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EVISBEATS

インタビュー:一ノ木裕之

「仏教が自分の音楽にどんな影響があるのかわかりませんが、音楽を作ってるときは、ただただ自分で楽しんで作ってるだけです。仏教だけじゃなくてヨーガや密教、バシャールみたいなのから偉人の方々から色々といいと思ったところは総合的に学んでる感じです。まぁただそういうの知るのが好きなだけです」

 1stフル作「AMIDA」から4年弱の時を経て、再びアルバムを放ったEVISBEATS。日々の平穏に立つ波風に揺さぶられがちな心を、ふと軽くさせる彼の音楽は、新作「ひとつになるとき」でも変わることなく差し出されている。沖縄からアジア圏に広がったサンプリングネタや生楽器、さらには仏教的な生きる知恵なども編みこみつつ、彼のラップはさらに日常をいつくしむような歌心へと着地。歌寄りのスタイルをさらに一歩進めてリスナーに寄り添う。アルバムの発表を前に、メールで投げた質問状に彼が答えてくれた。
 
 
■約4年振りのアルバムですが、その間のご自身の暮らしやその中で目にしてきたこと、感じたことなど聞かせてください。
「この4年間の暮らしは、音楽制作はぼちぼちしつつ、ネパールにトレッキングに出かけたり、ヴィパッサナー瞑想のコースにいったり、職安の制度で介護の訓練校に通ったり、結婚して子供が出来たり、ヨーガ教室で理論を学んだりしてて、今の時代の状況もあってか、今までより強く、自分が心から情熱を燃やせることだけをしようと思うようになりました」

■今回のアルバムも前作同様にこつこつと積み上げた曲作りによって出来上がったものですか?アルバムのそもそものアイディアやイメージがあったら聞かせて下さい。
「4年前からアルバム用にトラックを作って厳選して貯めていってました。はじめの段階では、自分でトラックを作って歌詞を書いてやっていたのですが、だんだん飽きてきて、全部ボツにして。トラックの数曲は、前田和彦さんと一緒に遊びでトラックを作っていく中で自然にこうなりました。歌詞もアイディアも参加してくれたみんなの自然の流れにまかせました」

■「ひとつになるとき」というアルバム・タイトルは先ほどおっしゃったような暮らしの中から出てきたものと想像しますが、そこにある思いは?
「『ひとつになるとき』というタイトルはふと思いついたんですが、エゴから解放されて、本来の自分になる、宇宙とひとつになるといった統合の意味合いがあります。ヨーガでは、梵我一如といったり、密教では、即身成仏みたいに言ったりするようです。まぁタイトルについては、あまり深く考えてるわけでもないです」

■とか聞いといてナンですが、本作はそうしたご自身の思いを越えてまさに“気楽な話”として成立することで言葉じゃ伝えにくいアルバム足らんとしてるように思いました。収録曲の“気楽な話”で歌われる「空っぽならそれで最高/そう気づけば光りだす財宝」という一節も示唆的なんですが、これって勘ぐりすぎてます?
「そうですね、自分自身いろいろと難しく考えますけど、本当はシンプルで気楽な話かもしれません」

■般若心経をラップ化した“般若心経RAP”などを含んだ前作もさることながら、今回も“ギャーテーギャーテー”や“なんともまぁなんだかな”にはご自身の中の生きる知恵としての仏教などの影響が見えるようですし、『蜘蛛の糸』を題材に曲を運ぶ“一本のロープ”にしても僧侶を主人公に見立てて、ある種法話のように曲を運んでますよね。仏教をはじめとしてそうした考えは、EVISBEATSさんの音楽に影響を与えてると思いますか?またリリックをどなたかに依頼する際にそうしたアイディアを伝えてるんでしょうか?
「“ギャーテーギャーテー”は、DOZANさんの作詞で、“なんともまぁなんだかな“は、鴨田潤(イルリメ)さんの作詞、“一本のロープ“は、伊瀬峯幸さんの作詞です。どれも内容はお任せしました。特に伊瀬さんは、香川の石鎚神宮で従事されているので、法話みたいな要素はあると思います。仏教が自分の音楽にどんな影響があるのかわかりませんが、音楽を作ってるときは、ただただ自分で楽しんで作ってるだけです。仏教だけじゃなくてヨーガや密教、バシャールみたいなのから偉人の方々から色々といいと思ったところは総合的に学んでる感じです。まぁただそういうの知るのが好きなだけです」

■なるほど。では話を変えて、めまぐるしさ、世知辛さからふっと一息つくようなアルバムとして、前作に増してサウンドもリリックもぐっとシンプルになったように思うんですが、単純にアルバムに向かう気持ちや曲作りに変化はありましたか?
「制作時期に聴いていた音楽の趣向がまったりしたのが多かったですね。それが影響してます。気持ちは前作からそんなに変わってなくて自然な感じでした。曲作りに関しては機材などは色々と変えました。LOGICのシンセ音源を使うことが多かったです。それと電源トランスやケーブルなどこだわったりしたので、今回は、録音からミックスまで自宅スタジオで完結するようにしました。理想の鳴りに近づけるためにサウンド面、ミックスには気を使いましたから電源系統までこだわりましたが、まだ近づけてないですね」

■サンプリングの点では、沖縄を経てタイやカンボジアからインドへとアジアをたどる旅のような一面がありますね。
「サンプリングのネタとしてタイファンクのCDを集めたりしてたのがきっかけです。アジア的なけったいのなのが好きです」

■“祈り”の最初の語りや、“ジャイプールの裏路地にて”そのもの、“帰りましょ”にあしらわれた声ネタなどはご自身が録ってきたフィールド録音かなんかですか?
「“ジャイプールの裏路地”にては、現地(インド)にてICレコーダーで録音しました。住宅街の路地で練習してたっぽいです。“祈り”の語りは、本からの引用を自分で録音したのと、“帰りましょ”は、イヌイットの子守唄的なのをサンプリングしました」

■このアルバムにおける曲作りが実際どのような手順で進んだのか、作詞や客演、その他ゲストとのアイディア、作業のやりとりはどのようなものでしたか?
「アルバム制作にあたっては、好きな曲を和彦さんに演奏し直してもらったりしてて。素敵な方なので、演奏に人柄が出ますね。作詞では、伊瀬君にはこういうことを言いたいと資料を送ってそれをまとめてもらう様にしたり、任せて書いてもらったり。伊瀬君は、昔RAGING RACINGというラップ・グループでラップしてた頃から好きだったので、本当今でも一緒に出来るのは嬉しいです。イルリメ君は、僕が作詞で悩んでるのを知って自ら買って出てくれました。トラック渡して次の日とかに出来てくるんです。驚きました。やっつけとかじゃなくて、パッとひらめいたみたいでめちゃ速かったです。いつもなにかと助けてもらってる気がして、イルリメ君はネ申です。DOZANさんは、僕のスタジオに遊びにこられてるときにトラックを聴いてもらったりしてて、いきなりサビを歌い出すんです。それをその場ですぐ録音して。“ギャーテー”とか“ちょうどYEAH”のサビとかですね。“ギャーテーギャーテー“は、ご本人も今まで作った中でもかなり良いのが出来たとおっしゃってくれて。DOZANさんは昔から尊敬してるので共演は、本当夢みたいで光栄でした。とにかく皆さん歌と作詞の才能がすごいです。一緒に出来てることめちゃありがたく感謝してます」

■アルバムより一足先にネットで公開された田我流君との“ゆれる”については?
「田我流君は、前からYouTubeとかで観ててめちゃカッコ良いなと思ってて、CANDLE君の制作の時に肥後さん(MARY JOY RECORDINGS)に田我流君の話してたんです、震災後のライヴをYouTubeで観て衝撃を受けましたね。それで2011年4月頃、田我流君のアルバムの曲のトラックの話を頂いたのがきっかけでやりとりしました。その曲の制作で大阪に来てくれて、色々と話してこの人は間違いないと思って、是非ラップを録音したいとお願いしました。トラックは3年前くらいから暖めていたし、もともとジャズのオケで作っていたみたいでラップと歌詞はすでに田我流君のライブとかでやって出来ている状態でした。そんな感じなので、“ゆれる”は、田我流君の曲で僕のトラック・ヴァージョンみたいな感じ。本当(田我流の)ラップも人柄も大好きです。ちょうど田我流君も僕もアルバム制作時期が重なっていたので、何度か電話でお互いの状況を話したりしてました。“フェリチタ“の歌詞のアイデアとか田我流君に教えてもらったバシャールの本に影響されてます。PVとかもstillichimiyaのMMMさんが自主的に作ってくださって、良いタイミングで繋がっていきました。めちゃくちゃありがたいです」

■MARY JOYからはCHIYORIさんも“AGAIN”に参加してますね。
「CHIYORIさんは、CANDLE君の制作のときにお会いして声も雰囲気も好きだし、YouTubeでPVを観てたときに“AGAIN”の歌を歌ってもらおうと思って、歌詞と歌が出来ている状態で、歌ってもらったので難しかったかもしれませんが、最終的にはいい感じになりました。CHIYORIさん自身もバンドで“AGAIN”を歌いたいとおっしゃっていたので、楽しみです」

■鴨田潤さんが作詞した“いい時間”をはじめ“海岸を越えて”、“気楽な話”など歌に大きく傾いた曲の存在は、ラストの“帰りましょ”に至って、前作の延長で新たな作風としたように思います。このあたりの曲が生まれた経緯も聞かせてください。
「“いい時間”は、ラップ・ヴァージョンと歌ヴァージョンを作って、歌ヴァージョンが良かったので録音に挑戦したのですが、1年くらいの間で録音しては寝かしての繰り返しでした。自分のものにするのに苦労しました。“気楽な話”は何年か前にNORIMITSU君のトラックで作った曲だったのですが、気に入っていたので、それをリミックスしました。“海岸を越えて”は歌を作ってほしいとお願いして、やはり歌うまくないので、“気楽な話“以外の録音はかなり苦労しました」

■改めて今回のアルバムの感触や、アルバムを作ったことで見えてきたこと、生まれた新しいアイディアなどがあれば言える範囲で教えてください。
「(今回のアルバムは)単純に楽しんでもらえたらいいです。まあやっと次にいけると今作り始めてるのですが、いい感じです。最近は、Punch&Mighty君らと作品作りたいなって話してて、それと今回は自分で歌詞を書かなかったので、次はいい感じでラップと歌に挑戦したいななんて思ったり」

■あと最後にこれは余談になりますが、韻踏合組合時代を知る者として、今ご自身の中でラップをどう捉えているのか、ラップが占める位置や自分のヴォーカル表現の中でのラップをどう考えてるのかを率直に聞いてみたいんですが。
「ラップは好きですが、ただ表現の手法と考えてます。あまりこだわりがないので歌詞を書いてもらったり、フリースタイルも出来ないですし。でもS.l.a.c.k.さんとか田我流君とかShing02さんとかSHINGO★西成さんとか鎮座DOPENESS君とか色々と本物を見てると自分のやり方でやっていて本当にカッコ良いなと思うし尊敬します。ああいう風に出来ればなと思いますが、自分にはラッパーは向いてないですね。自分なりに楽しくやっていきたい感じです」

■重ねてさらに言っておきたいことなどあれば。
「あなたが与えるものがあなたが受け取るものというのが、この世の法則で、良くも悪くも自分に返ってくると。それなら愛を持って、嫌なことも自分が過去に人にして来たことかもしれないし、受け入れて、よりよく変化して、楽しく生きていきたいなと思います。皆さんに愛と平和を!ありがとうございました」