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TABOO1

ソロ・リリースを着々と重ねるMSCメンバーから、今度はTABOO1待望のソロ・アルバムが到着だ。ヘッズはご承知の通り、グラフ・ライターとしての顔も持つ彼だが、今作「LIFE STYLE MASTA」も音楽だけに留まらない、文字通りライフスタイルとしての彼のHIP HOP観をCDにパッケージしようという高い志を感じさせてくれる。インタビューでも彼のHIP HOPに対する真面目な姿勢を垣間みることが出来るだろう。

インタビュー:高木“JET”晋一郎

「ただラップってことじゃなくて、HIP HOPって文化の中で、その中で自分が自分として発信できるモノは何か、自分の出来る最大限を凝縮して出来ることはなんなのかなってことは考えましたね。やっぱりHIP HOPっていう文化に貢献することが出来なくちゃ、ただHIP HOP文化を食い潰すだけだから。貢献できた上で、更にその先を見せられるようなアーティストになりたいなって思ったんですよね。10年ぐらいラップやってきて、やっとそれが形に出来るようになったなって」

 ソロでのリリースがここ最近は顕著だったMSCから、最後の刺客となるTABOO1がソロ・アルバム「LIFE STYLE MASTA」をリリース。様々なトピックに彩られたレンジの広い作品となっているが、その中でも“ROCK IN A POCKET”に代表される、グラフィティをモチーフにしたリリックは、活動の原点としてグラフィティをもち、そして現役のライターでもある彼ならではのリアリティをもってリスナーに届けられる。今回のインタビューでもアルバムの内容はもちろんのこと、彼が制作したDVD『BURNOUT -TABOO1's UNDERGROUND CONNECTION-』をはじめとする、グラフィティに対する彼の思いや態度についても語ってもらった。このアルバム及び彼に対する、そしてグラフィティに対する理解がこのインタビューを通して深まってくれると嬉しい。


■まず、TABOO1さんとHIP HOPとの出会いは?
「音楽面よりも、グラフィティがまず先ですね。グラフィティに出会う前から教科書とかノートの隅に落書きしたりしてたんですけど、そういうことをやってるうちに友達からグラフィティの存在を教えてもらって。それで『WILD STYLE』とか『STYLE WARS』、本だったら『SUBWAY ART』とか、そういうのを通してグラフィティを知っていく内にのめり込んいって、自分でも書くようになったんですね。でも、俺の周りにはグラフィティをやってる奴がいなかったから、活動としてはひとりで黙々と日陰で書いたり、どっかに描きに行ったりしてたんですね。それで二十歳ぐらいのときに小学校の幼なじみだった漢と再会して、漢はラップやってて、俺はグラフィティをやってるって話になって、それからまたツルみ始めて。で、俺も漢の真似して始めたのがラップの最初ですね」

■原点的にはグラフィティから入ったんですね。
「だから音とか声っていうよりも、HIP HOPっていう文化というか、ライフスタイルから入った感じですね」

■絵を描くときに紙やキャンバスではなく、スプレーだったのは?
「紙に描いて見てくれる人がいるんであればそれで満足してたかもしれないけど、でも結局それじゃ友達レヴェルにしか見せられないし、それ以上の人に見てもらいたいっていう衝動があったから、スプレーで描いたと思うんですよ。やっぱりそういう思いでみんなイリーガルでもグラフィティをやると思うんですね。だから、(グラフィティ的な表現でも)紙やリーガルな範囲だけに書いてる人間は、グラフィティ・ライターって呼ばないんじゃないかなって。ただ、イリーガルなことだけをやりたいわけじゃないから、グラフィティから派生したモノとして、DVD『BURNOUT』の制作やアニメーションだったりもやろうかなって。それが今回の“ILL BROS feat. MC漢”のPV制作にも繋がったりしてますね。“ILL BROS”のアニメーション作るにしても、ホントにやりたいことだったからひとりで見切り発車で始めちゃって、途中で『ヤバい』って気付いたんだけど(笑)」

■アニメはやらなきゃいけない作業が多いですからね。
「それでも自分にムチ打ってひとりで作って。だから今回のアルバムに関する全ての制作はラップだけじゃなくて、自分のやりたいことの集大成なんですよね。耳だけじゃなくて、目や五感でも感じるような作品に出来たと思うし」

■今回の計画はいつ頃から?
「一年前ぐらい前ですね。以前からソロを出したいとは思っていたけど、(その時点では)まだ出せる状況ではないかなって。でも、ここ一年でスキル的にも内面的にも熟して、ソロでも聴かせられるようになったかなって思ったんで。でも、さっきも話したけどただラップってことじゃなくて、HIP HOPって文化の中で、その中で自分が自分として発信できるモノは何か、自分の出来る最大限を凝縮して出来ることはなんなのかなってことは考えましたね。やっぱりHIP HOPっていう文化に貢献することが出来なくちゃ、ただHIP HOP文化を食い潰すだけだから。貢献できた上で、更にその先を見せられるようなアーティストになりたいなって思ったんですよね。10年ぐらいラップやってきて、やっとそれが形に出来るようになったなって」

■アルバムの内容的には、一曲一曲かなり違った方向にテーマが分散してるし、曲ごとのカラーがヴィヴィッドに表現されてますね。
「曲のトピックとしては『こういう曲を』『こういうテーマで』ってことを16曲分ちりばめた感じですね」

■じゃあ、とりあえず書いちゃったからっていうよりは……。
「そういう始まり方の曲ももちろんあるけど、基本的にはテーマをちゃんと計画して、考えた上で一曲ごとに振り分けましたね。一日で塗り変わるモノもいいけど、積み重ねててって形になるモノも大事じゃないですか。このアルバムでは後者の感覚でしたね。今回は最初から15〜6曲ぐらいのアルバムかなってイメージはあって、喜怒哀楽の感情を更に4分割するとアルバムとしてそこに収まるかなってイメージはありましたね。だから“喜”だったら“パーティ”とか“女と遊んで”とかイメージを作って、“怒”だったら“システムへの怒り”“世の中への怒り”とか、そうやって分割していって。その上で増やしたり減らしたりバランスを取りながら進めましたね」

■テーマの広がりはそこから生まれたんですね。同時に客演もかなり充実していますが。
「テーマが決まった上で、『この曲は楽しい曲だから、一緒にやるならNORIKIYOかな』とか、テーマがまずあった上で客演をお願いしましたね。今回のフィーチャリングを見れば分かると思うけど、志人とSILVER BUCKさんが同じアルバムに入るなんてことはそうそうないと思うんですよ(笑)。それが俺のアルバムで出来るっていうのは、自分でも面白い交友関係だなって思いますね」

■客演へのディレクションはどれぐらい?
「例えば志人との“禁断の惑星”だったら、こういったテーマのイメージを膨らませられるのは志人しかいないなって思ってオファーしたんだけど、イメージが大きく膨らみ過ぎたら『もうちょっと絞って』みたいに、結構客演の人へも注文をしましたね。だから志人には現状の倍以上のリリックを書いてもらってると思う」

■今作は“INTRO”に続く“ROCK IN A POCKET”で、グラフィティをテーマにラップをしてますが、それはやはり自分の原点をまず表明しようという思いだったんでしょうか?
「そういう自分のルーツを表現できたかなって。俺の中ではグラフィティってモノを伝える手段として、グラフィティだけじゃなくて、ラップでも表現しているって部分もあるから。だから活動する原点として『グラフィティを認知させたい』っていうのがまず根本にあるんですよ。だから今回のアルバムもリスニング・ミュージックとしてだけじゃなくて、もっと総合として表現したいなって。確かにグラフィティは時に非合法なモノだけど、それでも“偏見”はなくしたいなって。例えばパリだったら、市が協力してグラフィティに対して予算を出してたり、街がフェスティヴァルを開いたりしてるんですね。そういう風にもっとアートとして認知されて、身近にグラフィティがあるようになればいいなって思うし、実際そういう風にしたいと思ってる。やっぱり日本はグラフィティが認知されてなさ過ぎるし、誤解も強いと思うんですよね。だけどグラフィティって文化があることを知らしめたいし、アートの先進国のように認知度を高めて、もっと書ける壁を増やしたい。そのためにはグラフィティ・ライター側の文化も高めなければいけないんですけどね」

■一時、桜木町の高架下がグラフィティで彩られてたのに、今は全部白く塗り潰されてしまって、それを見たときは後退したなって感じましたね。あれだけカラフルで物語のあった通りが、今は何も面白くないただのどこにでもある通りになってしまった。
「あそこがあったおかげでライター同士が出会うことが出来たし、グラフィティ全体がどんどん上手くなっていたんですよね、だからあそこがなくなったのは残念でしたね」

■その意味では、ライター側の広報役も担いたいというか。
「そうですね。そういう人間もこの状況ではいなきゃいけないと思うし」
Amebreak伊藤「『BURN OUT』はまさにそういう役目を担ってますよね」
「俺が世界中で出会ったライターたちにインタビューした、サブ・タイトル通り『TABOO1's UNDERGROUND CONNECTION』なんで。だから、グラフィティももっと正しいモノが浸透してほしいなって。どうしても日本のグラフィティは企業や商業的に認められて広がったり、コマーシャルなモンばっかりだから、それなら自分がメディアになって、ちゃんとしたもんを提示しないといけないなって。オールドスクールのライターが築いてきたものを壊したくないし、もっとこの文化が向上していくためには自分でやらなきゃって感じですね」

■MSでのTABOO1さんは一歩引いた部分も感じていたんで、今回のアルバムでのドライさよりも熱い姿勢の強さは意外でもあったんですが、このアルバムのテンションがどこから生まれていたのか、今までのお話しで納得出来ました。
「ソロは俺の主導だから、これが俺の本来のノリなんだと思いますよ」

■トラック・メイカーもかなり豪華ですが、この人選は?
「俺が好きなトラック・メイカーで、且つ身近にいるって人感じですね。トラックに関してもじっくり選ばせてもらいましたね。ただラップを乗せやすいだけって感じで選んだら曲にも愛着は湧かないだろうし、それはリスナーにも伝わらないともうから。だから本気で『好きなテーマを好きなことを好きな人たちと好きな曲でラップした』って感じですね」

■どのトラックもカッコ良いんですが、ILLICIT TSUBOIさんプロデュースの“GRAND MASTA BATER feat. キエるマキュウ”は完全にぶっ飛んでましたね。戦慄しました。
「ただ、この曲を最終的な形で聴いたのは、もうNYでマスタリングしてる段階だったんですよ。だから『こんな風になったの!?』って(笑)。でも、坪井さんはいつもギリギリまで凝って作ってくれるし、必ずカッコ良いですからね」

■今回はインスト集との2枚組でのリリースですが、ラップもビート・メイクも平行して行なう人はよくこういった形態でリリースしますが、TABOO1さんはそういうアーティストではないからちょっと意外でした。
「インストだけでもカッコ良いからもったいないなって(笑)。選りすぐりのトラックですから、トラックだけでも聴いてもらいたいなって。且つ、全然知らない人がこのトラックを使ってライヴとかやってくれたりしたら熱いっすね」

■今回はブックレットのリリックに英語訳が載ってますが、この意図は?
「これは外国の友達に、『ラップやってる』ってだけじゃ伝わりづらいから、こういうリリックを書いてるんだってことを提示したくて。あと、ブックレットの中に写ってる部屋も俺ん家で、その意味では、そういう自分の身近なモノでまとめた作品ですね。だからアルバムもPVも、こういうブックレットも見てもらえれば、俺のやりたいことがなんなのかってことが伝わると思いますね。ジャケットのアートワークもひとつのアイコンみたいになってくれれば嬉しいし、このアルバムが出た後にどういう広がりを生めるか、それが楽しみですね」
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : LIFE STYLE MASTA
ARTIST : TABOO1
LABEL : LIBRA RECORD/LIBPCD-007
PRICE : 3,000円
RELEASE DATE : 10月20日

TITLE : BURN OUT
ARTIST : TAB001
LABEL : LIBRA RECORD/LIBPDVD-005
PRICE : 3,000円
RELEASE DATE : 6月16日