,000円(各ドリンク代別)
出演:韻踏合組合/RHYMESTERだるまさん/AMIDA/MINT/HI-KING/DJ KAN/DJ KITADA KEN/エムラスタ(MC)
(問)夢番地:06-6341-3525
プレイガイド:チケットぴあ http://t.pia.jp//0570-02-9999(Pコード:118-132)
ローソンチケット 0570-084-005/http://l-tike.com/(Lコード:52883)
CNプレイガイド 0570-08-9999
e+(イープラス) http://eplus.jp/
一二三屋 06-6211-8006

 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : 都市伝説
ARTIST : 韻踏合組合
LABEL : IFK RECORDS/IFKCD-15
PRICE : 2,835円
RELEASE DATE : 10月10日