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AK-69

インタビュー:吉橋和宏

「結果がすごくても、やってきた過程がカッコ良くなければ俺はやりたくない。手段を選ばずに物質的/経済的に潤うことだけを目指してるんじゃなくて、俺は手段を選んで結果も欲しいっていう(笑)。そうやってきたことに自分も自信があるし、それがリリックの端々にも表われてると思うんですけどね」

 いわゆるジャパニーズ・ウェッサイにルーツを持ちながらも、その枠を飛び越え、いまだ見ぬストリート産ドメスティックHIP HOPの可能性に挑戦し続けるAK-69。各所で高く評価され商業的にも成功を収めた前作「THE CARTEL FROM STREETS」から約1年半、彼がさらなる中毒者を増加させるべく精製したブランニュー・アルバム「THE RED MAGIC」には、どこか非現実的な世界=高密度のエンターテインメントとリアリティある人間味が共存している。核となる卓越した楽曲群は言うに及ばず、ジョン・ディリンジャーにインスパイアされた先行シングル“PUBLIC ENEMY”の流れを汲み、映画の如くドラマティックに展開していく本作の持つ訴求力は、AK-69が勝ち進んでいくそのシナリオにおいて、次なる章の幕開けが近いことを知らせてくれる。


■今作は以前から使っていたワードを持ってきた、ストレートなタイトルになりましたね。
「前作でようやく、日本の音楽シーンの一部が『AKって誰?』っていうくらいの知名度になってきたと思うんですよ。そこからの一発目になるのが今作なんで、あえて前作から触れてた“THE RED MAGIC”っていうワードを表題に持ってきた感じですね。俺的には自分の音楽を知らしめることが充分に出来てるとはまだ全然思ってないし、ここからが俺の音楽を喰らわせるときだと思ってるんで」

■そんな前作を振り返って、今改めて思う感じることはどんなことですか?
「すごく良い作品が出来たとは思ってたし、自分が納得する結果も付いてきたなって思いますね。そんなにめちゃくちゃな数ではないけど、今もずっとコンスタントに売れ続けてるんで、その状況的にも本当に“RED MAGIC”な感じだなって思うし(笑)。追加でプロモーションをしてるワケでもないから、それは口コミでどんどん広がっていってる証拠だと思うんですよ。自分的にも嬉しいですね」

■その一方で、高い評価を受けた前作とはいえ、AK君の心の中では反省点もあったのではないでしょうか?
「前作には、心の余裕があんまりなかったかなっていうのはありますね(笑)。いつまでも荒々しいことばっかり歌ってるのも……まあもちろんそれはそれでカッコ良さがあるし、トゲトゲしさは捨てきれるもんでもないけど、俺も32歳だし、前作に足りなかった“余裕を持ってるカッコ良さ”みたいなものは今回絶対必要で、それがないとダメくらいに思ってましたね。今作ではそれを上手く出すことが出来たんじゃないかなって思います」

■プライヴェートを含めた精神的な余裕が、楽曲にも反映されているということですね?
「精神的にも、もっと言ったら物質的にも金銭的にも余裕がないと歌えないことってあると思うんですよ。想像は出来るけど、想像の世界とはやっぱり違う、実際にそうなってみて初めて分かる感情。例えば前までならすごい気になって囚われてたような人の行動にも、余裕が出来たからこそ冷静にカッコ良い対処ができるようになったり。自分のやってることに自信があって、それで結果も出てるからこそ持てる余裕は備わったかなって。やっぱりリリックにもそれが自然と出てきてるとは思いますね」

■ここまでやってきた流れとしては、今回のアルバムは前作を絶対に超えなくてはいけないという思いが当然AK君自身にもあったかと思うんですが、話に出た余裕の反面、プレッシャーに関してはいかがでしたか?
「もう、めっちゃめちゃありましたよ(笑)。俺的にはないつもりでいましたけど、実際リード曲“THE RED MAGIC”が出来るまでは結構苦戦しましたからね。スタジオに3日間籠もって、その間ずっと録ってても納得いかない状況が続いて、まともに一曲上がらなかったなんて初めてだったし。今思えばそれがプレッシャーだったんでしょうね。ファンを増やすっていう意味では、今の日本の音楽シーン的に売れてるとされる形に寄っていくことが近道だったのかもしれないけど、それは絶対にしたくなかったんで。前作を超えるにしても如何にしてHIP HOP IQ高く超えていくかっていうところを重要視してたし、俺は日々新しいUSメインストリームのHIP HOPを聴いてるんで、日本だけじゃなくて、本場USの基準にも日本人として出来るだけ合わせていきたかった。でもそのまま猿真似は嫌だもんで。トラックのアプローチだったり、ライムのデリヴァリーだったり、世界観の表現の仕方だったり……自分のオリジナルな形で前作を超えつつ、さらにHIP HOPが大好きなヤツが聴いても、『ナイス!』って思ってもらえるように相当意識しましたね」

■USの基準というのは、言わば“世界基準”でもあると思うんですが、それをおっしゃったように“オリジナルな形”として構築するという点で意識されたことはありますか?
「俺もUSのHIP HOPを聴いてるヘッズのひとりなんで、本当に好きで憧れもありますけど、自分が表現する立場の人間として見ると、やっぱり自分のオリジナルでないと戦えないと思うんですよね。上手いこと真似を出来ても、それが日本のシーンに届くかっていうとそうじゃないと思う。だって、俺よりももっと黒いメロディで歌ったり、もっと黒いラップができたりするヤツもいるんですよ。だからってそれが理想かっていうとそうじゃないんですよね」

■日本人としての個性がそこには必要だ、と?
「やっぱり俺は日本人としてのアイデンティティ、日本人で、名古屋人で……もっと言ったら小牧人の俺であるっていうアイデンティティをしっかり持ってることがHIP HOPだと思うし、そうじゃなかったら俺は日本のHIP HOPとしてUSのそれに肩を並べることはできないと思うんですよ。例えばタイのHIP HOPを聴いて、言葉は分からんけどタイっぽい感じが出てたり、聴くだけでインドって分かるけど『意外とカッコ良いじゃん!』って思ったり。そうやって自分がレペゼンしてるものを背負ってないと、やっぱり猿真似で終わっちゃう。自分の育ってきた環境や聴いてきた音楽、影響されてきたものを混ぜつつ……まあ勝手に混ざっちゃうんですけど、それが俺であって、AK-69だと思ってるんで。逆に俺にしか出来ない音楽で、USのHIP HOPにも肩を並べられたら、それほど嬉しいことはないですね」

■それこそJ・ポップのヒット・セオリーに寄った形でもなければ、っていうことですね。
「そうですね。そういうのに寄った形では、俺が成し遂げようとしてたことをぶちかましたことにはならないと思うんですよ。やっぱり、今までにはなかったような形でブチかまさないと意味がない。だから、自分のやりたいこと100%でいくのが絶対だと思ってますね。結果がすごくても、やってきた過程がカッコ良くなければ俺はやりたくない。手段を選ばずに物質的/経済的に潤うことだけを目指してるんじゃなくて、俺は手段を選んで結果も欲しいっていう(笑)。そうやってきたことに自分も自信があるし、それがリリックの端々にも表われてると思うんですけどね」

■確かに“JUDGMENT DAY”のリリックにも「何よりも曲げねぇプライド/勝ちより勝ち方にこだわるだろ?」っていうラインがありますしね。では、そのひとつの到達点として、今作のリリースを経た9月3日にはツアー・ファイナルとして日本ガイシホールの舞台が控えています。今回の制作はその点も意識して進められたと思いますが、いかがですか?
「特にアルバムの立ち上がりは、あのデカい会場を想像して作った感じが強いですね。ライヴだと(今作1曲目の)“No.69”が始まる前に、ライヴのイントロ的なものがあるワケじゃないですか?だから曲の展開とか音の鳴りも含めて、そこから会場を爆発させるための流れとしてどうかっていう基準で作ったんですよ。この“No.69”にしてもいくつか候補として挙がってたけど使わなかったトラックがあるし、それも曲としては全然カッコ良かったんですけど、やっぱりライヴの1曲目としてここまでのドラマありきで俺がガイシホールに登場するっていう状況をまず想像して、『それなら完全にこっちだろ』とか。今回のトラックはそういう基準で選んでるから、このアルバムをあの大ホールで聴くとまた違う聞こえ方をするんじゃないかなって思いますね」

■ある意味、AK君がやらない限りガイシホールで流れることなんて想像も出来ない曲もありますしね(笑)。でも、それはヘッズにとって夢のような状況ですよね。
「そうなんですよね(笑)。普通に曲としてもHIP HOP的にカッコ良いし、『これをあの大ホールでやったらどうなるんだろう?』ってすごいワクワクしながら作りましたね。だからこそ、ファイナルの会場でも本当のHIP HOP的なカッコ良さを魅せたい。『しっかりHIP HOP IQが備わってるな』って、ヘッズが観ても感じるようなライヴをしたいんですよ。前回ZEPP NAGOYAでやったファイナルの演出も当時なりに頑張ったけど、さらに全然違う次元の、日本のエンターテインメント界からしても、『これ、相当なレヴェル行ってんな』っていうものをHIP HOPで見せるっていうことは今の時点でも約束できます。正直、今のアイディアだと、一日だけでロールスロイス買えるくらい予算かかりますからね(笑)。そんなの物販売ろうが何しようが取り返せるワケないんですけど、来てもらえたら、心から楽しかったって言ってもらえるようなライヴには絶対なると思いますね」

■アルバムを聴かせて頂いて、やはりそういう規模のライヴを想像するからこそのワクワク感はすごくありました。ちなみに、先ほど「前作にはなかった余裕が備わった」とおっしゃいました。それは前作で叩き付けた果たし状に対して、日本の音楽シーンからの手応えが少なからずあったことも関係しているんでしょうか?
「ああ、絶対そうでしょうね。ストリートからのHIP HOPっていう形でも通じるっていう現実が少なからず自分で見えたんで、そういう面でも自信が付いたんでしょうね。だからこそ、人にどう思われてるんだろうっていうこととか、もっと聞き入れてもらうにはこうした方がいいのかなとかそういうことは前回よりも考えなくてよかったっていうか。さらに気にしなくなった。こういう状況になるにはもうちょっと時間が掛かるとも思ったんですけど、意外と分かってくれることにビックリしてますね(笑)」

■それを踏まえて、日本のHIP HOPシーンの可能性についてはどう考えてらっしゃいますか?
「実は一時期、日本のHIP HOPシーンは今後どうなっていくんだろうって思ってたんですよ。それは表現者としてシーンに携わってる目線はもちろん、ヘッズの目線で見ても思ってた。日本は数年遅れでアメリカの流れを追っていくって言われてるけど、『本当に日本でもHIP HOPが広まるときは来るの?』みたいな。J・ポップにもラップが取り入れられるようになったし、一応HIP HOPって言われてるわけの分からない人たちの曲がお茶の間に流れることも前に比べて増えたもんで、全体的に見たらHIP HOPの土壌は良くなったと言えるのかもしれないけど、俺たちがカッコ良いと思ってるようなHIP HOPが街を席巻する日はどう考えてもこのままじゃ来ないなって気がしてたんですよ」

■では、今はそんな状況も少しずつ変化してきていると感じているんですか?
「やっぱり突っ走れるヤツがしっかり突っ走りさえすれば、もしかしたら何か面白いことができるかもしれんなっていう希望はすごい湧いてきてますね。俺がシーンのトップに君臨してるっていう自負なんて全然ないけど、例えばHIP HOP専門のラジオ・ステーションが出来るとか、権威あるHIP HOPのアワードが出来るとか、今だったら夢物語として『ぷぷ、そんなの無理だよ』って言われるようなことも、この先の俺たちの動き次第ではもしかしたら可能になるんじゃねぇかなって。そのときに俺が現役でおるかどうかは置いといて、それを実現するために俺もひとつを担ってると思うんですよ。単に憧れてるだけとか、誰かがやってくれるとか思ってるだけじゃダメだし、やっぱり行動しなきゃ現実にはならないんで。単純に、現にアメリカがそういう状況になっとるんだもんで、日本でそうなっても別におかしくねぇんじゃねぇかなっていうのも思っちゃいますね。自分がしたいと思うことが出来る世の中になるかもしれないっていうワクワク感は以前よりも感じてます」

■いまのドメスティックHIP HOPを全体として見ていると、いろいろなスタイルのアーティストが同じ目標を抱きつつも、それぞれが自分の進むべき道を歩んでいるという感じがして頼もしいですよね。
「やっぱり自分のことなくしては周りのこともないんで俺も結局は自分のことを最優先に考えるし、そこは綺麗事を言うつもりも一切ないんですけど、俺は俺のできることをするべきだなって思ってますね。フリースタイル・バトルとかアンダーグラウンドが好きなヤツらは俺の曲をカッコ良いとは思わないかもしれないけど、でも日本のHIP HOPシーンをデカくするために俺のスタイルは必要であって、逆にオマエのスタイルも必要で……っていう。いろんな人がそれぞれの役割を担ってると思うんですよ。ストリートのHIP HOPは、『あいつはどうだからダメだ』とかもうそんなひとつの基準で括れるようなものじゃないと思う。だから、行けるヤツが各方向でパイを拡げていきさえすれば……例えば俺が脚光を浴びることによって、アングラのHIP HOPも脚光を浴びるだろうし、そうなったとき、アングラでカッコ良いことをし続けてくれてるアーティストがいることで、メインストリームな感じのヤツらもまた注目されることになるだろうし。ヘッズの人口が増えることもそうですけど、日本のHIP HOPが今後そういう風に発展していけばいいなって切に願ってますね」
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : THE RED MAGIC(CD+DVD)
ARTIST : AK-69
LABEL : MS ENTERTAINMENT/VCCM-2054X
PRICE : 3,300円
RELEASE DATE : 1月26日

TITLE : THE RED MAGIC
ARTIST : AK-69
LABEL : MS ENTERTAINMENT/VCCM-2056
PRICE : 3,000円
RELEASE DATE : 1月26日