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DIORI a.k.a. D-ORIGINU

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「どっちかというとトラック・メイカーは裏方だし、俺もその意識が強いから、『MCにトラックを提供する』っていうことをメインに考えてきてた。今も多少その気持ちはあるけど、今はトラックを作る人もすごい多いし、アルバム制作費とかも全体的に少なくなってきてるから、『(トラック・メイカーは)ある程度身内でやろう』って人が増えてきてる。じゃあ、そこでいろんなラッパーにデモCDを渡してっていう受け身の姿勢で仕事をするより、自分で動いた方が時間ももったいなくないし。ここ1~2年ぐらいでそういう意識が出て来たんだよね」

 2000年代以降の日本語ラップにおいて、トラック・メイカー/プロデューサーの立ち位置向上に貢献したひとりとしてDIORI a.k.a. D-ORIGINUは数えられるべき存在だ。URBARIAN GYM(以下UBG)の一員としてZeebraやUBGの猛者たちとのセッション経験を多数重ねてきた彼は、満を持してその経験を活かした自身名義のアルバム「SPREAD YOUR WING」をドロップ。元々作風の幅が広い人ではあったが、今作でも先行配信されたフロア・チューン“JUST MOVE IT feat. AKLO”から、“EAST NORTH SOLDIER feat. HUNGER, 4WD, 鬼, MICHIYA”のようなドラマチックなアンセムまで、彩り豊かな内容に仕上げることに成功している。UBG加入に至るまでの彼のHIP HOP遍歴から、UBG解散後の“再出発”まで、様々な道のりを経て彼は新しい“翼”を携え2010年代のHIP HOPサウンドをクリエイトしていく。そんな気概がこのインタビューからも窺えるのではないだろうか?
 
 
■HIP HOPの入り口はスケボーだったんですか?
「そうそう。1週間ぐらいスケーターで(笑)。あんまり上達しなかったらからすぐやめちゃったんだけど、ちょうどその頃のスケボーのヴィデオでHIP HOPの曲――CASUALとかSOULS OF MISCHIEFとかのHIEROGLYPHICS周辺やBEASTIE BOYSあたりがかかってて。あと、高校の同級生にミックスCD聴かされて、『HIP HOPって、一曲で聴くんじゃなくて、“流れ”で聴くものなんだ』っていうところがHIP HOPの面白さのひとつとして引っかかったんだよね」

■地元は山形とのことですけど、東京に出て来てからUBG入りするまではどんな感じだったんですか?
「高校の同級生でAKEEMと一緒にラップをやってるってヤツがいて。まだUBGが生まれる前の話だけど、当時からジブさんやD.LさんがAKEEMのことを推してたんだ。で、その後AKEEMはソロになって東京に出て来て。RHYMEHEADのリリパをやったときに、地方のアーティストも何組か呼ばれてそこでAKEEMも呼ばれたんだよね。その頃からAKEEMとはよくツルんでたから彼のライヴDJもやるようになって、それだったらUBGにも入らなくちゃいけないからみんなに挨拶して入って」

■すんなり加入できた感じなんですね。
「まあ、最初は練習生から(笑)」

■ラッパーは当時から「ひたすらスパーリングと称してフリースタイルをしているらしい」とか都市伝説的に伝わってましたけど、DJの練習生は具体的に何やって修行してたんですか?
「DJの練習生っていうと当時は俺ぐらいしかいなかったかもだけどね。“スパーリング”のときはみんな2~3時間ひたすらフリースタイルしてるんだけど、そこでブレイクDJをしてた。みんなずっとフリースタイルしてるわけだからインストはどんどん変えなくちゃいけないし、そこで二枚使いとか、区切りの良いところでトラックを変えるタイミングとか、そういう空気感を肌で感じながら練習するって感じだったね」

■その頃はまだトラックは作ってなかったんですか?
「いや、作ってた。当時はDJとトラック・メイクを同じ割合くらいで平行してたんだけど、自然と新譜とか買うよりネタ物を買う割合が増えていったんだ。当時の雑誌とか見ても、DJ PREMIERとかPETE ROCKとかがDJなのにトラックを作ってるのを知ってたから、最初から『DJはトラックを作るモンだ』っていう意識があったんだよね」

■DIORI君的に転機となったプロデュース仕事は?
「それはやっぱり(Zeebraの)“SUPATECH”。SPHEREやUZIさんのトラックをやったぐらいから『トラック良いね』って言われることは増えたけど、トラック・メイカーとしてドンッて名前が出たのは“SUPATECH”だよね。枚数も売れたし、タイミングも良かったんだろうけど、それこそ自分の実力以上に評価されちゃった面もあるかもしれない。だけど、それがきっかけで多少仕事も増えたし、それまでにデモCD渡してた人たちも『ジブさんがOK出してるなら大丈夫だ』って思ってトラックを頼んでくれたんだと思う。あの頃1年間で3~40曲リリースされてると思う」

■トラック・メイカーとして確立していく内にソロ作も作ってみたいと思うようになったんですか?
「OJ & STのミニ・アルバム(『ONE LIFE』)を、自分がエグゼクティヴ・プロデュースをやったり、KM-MARKITの曲をやった辺りから『自分でも一枚出したいな』っていうのはあったけど、具体的にどうしたいっていうのはあんまりなかったかな。やっぱり、ラッパーがアルバム出すっていうのと、トラック・メイカー/プロデューサーがアルバム出すっていうのは気持ち的に多少違うと思うんだよね。どっちかというとトラック・メイカーは裏方だし、俺もその意識が強いから、『MCにトラックを提供する』っていうことをメインに考えてきてた。今も多少その気持ちはあるけど、今はトラックを作る人もすごい多いし、アルバム制作費とかも全体的に少なくなってきてるから、『(トラック・メイカーは)ある程度身内でやろう』って人が増えてきてる。じゃあ、そこでいろんなラッパーにデモCDを渡してっていう受け身の姿勢で仕事をするより、自分で動いた方が時間ももったいなくないし。ここ1~2年ぐらいでそういう意識が出て来たんだよね。昔もアルバムは出したいと思ってたけど、それは単純に『出したい』ってだけのエゴ的な感じだったんだ」

■今作のタイトルを「SPREAD YOUR WING」としたのは?
「とりあえず“出発”とか、新しく何かが始まるっていうところなんだけど、UBGも解散したし、『自分の第二章』って思いがあったんだと思う」

■UBG解散に対してDIORI君はどう感じましたか?
「UBGにはいたけど、(UBG以外の)いろんな人とも仕事はさせてもらってたし、UBGが解散したとしても自分が今後やることは変わらないなとは思ったかな。けど、自分でやることはどんどん増やしていかなくちゃな、って決意を新たにしたね」

■でも、「UBGの」っていう精神的な拠り所がなくなるのは決して小さくない出来事ですよね。
「まあね。だからこそ『羽ばたく』とか『飛び立つ』っていうのをアルバムのモチーフにしたかったんだよね」

■アルバムの全体像としてはどんなものを考えて作り始めたんですか?
「最初はストーリー性のあるものにしたかった。スキットとかインストのインタールードが入ってるみたいな。でも、やっぱ自分は書き手じゃないから、思ってる世界観を100%表現するのは無理だってことに気付いて。もちろんテーマとか指定はするけど、自分が考えてることと内容が多少ズレちゃうのはしょうがないから、出来ていくものをどうしていくかって考えになった。だから、このアルバムは“短編集”なんだよね。短編なんだけど一冊通して流れがあるものにしていこうって感じになったかな。けど、参加してくれたみんなバッチリだったから全曲気に入ってるよ」

■音楽的にはどうですか?DIORI君は昔から打ち込み色が強い曲とサンプリング色が強い曲、どちらとも得意な人だっていうイメージがあったのですが。今作でも“JUST MOVE IT”は前者、“IT'S ON”は後者って感じですよね。
「昔から、クラブに遊びに行って盛り上がるのは打ち込み系のサウンドなんだけど、そういう曲は家では聴こうと思わなくて、家ではサンプリング系の曲を聴いてる。そこに関する矛盾は自分でも感じてたんだけど、それだったらそれで素直に分散しようかな、って。一曲の中でサンプリングと弾きでバランス取って作ったものもあるし、時代的にもサンプリングでワンループってのもちょっと物足りない。ループにしてももうひと展開入れたりとか、そういうところは意識したかな」

■単調な感じにしないように。
「イントロがあってヴァースが始まってフックがきて、じゃなくて、もう別曲みたいな展開がひとつあったり」

■プロデューサー主導のアルバムはフィーチャリングの人選が重要ですが、今回はどうやって選んでいきましたか?軽く意外に感じた人もいましたが。
「逆に、どの辺りが意外に感じた?」

■んー、KEN THE 390とか、“JUST MOVE IT feat. AKLO”が配信されたときもちょっと意外でしたね。
「AKLOとかはミックステープを聴いてカッコ良いな、って思ってたし。でも、今回の制作の打ち合わせで初めて会ったって人はKLOOZくらいだったんだよね。AKLOとかは、彼がライヴやってるときに遊びに行って話して。鬼君もそんな感じだった。EMI MARIAちゃんも面識はあったけど、正式にお願いするときはライヴに行って話してお願いして、って感じだった」

■これまでのUBG的なイメージからの脱却っていうのは意識しましたか?
「あー、結果的にそうなった部分はあるけど、それは多少意識したかな。どうしても『UBGのトラック・メイカー』って思われることも多かったから、敢えてみんなの力を借りないで一枚作ってみたかった。また自分で作る機会があればそのときお願いすればいいし、まず一枚自分の力で作ってそれをUBGのみんなに聴いてもらいたかったんだ。今回の人選に関しては、みんな現在進行形で活躍してる人ばっかだから、そういう人たちと曲をやりたかったんだよね」

■以前よりも俯瞰してシーンを見てるのかな、って気がして。例えばTwitterとかが広まってもっとオープンにいろんなアーティストと交流できる場が出来たじゃないですか。そういうことによって日本語ラップやいろんなラッパーに対する見方が変わってきたりはしませんでしたか?
「あー、そうだね。KEN THE 390とかはそれがすごいあるかも。彼はラップがカッコ良いっていうのももちろんあるけど、作品以外の活動も良い感じだから、そのエネルギッシュさを分けてもらいたい、って」

■一方で先程の鬼君やAKLO君みたいに、実際に現場に足を運んで話をして、っていう昔ながらのやり方もしてて。
「ネットだけで完結しちゃうとどうしてもちょっとドライになっちゃうかな、っていうのがあって、それもあってやっぱ一回会って話しないとな、っていうのはあったね。他の人の曲に参加する曲だったらそれでもいいのかもしれないけど、やっぱ自分名義の作品だしもっと踏み込んだ形で曲を作りたかったんだ」

■“EAST NORTH SOLDIER feat. HUNGER, 4WD, 鬼, MICHIYA”とかはそうやって動かないと生まれなかった曲ですよね。
「そうだね。鬼君と初めてあったときにHUNGERもそこでライヴやってたんだ。で、HUNGERにも多分そのとき話したんだよね」

■“EAST NORTH SOLDIER”は震災前に出来た曲とのことですけど、東北の人たちを集めて一曲作ろうと思った理由は?
「『レペゼンUBG』がなくなったら、じゃあ俺は『レペゼンどこ?』って。まあ、そこまで深く考えたわけじゃないけど、東京に長く住んでるけど『レペゼン東京』っていうのもなんか違うし。それだったら自分のルーツを一回ハッキリさせておこう、っていう思いがあって東北の曲を作ろうと思ったんだ。そういう曲は絶対作りたいってアルバムを作る前から思ってたね」

■今作で特に印象深い人/曲は?
「まあみんなだけど、“JUST MOVE IT”は一番最初に配信した曲で、やっぱスゲェ不安もあって。『みんな反応してくれるのかな?そんな話題にならないで終わるんだろうな』とか思ってたんだけど、みんな『良いね』って言ってくれて反響もあったからすごい自信になったね」

■今作は、ごく一部かもしれないけどDIORI君が見ている現在の日本のHIP HOPシーンの反映なわけじゃないですか。トラック・メイカー的視点で見るとここ最近の日本語ラップの移り変わりに関してどういう風に見ていますか?
「悪い面だと、フリー・ダウンロードとか、YouTubeにみんな曲をアップしすぎで。アップしすぎというか、単純にクオリティが低いものがスゲェあるよ。30分で録りました、ハイ聴いてくださいみたいな。まあ、その手軽さがいいんだけど、そうだとしても第三者に聴いてもらうんだったらリリースする気持ちでやらないとダメだと思う。そういう形で発表できるのは良いことだと思うからこそちゃんとしてほしい。まあ、シーン全体として考えると、ほんと人それぞれだよね。いつからかあんまそういうことは考えなくなっちゃったりしてるんだよね」

■今作に参加してる人、してない人で最近気になる人はいますか?
「参加してる人だとBRGKは早く2ndアルバムを聴きたいよね。彼はもっと評価されていいと思う。参加してない人で言うとNORIKIYOのアルバムはすげぇ聴いたし好き。あと、神戸のSNEEEZEとか結構面白いと思う」

■トラック・メイカーで言うとDIORI君が刺激を受けている人は?
「トラック・メイカーはスゲェレヴェル高いと思うよ。まあ、ワタさん(DJ WATARAI)、BACHLOGIC、I-DeAとか。Mr. ITAGAKI a.k.a. ITA-CHOさんとかも好きだし、OTOWA BEATSやTOFUBEATSもカッコ良いと思う。あとLUCHA君も好きだね。LUCHA君はノリが黒い」

■今作を作って改めて気付いたことはありますか?
「曲に込めるもの……今はPro Toolsで簡単にエディットが出来るけど、そこにプラスαでレコーディングのときに何を込められるか、そういう部分を再確認したというか。70~80年代のクラシックスがなんで今も聴かれるかっていうとそういう部分だと思うんだ。基本、一発録りじゃん。そのときの集中力とかそのときに込める気持ちやヴァイブスが凄いから、そこが合わさったときにプラスαのモノが出て、そこにみんな心動かされると思うんだ。でも、今のレコーディングは2小節ずつとか8小節でパンチインとか、そういうのも多いから、今回はなるべく一気にレコーディングするようにした。レコーディングをするその瞬間の瞬発力、そこは絶対に変わりないしどんだけ便利になっても変わってほしくないと思ったね」
 
 

Pickup Disc

TITLE : SPREAD YOUR WING
ARTIST : DIORI a.k.a. D-ORIGINU
LABEL : NEXT ENTERTAINMENT/XQXV-1003
PRICE : 2,520円
RELEASE DATE : 11月23日