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SATELLITE

インタビュー:高木“JET”晋一郎

「ぶっちゃけ、何を今は信じていいか分からないし『それギャグでしょ』みたいなことが現実に起こるわけだから、そういう意味でも、自分たちが見たニュースを形にしてるって感じなんですよね」——DOGMA

 
 スポーツ・チームで、メインや一軍に対して下部組織を“サテライト”と呼ぶ場合があるが、LIBRA/MSCの別働隊として動いてきた少佐/DOGMA/SAWが結成した新ユニットもSATELLITEと名付けられた。そして彼らの作り上げた「FULL SMOKE」は、MSCに大きな影響を受けた彼ららしく、MSC的な都市的不穏さや、様々な事象が渾然と詰め込まれた無秩序から生まれるダイナミズムといったような感情を大いに引き継いだ作品となっている。ここ最近ややリリースの少なかったLIBRAから久々に生み出された作品が、LIBRAの原点から影響を受けたアーティストが、LIBRA流の作品を生み出したことは非常に興味深いし、その“煙さ”はやはりスリリングだ。


■まず、SATELLITEの結成からお話しを伺いたいんですが。
少佐(以下SH)「今年に入ってから、会社(LIBRA)から『好きにやっていいからお前ら三人で組め』という天からのお言葉があり。まあ、三人ともMSCのサテライト(衛星)というか、パシリというか(笑)。なのでグループ名もSATELLITEと」
DOGMA(以下D)「まあ、パシリはパシリなりに危ないこともあるんで、それをアルバムにした感じですね。まあ、全曲『やらかし』を形にしたっつうか、ワル自慢というより、やらかし自慢ですよね(笑)」
SH「事件簿ですね(笑)」

■内容的にはそこをフル・スイングしてて、ある種の清々しささえ感じますね。
SH「おもいっきり不良にもなれないし、だからって良い奴にもなれない中途半端な連中の悪あがきっていうか」

■でも、そういう話をしつつ「でも今は俺もまともになって」みたいな、ありがちな展開にはなってないですね。
D「良いこと書こうとしても浮かばなかったり、トラック的に『これは良いこと書かなきゃ』みたいな雰囲気でも、結局汚しちゃうみたいな。勝手にそうなっちゃうんですよ」
SH「しょうがないよね。というか、どうしようもないよね、俺ら(笑)」
D「その、中途半端な連中が本気で粋がってみたって感じですね。でも、俺らを壊れてるって思うかもしれないけど、そう思ってるリスナーの方こそ壊れてるのかもよ、って部分をあぶり出せればなって」
SH「まあ、とにかくリスナーとか女の子ウケとかそういうのを一切気にせず、自分たちのやりたいことだけをとにかくやった感じですね。自分たちとしてカッコ良いと思うHIP HOPだけを意識するっていうか」

■では「カッコ良いHIP HOP」の意識の共有はどのように?
SH「やっぱり、MSCが好きでついてきてるし、そこを繋がりに出会ってるし……」
D「自然に揃ったのかもしれないっすね。単純にそういう不穏なモノが好きなんだと思います」

■ちなみにLIBRAに合流したキッカケは?
SH「俺はMSCが形になり始めた時期に知り合ってって感じですね。DOGMAとSAWはもうMSCのライヴを最前列で見てたヘッズで」
D「『宿の斜塔』が出たぐらいのとき、漢さんのライヴが終わった後に『漢さんの名刺』を取引したんですよ(笑)。それが直接コンタクトとったキッカケですね」
SAW(以下SA)「僕はO2さんと地元が一緒ではあったんだけど、歳が10ぐらい離れてるんでなかなかMSCのイヴェントとかには入れなくて。だけど、入れなくても行ってたら顔を憶えてくれてこっそり入れてもらって、それで俺も“名刺”買ったのが繋がりの最初ですね」
SH「みんな、大体そっちなんですよね」

■アルバムで言ってることとやってることがブレなさすぎですね(笑)。
SH「でも、このアルバムを出すことで、自分たちの好きなHIP HOPと世間の好きなHIP HOPとの距離感を計りたいのかもしれないっすね。『どんだけズレてるんだろう』みたいな(笑)」

■三人ともカラーがバラバラだから、どうやって世界観作りをしていったのかは気になりましたね。
SH「特に何も話してないっすね。大体な感じで。だから、あんまり暗めにしようとか話してないんですけど、三人のラップが暗めだからか、こうなっていったというか」
D「三人とも(指向性が)バラバラなんで、どういうラップを書いてくるか分からないし、テーマを決めたとしても全員そこに従わないんですよ(笑)。でも、それがSATELLITEの曲になっていくというか。そういう個人のやりすぎ感がカラーなのかも」

■その意味では、収斂するというより拡散していくタイプの作り方ですよね。
SH「三人連れ立って遊ぶってこともほとんどないし、みんなバラバラのフィールドにいるんですよね。レコーディングぐらいでしか揃わないし。そもそも、ラッパーとしての活動がユニット組む前からあって、オリジナルを確立してから組んでるから、合わせるというより、個性を押し出すって感じが正しいのかなって」
D「『こうしよう』みたいにいってしまうと、個性が潰れちゃうかなとも思うし」
SH「構成的にも『16小節あってフック』みたいなパターンじゃなくて『16・8・16でフックなし』みたいな変則的な構成になってる曲も多いし、そこも飽きさせないように出来たかなって」

■ただ、不穏なんだけどポップというか、ドロドロとしたダークさじゃなくて、カラッとはしてますよね。
D「そうっすね。思ったより暗くなくて『あ、意外と明るいんだな』って(笑)。だから見た目やスタンスだけで『この人たち怖そう』ってイメージを持ってほしくないんですよね」
SH「そう。みんなと同じだよって。二本足で歩いてるよって(笑)」

■そのレヴェルでみんなと同じ(笑)。だから、クリミナルなリリックが多いけど嫌な感じではないですね。
SH「単なるワル自慢にはしたくないし、そういう話をするにも笑いは入れてこうって。普通に話すときもそうじゃないすか」
SA「でも内容に関しては真に受けないで『っていうギャグ』ってことは分かってほしいっすね」
D「ホント、全曲ジョークなんですよ。ジョークの最たるモノ(笑)」
SA「こんなの本気で捉えられたらやばいっすよ。だから聴いた通り受け取るんじゃなく、深読みしてほしいんですよね」
D「ぶっちゃけ、何を今は信じていいか分からないし『それギャグでしょ』みたいなことが現実に起こるわけだから、そういう意味でも、自分たちが見たニュースを形にしてるって感じなんですよね」

■今回のPVでも映画『冷たい熱帯魚』を引用してるけど、元の事件も含めて、基本はもの凄くハードな内容なんだけど、それが行きすぎてコメディ・チックになったりしてて。それに近い感覚ですかね。
D「あー、そうかも。単純にハードなだけじゃエンターテインメントにならないし、ウチらの見た世界を面白おかしく書きたかったんですよね」
SH「そういう(サブカル的)引用部分はDOGMAの担当だよね」

■リリックに『神様の愛い奴』が出てきたのは笑いました。
D「だからそういう部分でも読み取ってほしいですね」

■そういうギャグにするであったり、ちょっと斜に見るみたいな感覚が三人に共通してるんですかね。
D「そうっすね。ギャグにしていかないとっていう感覚もあるし……」
SH「カッコつけようとしてもカッコつかないって部分もあるしね。だからさらけ出すしかない(笑)」

■ただ、そういうクリミナルなリリックに関しては拒否反応を示す人もいるかもとは思うんですが。
D「結局のところ、ここに書いてあるのは俺らの日常にあることですからね。でも、そういう内容を形に出来るのはHIP HOPだと思うし、そういう部分を単純に大事にしてるって感じですね。そこは曲げられない」
SH「書けとも言われてないし、書くなとも言われてないけど、そういう話を書くなって言われたら何も書けないかも(笑)。でも、これだけ曲のネタにしてても“賛歌”はほとんど作ってないっすね」

■確かに、そういう部分を殊更に褒めたり勧めたりじゃないっていうのは面白いですね。
SH「それをやるのは自己責任ですから。だから自分のケツの拭ける範囲のことしか曲にしてないし、人に大っぴらに勧めてもって思うんですよね」
D「ただ、人に危害を加えてるわけじゃないっすから、あんまり悪いことしてるって感覚はないんですよね」
SH「だけど実は悪いことらしいよ」
D「まじっすか。それは今知りました(笑)」
SH「おまわりさんに訊いてきた方がいいよ(笑)」

■今回のトラックは、HardTackle_33とHardTackle_66が多くの曲を手がけてますね。
D「これは偶然なんですけど、HardTackle_33がウチの中学の先輩だったんですよ。実家もすごく近くて。ただ、お互いにMSCに関わってるなんて知らなかったんですけど、漢さんの家で出会って再会したんですよね。で、33も66も、MSCのトラック・メイカーの中ではサテライト的な立ち位置だったりしたんで、SATELLITEでアルバムを出すにはやっぱり欠かせないかなって。基本的に仲良くて連んでるっていうのも当然あるんですけどね」

■フィーチャリングもLIBRA勢でほぼ固められてますが。
D「やっぱり三人とも『MSCとJUSWANNAでやりたい』って思いが一致したんですよね。逆に先輩方しか呼びたくないっていうか。アルバム作るんならそうしたいとも思ったんですよね」
SA「俺らはLIBRA/MSCのサテライトですから」
Amebreak伊藤「ではSATELLITEから見て、MSCやJUSWANNAはどういった存在?」
D「僕の場合は仲間内から入ったんじゃなくて、完全にファンとしてまず接してたんで、憧れの存在ではいまだにありますね。でも、憧れも当然あるけど『自分は自分だな』って思ったときから、自分らしいラップも書けるようになりましたね」
SA「自分はいまだにヘッズですね。やっぱり中学のときに『こんなにスゴいグループがいるんだ』って一番影響を受けたし、それをいまだに感じさせてくれる存在ですね。自分もそういうラッパーになりたいと思いますね。俺らがMSCから受けた衝撃をまた下の世代に与えられるような」

■アルバムを作っての発見や気づきは?
SH「それぞれソロを出すっていう前提があったりもするんで、それまでの名刺が出来たかなって思いますね」
D「このアルバムがアウトロじゃなくて“皆殺しのメロディ”で終わってるのも、このアルバムで終わりっていうんじゃなくて、ここからSATELLITEのストーリーが始まってるってことなんで、そう思ってもらえると嬉しいですね。あと今のHIP HOPは決して嫌いじゃないけど、俺らの望むテイストではないし『ホントはこういうのが聴きたいんじゃないの?』っていう問いかけにこのアルバムがなればいいなって」
SA「必然的に必要悪みたいな捉えられ方になりそうだし、叩かれるようなアルバムになりそうだけど……」
D「叩くんなら、『じゃあ、君の意見を聞かせてよ』って思いますね。それから、『こういう内容だけど一理あるな』って思ってくれれば、俺の人生も捨てたもんじゃないなって思いますね」
 
 

Pickup Disc

TITLE : FULL SMOKE
ARTIST : SATELLITE
LABEL : LIBRA RECORDS/LIBPCD-011
PRICE : 2,500円
RELEASE DATE : 9月21日