ICE BAHN |
DATE : 2012/01/26 |
インタビュー:高木“JET”晋一郎
「MCとしてそんなに強い主義主張はないっていうか、伝えたいような人生を生きてきてないから。でも、そういう人が世の中は大半だと思うし、そういう人たちの気持ちを高揚させるようなモノを作りたいんだよね。それも他との差別化の話と一緒で、もっと強烈な物語だったりメッセージを聴きたい人は、そういうアーティストを聴くのがいいと思うし、単純に『なんか熱くなる』『ラップって凄い』って思いたいならIBを聴いてもらえればいいと思うんだ」——玉露
シーンきってのライム・フェチ軍団:ICE BAHNが3年ぶりとなるフル・アルバム「LOOSE BLUES」をリリース。今回はより伝わりやすいメッセージを形にしながら、それでも固く韻を踏みまくり、まさに彼らでしかなしえない作品として完成させた。それに加え、フロウや発声などは新たなアプローチを随所に感じさせ、IBの根本と進化を感じさせる一枚だ。
■今回は3年振りのアルバムリリースということで、ICE BAHNは何故アルバム・リリースまで時間がかかってしまうのかということから伺えればなと。
玉露(以下G)「やっぱり、全員が一致して『これだ』っていうトラックに出会えるかっていうのが大きいかな。個々の好みを超えて、妥協じゃなく全員がやりたいと思うトラックを見つけて、それをアルバムの分量まで持っていくのはやっぱり大変だね。あとリリック書くのも遅いし……韻を踏むなんてのは朝飯前なんだけど、それを作品として完成させるのはまた違う作業でもあるし、それが重なっちゃうと3年なんてあっという間に経っちゃう」
FORK(以下F)「それにしても遅いって気もするけど。……やっぱりルーズなんだよね(笑)」
■アルバム名にひっかけたけど上手いようなベタなような(笑)。
F「もう色んな意味でルーズ。でも、あんまりタイトルに深い意味もないし(笑)」
■今作は前回「OVER VIEW」よりももっとBPMを落としたビート感で進みますね。
KIT(以下K)「たぶん歳取ったんじゃない? 人間的に地に足がついたというか(笑)」
DJ BOLZOI(以下B)「でも、少し今までより大人っぽいモノにしようっていうイメージはあったね」
F「こと、今のモードはそういう感じだったのかも。でも言われてそうなんだって思ったぐらいで、俺としては今インスピレーションが刺激されたのがこういうビートだったって感じ。だから次もそうなるかっていったらちょっと分からないな」
■前回が、ファスト・ラップのIBの巧さを見せたから、今回はベーシックなビート感でのIBのラップの巧さを見せたいのかなとも思ったんですが。
F「……そんな気がするな!」
G「明らかに乗っただろ(笑)。でも他との差別化だったり、IBの出来る他と違うことはなんなんだっていうのはすごく考えてて。例えば、ファスト・ラップだったらHUNGERくんやRINO LATINA IIさん、TwiGy al Salaamさんには敵わないと思うんだ。だから、じゃあ俺らはなんだったら一番になれるのかっていうのを考えないと生き残れないだろうし、やりたいようにやってたんじゃダメだって気付いたんだよね。何を武器にすれば他と戦えるのかを考える時期に来てるって最近は強く感じて」
■ではその武器とは?
G「やっぱり“韻”だよね。『韻を踏む』ってことがHIP HOPならではだと思ってるし、そこを誰よりも強く意識するってことに、MCの命をかけるべきだと俺は考えてる」
F「踏み方にも色々あると思うんだけど、どんな踏み方であってもそこに拘ってるっていうのは一貫してるね」
G「俺らが踏んでない部分があったら、それは絶対わざと。書くのでもフリースタイルでも、絶対に踏み外さないし、踏み外したことは絶対にないっていうのは自信があるかな」
■今までもそうだけど、今回は「ライムこそフロンティア」とか「韻の深さこそHIPHOPマナー」とか、シンプルかつ強く韻について言及してるリリックがあるから、やっぱりそこは意識的だったんですね。
K「やっぱりそれがIBだしね」
■その意味では、IBの踏み方って基本的にはベーシックでロジカルだと思うんですけど、最近はもっとノリというか、字面だけだと踏んでるかは分からないけど、聴感上は踏んでるようなアーティストも多いですね。その差異についてはどう考えてます?
G「例えば、言葉のアタックだけ踏んでたり、母音は踏んでないけど踏んでるように感じるラップは俺は別にいいと思う。それも韻の踏み方だから。だけど、俺の考える韻っていうのは、もっとガッチリ踏んだ、有声音/無声音も含めて踏んでるっていうモノだって思ってるんだよね。そのルールは厳しいのかもしれないけど、そこを突き詰めるのもオリジナリティだと思うんだよね」
■BOLZOI君に訊きますが、DJの観点で考えるIBと他のアーティストとの踏み方の違いってなんだとも思います?
B「韻で産まれるリズムがIBは一番あるのかなって。特にライヴだと、音を抜いてもそこにリズムが残ってる。それは、韻をガッチリ踏んでるからできることだと思うんだよね」
■逆に、一切韻を踏まないでラップって出来ます? K「出来ない。韻で言葉を繋げていくから、ライミングがないと浮かんでこないし、ライミングがあるから、色んなモノを色んな角度で表現できるんだよね。もう思考回路がそうなってるんだ」 G「一回、韻踏まないでフリースタイルやったら、全然できなかったんだよ(笑)」
■無意識で踏んじゃうんだ(笑)。
K「TSUBOI君とかとやったんだよね。そしたら全員言葉に詰まっちゃって(笑)」
F「ラップが着地できなくて、息継ぎ出来なくなるんだよね(笑)。韻を踏まないってなると、じゃあ出すべきことはフロウなのかメッセージなのか、それとも他の何かなのかってことになると思うんだけど、そのどれも(即興では)パッとは出てこなかったね」
G「ふふふ、韻以外空っぽ(笑)。MCとしてそんなに強い主義主張はないっていうか、伝えたいような人生を生きてきてないから。でも、そういう人が世の中は大半だと思うし、そういう人たちの気持ちを高揚させるようなモノを作りたいんだよね。それも他との差別化の話と一緒で、もっと強烈な物語だったりメッセージを聴きたい人は、そういうアーティストを聴くのがいいと思うし、単純に『なんか熱くなる』『ラップって凄い』って思いたいならIBを聴いてもらえればいいと思うんだ」
■今回のアルバムのテーマはどのように設定を?
F「ビートからテーマを浮かばせた感じかな。でもそれも難しくて、テーマの括りは相当絞るんだよね」
G「ボンヤリとしたモノだと、ホントにこの3人はバラバラの方向に動くから、かなり明確にしてから組み立てるかな」
F「制限があってこその巧さの見せ方っていうのもあると思うから」
K「逆に、絞れば絞るほど、自由に出来るって感覚もあるんだよね。最初から全部勝手に出来るんだったら簡単っていうか、面白くない」
G「楽曲のエディットにもすごく注文つけるしね。トラック・メイカーが音上げてきて、ワン・ループにラップ載せたのを返して、それに音の抜き差しとか色の付け方の上手いトラック・メイカーに今回はお願いしたって感じかな。ちゃんと俺たちの聴かせたいとこを理解してもらえるトラック・メイカーと仕事がしたいし、そこは更にこっちも注文つけるし」
K「そこは3〜4往復するかもね。音源にしたときに、無駄な音っていうのはひとつも入っちゃいけないと思うんだよね。それを突き詰めてる。だから他のジャンルや音楽と比べても聴き劣りしないモノを作ってると思うし、“音楽”をやってるって自覚はすごくあるね」
F「KITはレコーディングやミックスに携わってるからすごくそこに拘りあるよね」
K「HIP HOPは低音が大きく、柔らかく出るのがひとつの肝になる音楽だと思うんだよね。でも、今の再生メディアって中高音が出て、低音は削られる場合がすごく多い。そういう状況で、それに慣れたリスナーが多い中でどう聴かせるかっていうのは考えなきゃいけないなって」
■その意味では、IBってやっぱり“保守”をやってると思うんですよね。それはIBの考える「HIP HOPとは」って、多くの人が共有できるベーシックなHIP HOP観とも通じる感覚だろうし、それを保守管理してると思うんですよね。 K「そうだね。HIP HOPって外からは怖いと思われてるかもしれないけど、そうじゃないんだよ、太いんだよ!」
■な、なるほど!
F「高木君、分かんないときは分かんないって言った方がいいよ(笑)」
■とにかく凄い自信に圧倒されました(笑)。冗談はさておき、でも、その抽象的だけどその感覚はIBのアルバムからは感じますね。
K「太いHIP HOPを守っていきたい。わたくしそう思います!」
G「でも、保守本流をやりながらも、自分たちなりにフレッシュな、HIP HOPを進化させるようなことをやるのはアーティストとしての使命だし、それは絶対に念頭に置いてるね」
■今回の客演選択はどのように?
F「YOUTH君はいつもアルバムには参加してもらってて、TSUBOI君は遊び仲間(笑)。QさんとARKさんは、玉さんが加わったユニット:MATRIXで『3 on 3 MC BATTLE』に出たって繋がりだったり、やっぱり昔から好きなラッパーに今回参加してもらって。全員に共通して言えるのは、みんな同じように“拘り”の強い人たちで、俺たちと精神的な距離感が近いってことになるのかな。だから攻めた人選ではないかもしれないけど、王道を突き詰めた上で新しいことが出来るかなって思った面子だね」
■あと、“LOOSE BLUES”のPVでの動物好き感が結構謎で良かったですね。「IB、可愛いと思われたいのか!」みたいな(笑)。
B「山羊が超可愛くてさー。可愛すぎて取り合いになってたもん(笑)」
F「ハハハ。もう一日俺らが遊んでる所を撮ってもらって、それが形になったらああいう映像になったというか。まあ、カッコつけない部分の俺らってああいう感じだよね」
G「ライヴでの振る舞いとかみるとちょっといかついって思われるのかもしれないけど、俺らの日常ってあんなんだよ。それがもし可愛いって思われるなら……それは俺らが可愛い奴らなんだと思う(笑)。今回のPVはKITと同じ中学の奴が作って、アルバムのエンジニアも俺らのイヴェントでPAをやってる奴で、アルバムのジャケも、イヴェントのフライヤーを作ってる奴にやってもらったんだ。だから、身内だけで出来るようになってきたなって。それは長く続けて来たから出来ることだと思うし、自信に繋がってるな」
■話は変わりますが、最近はあまりバトルに出てないですね。
G「出るって決まったときから脳がそのモードになるから、眼に入ったモノ全てで韻を踏んじゃって、もう気持ち悪くなるんだよね」
■韻酔い! 新しい疾患だなー(笑)。
G「いやホントにそうだよ!『あー、気持ちワリイ……色違い…』みたいに(笑)。そりゃバトル出たくなくなるよ。やっぱりバトルに出てたのは存在を知ってもらうってためだったし、バトルでそれなりの成績を残して、知名度も高く出来たから、バトルに出た目的は果たしたと思うんだよね。だから、バトルに出るとしたら、それこそ賞金稼ぎとか、それなりの理由が必要なんだよね。基本的にバトルは好きじゃないからさ。やっぱり良いこともあったけど、悪いこともいっぱいあったから。そういう嫌な思いや緊張と天秤にかけて、それでもメリットがあるって思えるなら出るけど。だからセコいんだよ(笑)」
■バトルは出てないけど、フリースタイルだったりでトップ・オブ・ザ・ヘッドのスゴさは見せてますからね。
F「常にバトルは見てるし、注目もしてるけど、出るっていうのはちょっと今はいいかなって」
G「このアルバムももちろんなんだけど、『現盤』っていうライヴ会場のみで売ってるCDがあって、それは、FORKのソロだったり、KITとPRIMALのタッグや、俺とだるまさんのタッグみたいに、そういうアルバムではありえない組み合わせの曲があったりするから、こっちも聴いてほしいですね」
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