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小林勝行(ex.神戸薔薇尻)

インタビュー:高木“JET”晋一郎

「やっぱ泣き笑いは気持ち良いし、俺自身、あんま音楽音楽ってDJの兄ちゃんみたいな堀り方はしてないと思うんですよね。ほんま直感的。で、やっぱ長渕じゃないですけど、ほんまに救ってくれる音楽をやりたかった」

 神戸薔薇尻名義でのSEEDA & DJ ISSO「CONRETE GREEN」収録の“絶対行ける”や、SAC「FEEL OR BEEF」収録の“ちょけんねん”、DJ NAPEY「FIRST CALL」収録の“蓮の花”や、蟹バケツシンドローム名義で発表した“商売繁盛”、そして神門と発表した“HERE IS HAPPINESS”など、寡作ではあるものの一曲一曲強烈な印象をリスナーに与えてきた小林勝行。

 そして、遂にリリースされたソロ作の強烈さはどうだろう。ここに描かれたすべての事象に真正面から立ち向かった故であろう、リリックとラップの端々から血と想いが噴き出すような強烈なリアリティとリリシズム、そして、ペーソスとブルースの隙間から顔をのぞかせる笑顔と希望、そして後悔。そういったすべてが小林勝行のリリックを形作り、作品から小林勝行そのままがリスナーの眼前に現われる。泥中からもがくようにラップをはき出し続けた蓮の実は、今ここにその花を咲かせ始めた。

■今回のアルバムは“108 bars”から始まりますが、これは何歳ぐらいの話?
「内容的には17歳のときから始まってるんですよ。悪くなっていった、転げていったキッカケみたいなのを表現したくて。高1で学校中退したんですけど、そのときはカナちゃんって女の子と付き合っとって。2年半くらい付き合ったんかな。俺は結構パンクが好きやったんですよ。当時安全ピンとかピアスとかしてて。で、カナは阪神大震災の前はちょっと東の方に住んどって、大阪寄りやからちょっとオシャレで、その子がダンサーみたいなダボっとした服を着てて、それがHIP HOPを知るきっかけでしたね。だけど、そのほんまに好きやったその女の子と別れてもうて、それをもう忘れたいがために自暴自棄になったって感じを伝えたかった。やっぱみんな金か女やから。うん。そういうのを表現したかったかな」

■ラップを始めたキッカケは?
「ハタチぐらいですね。友達に誘われて。その当時、吉本(興業)行っとったんですよ。けど、吉本がうまいこといかなかったんです。全っ然ウケへんかって」

■吉本っていうのは、NSC(吉本のお笑い学校)に通って?
「じゃなしに、オーディションみたいな形ですね。月1回、そういうのが『BASEよしもと(劇場)』であって。で、おもんなかったり、まったくウケんかったら30秒くらいでボーン!って(舞台の電気が消えて)」

■いわゆるゴング・ショーみたいな形式?
「そうそう。それに絡んどったんですよ。友近がいたりチュートリアルとかが司会してて。もっと正せば、中学ぐらいからずっと夢は吉本だったんですよ。ほんで地元の連れとコンビ組んで、ダウンタウンみたいになりたかった、アホみたいな話なんですけど。で、そいつが僕と付き合っとった女の子と結婚しまして(笑)」

■因縁深い話だなぁ。
「次に組んだ地元の相方はめっちゃエエ奴なんですけど、エエ奴すぎてキレがないんすよね。で、そいつにきつく当たってもうたりして。ほんで、かなり悪い方の友達とHIP HOPでハーコーなノリでラップ始めて。でもどっちも結局、女にモテたかったんでしょうね(笑)」

■じゃあそこで芸人さん目指しながら、平行してラップっていう感じで。
「そうっすね。でも、お笑いは自然消滅してしまいましたね。相方には悪いけど。ラップの方が楽しくてしゃーなかったから。そっちの連中と気が合ってしまったから」

■そこで伺いたいのは、このアルバムを“108 bars”で始めたのは、まず小林勝行の自分史を聴いてほしかったのかなと思ったんですが。
「“108 bars”で始まって“警鐘”で終わるっていうのは、そのなんちゅうか……ドープなシットを漠然と作りたくて。鬼くんとか聴いとったら、経験では負けてるじゃないですか。勝ち負けじゃないけど、俺の方がたぶん浅い。で、どうやって勝負しようかって思ったら、関西弁なり泣きと笑いなり、その尾崎っぽい突き抜けたヴァイブスみたいなのを意識しましたね。僕のしゃがれた声質にはそれが合うと思い込んだし、気持ちが乗せられたんですよね」

■話は前後しますが、ラップを始めたときはソロで?
「グループですね、クラって奴と、神戸薔薇尻でも組んだチョンと僕の3MCで『ICMB』って名前で。そのときは結構イケてる、めっちゃオリジナルな内容のリリック書いてましたね。クラがレンタル・ヴィデオ屋さんの店員で、チョンがビデオ借りにきた客で、俺がその後ろに並んでるOLみたいな女のキャラで」

■スゴい設定(笑)。
「『千と千尋の神隠し』のレンタルが始まってた頃で『千と千尋の神隠し、早く帰って観たいぜ!』みたいな(笑)」

■エンターテインメントというか、ちょっとまぁ笑かすみたいなのが強かったんですね。
「そうですね。それに純粋に誰もやってないことがやりたかった。そういうのもHIP HOPでの新しいカッコの付け方やなぁって思ってたから。それに反応したと思うねん、多分。俺はそうやった。で、この3人で韻踏合組合のパクリみたいなライヴもやってたんやけど、クラが緊張してすぐ歌詞とかとちるようになってもうて、仕事に集中するって抜けたんです。で、チョンと俺の二人になったんですけど、チョンが神戸を舞台にした『伝説のやくざ ボンノ』(正延哲士著)ってヤクザ本を見つけてきて、『これこの街におってんって。これヤバない?』って。それでグループ名を神戸薔薇尻にしたんですね」

■神戸薔薇尻って名前のインパクトは凄かったから記憶には残ってたんだけど、制作は少なかったですね。
「なんでやろうな。働いとったんもあるし……少なかったっすね。二人で作った曲だと、“DAY TUNE”って曲があったな。DJ NAPEY君のコンピに入った曲で。そのチョンの2ヴァース目は刑務所系の描写やったら完璧やと思うな。チョンと僕が拘置所で手紙のやり取りしとって、その離れとうけど繋がってるみたいな感覚を書きあげた曲なんすけどね」

■やっぱり、神戸薔薇尻は小林君ひとりのイメージがあるけど、二人体勢で残ってる楽曲もあるんですね。ただ、ひとりでも曲は少なかったけど、それは、そこまで制作に対するモティヴェーションが高くなかったのか、それとも止むに止まれぬ事情だったのか、どっちですか?
「取り調べみたいになっとる(笑)。でも、全部かな。不器用は不器用やったと思いますけど遅かったっすね。ほんまに完璧なの作ろうとしとったと思うんすよ。誰にも負けんくて、そういうのを目指してましたね。そして、俺自身、鬱の時間が長かった。めっちゃやりたいけど、なんかやられへんみたいな。出来ひんみたいな。で、仕事も上手いこといかへんし、友達捕まるし。ほんまそんな感じでした」

■ちょっと精神的にきつい時期があったんですね。
「きつかったっすねぇ。病気の特徴かなんか知らんけど、逆に躁に完全に行ききっとるときは記憶があんまないっすね。もうイケイケでずっとひとりで喋っとって(笑)。でも鬱のときは何も書けへんし……。よかった、ほんまアルバム出せてよかった(笑)」

■では、小林勝行としてソロを作り始めたキッカケは?
「1回諦めたんです」

■それはラップ自体?
「そう。躁鬱のせいか、ちょっとヤケになったんもあったし。ほんで借金やなんやがあってもうグチャグチャになっとったときに、さすがにオカンが来てこれはもうアカンわって。ほんでまともに仕事探してたりしてるときに、地元のツレ経由で今回のアルバムのディレクターが神戸にわざわざ来てくれて。本気のアルバム作ろうって言ってくれて。アルバム作ってまずはオカンを安心させなアカンから。マジでありがとうっすね」

■そういう噛み合わせがなかったらアルバムが出来たか分からない、と。
「ないっすね、間違いないっす。」

■今作を作る上で一番最初に出来た曲は?
「“丈夫軍手'z”ですね。“ヨイトマケの歌”みたいなの作りたかったんですよ。『母ちゃんのためならエンヤコラ』みたいな泣き笑いシット。まだ2〜3曲は書けるなって感じですね、仕事の歌は。そうやって努力してきたことが無駄じゃないなって」

■その泣き笑いが今作は重要なのかなって。だから、内容的には歌謡曲だったり、憂歌団だったり、そういうセンスと近しいなって。
「やっぱ泣き笑いは気持ち良いし、俺自身、あんま音楽音楽ってDJの兄ちゃんみたいな堀り方はしてないと思うんですよね。ほんま直感的。で、やっぱ長渕じゃないですけど、ほんまに救ってくれる音楽をやりたかった」

■今「救う」って言葉が出てきたけど、「救う」や“希望”が最終的なモチーフになってますね。
「俺は自分がめっちゃかわいいですから、やっぱり辛かったと思うんですね、これまで、俺は。だから、やっぱり究極は俺が俺みたいなのをアゲたいんです。音楽シーンもすぐ『アガれる』ような環境になってほしい。アンダーグラウンドは最高やけど、そこから矢沢永吉とかBOOWYみたいなのが出てきたっていう、ロックの波をなぞってもええんやと思う。……でも、やっぱ自分は自分をアゲたいっすね。たぶん寂しかったんやと思う」

■そこで訊きたいんですが、オチてたときに日本語ラップは救ってくれました?
「んー……それはないですね。」

■多分、日本語ラップに救われた人が表現者になったときには、そこに影響を受けた救いの像を描くと思うんですが、小林くんの作品はそういうタイプの救いの書き方はしてないし、もっと独特だからこその味があるなって。
「テーマとか、こういうこと言おうっていうのは多分3桁ぐらい曲あるんすよ。曲の肝みたいなのが自分の中で。曲を作るときはそういうパンチラインと構成が先に浮かびますね。まず、言いたいことありき。でもそれも音楽だと思うし、ずっと音楽したいっすね」

■自分にとって「音楽をする」ってどういう意味を持ちます?
「一番しっくりくるのは“友達”ですね。今はその表現が一番ハマるかな。女って感じではないっすね。落ちとうときは一緒に泣いてくれるし、励ましてくれるし、たまに会いたくなくなる。そんな感じ」

■女性をテーマにした内容も多いですね。個人的には“元カノ達の慕情”が素晴らしいなと。
「オリジナルですよね!」

■これはグッときたなぁ。
「いやめっちゃ嬉しいわ。ほんま嬉しい!バリ嬉しいわ!やった。初めてや“慕情”を褒めてくれる人」

■あ、そうなの?これはなかなか日本語ラップでは聴いたことない構成だなって。
「でも歌謡曲ではあったっすよね。やしきたかじんとか。でも、ちょっと勇気いりましたね。別のこと言うべきかなとも思ったし」

■そういう歌謡曲の強さとちゃんと向き合った曲ですよね。
「やっぱモテたいし、女は大事にしたいもん(笑)。ラブラブしたいですからね、普通に。みんな、それのもとに生まれたわけじゃないですか」

■こういう内容だと、神門君が浮かぶけど、それともまた違った話の進め方になってて。でも、そういう内容を書くのって恥ずかしくない?
「やっぱり友達が強みですね。これはプライベートやけど、やっぱりフラれたときとか泣いてましたよ、友達の前で。酔っててもみんな覚えとんですよね。あー、むっちゃ好きやったんやって。そういう気持ちをみんな受け止めてくれるし、そこで言えるんなら曲でも言える。それに、チ○コ被っとるからって、風呂行ってチ○コばっか隠してたらカッコ悪いじゃないですか(笑)。分かります?そのノリ」

■まあ、分からんではない(笑)。「嫁おったら好きやって言いたいですよね。可愛い子が座っとったら話しかけるじゃないですか。だからやっぱ幸せになりたいですね」

■どういう結論だ(笑)。
「ほんまにいい意味で女に支持もされたい、っていうのもある。これはちょっと恥ずいけど。あいつは浮気もなにもかもするし、だらしないけど、あいつの歌は正しいってやっぱ言われたい。そういう『みんなのモノ』になる曲を作りたい」

■それはこのアルバムも当然そうなってほしいと。
「俺はみんなに必要とされたいけど、ハードコアな部分で魅力出したらいいのかも悩むし、かわいいとか言われるのもなんか嫌やしみたいな。うん、このアルバムは重いけど、落ちたときには必ず必要とされたい。かな?」
 
 

Pickup Disc

TITLE : 神戸薔薇尻
ARTIST : 小林勝行(ex. 神戸薔薇尻)
LABEL : ULTRA-VYBE, INC./VBCD-0056
PRICE : 2,500円
RELEASE DATE : 11月2日