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SHINGO★西成

大阪の誇るスーパーMC:SHINGO★西成が、なんと般若主宰の昭和レコードから待望の2ndアルバム「I・N・G」をドロップ!前作から3年半という短くない期間を経て、更に逞しくなった彼にしか出来ない表現が詰まった一枚だ!

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「“シンゴ”形です。『SPROUT』聴いてくれた人にとっては『3年半なにしててん?!』って思うかもしらんけど、みんなが知らん間にライヴやったり客演もやったり、ライヴもやったりいろんな人に会うたり、ええ経験も悪い経験もいろんな景色を見て、同じ気持ちでやってましたよ、っていう意味を込めてるんです。ホンマに……言葉通り“進行形”で、下がってるんでもなく、イヤなことがあってもメゲずに等身大でやってきたよ、ってことが伝えたくて」

 実に3年半振りとなる2ndアルバム「I・N・G」をリリースするSHINGO★西成。もちろん、ファンにとっては待ちに待った新作だろうが、ここまで移り変わりの激しい現在のHIP HOPシーンにおいて、まとまった作品をリリースすることなく存在感を保ち続けていられたのは、ひとえに彼のキャラ立ちの良さと地道な現場活動の賜物と言えるだろう。そして、そんな彼に目を付けたのが般若というのもまた実に興味深い。意外な組み合わせに思えるかもしれないが、般若がインタビューの端々で語ってきた、彼の信じる優れたHIP HOP/優れたMCの条件などを思い返すと、彼がSHINGO★西成という逸材に声をかけたというのも至極納得のいく話だ。

 とは言え、今作を語る上で般若の名前を出し過ぎることは正しい選択とは言えない。このアルバムは、昭和レコードとディールを交わす前——1st「SPROUT」(07年)から現在に至るまでにSHINGO★西成が得た経験や挫折、葛藤が反映された作品だからだ。「SPROUT」は、リリース元のLIBRA RECORDのカラーにも沿った、オーセンティックなスタイル寄りなアルバムで、これはこれで素晴らしい作品だったが、「I・N・G」は前作以上に硬軟なトピック/歌い方を織り交ぜ、前作以上に対象とするリスナーへのメッセージの“伝え方”に注力した跡が見られる。SHINGO★西成のアーティストとしての懐の深さが改めて実感できる好盤だ。


■8月29日のLIQUIDROOMで般若君の昭和レコード所属になったと電撃発表してからの、周りの反響はどんな感じでしたか?
「般若っていうアーティストが、皆さんご存知の通り間違いないアーティストなんで、彼のレーベルに移るということで自分がもっとしっかりせなアカンなと思ったぐらいで。『どんだけSHINGO★西成乗りこなすねん』っていうこれからの行動の方が、俺にとってやらなアカンことなんで。今まで般若がひとりでやってた昭和レコードのイメージをぶち壊して新しいモノを作っていくっていうぐらいのつもりでいる。昭和レコードのブレない部分を残しながら俺っていうモンを肉付けしていってくれればいいかな、って。そのときに俺もしっかりした木目がある地震に強い湿気に強い柱になるようになっていかなアカンな、って思ってますね。不安はないし、『やりたい』っていう希望ばっかりです」

■シンゴさんから見た般若君の魅力は?
「不器用……でも、カッコ良い不器用……絵になる音男かな……同業者に『クソーッ!』って言わせられたら俺は嬉しいですけど、RHYMESTER、キングギドラ、RINO君、ツイギーさん、MSC、般若君、D.O君、OZROSAURUS、DABO君、DELI君、R-RATED、KREVA君、L-VOKAL、JUSWANNA、SD JUNKSTA、GEEK、GINBACK、RUMIちゃん、鎮座、YOUTH、SUGAR CREWなど言えばキリないくらいに、俺は反対に彼らにそう言わされてきたんですよね。だからこそ、みんなが悔しがるモノ作ったるわい、ってハードルを上げてくれた男が般若。そんなアーティストから良い意見を訊いて『一緒にやろう』って言ってくれたっていうのはありがたい話で。それを今後どんどん形にしていきたい……まだ始まったばかりの話やし、(今作は)俺がこの2〜3年間の間に培ってきたアイディアや自分磨き/修行してきたことをポンポンポンと形にしてきて出させてもらうだけなんで。これからですよね、俺の存在意義を証明していくのは」

■今作に入ってる曲って、昭和レコードから出すことになる前から出来ていた曲じゃないですか?
「案はほとんど既にあったものですけど、昭和レコードとの話が決まった後に完成させた炊きたて焼きたてホヤホヤです」

■ファンも待ち望んだ新作だし、何よりシンゴさんにとってもずっと出したかった新作だと思うんですけど、ここ数年アルバムを出せなかったことによるフラストレーションはありましたか?
「そこは逆にしっかりプールして、溜めて溜めて頭の引き出しに詰めて今回のアルバムに表現したと思う。LIBRA RECORDのお世話になって『SPROUT』など出させてもらったときから今回出すまでの間、それこそホンマに『I・N・G』、進行形でラッパーとして一歩一歩足跡を付けることをやってきたし、これまで溜めたモンを濃縮して作品にするっていうことも学んだ」

■前作と今作では、どちらの方が制作的にスムーズでしたか?
「そりゃどちらも難産でしたよ。集中力というか、メンタル・スタミナを温存して『これやらな俺はラッパーとして終わる』って思いながら毎作作ってるから、集中力はハンパなかったと思いますね。今回はフィーチャリングなしのしんどさも知った。でも客演してほしかったアーティストはレゲエもHIP HOPもPAPA BさんやSDなどたくさんいた」

■「I・N・G」というアルバム・タイトルに込めた意味は?“進行形”という意味ですかね?
「“シンゴ”形です。『SPROUT』聴いてくれた人にとっては『3年半なにしててん?!』って思うかもしらんけど、みんなが知らん間にライヴやったり客演もやったり、ライヴもやったりいろんな人に会うたり、ええ経験も悪い経験もいろんな景色を見て、同じ気持ちでやってましたよ、っていう意味を込めてるんです。ホンマに……言葉通り“進行形”で、下がってるんでもなく、イヤなことがあってもメゲずに等身大でやってきたよ、ってことが伝えたくて」

■制作にあたって般若君からなにかアドヴァイスは受けましたか?
「軽くアドヴァイスはあったけど、般若はホンマ、さっき言ったような“等身大”でライヴも作品も表現してることで『ほんなら俺の今の気持ちを素直に表現したらいいねんな』っていうことを身を持って伝えてくれた。今回のアルバムは『俺が俺が』や『アレ欲しい…コレ欲しい…コレしたい…アレしたい』で終わってないと思うし、そういった部分も般若君に教えてもらったと思う」

■アルバム全体に設定したテーマはありますか?
「ズルムケ」

■前作もだいぶズルムケてませんでした(笑)?
「前作とは違うズルムケ……3年半の経験を経てまだまだズルムケるみたいな……世の中、政治や経済などいろんなことがズルムケてないから、俺ぐらいズルムケてもいいんじゃないですか。物事はYESかNOかで決めた方がええけど、それ以上に『ゴチャゴチャ言わんとこれしとけ!』や『そこそこでええやん!』みたいな答えの出し方もありますやん。そういうスタイルもひとつの答えやと思うし、自分が思ってる以上の表現を俺の周りのイケてるヤツらがしてくれてるんで……俺としては『SPROUT』で表現した答えも間違いじゃないけど、進行形でいるためにはあれと同じズルムケでアルバムやってたら『SHINGO★西成こんなモンか』って思われるから、それ以上のことをせなアカン、ってところをぶち破ったって感じですね……作っては壊す……作っては壊す陶芸家スタイルです」

■前作は、1stアルバムということもあり、SHINGO★西成のあらゆる要素を一枚に詰め込もうとしたアルバムで、かなりヴォリュームのあるアルバムだったと思いますが、今作はある程度絞ってみてるというか、そういう余裕を感じましたが。
「3年半で自分の足らない部分がたくさんあった。『こういうシチュエーションなら、こういう曲が足らんな』とか、じいちゃんばあちゃんや子供たちの前でラップをやったときにこういう曲が足らんな……とか。西成の三角公園でライヴやったときにこういう曲が足らんな……レゲエの現場でライヴやったときにこういう曲も足らんな……って思ったことを素直に作品にしていったんです。HIP HOPなんて狭いジャンルですから、良い音楽やっていうのを伝えるためにはこういう曲もあっていいんちゃうか……って思いながら一曲一曲しっかり作り上げていきました」

■一部のブレイクスルーした人たちを除くと、HIP HOPアーティストの活動の場ってすごく限定されているけど、シンゴさんはそういった意味でこれまでHIP HOPアーティストがアピールしてきていない層にも届けようという意思が強いですよね。
「だからこそ自分の力不足を感じたんですよね。ホンマ失敗を繰り返して失敗から学ぶことの方が多いし、自分の経験を武器にして歌にしていってる……“NO HIP HOP, NO LIFE”って言うのもカッコ良いけど、それは俺の根本にどう考えてもあることなんで、今回はホンマ“NO MUSIC, NO LIFE”なヤツに聴いてもらえるように作った。俺も不器用だけど、俺より不器用に生きてるヤツもめちゃくちゃ周りにおるし、そいつらに聴いてもらいたいしそいつらの代弁もこれからもしたい」

■以前、児童施設でクリスマスにライヴしていた映像がYouTubeで公開されてましたけど、例えば“できたかな?”のようなアプローチは、そういった経験から生まれたものですか?
「それもありますけど、それだけではないですね。こういうポップスみたいな曲もラッパーは余裕で乗りこなせるよ……っていうことが言いたくて。ラッパーはHIP HOP好きなヤツしか歌えない/聴けない曲だけしか出来ないじゃなくて、いろんな音楽を吸収してこの表現してることを少しでも分かって頂けたらええと思う。HIP HOPの奥の深さや懐の深さや振り幅の広さを歌にサラッと伝えていきたいしですね」

■今回、トラック・メイカー陣は関西の人たち中心で、比較的シンゴさんと近しい人たち中心ですね。
「トラックを作るトラック・メイカーと、歌う俺との合作が曲やと思います。その先に、エンジニアや関係者やリスナーがいて、感謝忘れず、俺らは一生懸命一曲一曲作ってます。やっぱりトラック・メイカーの気持ちや意見も訊きたいし、そういう距離感でおれる人と曲を作りました。自然体/等身大でおるためには気を使ったり背伸びしたりしないような関係でいれるトラック・メイカーと演ったって感じですラパッ」

■ちなみに、TAI ROTEMとMICHAEL JAMESという、外国の方っぽい名前もクレジットされてますが。
「TAIはオーストラリアのプロデューサーで、俺がLIBRAと契約する前からオーストラリアでライヴやったり曲プロデュースしてくれてる仲間で、中学レベルの英語とジェスチャーでコミニュケーションしてます。実は『SHINGO★西成 MEETS オーストラリア』っていうCDもあるくらいたくさんオーストラリアな音源もあります。売りモンちゃいますけどFOREVER……MICHAEL JAMESは金沢出身の謎のトラック・メイカーで才能溢れすぎてるやばいマイメンです!MICHAELのように日本中に才能あるトラック・メイカーやアーティストがホンマにいっぱいいるの俺知ってる……ので今後一緒に何かヤっていきたい」

■シンゴさんって、“GHETTO!”とか“YO YO YO!”といったお約束のフレーズに顕著ですが、ときにステレオタイプ的に捉えられがちなHIP HOPのタームを逆手に取ってキャッチーなものにしてしまう技に長けていたと思うんですけど、前作ではときにそういった部分を強調していたように感じられるのに対し、今作はもっと柔軟にそれをやってるような気がして。
「誰かに媚びたワケじゃない。賛否両論は想定内。USのHIP HOPしか聴かない人にも、日本語ラップしか聴いてない人にも聴いてくれたらありがたいです。俺は全ての曲に俺がHIP HOPに感じてる楽しさや面白さ、ヤバい音楽やって思う部分をトラップとして仕掛けてるんです。だから、俺が“GHETTO!”って言うのも、別に俺がゲットー出身やから言ってるわけじゃなくて、“ゲットー”っていう、マイナスに捉えられがちでカッコつけだけに使われがちな言葉を如何にポジティヴな言葉と同じように使えるか、というところにポイントを置いてるんですね。“ラパッ”もそうだけど、自分の生活の一部に俺の使っている言葉を遊びで使ってくれて、HIP HOPのハングリーでポジティヴな良い部分を生活に取り入れてくれたらオモロいな、と。例えば俺と伊藤君が初対面で、俺が伊藤君に仕事を頼むどっかの業者だとして、『あ、はじめまして。印刷業やってるイケガミシンゴと言います、ラパッ』って言ったら『え?君ラップ聴いてんの?ラップ好きなん?』ってなるでしょ」

■そうなるかなー(笑)。
「でも、それと同じ感覚でずっとやってるのが“ニガ”でしょう。『ワラッニガッ』とか『ユノンセン、ニガッ』とか、別に“ニガ”言わんでええし。でも、黒人たちは自分たちのプライドで『俺や』っていうのを主張してるわけで、それと一緒で『あ、いつもお世話になってますラパッ』っていう。別に相手が反応するせえへんはいいんですよ。HIP HOPはポジティヴなこともネガティヴなことも歌ってもいいし、自分の素直な気持ちを歌ってもいい。どんな表現でも自分がしたいときに素直にすればいいジャンルだっていうことが分かってもらえればいいんです……HIP HOPは生き方です」

■数年後は「こうなりたい」というアーティストとしての自分の未来像はどのように考えてますか?
「もっとズルムケたいですけどね。自分磨きをするということが前提でもっとズルムケられると思ってるし、それをラップで表現できると思ってる。アイディア/センス/タイミングで他のアーティストに刺激を与えられる存在になりたい。スキルを持ってるヤツは例えば、関西ならコッペパンやチプルソやちゃくらメンソールなど、どんどん増えてるし、フリースタイル上手いヤツもどんどん出て来てるけど、そこの部分はちゃんと理解した上でもっとズルムケられるんちゃうかな、って。あと、どんなシチュエーションに置かれてもMC/ラッパーでありたいと思う。どんな依頼……『お笑い芸人とトークせい』って言われたとしても、それをラッパーとして乗りこなせる懐の深さを見せたい。俺らはスティル・チャレンジャーでスティル・ソルジャーやと思うから」
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : I・N・G
ARTIST : SHINGO★西成
LABEL : 昭和レコード/SHWR-1003
PRICE : 2,730円
RELEASE DATE : 11月10日