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D.L a.k.a. BOBO JAMES

インタビュー:高木“JET”晋一郎

「俺が思うこのアルバムの中の音は、『今の時代には普通に造れない』そんな音なんです。これらはいろんな時代の様々な音楽からサンプリング・ソースを抜き出して、崩してパッチワークして組み合わせるモノなんで、つまり現行のトレンドなHIP HOPでは今の時代なかなかみんながやらない、作り得ないモノだから、“OOPARTS”ってタイトルしかないなと思いつけました。ネタを探すのも、選ぶのも、使うのも全て労力とリスクがあるんで、今時は超好き者か、インディじゃないと出来ないタイプのグッド・ミュージックですから……」

 「HARD TO THE CORE」「MELLOW MADNESS」「ABSOLUTELY BAD」と、自身がコンパイルした日本語ラップ・コンピレーション三部作の制作や、BUDDHA BRAND関連作を自ら選曲したミックスCD「"ILLDWELLERS" g.k.a ILLMATIC BUDDHA MC'S mixed by MUTA」のリリースなど、ここ最近は「日本語ラップとはなにか」を考えさせられるような意欲作を制作してきたD.Lが、ソロ・アルバム「OOPARTS (LOST 10 YEARS ブッダの遺産)」を完成させた。今回はインストゥルメンタル・アルバムとして成り立っているが、インタビューでも語られている通り、元々はラップ・トラックが元になっており、トラック集の趣も強いというが、メロディアスで重厚に組み込まれたサウンドは、インストでありながらも雄弁に物語を紡ぎ出す。サンプリングが起こすマジックの詰まった一枚だ。


■今年1月にリリースされた「"ILLDWELLERS" g.k.a ILLMATIC BUDDHA MC'S Mixed by MUTA」は、改めてブッダとはなんだったかを考えさせられる好ミックスでしたね。
「俺らが実際意欲的に活動してたのは2001年までだったんで、今の若者はまったく知らないと思ったんです。だからそことのギャップを埋めるためと、変なブートが出回ってたんで、正規にミックスを出そうと……まず先見力のあるCQが、MUTAを『良いDJだから任せてみては?』と言ってくれて、人間性でピン!ときてミックスを頼みました。とりあえずCQと考えていたのは、若い世代にブッダの曲のミックスを任せたらどんなモノが生まれるんだろう?ってことでした。頼んだ展開や曲順より予想以上にMUTAは生まれ変わらせてくれて、聴き飽きてるはずの自分らもまた次の10年聴けるようなフレッシュな形に仕上がったし、それぞれのソロや外仕事も入れられたのもよかったと思います」

■今回のアルバムを「OOPARTS (LOST 10 YEARS ブッダの遺産)」というタイトルを名付けられた理由は?
「まずオーパーツとは……「場違いな工芸品、時代違いの創造物」=“out-of-place artifacts”なんです。俺が思うこのアルバムの中の音は、『今の時代には普通に造れない』そんな音なんです。これらはいろんな時代の様々な音楽からサンプリング・ソースを抜き出して、崩してパッチワークして組み合わせるモノなんで、つまり現行のトレンドなHIP HOP(シンセがメインになってたり4つ打ちだったり、俺からするとハイ・エナジーみたいなサウンド)では今の時代なかなかみんながやらない、作り得ないモノだから、“OOPARTS”ってタイトルしかないなと思いつけました。ネタを探すのも、選ぶのも、使うのも全て労力とリスクがあるんで、今時は超好き者か、インディじゃないと出来ないタイプのグッド・ミュージックですから……」

■副題として「LOST 10 YEARS ブッダの遺産」とつけられていますが、“LOST”=「失われた」という言葉はやはり、ILLMATIC BUDDHA MC'sとして、この10年はD.Lさん的にあまり活動で来てなかったと思ったので「失われた」というタイトルを付けたのですか?
「鋭い!間違いないですね。たしかにこの10年の間にCQはマキュウが出たり、俺がソニーからソロ・ラップ・アルバム、LIBYUSからインスト・アルバムも出しましたが、心のどこかでいつかまた3MCで……と考えてて、『書く』と言うNIPPSの言葉を信じて、なんだかんだずっと待って待って10年経ってしまいました。いい加減目を覚まして、なくした10年に一区切りを付けて、新しい一歩を踏み出そうと決めてタイトルをつけました。……作品を簡単に説明すると、新しく作った曲もありますが、だいたいブッダ用に94年から去年までの間に作ったものです。本当は10年どころの期間じゃないんですが、区切りがいいので“10 years”にしました。だからDEV LARGE THE EYEINHITAE名義で出した『KUROFUNE9000』のように、インストを前提に作った作品とは姿勢が違うんです。今回はトラック集で、サビ/ヴァース/ブレイクになるであろうフレーズが作ってあったりもするんです」

■その意味ではD.Lさんにとって“インスト曲”と“ラップ・トラック”に差はあります?
「『KUROFUNE9000』のときは、言葉が入っていなくても絵が見えてきて、声なんてまったくいらない曲のアルバムを作ろうと考えてました。このアルバムの曲に関しては、『このアルバムに向けて』っていうよりは、俺のファイルにあった中で厳選した曲を入れた感じです。メロディアスで軽くないやつを。ただ、普通の人は詞とトラックのバランスで100%のモノを目指してると思いますが、俺は詞も100%、トラックも100%なモノを作りたいと常に考えています。トラックだけでカッコ良いと思えるモノを……」

■D.Lさんの中で、“弾き”と“サンプリング”ではどういった違いがありますか?
「完全に好きか嫌いかって話になるんですが……それはもともと、トラック・メイカーやDJになりたいと思ったのは『レコードを買ってた』ってトコから始まってるんですよ。っていうのは、RUN DMCの“JAM MASTER JAY”を聴いたときに、カッコ良いと思うと同時に、それまでに自分が買って聴いてたMAGIC DISCO MACHINEの“SCRATCHIN'”が使われてるって気付いて、『こういう音楽が、音楽の作り方があるんだ』ってことに驚きを受けたんですよ。それから、ERIC B. & RAKIM の“I KNOW YOU GOT SOUL”はBOBBY BYRDの曲が使われてるんだって気付いたり、そうやって“サンプリング”という手法に驚いて、『俺にもできるな、アイディア勝負だ!』って思ったんです。例え楽器は弾けなくても、音楽的な素養がなくとも、楽器が弾けてメロディやフレーズが降りてくるような人間じゃない俺でも出来る!と。過去のサンプル・ソースを切り抜いて組み立てて、新しいモノを生み出すっていうマインドを根本的な部分で持ってるから、弾きで組み立てられたHIP HOPは、聴けるけど作りたくはないって思ってしまうんです」

■サンプルのネタは頭に全部入ってるんですか? 例えば「あの曲にはこういうブレイクが入ってて」とか。
「基本モノは当然ですが、それ以外は、レコードに付箋を貼って“ブレイク”とか“ギター・ソロあり”とかメモしてて。数千枚はそういう風にしてファイリングしてます」

■最大ではどれぐらい使いましたか?
「うーん……でも、昔の方が多かったと思いますね。大きくネタとして分かる部分では、たぶん“FUNKY METHODIST”が一番だと思います」

■では、サンプリングだからこそ出来ることってなんだと思いますか?
「サンプリングにしか出来ないことを考えると、『カットされたサンプルの切り口に生まれるダイナミズム』だと思います。例えば切る4小節の切り具合でサンプルしてループさせると普通では生まれない、誰にも考えつかないような展開やフレーズが生まれるってことです。そこが醍醐味だと思う。例えばフルートのフレーズだけ欲しいとしても、サンプリングだからソロ・パートでない限り、一緒に鳴っている他のパートの音も入ってしまうじゃないですか。その余分だと思ってた部分が、他のサンプルと組み合ったときにヤバく輝く場合があるんです。予定外の付録の隠し味みたいな……」

■そういった、制作者の意図を超えてしまった部分で起こるミラクルやマジックというか。
「そこだと思いますね。それから、サンプリングってある種の足し算の音楽制作だと思います。『このミュージシャンとこのミュージシャンのサウンドは絶対合わないだろう』と思ったけど、組み合わせたら奇跡的にスゴいグルーヴを生み出すことがあるんです。そういったところが面白いんです。余談なんだけど、とある曲を作るときに、サンプルで使おうと思ってたネタがあまりにも大物ミュージシャン過ぎて、クリアランスの申請がまったく通らなかったんです。それで弾き直しで作るかって話になったんだけど、それじゃ面白くないなって考えてたときに、ほぼ同じリフが展開してる別のアーティストの曲が見つかったんです。それでそっちで申請したら通ったので、ほぼサンプリングのみで崩さずに出来たっていうのも面白かったですね」

■ただ、そういったクリアランスのような実務的な部分であったり、「ネタの被り」のようなプライドの部分であったり、サンプリングはやはり「難しい」と思われる部分も少なくないかもしれませんね。
「俺の場合で言えば、“盲目時代”は実際にはKENSEI君の『ILL VIBS Vol.2』(96年)にセッションの形で“盲目時代+何故かニップスの休日”で収録して、正規盤をソロでEL DORADOから出そうかとタイミングを見てたらRAEKWONが“RAINY DAYZ”を出してしまい、しばらくお蔵にしてたんです。やっぱり被るのは嫌で。そういうサンプリングにおける意地や美学みたいな部分ってあります。自分が見つけたネタと同じタイミングで誰かが同じネタを使った曲をリリースしてきたら、そのネタは斬新さに欠けるんで寝かすかお蔵にします……昔は暗黙のルールみたいなもんで、誰かが使ったネタをすぐまた使うのは無粋と思い誰も使いませんでしたが、今はなんでもアリみたいで関係なくやるやつはやってるみたいですね。ネタを掘ったりサンプリングという手法を知ることで、そこからまた古いグッド・ミュージックを知る新しい旅がリスナーにとっても始まると思うんで、このアルバムがそのキッカケになればいいと思います」

■今回もアナログでのリリースもされるそうですね。
「アナログで出すってことは音質的な面も当然あるけど、DJはスクラッチしてカットして、また新しいモノを生み出してほしいって気持ちもあります」

■今回はトラック集の意味合いが強いということですが、今回のトラックにラップを乗せるラッパーも登場するかもしれないですね。
「それは、BAD NEWS(制作元)の原盤だから、俺の口から『やって良い』なんて言えないですが、俺としては面白いHIP HOPな部分だと思います。個人で楽しんだり、YouTubeのような誰でも聴ける無償の形でラップを乗せて発表するなら問題ないと思いますが、それを売るようなことになればレーベルが黙ってないだろうし、しかるべき対処を取るかもしれないんで、気をつけた方がいいと思います。何曲かは俺とCQのILLDWELLERSでも、今回の曲にラップを乗っけると思うので、楽しみにしてほしいですね」

■ILLDWELLERSの動きも教えて頂けますか?
「震災以降いろいろあってCUTTING EDGEと契約も進んでないままなんで、リリースのタイミングが分からなくなっちゃっています。最終的にどんなものになるかは分からないけど、CQのアイディアと摺り合わせて、どんなモノを打ち出すべきなのかを今考えてるところで。ただ、久々のカムバックだから、リスナーが驚くモノを作りたいと思ってはいます」

■グループ名からして「ILL(イル)+DWELL(住む/宿る)ERS」ってグループですから、期待しない方が間違ってますよね。
「イルな谷に住む住人代表として、まず今は、このアルバムを楽しんでほしいですね」
 
 

INFO
 「OOPARTS (LOST 10 YEARS ブッダの遺産)」のアナログ3枚組がついに発売!恵比寿WE NOD、渋谷DMR、下高井戸TRASMUNDO、目黒JAZZY SPORT、長野026、名古屋デシベル、横浜フリーダムレコード、長岡ONE LOOP LAB、伊勢崎JAH STORE、ディスクユニオン、マンハッタンレコード、ジェットセット、Zooooo.jp、吉祥寺Jar-Beat Record、大分CUT UPなどでお買い求め頂けます。

 
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : OOPARTS (LOST 10 YEARS ブッダの遺産)
ARTIST : D.L a.k.a. BOBO JAMES
LABEL : BAD NEWS/BACA-027
PRICE : 2,415円
RELEASE DATE : 5月11日