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HAIIRO DE ROSSI

インタビュー:高木“JET”晋一郎

「極端な表現や言葉の弾き方だったりによって、逆に淡い曲はより淡くして、そこで緩急をつけて曲たちの強度を高めていくっていうのは重要でした。それもあって、自分としては今までの作品の中で一番アルバムっぽく出来たかなって」

 昨年リリースされた2nd「SAME SAME BUT DIFFERENT」、そして東アジアの諸問題についてTAKUMA THE GREATと問いかけた“WE'RE THE SAME ASIAN”や、東日本大震災直後に発信された“PRAY FOR JAPAN”など、注目に値する行動を活発に見せたHAIIRO DE ROSSI。彼の3枚目となる、そして彼自身のレーベルからのリリースとなる「forte」は、これまで以上に刺激的なトピックと、巧みな比喩表現を含めた高いリリカルさが印象的な作品となって完成した。柔らかさも悲しみもエグみも喜びも全てを飲み込んだ貪欲な一枚だ。


■まず、根本的なところで、HAIIRO君とHIP HOPの出会いは?
「中学の頃にRAGE AGAINST THE MACHINEとかLIMP BIZKIT、KORNとか、ミクスチャーから入ってEMINEMに流れてって感じです。で、友達の兄貴がDJやってて、COMMONの『RESURRECTION』を聴かされて、そこで結構飛ばされちゃって。それと並行して、地元が近かったっていうのでOZROSAURUSの『ROLLIN' 045』を先輩に借りてすげえ聴いててました。そこからKダブシャインや般若って(日本語ラップを)聴いていった感じです」

■ハード且つリリカルなラッパーが好きだったって感じだね。ラッパーを目指したきっかけは?
「『BBOY PARK』に行ったらBLAST(HIP HOP誌)に名前が出てるような人たちがみんな出てるじゃないですか。それが衝撃で『マイク持とう』と思って。そういう、単純に憧れって部分と、話はちょっと抽象的ですけど、絵って言葉に出来ないじゃないですか。そういう『伝えられないもの』をラップやHIPHOPなら言葉にして伝えられると思ったんですよね」

■言葉では説明しきれない部分も、ラップという表現でその抑揚やフロウ、間みたいなモノで表現できるって感じかな。
「そうですね。逆に言えば、『言葉で絵を描く』って感覚なんですよね。今って『俺はこう生きてきてこう思って……』っていう説明がしっかりされてるラップが主流だと思うんです。それはそれで大事なことだと思うんですけど、俺がやりたいのは、そういう“絵”をラップで書くようなやり方なんです。……キャリアの話に戻ると、地元の藤沢で活動してたんだけど、まったく芽が出る気配がない感じだったんで都内に出た方がいいかなと思って、とにかくバトルに出るみたいな状況でしたね。『SHINJUKU SPOKEN WORDS SLAM(SSWS)』とかも含めて、あれば出るみたいな状況で」

■それは「SAME SAME BUT DIFFERENT」の“Untitled”でも語られてるね。
「バトルって、エントリー料の2千円ぐらいを払えば、うまく決勝まで行けば合計で20分は舞台に立てるんです。そう考えると、バトルといえど2千円で20分ライブが出来るのと、10分のライヴ枠もらうのにノルマ1万円ってのとを秤にかけると、どう考えてもバトルの方が得だろうって。だから、SSWSとかはライヴしに行く感覚で行ってたし、負けなかったっすね。そういうヴィジョンで来てる奴ってあんまいなかったと思うし」

■だから“Untitled”を聴いて、そういう発想で出る人っているんだっていうのがけっこう新鮮だった。
「それに、当時は『トラック・メイカーなんてどうやって知り合うの?』って感じだったんだけど、とりあえずベスト4以上行けば注目されるし、誰かと繋がれるじゃないですか。ホント、そういう感覚で」

■じゃあバトルでスキルを見せつけるというよりは……。
「キャリアを継続するためですね。ちょこちょこ名前が拡がって、東京でライヴが出来るようになり、ECCYや1st/2ndをリリースしたSLYE RECORDSとも繋がって」

■ちなみに、HAIIRO DE ROSSIって名前の由来は?
「“HAIIRO”って母音“I”が二個続くから、韻がスゲェ踏みづらいんです。だから、バトルで即興で韻を踏める奴がいないじゃないですか。で、踏んできたら『そんなのおめぇ仕込みだべ?』って(笑)。そうやって適当に付けたから今になって困ってはいるんですけど(笑)。でも、その“灰色”っていうのは自分の土台になるキャンバスの色だと思うんです。だからこそ、やっぱりサシ色みたいなのが必要になってくると思うし、そういうのを入れて綺麗になる色っていうのはイメージとしてありますね」

■リリックはどうやって書くの?
「トラックを聴いた時点で、『あ、これオレンジっぽい』とかってイメージが浮かぶんですよね。それで『オレンジとグレーだったら何入れよう。もっとマーブルっぽく変化させようか』とか、そういう『曲を見る』っていう作業がまず最初にあるんですよね。だから、歌詞を書くのははかなり最後の方です」

■共感覚を持ってる人の中には“色聴”っていって、音楽に色を感じる人がいるけど、HAIIRO君もそういうタイプなのかな。
「かもしれないですね。そこで見えた色に合わせた色のフロウを合わせるし、人の選び方もそうです。俺は完全に寒色のタイプだと思うんで、一緒に作るには暖色の人がいい。やっぱりTAKUMA THE GREATとか思いっきり暖色だし、エネルギーをすごくもらえるし、真逆の方向性で曲を作ることが出来るんです。逆に寒色同士が組み合わさっちゃうと深いものは出来るんだけど……深いけど誰も救われないような曲が出来ちゃう。『嘆いてるだけじゃねーかよ』みたいな。そういうのは自分がやってたから嫌いとは言えないけど、あんまり必要ないかなって。やっぱ希望みたいなのが最終的に見えないとって思うんですよね」

■もう一度ヒストリーの話に戻ると、1stの「TRUE BLUES」は、正直なところ俺には抽象的過ぎて「何が言いたいんだろう」ってアルバムだったんだ。だけど、「SAME SAME BUT DIFFERENT」で具象の方にグッと寄ってきた部分があったから、変化をつけてきたなっていうのはスゴく思ったんだけど、その動きっていうのはどれぐらい計算した上で作ってたの?
「これはハッタリじゃなくて、『1stで2ndっぽいことをやって、2ndで1stっぽいことをやる』っていうのは1stを作ってるときから決めてて。それもあったんで、1stはわざと言葉が入ってこなくなるような、BGMっぽい聴感にしてるんです。引っかかる言葉が1個あればいいぐらいの。だから、誰も知らないような新人がそれをやっても掴めないっていうのはある程度分かってましたね。でも、それを出した上で、2ndで俺っていうのがどういう人間なのか提示して……っていうのは考えてました」

■じゃあ「SAME SAME BUT DIFFERENT」の高評価だったり、今の俺の評論もある意味計算尽くというか、してやったりって感じだったりしたの?
「でも、その種明かしは出来ないからストレスは溜まりましたね(笑)。逆に、1stと2ndの間のストレスはかなりあったけど、2ndから3rdの間っていうのはストレス・フリーでした」

■2ndと3rdの間には尖閣諸島問題なども含めたアジアの問題についてラップした、TAKUMA THE GREATとの“WE'RE THE
SAME ASIAN”の制作があったけど、あの曲は日本語ラップ・リスナーを超えた部分からも反響があったね。

「それはキツかったっすね、正直。極右の人からの脅迫めいたメッセージもあったし、逆に左系の人からアプローチされたり、超病みましたね、あのときは。こっちとしては『やっぱ仲良い方がいい』ぐらいの気持ちだったんだけど、それを素直に言うとこういうことになるんだっていうのはすごく実感したました。でも、それは実感であって反省はしてないし、むしろこれはやんなきゃいけないんだって思ってたし」

■だから、あの曲は途中からTAKUMA君とHAIIRO君の手から離れてった感じがあったよね。
「そうやって左右から色んなアクションがあって、悩んじゃってたんだけど、助けになったのは、実はSHOW-Kさんが仕掛けたビーフだったんですよね。あの応酬で俺も“WE'RETHE SAME ASIAN”で言い切れなかったことや立ち位置を表現できたし、あれがなかったら本当に左の人って思われてたかもしれない。そういう意味ではHIP HOPに助けられたっていうか」

■そう考えると、ビーフがすごく健康的な方向で進んだわけだ。それは興味深いね。東日本大震災を受けては“PRAY FOR JAPAN”の発信があったけど。
「やっぱり“WE'RE THE SAME ASIAN”と“PRAY FOR JAPAN”は特別な曲ですね。“PRAY FOR JAPAN”に関しても、あれを作ることで自らを“保つ”って感じでしたね。作ったのが震災の次の日だったんで、地震酔いで最悪の状態だったんですけど、それでも作れるんならやってみようって。で、それを次の日に渋谷の東急ハンズ前で売って、義援金に回してっていう。別に先を競ってやったわけではまったくなくて、この震災は長いことかかる事態になりそうだし、そうすると大きな援助が届くのは時間がかかるだろうなって。なので、この義援金がその間の繋ぎにだけでもなればいいなと思ったんです。末端じゃないですか、駆け出しの若手だし。だから、俺が嬉しかったのは義援金が集まったことじゃなくて、ANARCHYが“G.O.D.2011”をチャリティ・ソングとして出したことで。あれで『あ、これでHIPHOP側からの援助が届く。それまでの繋ぎが出来てよかった』って思いましたね」

■では、今回のアルバム「forte」だけど、スゴくブルースを感じるというか……。
「死の匂いみたいなのが」

■うん。ハッキリ言うとそういう部分が濃厚だなと思って。それは自分でも分かってたんだ。
「去年の夏に俺のクルーの奴の先輩が亡くなっちゃって。俺はあんまり人の死に直面したことがなくて、自分の中では『俺の身内は死なないんだ』ぐらいに思ってたんです。だけど、その先輩の死で超食らっちゃって、7キロぐらい痩せたんですよ。精神的にも不安定になって、安定剤とかすごい飲むようになって。それはよくないんだけど、薬がないと手とか震えちゃうし、普通の生活が出来なくなっちゃって。そんなときに書いたのが“Drug Ballad (This Is You)”と“forte”で。部屋で崩れ落ちながら、1ヴァース録るごとに『もうやめたい』みたいな感じで、過呼吸になりながら録って。言葉を発するっていうこと自体が、スゲぇパワーいるんだなってことに本当に気づかされました。でも、エンジニアの奴も幼馴染で、そいつにスゲェ支えられましたね」

■そうやって書くことがHAIIRO君にとって癒しだったのかな?
「うーん……そうだと思う。でも書いてるときに『なんでこれ(ラップ)しか出来ないんだろう』って自分に頭にきてましたね。だって、線香あげに行くとか、お墓洗いに行くとか別の方法があるはずじゃないですか。なのに歌詞を書いちゃってる。それって超イケてねぇなと思って。なんかもう、鉛筆見て呆然としました。スゲえ残酷なことしてるのかなとも思ったし。25年生きてきて他にねぇのかよって。罪悪感とかも超感じたし。でも、このことについて俺が超えるには、もう書くしかない状況だったんですよね。その気づきはスゴくショックだったし、でも幸せとも、ありがたいとも思った」

■なるほど。今回って一個一個のパンチラインがスゴく強くなってるというか、速いストレートを投げられるようになった感じを受けたんだけど。
「それはけっこう強いかもしれない。前はキレのあるカーブをストレートだと思ってたって感じだけど、今はストレートも投げられるようになったというか」

■HAIIRO君の歌詞って問いを与える内容が多いと思うんだけど、問いに対して答えは出してなかったよね。だけど、“夕陽が落ちて行く前に”では明確に「俺は何に腹が立っていて、これは間違っているんじゃないか」っていうのを、すごく明確に言ってるよね。
「そういう表現をすることで、エグさを加えたかったんですよね。さっきのリリックの強度にも繋がると思うんですけど、たぶん今までの色の塗り方がみんな淡かったと思うんですよ。だから、今回は部分的にはよりヴィヴィッドな色使いもしようって。“夕陽が落ちてくる前に”の歌詞って、本当は思ってないような、かなり極端なことを言ってたりするんです。表現としてすごく過激になってる。でも、そういう気分になっちゃうときってあるじゃないですか。それに、そこまでも色を濃くしないと、リスナーはついてこないなとすごく思ったし。だから、極端な部分が今回は大きいですね。極端な表現や言葉の弾き方だったりによって、逆に淡い曲はより淡くして、そこで緩急をつけて曲たちの強度を高めていくっていうのは重要でした。それもあって、自分としては今までの作品の中で一番アルバムっぽく出来たかなって。その人が『世に出る』アルバムってあるじゃないですか。例えばSEEDAさんだったら『花と雨』みたいな。俺の場合は2ndと3rdのトータルの期間でやっと世に出れるかもって思ってますね」

■TAKUMA THE GREATの「TAKUMA THE GREAT」はHAIIRO君のレーベル:forteからのリリースだったけど、本作もそうだね。
「自分としてはもう少し多角的な動きがしたいなと思ってforteを立ち上げたんです。俺もアーティストではあるんだけど、もっとプロデューサー的な視点でも立ち会いたいんですよね。個人競技のアスリート的ではないというか……」

■プレイング・マネージャー的な。
「でも、めちゃくちゃ大変ですね。だって俺、レーベル続けるために仕事始めましたもん(笑)。でも、楽しいですね、自分が世に出したいなモノを出せるっていうのは。やっぱり大事なことだと思うし。そうだなぁ……俺のレーベルで出した奴らに関しては、自分の出した作品っていうのをすごく大事にしてほしいなぁって思いますね。TAKUMAもそうだし、これから出してく奴も。作品って本当に大事なものだから」

■レーベルにforte、つまり“強く”と名付けたのは?
「一番俺に必要だなって。俺って弱いんですよ。ブレちゃうっていうか揺れちゃう。例えば電車で隣になった女の子がiPodをいじってるのを見て、手首に傷とかあったりすると、その娘にスゲェ喋りたくなっちゃうんす。『なにがあったの?』とか。そしてもし喋ったら、降りる駅までの30分くらいで俺はどこまで彼女を理解できるんだろうとか考えちゃう。で、結局その後もう二度と会わない時間がスタートするっていうか。そういうことを日々考えながら生きちゃってて、考えること自体は悪くないと思うんだけど、強くなんなきゃなってスゲェ思うんですよね。それに対して自分が引っ張られないようにっていうか、そういう強さですね」

■これからのforteの動きは?
「秋にはシンガーのAporiaって奴の作品を。で、冬に俺とTAKUMA/万寿/BANの4人でやってるHOOLIGANZっていうグループのアルバム。あとは、トラック・メイカーのPigeondustのアルバムも出せればなって。自分としては、4thアルバムは俺の趣味以外のことを特にやらないアルバムになるんじゃないかな。だからこそ、最もやりたかったアルバムになるというか」

■それこそサービス精神が全然ないような。
「そうですね。サービス精神ゼロじゃないですかね、次は(笑)」
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : forte
ARTIST : HAIIRO DE ROSSI
LABEL : forte/FRTCD-001
PRICE : 2,520円
RELEASE DATE : 7月13日