INTERVIEW[インタビュー] RSS

RHYMESTER

2月にリリースされた「マニフェスト」の評判も上々なRHYMESTERが早くもニュー・シングル“Walk This Way”をリリース。「マニフェスト」に対する“ONCE AGAIN”と同様、近々リリースされるであろうニュー・アルバムの方向性を占う意味でも重要な意味を持ちそうな楽曲だ。同時リリースされたライヴDVD『KING OF STAGE VOL.8 MANIFESTO RELEASE TOUR 2010 AT ZEPP TOKYO』と共に必携です!

インタビュー:高木“JET”晋一郎

「今までは陰の部分に光を当てるような曲を作ってきたけど、今回は陽の部分にフォーカスして曲を作ろうっていうのが最初のテーマだったんだ。そうと決まったら表現に躊躇してる場合じゃないし、照れみたいな部分は邪魔にしかならないなって。もちろんひねくれみたいな部分が曲を面白くする場合もあるけど、こういった曲の場合はそれは必要ない。例えば『輝いてる』ってことを表現するのに、英語であったりメタファーを使ったりっていうやり方もあるけど、そうじゃなくて『輝いてるってことを輝いてるって言っちまえ!』っていうショックを与えたかった」——Mummy-D

 ヴェテランならではの構成力とスキル、そしてそれでも絶えないフレッシュな熱情を作品に叩きつけ、当然のごとく今年初頭の大きな話題を生んだRHYMESTERのアルバム「マニフェスト」。グループとしての作品のリリース・ペースは決して速くはなかったRHYMESTERだが、「マニフェスト」から9ヶ月という短いスパンを経てリリースされるシングル“Walk This Way”からは、グループとしての充実した状態であるという意識と同時に、更に新たな段階へと登ろうとしている心地の良い“もがき”を感じる。今作ではこれまで以上に「伝えたいメッセージ」が直接的に表現された部分もあり、筆者のようにそこに驚きを感じるリスナーも少なくはないかもしれない。しかし、丹念に聴くにつれ、この表現が必然だったと思わされる構成と言葉のパワーは、さすがRHYMESTERと思わざるを得ない強度を誇っている。RHYMESTERが指し示した“道”を確かめよう。


■まず「マニフェスト」に対する反響や手応えからお伺いしたいんですが、前作を振り返ってどういった感触を持たれていますか?
Mummy-D(以下D)「みんなが思ってるほど、俺自体はそういった(反響の)部分について分かってないんだけど……けっこう良かったらしいよ(笑)」

■そんないきなり人ごとのように(笑)。
D「まあ、そんなにダイレクトに『マニフェスト』について人と話す機会はないからさ」
DJ JIN(以下J)「アルバムは出してみるまではどんな反響があるか分からないのは当たり前だし、どういう反応があるか予想できなかったんだけど、出してみたら内側と外側に、HIP HOPヘッズにもそれ以外のリスナーにも届いたって感触があったかな。RHYMESTERの長いキャリアの中で、今の状況は充実した季節のひとつとして位置づけられればいいなって。各アルバムごとに手応えはしっかりあるんだけど、この先振り返ったときに『マニフェスト』に関してはそういう季節の中で作られたじゃないかなって感じると思うんだよね」

■ツアーなどで内側の反響は分かると思うんですが、外側の反響はどういうところで感じられましたか?
J「『ap bank fes』や『WORLD HAPPINESS』とか、そういうリスナー層の広いライヴであったり、佐野元春さんのTV(『ザ・ソングライターズ』)への出演であったり。且つ、そこでまた新たなキッカケとして選択肢が広がればって事も感じたかな」

■宇多丸さんはいかがですか?
宇多丸(以下U)「Amebreak向けに言うならば、HIP HOPシーンの中の世代的なサイクルがあるとして、RHYMESTERって存在と、現在のHIP HOPシーンの突端にいるようなアンダーグラウンドのコアな層と、ハッキリと棲み分け……というと言い過ぎかもしれないけど、世代的に一回りしたが故にお互いに共存できてるんじゃないかなって思うんだよね。RHYMESTERみたいな存在はRHYMESTERしかいない故に色んなトコいっても重宝されるし、アンダーグラウンドはアンダーグラウンドで非常に充実している。だからこそ『マニフェスト』はシーンも受け入れやすかったんだと思う。『すげえRHYMESTER(らしいアルバム)だよな』って。その意味ではシーンの突端と内容的にも被ってなかった。でも、被ってないけど面子としてはリンクしてたり、文脈としては繋がってたり。僕らとしてもRHYMESTERにしか出来ない日本語ラップの追求を突き詰められたし、そこに需要があるってことを確認できたって感じなのかな」

■今回のシングルに話を移させて頂くと、RHYMESTERはアルバムの制作が終わったらそのカウンターを探すであったり、外部に出てそこでの気付きをRHYMESTERに持ち込むであったり、そういうワンクッション入れて制作というのが流れとしてあったと思いますが、今回はリリースのスパン的にも内容的にも「マニフェスト」からの地続きということになりますか?
D「それは意図的にそうしたんだ。そうやって連作に聴こえるぐらいに、RHYMESTERとして脂の乗ってる時期っていうのを形にしようって。だからずっと制作を続けてる感じだね」


■それは「マニフェスト」でもまだ残ったアイディアを形にしてるというイメージですか?それとも「マニフェスト」を作ったことで新たに見えたモノが形になったんでしょうか?
D「『マニフェスト』の制作で見えて、自信が付いたモノが形になってるって感じかな。『この方向性はアリなんだ』『俺らはこういう方向性が得意なんだ』って確信を作品に落とし込んでる。だから『マニフェスト』でやり残したってってことではなく、『マニフェスト』の先が見えたっていうかさ。それは次の作品にも生かされると思うんだけどね」

■色んなキッカケがあると思うんですが、その確信はどういった部分から生まれたり気付かれたんですか?
D「俺に関していうと、マニフェストで“ラストヴァース”とか“ONCE AGAIN”とかは“詩の世界”が評価されたんじゃないかって思ったんだよね。HIP HOP的にいえば、言葉のリズミカルな響きやフロウであったりっていう“音”の部分での楽しさもいっぱいあるけど、詩の世界を深めるってことが“届ける”ってことでは近道になったのかなって思うし、そこは追求したいなって。同じことを表現していても『こういう言い方/表現だと伝わるのか』っていう、エモーショナルな部分に言葉を作用させるんだけど、同時にそれはテクニックによってそういう作用を産めるんだなって」
U「伝えようとしていることの核は『俺に言わせりゃ』から変わってないんだけど、伝えたい場所に向けての表現が、よりテクニカルに出来るようになったというか、その研ぎ澄まし方が明確になったって感じだよね」

■今回の“Walk This Way”に関して正直なところを言わせて頂けば、最初はRHYMESTERらしからぬ曲だなって思ったんです。特にフックの「輝いてる」って言葉を連呼する部分には、RHYMESTERがこういう表現をするんだっていう驚きを感じました。
D「今までは陰の部分に光を当てるような曲を作ってきたけど、今回は陽の部分にフォーカスして曲を作ろうっていうのが最初のテーマだったんだ。そうと決まったら表現に躊躇してる場合じゃないし、照れみたいな部分は邪魔にしかならないなって。もちろんひねくれみたいな部分が曲を面白くする場合もあるけど、こういった曲の場合はそれは必要ない。例えば『輝いてる』ってことを表現するのに、英語であったりメタファーを使ったりっていうやり方もあるけど、そうじゃなくて『輝いてるってことを輝いてるって言っちまえ!』っていうショックを与えたかったっていうかな」
U「“Walk This Way”は、根本的に言ってることは“B-BOYイズム”と変わらないんだよ。言い方や表現を変えたことで射程が伸びたし、でも射程が伸びた分『この感じじゃねえんだよな』って人も出るとは思うんだよね」
D「でも、昔からRHYMESTERを聴いてくれてる人にも必ず響くだろうなって確信はあるんだよね。RHYMESTERのコアな側面が好きな昔からのリスナーは最初は違和感を感じるだろうけど、ある瞬間にそれが刺さるときがくるって信じてるから。だから違和感を感じてくれるんだったら大成功!って感じだね。だいたい俺らがずっと『輝いてる』を言っていくわけがないしさ」
U「且つ『リスペクト』の頃よりも言ってることはもっと厳しくなってるんだよね。“連帯”みたいなことは言わないし、それより『みんなひとりなんだ』ってことを言ってるから。トラックやリリックは明るいけどね」

■“ONCE AGAIN”から孤独の上の自尊自立みたいなメッセージが強く前に出ていますね。それはどういう意図の上に?
D「……やっぱり孤独なんじゃないの(笑)」
U「何か“良いこと”を表現しようとするときに、そこで“連帯”みたいなメッセージを出すと嘘になっちゃうからなんじゃないかな。明るい方に向かっていこうってことを表現するときに、人はみんなひとりだってことをちゃんと提示するのが誠実さなんじゃないかなって。だってみんなが幸せなわけないんだから」
D「白い紙には黒い鉛筆で陰を入れないと光は表現できないって感じに近いのかな。あと、自分にやっぱり言い聞かせてる部分がデカいかなって思っちゃった。『マニフェスト』で全ての状況や環境が『OK!』ってなったわけじゃないからさ。今回も『輝いてる』って言ってるけど、それは『この瞬間』っていうスゴく限定的な状況だからね」
U「『逃さないよう』『途切れないよう』って……必死やんけ!ってね(笑)」

■今回のトラックはBACHLOGIC作ですが、これは“ONCE AGAIN”のときのようにオファーしたんですか?それともコンペで選んだんですか?
D「今回はいろんなトラックを募集した上でだね。その中で今回のテーマに相応しいのがこのトラックだったんだ。で、そのトラック集めの段階で、BLに電話したときに『あんたのおかげで「マニフェスト」が良い作品になったよ』ってお礼も改めて伝えたんだけど、そのときに『いや、まだ僕全然納得いってないんですよ』って。それで『RHYMESTERはポップ・フィールドでもHIP HOPとして戦ってほしい』みたいなニュアンスの提案をくれたんだ。その上でBLから上がってきたのがあのトラックだったんだ。でも、やっぱり俺らも最初あのトラックが来たときは戸惑った。あのメジャーなコード感はホントにやったことなかったから。だからなかなか手をつけられなかったね」

■意味性の強い“Walk This Way”と、“トーキョー・ショック”のカップリングは“ONCE AGAIN”と“付和RIDE ON”の関係性に似てますね。
U「“トーキョー・ショック”のトラックは『マニフェスト』のときから候補としてはあって、とんでもないトラックだから曲には絶対にする気持ちがあったんだけど、『マニフェスト』にはこの曲の入る余地がちょっとなくて。じゃあツアーまでに間に合わせようって作ってた曲なんだよね」

■実際にツアーでも披露されてましたね。
U「だから“Walk This Way”が出来る前から“トーキョー・ショック”はあったんだけど、次のアルバムのヴィジョンを立てたときに、そこにも入りにくいなってことで今回カップリングになったんだ」
D「タイミング的にも気楽に作った感じだね。色んな重いモノを背負わずに作れたって言うね」

■その気楽さ故か“D節”“宇多丸節”とも言えるようなラップと内容ですね。特に宇多丸さんのラップの出だしは衝撃でした。“Walk This Way”でスゴく良いことを言ってるのに、二曲目ではこれか〜って(笑)。
D「まあ、それが伝統だよね(笑)」
U「伝統のRHYMESTERバランス(笑)。“Walk This Way”を聴いて『まあ素敵』なんて聴いてくれた人はこの曲で泣きを見るという」

■客演にCOMA-CHIを迎えたのは?
D「COMA-CHIはいっぱいフィーチャリングやってるから、あいつにこれ以上スポット当ててやる必要なんかないんだけど」
U「ホントホント(笑)」
D「でもトラックからCOMA-CHIの声が聴こえちゃったんだよね。俺らにとってのFERGIEが欲しかったというか。曲のサブジェクトをしっかり掴んでくれないと難しいテーマだったけど、それをちゃんと掴んでくれたのは半端なかったね」

■最後に、今後の動きを教えてください。
J「もうアルバムの制作には入ってて」
U「結局そんなにスムーズにはいってないんだけどさ」
D「(笑顔で)いやあ、すっごいスムーズに行ってないよ!」

■笑顔ですねー(笑)。
D「前回よりもスムーズにいってないって満面の笑顔で言えるね(笑)」
U「その理由としては、曲を作ってみてもこれは次じゃなくて次の次のアルバムに入れようとか、RHYMESTERにしてはスゴく贅沢な進め方をしてるからなんだよね。ただ、それも含めてキーになる曲はボンボンと出来てるし、俺の中である命題を完全にクリア出来てるって思いがあるし。だから期待してていいと思うよ」
D「いま制作の折り返し地点に手が届きそうって感じかな」

■リリースのタイミングは言えそうですか?
U「言えそうだったんだけど結局言えなくなりつつある(笑)」
D「それ(完成)はまるで逃げ水のように……(笑)」

■詩的ですけど大変ですね。
U「ただ来年の早いうちにはって考えてる。大変だけどやるしかないね」
D「まだコートがいる時期の内にはなんとか」
U「服装が基準じゃなんとでも言えるじゃん!」
D「俺の中での春までには(笑)」
 
 

コチラも必見!『KING OF STAGE VOL.8』DVD
 シングルと同日に発売されるライヴDVD『KING OF STAGE Vol.8 マニフェスト RELEASE TOUR 2010 AT ZEPP TOKYO』は、そのタイトル通り今春に行なわれた「マニフェスト」のリリース・ツアーのZEPP TOKYO公演を収録したモノ。今作のディレクションは“ONCE AGAIN”でもPVのメガホンを取ったタツアキ監督が手掛け、通常のライヴ映像にCGやエフェクトを加えた、凡百のライヴDVDとは一線を画す映像の作り込みに驚かされる(特に本人たちも「これはもうPVだね」と語る“トーキョー・ショック”の、過剰ではないがその絞り込まれたエフェクトが最大限の効果を生んでいる映像は本当にカッコ良い)。また、30台近くのカメラを使ったライヴの映像構成もスピーディでスリリング。ライヴの緊張感をそのままパッケージしたようなソリッドな空気感を感じさせる。

 もちろんライヴの内容も、現在のRHYMESTERの充実ぶりが十二分に伝わってくる圧巻のステージング。「マニフェスト」楽曲を中心にしながら全25曲を圧倒的な強度で駆け抜けていく(その内容については拙稿のライヴ・リポートを読んで頂けると幸いです)。個人的には“肉体関係 Pt.2”のエンディングでの、色々凄すぎるフェイシングは必見!これも顔のアップが見れるという映像作品ならでは(?)。

 副音声では恒例のメンバー3人&タツアキ監督による「元祖・生(ビール)コメンタリー」も当然収録。鋭いライヴ構成と相反するゆる〜いコメンタリーは今回も冴え渡っております(KEN THE 390に対するとばっちり的なディス・コメントには悶絶)。また初回限定版には、結成20周年記念イヴェント『R-20 RHYMESTER 20th ANNIVERSARY』の模様をコメンタリーしながら構成した『RHYMESTER TV』をパッケージ。こちらも必見です!
 
 

INFO
RHYMESTERのオフィシャル・サイトにて、期間限定で『R-20』のダイジェスト“Walk This Way”のミュージック・ヴィデオ、“ONCE AGAIN”のライヴ・ヴィデオ・クリップを公開中!

RHYMESTERオフィシャル・サイト
http://www.rhymester.jp/


LIVE INFO

BEAT CONNECTION 2010
日時:11月21日(日)
場所:横浜アリーナ(神奈川県)
http://www.beatconnection.jp/

韻踏合組合『前人未踏TOUR 2010 FINAL』
“SPOTLIGHT”

日時:12月23日(木)
場所:心斎橋BIG CAT(大阪府)

Amebreak 3rd ANNIVERSARY SPECIAL
日時:12月29日(水)
場所:西麻布eleven

COUNTDOWN JAPAN 10/11
日時:12月31日(金)
場所:幕張メッセ国際展示場1〜8番ホール、イヴェント・ホール(千葉県)

 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : Walk This Way
ARTIST : RHYMESTER
LABEL : NEOSITE DISCS/KSCL-1672〜1673(初回限定盤)KSCL-1674(通常盤)
PRICE : 1,680円(初回限定盤)1,223円(通常盤)
RELEASE DATE : 11月10日


TITLE : KING OF STAGE VOL.8〜MANIFESTO RELEASE TOUR 2010 AT ZEPP TOKYO
ARTIST : RHYMESTER
LABEL : NEOSITE DISCS/KSBL-5943〜5944(初回限定盤)KSBL-5945(通常盤)
PRICE : 5,985円(初回限定盤)5,250円(通常盤)
RELEASE DATE : 11月10日